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富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社
“良品条件”を追求する、高次元のモノづくり
生産現場を変える、BI活用によるリアルタイムモニタリング
  • MotionBoard

  • 機械・電気機器

Before
「価値を生まない入力作業を削減すること、すばやく不良原因を特定して不良を作り続けないようにすることは、複合機部品の製造ラインでも大きな課題でした」
After
「生産現場のリアルタイムモニタリングを実践してきたことにより、確実に不良が少なくなってきたという効果を実感しています。しかしながら、まだまだ私たちの期待値には届いていません。これまで製造業では、ある程度の不良が発生するのは仕方がない、不良の発生率が許容範囲を下回っていれば良いといった普通のモノづくりの壁を破って、一段上のレベルのモノづくりに飛躍したいのです」

富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社


※字幕付

導入背景

● 各ラインの手書き日報をあらためてExcelに入力し、1次加工、2次加工を行うなど、煩雑な手間がかかっていた

● 不良発生コストのさらなる削減

● ムリ・ムダ・ムラを発見し、生産性を向上させる活動に人手がかかりすぎている

導入ポイント

● 製造ラインで起こっている様々な出来事を、直感的に“見える化”できる

● 生産現場自身が主体となって対応し、使いこなせる「ノンプログラミング」のツールであること

● 製造品種の変化、検査項目の変化、切り口の変化などに素速く対応できる柔軟性

導入効果

● 不良を出さないための対処をタイムリーに行えるようになった結果、不良が1/5に減った

● iPadを利用したダイレクト入力の徹底により、毎日約80分費やしていたExcelへの手入力工数が0分に削減

● ラインの「よどみ」が見える化され、残業時間が毎日1時間減った

導入製品

MotionBoard

プリンターやデジタル複合機の部品・消耗品の製造を主事業とする富士ゼロックスマニュファクチュアリングでは、「XPW」(Fuji Xerox Production Way)※1と呼ばれる独自の生産方式のもと、部品や設備の内製化や部材のジャストインタイム生産など、生産現場の改革に向けたチャレンジを重ねてきた。そうした中で進めてきたのが、Dr.Sum EAをベースとしたBI活用だ。

生産現場の日常業務と改善活動を支える基盤として、「部門別に必要な項目に絞られた部品注文残検索」「部材の納期を追いラインをつなげる在庫シミュレーション」「流動数曲線による引き溜め在庫コントロール」「ピーク電力削減を目的とした電力の見える化」など、すでに多くの成果を上げている。

BIの適用業務は生産管理を中心としてほぼ全業務に及んでおり、ユーザー数約1,000人、メニュー数約2,000、開発ユーザー数約70人へと利用が広がっている。“Dr.Sum EAがなければ、生産管理が成立しない”といわれるほどの状況だ。

 

この「XPW」による現場での改善活動、生産革新活動への取り組みが活発な同社では、データを生産革新に活かすという風土があった。そして、新たなチャレンジとして2014年末より取り組みを開始したのが、iPadによるダイレクト入力とBIを活用したリアルタイムモニタリングだ。生産現場で発生する様々なデータを自動的にシステムに取り込み、不良削減などの改善につながるKPI(重要評価指標)として表示するダッシュボードを構築した。生産現場における徹底した品質向上を目指し、不良を出さない“良品条件”を探求し続ける同社の取り組みを紹介する。なお、こうした一連の取り組みは、富士ゼロックスが自社での改善活動を利用ノウハウと共にお客様にソリューションとしてお届けする「言行一致※2」活動として展開している。

 

※1 XPW...ダントツのお客様満足を得るために、最高のQCDと高い柔軟性および優れた環境性能を成立させるトヨタ生産方式をベースとした富士ゼロックス独自のモノづくりの考え方や取り組み方の総称。

※2 言行一致...富士ゼロックスが自社で実践・検証したうえで、お客様にソリューションとして提供する一連の実践活動。

リアルタイムモニタリングの背景

データが可視化されるまでのリードタイムが短くなると仕事のやり方を変えられる

富士ゼロックスマニュファクチュアリングが新たなチャレンジとして取り組んでいる生産現場のリアルタイムモニタリングについて、同社の執行役員であり鈴鹿事業所長を務める古川 雅晴氏にその背景を伺った。

