経理財務部が「やってよかった」を実感 「電子帳簿保存法」の対応と実践プロセス

電子化への取り組みをいかに考慮すべきか?
法令対応の先をみた帳票電子活用ソリューション「SPA」を利用したデータ活用と運用

2015年1月に「平成27年度税制改正の大網」が閣議決定され、スキャナー保存による規制緩和が明らかになった。
自社が受け取った3万円以上の契約書・領収書などのスキャナー保存が認められ、入力者の電子署名等は不要とし、タイムスタンプを付するとともに入力者等に関する情報の保存を要件とすることとなった。
これにより、会計・経理業務のほぼすべての資料の電子保存が法的に認められることになる。

これを受けて、ウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク)では、自社製品であるPDF帳票を一元管理する「SPA」を利用したファイリングシステムを構築。
社員が受け取った請求書や領収書など、ワークフロー申請と同時にタイムスタンプを付与した上で保管・管理の自動連携ができる仕組みを整えた。

また、対応に先立ち、電子帳簿保存法に適応する対象書類と利用システムを国税庁へ申請。
電子化により会計帳簿の大量出力が不要となることはもとより、税務調査の際にデータでの開示が可能となり、ガバナンスを強化しつつ、経理関係書類を紙で管理するための人的負荷が軽減された。
年間でキャビネット3本分となる証憑保管も不要となり、保管スペース削減にも貢献している。

執行役員 管理本部長 兼 経理財務部長 藤本 泰輔

執行役員
管理本部長
兼 経理財務部長

藤本 泰輔

管理本部 経理財務部 マネージャー 鹿島 忍

管理本部
経理財務部
マネージャー

鹿島 忍

「電子帳簿保存法」対応のポイント

  • 国税庁の相談窓口を活用
  • IT部門とのコラボレーションを徹底

取組みの背景

e-文書法規制緩和に伴う
国税関係書類のスキャナー保存の規制緩和

  • 金額要件の廃止
    以前は3万円以下のみが対象
  • 電子署名要件の廃止
    システムのログインIDの記録で代替可能
背景と目的

単なるコスト削減ではなく、組織業務の円滑な遂行を視野に

企業会計の現場では、長年にわたって膨大な量の紙の書類との格闘が繰り広げられてきた。
会計・経理処理がシステム化されても、国税関係帳簿、決算関係書類などは “紙での保存”という規定があったため、大量の紙資料をプリントアウトしてファイリングして保管・管理する作業が必要とされていたのだ。

しかし、1998年の電子帳簿保存法、2005年のe-文書法の施行により、こうした状況が徐々に変わり始めた。
一定の要件を満たせば会計帳簿等について電子的なデータを“原本”として扱うことが認められるようになり、管理すべき紙の帳簿や書類を削減できるようになってきた。
特にe-文書法では、一貫して電子的に作成・管理されているデータだけでなく、企業間でやり取りされている紙の取引関係書類の一部についてもスキャンした電子データでの扱いが認められるようになった。

ウイングアークで管理本部長 兼 経理財務部長を務める藤本 泰輔は次のように語る。

経理の仕事は常に、書類に埋もれているような状況でした。紙の会計帳簿は、会計監査や税務調査などの際を除けば頻繁に閲覧することがないにもかかわらず、出力してはファイリングして保管していました。作業のためには人的負荷もかかりますし、書類の保管場所も必要になります。そこで、2014年に会計・経理関係の資料のペーパーレス化を図ることにしたのです。コストの削減というよりは、組織における業務の円滑な遂行が最終目的でした

STEP 1

国税庁の助言をもとに、帳簿や書類の電子化を開始
自社が作成した国税関係書類をDr.Sum EAなどで、電子データ保存

経理財務部では、まず法令の要件を確認し、どのような仕組みで対応するかを検討すべく、2014年9月に国税庁へ相談に出向いた。
帳簿や書類を電子保存するには、どのような仕組みで保存・管理するかを所轄税務署に申請して承認を得る必要があるが、その事前準備として現状では国税庁の助言を得ることが求められているためだ。

国税庁では調査官のほか、情報技術専門官も対応してくれて、電子帳簿のために何が必要で、何が不要か、また税務署へ提出する申請書の書き方など、いろいろなアドバイスをもらうことができました

と話すのは、管理本部 経理財務部 マネージャーの鹿島 忍だ。

このヒアリングを通じて、まず第1段階として、国税関係帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳など)、自社が発行する取引関係書類(請求書、見積書)を電子データとして保存することにした。

これらの書類の電子データ化には、“自社で最初の記録の段階から一貫して電子計算機を使用して作成している”という要件を満たす必要があります。ウイングアークでは、国税関係帳簿はERPシステムの『GRANDIT』で、自社が発行する取引関係書類は自社製品の『Dr.Sum EA』で管理しています。そこで第1段階として、これらの書類について2014年夏から準備をして11月末に申請・承認を受け、2015年3月から始まる会計年度から適用を開始しました(藤本氏)

STEP 2

スキャナー保存した書類をSPAで管理
電子棚の感覚で活用し、保管期間を過ぎたデータを自動消去

第2段階では、平成27年度年度税制改正(図1)で緩和されたスキャナー保存要件に対応する形で、自社が受領する取引関係書類(請求書、領収書)についてスキャナー保存することにした(図2)。
2015年6月頃から検討を進め、同年11月末までに申請・承認を得て、翌2016年3月からの会計年度に適用を開始した。

