導入事例

株式会社デンソー

現場が自らKPIを設定し、現場主導の“カイゼン”の仕組みとスピードアップを国産BIで実現
  • MotionBoard
  • 製造
Before
「Excelを使って個人ごとの工数計測シートに入力していたが精度が低く、月次の集計レポート作成作業に4人月が必要なうえ、現場へのフィードバックも2ヶ月後という状態になっていた。そのためカイゼン施策の成果がわからなかった」
after
「施策に対する実績が見える化でき、改善策の効果検証も容易になった。自動化で集計作業コストは0に。KPIの改善も迅速化。現場へのデータ提供もタイムリーになった」

導入背景

● 制御プログラムの開発規模が膨大化し、開発工数管理を強化したかった

● 工数計測の入力ツールの利用が定着せず、実態が見えなかった

● 管理レポートの集計作業に2ヶ月かかり、タイムリーな反映ができなかった

導入ポイント

● 現場主導で小規模にスタートし、徐々に部門展開できる拡張性

● “ものづくり”に長けた国産製品であることの安心感

導入効果

● 現場の“カイゼン”活動に合わせてKPIを柔軟に修正できるようになった

● 施策の良否判断が容易になり、「効果」の見える化ができた

● プロトタイプ開発により短期導入を実現。改善も最短2時間でリリース

導入製品

MotionBoard

※MotionBoardに関するお問い合わせ
 

Company Profile

設  立:1949年12月16日
所在地 :愛知県刈谷市
事業内容:自動車部品やシステムの開発・製造で知られる世界トップレベルのパーツ・サプライヤー企業。世界の主要な自動車メーカーに部品を供給し、世界30ヶ国、13万人が従事している。
株式会社デンソー
株式会社デンソー
本社 電子技術3部 企画室 室長
鷹羽 克己 氏(写真右端)
 
電子技術3部 企画室 プロセス2課 課長
荻野 美穂 氏(写真右から2人目)
 
電子技術3部 企画室 プロセス2課 担当係長
池戸 聖記 氏(写真左端)
 
電子技術3部 企画室 プロセス2課
梶原 修平 氏(写真左から2人目)

世界的な自動車部品のサプライヤーである株式会社デンソー(以下、デンソー)の中で、制御系組込ソフトウェア開発を担当している電子機器事業グループ。同グループでは設計現場が主導してBIツールの導入を計画し、MotionBoardを採用した。開発工程を管理する多様なKPIを設定し実績を見える化することで、“カイゼン”スピードの向上に役立てている。

デンソー流モノづくり

デンソー流モノづくりは、先進的な製品開発、基幹技術の自社開発・自社製造を技術革新を通じて成し遂げることにあり、その結果、世界初となる様々な製品を生み出してきました。このモノづくりに対する妥協なき姿勢が、デンソーの競争力や企業価値を高める礎になっています。その取り組みのひとつとして、コスト競争力強化のため、ダントツの原価でモノづくりをする「ダントツ工場」活動を推進しています。  

自動車のエンジン制御ECUを開発する電子機器事業グループではソフトウェア開発においてもコスト競争力強化のため、開発原価管理、設計プロセス改善等の活動に取り組んでおります。

適切なレポートが出せず、現場での正確な実績入力が困難に

自動車のエンジン制御用システムである「エンジンコントロールユニット(ECU)」の開発を担当しているデンソーの電子機器事業グループ。事業拡大に伴い、2002年には、開発しているソフトウェアのプログラムコードが10万行を超えるなど、規模の大型化に直面していた。それに伴い、ソフトウェア資産管理や開発工数管理の強化、設計プロセスの改善が急務となり、2003年には業務プロセスを改善するために専属のコンサルタントを起用して大規模な“カイゼン”施策に取り組んでいた。

具体的には、管理単位を開発プロジェクト単位に分割し、プロジェクト単位でExcelの作業報告書へ作業工数を入力・集計して「見える化」しようという取り組みである。しかし開発者1人が抱えている担当プロジェクト数は10〜20件あり、1プロジェクトあたり19項目もの細かな分割された設計タスクの工数を入力していく作業は、現場にとって大きな負担だった。その結果、毎日の正確なデータ入力を維持することが困難となり、結果的に「工数入力作業が定着しない」「入力精度が悪く修正も難しい」「正確な実態把握が難しい」といった課題を生んでいた。

加えて、現場開発者が苦労してデータを入力しても、次のステップの「集計」が大きな問題となっていた。入力データの確認や修正に時間がかかり、集計レポートの作成作業だけで専任の担当者2人で2ヶ月もの手間と時間がかかっていた。

こうして取りまとめられた「マクロなデータ」は、経営層は経営指標として重視していたが、現場にとって必要なのは、“カイゼン”活動に役立つ「日々の変化を捉えたミクロなデータ」であった。

同社 電子技術3部 企画室長 鷹羽 克己氏は、この2003年の取り組みを振り返り、そこから学んだ内容として、次のように話す。「工数入力の問題では、入力項目を細分化しすぎていた反省を元に、計測タスクを最低限の必要項目に絞って設計し、目的入力別にスタート。運用する中で徐々に入力項目を細かく設定していく進め方が必要だと結論づけました。また、現場の入力を簡単にする工夫が必要で、入力作業の精度の向上や修正不要な仕組みづくりが重要だと気づき、さらに、集計を自動化して時間を短縮しなければならないと考えました」

「実現すれば、マクロとミクロの両方のデータを提供できるようになり、日々の変化をタイムリーに反映できます。これにより施策の効果検証が速やかに行えますので、設計プロセス改善や設計リソースの最適配置・有効活用、開発工数管理や品質管理の強化など様々な効果を生み出す基盤ができると考えました」(鷹羽氏)また、制御系組込ソフトウェア開発でも2002年当時10万行であったプログラムはさらに拡大し、2012年には60万行へと膨らんでいた。