―今回、MotionBoardを活用して生産現場のリアルタイムモニタリングに踏み出した狙いと、そこでもBI活用に注目したポイントをお聞かせください。

古川氏 製造ラインで起こっている様々な出来事を、「赤(不具合発生)」「黄(注意)」「青(正常)」と色で示し、直感的に“見える化”できると知り、「これならいける!」と感じました。製造ラインにおいて、データが発生した時点でシステムに入力され、短いリードタイムでダッシュボードに反映できるということは、非常に有益なことなのです。スピーディーに不具合などの問題点を解決し、不良発生による後工程への影響を最小限に抑えることができるからです。

―すぐに導入が決まったのですか。

古川氏 実はそうでもありません。経営トップは「良いシステムであることはわかるが、本当に君たちに使いこなせるのか」と懐疑的な見方をしていて、すぐには了承してもらえませんでした。仮に10分間隔でデータが更新されたとしても、それと同じスピード感で手を打つことができなければ意味がないというのです。決してITを否定しているわけではなく、現在の仕事のやり方で人がITに追随できるのかを厳しく問われました。私たちにとっては耳の痛い指摘でしたが、まさに正論でした。

―でも、あきらめなかったわけですね。

古川氏 私は少し違った見方をしていて、「生産現場の仕事のやり方こそITによって変えられるはずだ」という信念を持っています。「モノづくりは“3現主義”(現場、現物、現実)を徹底せよ」とよくいわれますが、データが可視化されるまでのリードタイムを短くすることは、まさにその要求に応えるものだと思うのです。

これまではそれができなくて、週次や月次でデータを集計していたのですが、例えば3日前に起こったことを振り返ったとしても、わかることはおそらく半分もないでしょう。リアルタイムに近い形で可視化してこそ、現場での気づきが多いのです。その仕組みをBIツールで実現したいと考えました。そこで2014年12月、まずは試用版としてMotionBoardを導入し、実際に複写機部品の製造ラインで先行運用した効果を示すことで、トップを説得したのです。

―説得は功を奏したのですか。

古川氏 おかげさまで、「このシステムに負けない仕事の仕方をしなさい」と了承を得ることができました。そして、導入が決定したのです。

Part1.
「生産現場の見える化」に向けたトライアルを開始

2014年12月、富士ゼロックスマニュファクチュアリングは複写機部品の製造ラインを実証の場として、生産現場のリアルタイムモニタリングのトライアルを開始した。ここでの成果が、その後の正式導入および幅広い展開に結び付いたのである。

背景にあった5つの課題と対応方針

富士ゼロックスマニュファクチュアリングでは、従来、生産現場の状況を主に設備からのデータによりリアルタイムで可視化できるシステムは存在していたが、手書きを伴う帳票で運用をしていた部分はその対象ではなかった。同社がタブレットの活用を含めた、生産現場におけるリアルタイムの“見える化”を志向するようになった背景には、どういった課題があるのだろうか。同社 需給管理部情報プロセス改革グループ 鈴鹿情報プロセス改革チームのチーム長を務める田中 俊毅氏は、下表のような5つのポイントを挙げる。

こうした経緯から着目したのが、「BIを活用した生産現場でのリアルタイムモニタリング」による課題解決だ。具体的な手段として、株式会社シムトップスの ConMasi-Reporter※3(以下、i-Reporter)とMotionBoardを連携させることで、その仕組みを実現することになった。これらのソリューションを選択した理由を、田中氏は次のように語る。

「データが発生してもシステムに入力されない限り、それはデータとしては認識されません。また、その出力結果は人間の行動に直結するものでなければなりません。こうしたリアルタイムモニタリングの課題は、生産現場の試行錯誤によってのみ解決されるものであり、システム部門を介して要件定義から始めるウォーターフォール型開発には向きません。生産現場自身が主体となって対応し、使いこなせる『ノンプログラミング』のツールであることが大前提でした」

