導入事例

ヤマハ株式会社

月次ベースの実績報告をMotionBoardで日次化
生産管理部門自らの手で、PDCAサイクルの高速化をITベースで実現
  • MotionBoard
  • 製造
Before
「生産現場で作業員が記入用紙に手書きした生産日報を『指導員』と呼ばれる現場リーダーが紙からExcelに転記し、それを『職長』と呼ばれる現場管理者が月報として集計をしていましたが、本部や豊岡生産部のマネジメント層が生産計画に対する差異として集計された報告を見ることができるタイミングは月次でした。この報告リードタイムでは業務改善サイクルを回すうえで時機を逸していました」
after
「MotionBoardを導入することによって『生産性』『品質』『非生産時間』の3つの観点で生産実績情報を日次ベースで参照できるようになりました。『職長』がExcelでの月次報告書を作ることに要していた月間約50時間の間接工数がゼロとなり、週次の報告会議ではMotionBoardに表示される日次ベースの生産実績ダッシュボードを報告書代わりに使っています」

導入背景

●生産現場の管理者による生産実績の「集計」という「間接作業時間」の削減と、それらの付加価値作業への置換

●経営層への生産実績報告のタイムラグにより、課題対応の遅れが発生

●基幹ERPシステムに生産現場のニーズが的確なタイミングで反映されない

導入ポイント

●チャートなど表現力豊かなダッシュボードがプログラミングレスで導入可能

●画面のスクラップアンドビルドが短期サイクルで可能

導入効果

●年間約500万円のレポート作成コストの削減

●生産実績データのリアルタイム可視化によるPDCAサイクル速度の向上

●可視化の仕組みを、生産現場が必要とするタイミングで柔軟に変更できる環境の実現

導入製品

MotionBoard

Company Profile

創業:1887年
所在地:静岡県浜松市中区中沢町
事業内容:楽器事業(ピアノ、電子楽器、管・弦・打楽器、防音室、音楽教室、英語教室、音楽ソフト、調律)、音響機器事業(オーディオ、業務用音響機器、情報通信機器)、電子部品事業(半導体)ほか
ヤマハ株式会社
楽器・音響生産本部 生産企画部 IT推進グループ
主任 宮田 智史 氏


※字幕付

ヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)楽器・音響生産本部 エレクトロニクス生産統括部 豊岡生産部(以下、豊岡生産部)では、生産現場の海外シフトの潮流において難易度が高い製品を、「高い生産性」かつ「高い品質」で「納期通り」に生産することによって、「メイド イン ジャパン」のメリットと存在価値を社内外に対して示すことが工場経営課題となっている。さらに、豊岡生産部は2014年4月からは分社化され、今まで以上に厳密で明確なアウトプットが求められるようになる。
そのような背景をもとに、生産部門自ら「生産能率」「不良率」「非生産時間」という3つの生産性指標の入力精度向上と、MotionBoardによる「リアルタイムの見える化」に挑戦。情報システム部門ではなく生産現場自らの手で、業務改善サイクルを「早く」回すための仕組みを完成させた。レポート業務の大幅な省力化と業務改善サイクルの高速化を実現した豊岡生産部が次に目指すのは、海外工場を含めた指標統一と生産現場に損益意識を浸透させた「セル別経営」だ。

リアルタイム実績測定によるPDCAサイクルを

1887年(明治20年)に創業し、昨年には125周年と大きな節目を迎えたヤマハ。同社の売上の約65%(2013年3月期)を占めているのが、電子楽器をはじめピアノや管弦打楽器なども製造・販売している楽器事業だ。

その楽器製品の売上のうち社内一の約41%を占める電子楽器を製造するエレクトロニクス生産統括部 豊岡生産部では、TPS(トヨタ生産方式)を採用して継続的に生産現場の直接作業改善活動を推進してきたが、「間接労務費の増加」「作業効率の低下」「非生産時間の増加」といった新たな課題を抱え、従来の直接作業だけの改善活動に限界を感じていた。また、中国やインドネシアに数千人規模の生産拠点を構えるようになり、生産コストが安い海外工場と常に比較対象にされ、豊岡生産部の存在価値が問われるようになった。