カイゼン施策と実績をリンクさせ効果を実感し、
現場のモチベーションを高める仕組みの検討を開始

こうした課題意識はあったものの、2000年代は、業績は右肩上がりで利益も増大傾向にあった。しかし国際的な金融危機の引き金となった2008年のリーマンショックにより事態は一変する。効率向上のために現場は施策別の効果を見える化し、施策の計画と実績を素早くコントロールすることが、早急に取り組むべき課題となった。

「当時提供されていた2ヶ月遅れのマクロなデータでは、スピードの面で問題があり、スピーディな効果把握やコントロールは不可能だと感じました」と鷹羽氏は話す。「改善効果を実感できる施策で、活動のモチベーション向上を図りたいと考えました。データは日々蓄積されます。現場の活動と、経営の指標が同じデータを元にして提供されていることが本来のマネジメントに必要だと考えました」(鷹羽氏)

そのためのポイントとして、

・施策と計画/実績をリンクし、施策の進捗管理ができること。
・“カイゼン”施策に対する効果測定ができること。
・組織の課題やトップの視点の変化に対応したデータを、簡単かつスピーディに提供できること。

の3点を指標軸におき、目指すべき仕組みの再検討を開始した。

現場主導で導入できるBIの検討 国産のMotionBoardを選定

これらの課題を解決するプロジェクトが立ち上がり担当となったのが、同事業グループ 電子技術 3部 企画室 プロセス2課の池戸 聖記氏と梶原 修平氏だ。2人は以前のExcelベースの管理手法を刷新し、現場の“カイゼン”施策の効果を見える化することで、「効果を実感」でき、モチベーション向上が実現できるだろうと考えた。 

「必要なデータを、必要な時に、必要な形で、必要な人に提供することで、施策の成果が判断でき、次の課題が見えてきます。こうしたPDCAのサイクルを現場レベルでまわすことで継続した“カイゼン” につながっていきます。このPDCAサイクルを現場が自主的に、かつスピーディに回すためにもデータ活用支援の仕組み(システム)が、必要と当時感じていました」(梶原氏) 

こうしたシステムがETLツールとBIツールの組み合わせで実現可能であることをあるイベントで知り、製品選定に入る。 

「MotionBoardと他社製品を比較検討しました。主な選定のポイントは『ITの専門家でなくても構築できる』『過去のデータや既存DBを利用可能』『大規模ユーザーの運用(社員・常駐外注など2,000名)にも耐えられる』の3点です。モノづくりに長けた国産製品であることも重要なポイントでした。当初、評価用として 10ユーザー版を購入し、プロトタイプ開発に着手しました。小さく始めて成果を出すことに注力しました」(池戸氏)

開発は2012年10月から本格的にスタート。現場で保有する膨大なExcelデータの収集・加工のためのETLツールには、ビーコンITの「Waha!Transformer」が採用され、工数削減を実現した。 

また、現場の実績入力を簡単にするために工数入力ツール「TimeTracker FX」※とMotionBoardを連携させ、作業時間の集計だけではなく、作業内容の分析も判断できるようになった。 

※グループ会社のデンソークリエイトが開発した工数入力ツール

さまざまな指標をグラフィカルに表示
KPIの設定、変更もスピーディ

MotionBoardについて梶原氏は、「Excelでは実装が難しい表現も、MotionBoardならば簡単な操作で対応可能です。経営層だけでなく、部門長級、室長・課長級、現場設計者まで、それぞれが自分の必要とするデータで必要なKPIのレポートを作成できるようになりました。社内に点在する情報を自在に加工、分析して、施策の進捗を把握し、“カイゼン”に役立てています」と話す。

開発開始からわずか半年、2013年4月に「見える化システム『LIBRA(リブラ)』」と命名したプロジェクトが正式に稼働する。

現場が施策を評価し、次の改善策を検討するには目標値(KPI)が必要になる。KPIを設定する際は、組織の課題や年度の目標を基に仮説を立てて設定を行うが、この調整が容易になった。KPIの見せ方や粒度について変更リクエストがあった場合も早期に変更できるのである。

従来のシステム開発手法であれば、仕様変更を取りまとめながら開発するなどして最低でも3ヶ月はかかってしまう変更も、現在は、改善要望からリリースまで最短2時間といったケースもあるという。集計作業も自動化され、データ集計コストは0になった。

「LIBRAはデータ集計と分析のインフラとして機能しています。正確かつ鮮度の高いデータをタイムリーに見える化できることで、計画と実績の差を見つけ出すなど、改善施策の効果検証がスピーディに行えます」と梶原氏は語る。

電子事業グループから始まった「現場主導の“カイゼン”の仕組み」は、すでに社内の他の事業部へと展開され始めている。「LIBRAで実現したBIツールを使った現場主導の“組織レベルでPDCAサイクルを回す”仕組みは他の事業部でも注目されています。ますます業務スピードが加速される中で、PDCAサイクルを支援する見える化ITが重要になっています。複数の部門でのMotionBoardのテスト利用も始まっており、データ有効活用のための社内の標準的な仕組みとしても検討しています」(池戸氏)

また、電子技術3部 企画室 プロセス2課 課長 荻野 美穂氏は、「もともと“改善”は“カイゼン”として、国内のみならずグローバルデンソーの風土として根付いています。今回手に入れたMotionBoardという道具を中心に、様々なデータをグループ内で共有・活用することにより、“カイゼン”をスピードアップさせると同時に、今まで踏み込めなかった領域にも“カイゼン”のメスを入れていきたいと考えています」と今後のビジョンについて語る。データ活用により、同社の“カイゼン”は、ますます進化していくに違いない。

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