※3 iPadを利用した、デジタル入力と手書きを融合させた記録・報告・閲覧ソリューション 

1.実績入力工数の削減
基幹システムで扱わないデータは項目や書式などが標準化されておらず、各ラインの独自の判断で作業者が日報に手書きしている。さらに、この手書き日報をあらためてExcelに入力し、1次加工、2次加工を行うなど煩雑な手間がかかっている。

2.品質レポート作成工数の削減
品質管理部は、標準化されてないデータも集計して経営月報を作成するため、毎週・毎月苦労して各ラインから上記のExcelデータをかき集めている。経営月報に記載するKPIのうち基幹システムで管理できているデータは1/5程度でしかなく、そもそもデータベース化が不十分である。

3.不良発生コストの削減
経営月報などのレポートは、“管理のための管理”という色合いが濃く、肝心の「品質向上のための視点」でのデータ活用が不十分。収集しているデータそのものも正確性が担保されているわけではない。

4.生産性の向上
設備の一時的な停止、段取り替え時間、手待ち時間などが発生しているが、短時間に済むがゆえに正確な実態をつかめていない。また、ムリ・ムダ・ムラを発見し、生産性を向上させる活動に人手がかかりすぎている。

5.トレーサビリティの確保
商品の出荷後に不良の流出や、仕入れ材料の材質不具合などが判明することがあるが、回収対象の商品をピンポイントで特定できない。したがって範囲を広げて良品まで回収せざるを得ず、回収・廃棄コストが膨らむ。

Part2.
生産現場におけるBI活用の実際

前述のソリューションの導入に向けたトライアルを経て、富士ゼロックスマニュファクチュアリングはi-ReporterとMotionBoardの導入を正式決定。まず、複合機部品の製造ラインで、2015年8月より本格的な活用を開始した。現在、複数のラインでのリアルタイムモニタリングに向けた取り組みを進めている過程にある。

1. 複合機部品製造ラインでの品質管理適用事例

Excelへのデータ手入力に費やす時間は毎日80分

複合機部品の同製造ラインには約30名の作業者が従事しており、各自が作成した日報を回収し、Excelに入力するという手間をかけていた。これに費やす時間は毎日約80分に及ぶ。入力作業そのものも非常に煩雑で、日報に書かれているすべての情報を反映しきれないほか、毎日1件以上の転記ミスも発生していた。

さらに、これらの入力後のデータをグラフ化し、発生した不良の原因を推定、現場を確認し、実際に対策を打つまでには2~3日のリードタイムを要する。「価値を生まない入力作業を削減すること、すばやく不良原因を特定して不良を作り続けないようにすることは、製造ラインでも大きな課題でした」と田中氏は語る。

具体的には同製造ラインでは、96個の製品をひとかたまりとして、4工程のバッチ作業を経て製造を行うとともに目視検査を実施している。しかし、先にも述べたようにその情報が集計されるのは早くても翌日であるため、不具合が改善されないまま20バッチ以上生産を続けることになってしまう。これを検査直後に見える化することで6バッチ程度で食い止める、すなわち不良発生の影響を最小限に抑えることが可能となる。

現場の創意工夫で、Excelへの手入力の工数は「0分」に

もっとも、現場が使いこなせないシステムでは意味がない。そこで同製造ラインでは、まずデータ入力に関して次のような工夫を凝らしてきたという。「全員が戸惑うことなくデータ入力を行えるように、これまで使ってきた紙の帳票レイアウトを、そっくりそのままiPad上に再現しました。当初、年配の作業者からは反対意見も多く寄せられたのですが、『意外と簡単ですぐに慣れることができた。ほとんどのデータ入力がワンタッチで済むので、むしろ以前よりも便利になった』と評価はすっかり好転しています」(鈴鹿事業所 第一製造部 製造1グループ M7チーム 竹尾 直人氏)

「不良情報の入力に関しても、発生頻度の高いものから順にリスト表示し、タッチ操作で選択できるようにしました。その後の集計も自動で行われます」(鈴鹿事業所 第一製造部 製造1グループ M7チーム 山下 宏樹氏)