ひとつの解として豊岡生産部がたどり着いたのは、「直接作業はより細かな状況を把握して改善し、間接作業にもメスを入れ合理化して削減することで少しでも直接作業に充てられる時間を増やし、単位時間当たりの付加価値作業を高くする」ということだった。それにより労務費を抑える、もしくは現状の労務費で最大限のアウトプットを創出することにより、「低コスト」「高品質」「高い技術力」を実現し海外との差別化を図ることが急務と考えた。

当時、必要最低限の生産実績は把握できていたが、生産現場で今何が起きているのか、改善サイクルの基となる実績情報が適切なタイミングかつ適切な工程で把握できていないのではないかという仮説を立てた。その仮説をITベースで実証すべく、豊岡生産部は生産実績を必要な頻度と工程で“見える化”するためのITツールの選定に着手した。

ITツールの選定は情報システム部門に頼ることなく、豊岡生産部自らが操作して比較検証を行った。今回のプロジェクトをリードした楽器・音響生産本部 生産企画部 IT推進グループ(導入当時は豊岡生産部 品質生産技術課)主任の宮田 智史氏は次のように話す。

「基幹ERPシステムでは、設定されている半製品や完成品の数量ベースの生産実績しか参照できません。一方で、生産現場の改善活動に必要なデータは、完成品を作るまでに通るそれぞれの工程単位で『その製品のST(Standard Time)に対してどれだけの人工と時間をかけて生産して、どれだけ不良を出して、そのためにどれだけ直接作業に関係のない時間を費やしたか』という時間ベースのデータです。それらを収集でき、さらに現場で仕様変更や運用が可能なローカルシステムが必要でした。豊岡生産部では、その要件を満たすITツールを探していました」

生産現場に設置する“デジタルアンドン”に、MotionBoardは最適

宮田氏は、今回のプロジェクトに関わるまで、全くITシステムの構築経験がなく、データベース設計の方法論をゼロから学んだうえで、ツール選定をこなした。

「多くのツールを実際に操作して自分たちで構築・仕様変更・運用が可能か比較検証しましたが、その要件を満たしたのは唯一MotionBoardでした。生産現場にはPC等の閲覧端末がないため、最終目標として各作業者への情報表示板として“デジタルアンドン”を現場に配置する要件がありました。タイマーによる画面自動切替機能により色々な情報をデジタルサイネージを使った広告のように表示することで表示量を増やしたり、ボタン化などのGUIの豊富さで簡易的な操作性を実現したりと、その要件をしっかりと満たしています。MotionBoardのコンテンツが徐々に揃ってきた現在では、現場へのデジタルアンドン導入について提供端末を何にするか等を検討中ですが、稼働開始以降は、まず個人で業務用PCを利用している現場管理者や関連スタッフに対してWebブラウザーからMotionBoardを閲覧してもらっています。

先行して本格運用を開始した現場管理者からの反応は良好です。現場の生産技術スタッフは、日常の業務の中で不良率ダッシュボードを参照してドリルダウンやデータダウンロードを行って不良原因と対策を検討していますし、毎週実施している生産進捗会議で生産能率や生産遅れ台数などを報告するための報告書代わりにMotionBoardが使われています」

もちろん、MotionBoardのようなビューワーを導入しただけでは、「実績情報を適切なタイミングかつ適切な工程単位で把握する」という要件を満たすことはできない。実績入力の仕組みを“紙とえんぴつ”から“タブレット”へリプレースする改革を並行で進めた。

入力と出力の改革プロジェクトを現場自ら進める

当初半年で稼働開始できるだろうという想定だったが、実際は開始まで1年半かかった。その背景を宮田氏は次のように振り返る。

「MotionBoardを2011年2月に購入してすぐに当時存在していた生産実績データを使って“見える化”にトライしたのですが、様々な課題が浮き彫りになりました。例えば、現場で収集している実績情報の計上定義や精度が工程やセルごとにバラバラであることに気づきました。実はツール選定を開始する前から感覚的にその状況を理解していたのですが、“見える化”をすることで具体的に改善すべき指標とデータが特定できたことにより、このままいい加減な指標と入力データをもとに経営層に対してレポートし続けても全く意味がないという危機感を抱くことができました。せっかく現場が工数を割いて入力してくれた実績データですから、PDCAサイクルに乗せるために何をすべきか、豊岡生産部として考えねばなりません。1年半という期間は、本当に行うべきことを見直すために必要な時間だったと考えています」