図1:平成27年度税制改正による規制緩和の内容

図1:平成27年度税制改正による規制緩和の内容

図2:ウイングアーク1stの電子帳簿対応範囲

図2:ウイングアーク1stの電子帳簿対応範囲
(青枠が第1段階:2015年3月から適用開始、赤枠が第2段階:2016年3月から適用開始)

従来ウイングアークでは、経費精算時に社員はワークフロー申請で請求書や領収書のデータのみを入力し、紙の原本は別途社内で転送するという方式を採っていた。

最終的には、経理財務部がワークフロー上のデータと紙の原本を突き合わせて確認した上で決裁処理を確定し、原本はファイリングしていました。この方法だと経理財務部の業務に大きな負担がかかります。また、本社以外のオフィスからは紙の原本を郵送する必要があり、最終確認までにタイムラグも生じてしまいます。そこで、SPAを利用して、スキャンしたデータを効率良く保管できないかと考えたのです(藤本氏)

SPAを利用する際の流れは、次のようになる。

  • 申請者は、請求書や領収書などの書類を複合機でスキャンしてPDFデータにする
  • 領収書タイムスタンプ

    領収書タイムスタンプ

    ワークフローでの申請と同時にタイムスタンプが付与されたPDFデータがSPAへ格納され、上長の決裁や経理財務部の確認を経てERPでの会計処理が行われる
  • SPAに格納されたPDFデータには、ERP上の仕訳伝票番号が紐付けされ、システム上の処理が完了する

SPAには、高度な電子棚管理機能や、帳票の自動データベース化機能が備わっており、監査などで原本データを探す際にも効率化が期待できます。また伝票番号を紐付けたことで、ERP上の仕訳伝票から原本PDFまで容易にたどり着けるようになりました。さらに、データのライフサイクル管理機能を使って、法令や社内規定で定められた保管期間を過ぎたデータを自動消去することもできます(鹿島氏)

実践と効果

監査対応時には、“検索”し、すばやく電子データを提示
“仕事の効率化が図れ業務の生産性が変わる。費用以上の効果”

SPAを利用した電子データの保管について、鹿島氏は次のようにメリットを話す。

税務関連で管理しなければならない書類は、これまで段ボールで年間50箱ほどにもなりました。今後は、その保管場所も管理の負担もほとんど不要になっていきます。紙の原本と突き合わせる作業がなくなり、特に郵送のタイムラグがあった本社以外の拠点において処理完了までの時間が短縮されました。また、税務署の調査や監査対応などの場面では、ファイリングされた紙を手繰るのでなく検索で素早く見つけることができます

e-文書法に関連した取引関係書類の電子データ化のソリューションは他にもあるが、請求書のみ/領収書のみ対応といったものや、管理する書類の数量に応じた従量課金のものもある。
それらに対しSPAは、請求書/領収書の両方に対応できるだけでなく、他の様々な帳票類の管理に活用することが可能で汎用性が高い。
SPAを他の業務に使う場合でも、税務署への申請は経理関連で使っている部分についてのみで問題ない。

経理部門というのは、日常の業務を正確に実施するのが大事な仕事です。大量の書類に埋もれる日々とはいえ、それをなんとか処理している現状では、システム導入という新しい取り組みになかなか踏み出せないかもしれません。しかし、同じ経理部門で働く立場として、“仕事の効率化を図ることができ、業務の生産性が変わります”とお伝えしたいです。費用以上の効果を感じるはずです(鹿島氏)

また、自社で発行する請求書などを既にSVFで作成している企業であれば、SPAを使うことで、一気通貫の電子帳簿対応システムを完成させることができ、そのメリットは大きい。

今後の展望

今後の規制緩和にも対応し、
スマホで撮影したデータをワークフローで申請
目指すは、組織としての情報活用能力の強化

平成28年度税制改正では、スキャンしたデータだけでなく、スマートフォンなどで撮影したデータでも同様に国税関係書類の原本として扱うことが可能となる。
これを受けて、ウイングアークでは、アプリケーションから申請ワークフローまでの連携を行っていく計画だ。
現在のワークフローでは社員がスキャンする手間がかかるが、スマートフォンの写真を使うようになれば、その手間も軽減されると期待される。

また、SPAで管理する電子データの活用も検討している。

今後の方向性の一つの案として、SPAと、Dr.Sum EAを組み合わせて活用することも考えています。現状では、データの粒度の都合から、会計データまでの範囲で分析を行っていますが、SPAと連携させればPDF原本までドリルダウンできるようになります。SPAは活用の幅が広く、他にもいろいろと使えそうです(鹿島氏)

また、藤本氏は電子化の意義を次のように語る。

文書の電子化の目的は、単なるコスト削減ではなく、業務の効率化、文書の共有や検索の容易さによる、組織の業務を円滑に遂行できるところにあります。紙文書の電子化は、業務全体のスピードに大きなインパクトをもたらします。検索や編集が容易になるという操作性の向上、情報共有や伝達の容易さから生まれる組織としての情報活用能力の強化へとつながるからです

さらに、

紙文書そのものを電子化することで、電子システム上だけでは確認困難な証憑の情報(相手先発行番号、発行年月日、住所、電話番号など)も迅速に入手、活用することも可能となります。内部統制システムの確立においても、正確な情報の安全な管理だけではなく、業務全体を最適な形で遂行できている体制が求められ、紙文書の電子化は、情報の管理と活用を両立する上でも大きな意義を持つと実感しています

と話す。

今後、国税庁の方針や会計・経理業務の現場においても電子化への波は益々加速していくだろう。

単なるコストの削減や電子化への取り組みではなく、人が働きやすい電子化システムと情報活用基盤を目指し、チャレンジしていく考えだ。

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