「作業者は日報を作成する際に、氏名や担当工程、作業日、作業開始時間、終了時間などを手書きする必要がありましたが、これらもすべてワンタッチで入力が可能。加えて、使用する金型もバーコードで入力できるようにしました」(鈴鹿事業所 第一製造部 製造1グループ M7チーム 阪井 明夫氏)

こうしたダイレクト入力の徹底により、これまで毎日約80分を費やしていたExcelへの手入力の工数は0分へと、完全になくすことができたのである。

「不良を作り続けない仕組み」をダッシュボードで実現

一方、入力されたデータのアウトプットがどのように行われているのかというと、全体責任者および各ラインのリーダー、品質責任者のPCや製造現場の大型モニター上に、過去24時間分のデータが自動的に集計され、各工程の不良発生頻度が「赤(多発)」「黄(注意)」「青(良好)」のサインで示される。

「赤」や「黄」のアラートが表示された場合は、不良の原因をすばやく推定する必要があるが、ダッシュボード上にはその手がかりとなる様々なKPIの推移もリアルタイムで示される。これに基づいて、その場で対処すべきことを判断するのだ。

例えば、「作業者」によって不良の違いが表れているならば、該当者の作業手順に他者との違いがないのかを疑う。「金型」ごとに不良の違いが出ているのであれば、その金型の異常を疑う。「時間帯」によって不良の発生頻度が上昇しているのであれば、その間に何があったかを深掘りして調査する。

こうした地道な取り組みを繰り返すことにより、「従来に比べて最大15バッチ以上も前の工程で不具合の状況をつかみ、その場で対処することが可能となり、“不良を作り続けない仕組み”を実現することができました」と竹尾氏は語る。

一方、M7チームのメンバーは「生産現場と品質管理の間の“風通し”がずいぶん良くなりました」と口をそろえる。品質管理側からの指摘に対して生産現場では、「彼らは現場の状況がわかっていない」などと時として感情が先に立ち、ある種の敵対関係に陥ってしまうことがある。しかし、見える化された客観的なデータを間に挟めば、お互いに冷静に議論しあえるようになる。「ある作業手順をこのように変えてみたら、品質が○○%改善された」といったプロセスも両者が共有することで、同じ目的に立った協働意識が醸成されていくのである。「そうしたコミュニケーションを活性化する意味でも、MotionBoardは非常に重要な役割を果たしています」と山下氏は語る。

ただ、今回のリアルタイムモニタリングの仕組みによって特定の作業者に関する情報まで、すべてが洗いざらいになってしまうことには少なからず抵抗があったのも事実だ。この点については、鈴鹿事業所 第一製造部 製造一グループ M7チームのチーム長を務める小林 勝哉氏が、次のような方針を示している。

「ダッシュボード上で見える化されたデータを、作業者個人の責任追及のために利用する考えは一切ありません。そのラインで作業手順の統一が徹底されていたのかどうか、そもそも守るべき作業手順が明確に定められていたのかどうか、私たちが突き詰めるのは、あくまでも不良の原因なのです」

2. 電子基板製造ラインでの品質・生産性改善事例

「ラインよどみ」もリアルタイムに把握

コピー機や複合機などの電子基板の製造ラインではSMT(Surface Mount Technology:表面実装技術)や画像による検査など自動化が進んでいるものの、コネクタ部分のはんだ付けや目視検査など人手に頼っている部分も残っている。

検査の担当者は、約30秒に1枚のタクトタイムで製造ラインを流れてくる電子基板をチェックし、不良を発見した場合に「その箇所を特定し、マスキングテープで示し、不良内容を紙(手組修理シート)に記載して貼付する」という一連の作業を行い、修理工程に回す。時には不良が連続して流れてくるため、「作業者は不良位置のマスキングや不良モードを書くことで手いっぱいになることもあります」と田中氏は語る。