業務改善ポイントが明確になったあと、豊岡生産部は指標の統一化と入力業務の簡易化と標準化に取り掛かった。結果、完成したのが「POPシステム(Point Of Production System:生産時点情報管理システム)」である。

一般的に、POPシステムとは生産現場の作業者や設備などあらゆる情報源から生のデータを収集し、生産現場の見えないロスや問題をデータとして顕在化させ、現場管理者に分かりやすい形で可視化することで、データをもとに改善活動を行っていくシステムを指す。

「POPシステムが完成するまでは、その日に生産した実績を現場作業者が紙に記入し、それを現場リーダーである『指導員』がExcelに毎日転記をして、現場管理者である『職長』がそのExcelデータから月次で報告書を作成していました。報告書作成には職長が毎月多くの工数をかけていました」

「MotionBoardとその基となるデータソースを入力する『POPシステム』を手に入れたことにより、生産実績の報告を日次ベースで行うことが可能になりました。また、報告書を作成する工数をゼロにすることができ、報告の基となる入力に要する工数を大幅に削減することができました」

「われわれは、生産実績を評価するときに『生産能率』『不良率』『非生産時間』という3つの指標を用いています。MotionBoardを導入することによって、『非生産時間』と呼ばれる直接作業をしていない時間、つまり『間接作業時間』を大きく短縮することができました」

現場改善手段としてのITツールは現場自身で保守運用して機動力を発揮

以前生産現場に勤務した経験から、“現場の考え”を生かしたシステムを作りたかったという宮田氏は、今回のBIツールの導入に際して現場の声を徹底的にヒアリングした。また運用開始後には、現場の作業者が自分の生産ラインの状況が見えるようになったことで、新たな要望も出始めてきている。

「私自身がもともと生産部にいたので、現場のスタッフも意見を言いやすいのかもしれません。小まめに現場に声掛けすることで、ちょっとした相談や指標をどういう切り口で見たいといった要望も吸い上げています。要望については、システムそのものだけでなくその後の運用や管理をどうやっていくかというところまでディスカッションしています」

豊岡工場の次のステージとして「セル別経営」の模索

このようにヤマハでは、生産現場における“見える化”を実現しPDCAを回せるようになるといった具体的な効能を得た。しかし同生産本部では、次のステージを見据えている。

豊岡生産部の生産現場では2、3人がチームになって「セル生産」を行っているが、セル単位で損益を意識してもらうことによって現場での経営意識を高めようという試みをしている。つまり、「セル別経営」を目指すということだ。

「自分たちのセルで生産している製品の生産状況を自分たちが把握して自律的な改善サイクルを回すだけではなく、金額やそれに代わる指標で換算することによってセル単位で経営を行ってもらう構想があります。従来は、決められた時間通りに決められた台数を決められた品質通りに作ることが求められていましたが、それだけでは海外工場と差別化できません。例えばこれまでは、セルの作業者は自分が受け持った工程で作業分割が悪くラインバランスが崩れて手待ちやロスが発生すると、遅れている工程を手伝ったり明日の仕事を前倒しで行ったり、ちょっとスローダウンして自分の楽なペースで作業するといったことがありました。これでは、そもそもの問題が見えなくなってしまい改善が進みません。それではもう海外工場との競争に生き残っていけないでしょう。日本人は管理意識や向上心も高いので、数字や情報を“見える化”し、自分たちや周囲の「調子」を数値やデータで把握できる環境を提供することで、作業者個人が金額やそれに代わる生産性指標をもとに経営意識を持つことができ、自身のモチベーションを上げ改善を行うことで、ボトムアップにつながると考えています」

基幹ERPシステムでは完成品単位での損益しか“見える化”できません。POPシステムで手に入れた現場の生データで現場経営に必要な工程単位の損益を“見える化”していくことができると考えています。材料費、労務費、その他の経費など、それらすべてをセル単位に金額ベースで示すことで、自分たちのセルが赤字なのか黒字なのか、黒字にするために『生産能率』『不良率』『非生産時間』をどう改善していくのか、MotionBoard+現場力でより高度な改善を現場が自律的にできるようになって欲しいと考えています」

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