さらに大きな問題は、これらの紙でやりとりされる修理報告の扱いだ。その日の生産を終えたあと、まとめてデータ入力を行っており、システム上でラインごとの実績を把握できるのは、そのさらに2~4日後になってしまう。ある日の特定の時間帯に不良が連続したことがわかっても後の祭りで、詳細な不具合調査を行うことは困難だ。「モノはリアルタイムの1個流しであるにもかかわらず、情報はバッチ処理しかできません。作業者は情報を整理することに追われ、肝心の不具合解消のための時間をとれないという矛盾をはらんでいました」と田中氏は語る。

そこで、i-Reporterを用いて不良情報をiPadからダイレクトに入力できるようにするとともに、そのデータを最小限のタイムラグでMotionBoardの画面に表示する。

これにより、検査工程における作業時間のバラツキが見えるようになった。「不良が連続的に発生すると、検査待ち品が滞留して後ろの工程の作業者に手待ちが生じますが、こうした、いわゆる“ラインよどみ”をリアルタイムに把握でき分析の結果、よどみの原因を特定。よどみ改善として手組工程への品質フィードバックや検査判定ごとの仕組みを見直すことで、よどみがなくなり、ラインの残業時間が毎日約1時間も減りました。リアルタイムのデータが、生産性改善につながりました」と田中氏は語る。

BI活用を支援する情報プロセス改革チーム

生産現場をリアルタイムモニタリングするBI活用を技術面から支えているのが、需給管理部情報プロセス改革グループ 鈴鹿情報プロセス改革チームである。

これまでExcelを使って手作業で行っていたデータ入力を自動化し、すぐに生産現場で見える化することが今回のダッシュボード導入の狙いだが、ラインごとに要望は異なり、見たいデータやその切り口はどんどん変わっていく。このような現場それぞれの事情にあわせてダッシュボードの画面を作っていくことになる。

「ダッシュボード画面を作る作業を誰かに任せきりにするのではなく、現場にいる人たち自身が議論しあって試行錯誤しながら作ったほうが、結果的にはるかに短い時間で、自分たちの意に沿ったデザインや内容に仕上げられます。また、その後のメンテナンスや拡張も容易になります。私たちが行っているのは、勉強会の開催や現場と一緒に悩み、考えて、改善を支援することです」と語るのは、同チームの加藤 徳司氏である。この、いわゆるEUC(エンドユーザーコンピューティング)の取り組みに、ノンプログラミングで対応できるMotionBoardがマッチしたわけだ。

もっとも、現場の創意工夫だけではどうにもならないものもある。それは、見える化の元になるデータの整備である。そこで鈴鹿情報プロセス改革チームが生産現場と共同し、「足りないデータをそろえていく」という体制を敷いている。

「リアルタイムモニタリングの取り組みはまだ緒に就いたばかりですが、様々な生産現場の文化を、『紙からデジタルへ』と変えていきたいと考えています」と、加藤氏は今後に向けた意気込みを示す。

リアルタイムモニタリングの、その先

不良そのものを出さない“良品条件”を徹底追求する

リアルタイムモニタリングの仕組みは生産現場で様々な効果を上げ始めたが、これによって一連の取り組みがゴールに到達するわけではない。富士ゼロックスマニュファクチュアリングでは、その先にある真の改革を目指しているのである。古川 雅晴氏に今後の展望を伺った。

―生産現場のリアルタイムモニタリングを実践してこられた、現在の手ごたえをお聞かせください。

古川氏 確実に不良が少なくなってきたという効果を実感しています。しかしながら、まだまだ私たちの期待値には届いていません。

―どういうことでしょうか。

古川氏 不良を出さないための対処をタイムリーに行えるようになりましたが、それは何らかの不具合が発見されてからの話です。私たちが目指しているのは、「不良そのものを作らない」ことなのです。

私たちは「良品条件」と呼んでいますが、「これさえ守っていれば絶対に不良を作らない」という条件が必ずあるはずです。それが明らかになっていないために、不良が発生しているのです。作業工程による不具合、金型による不具合など、様々な不良の原因をリアルタイムモニタリングの仕組みの中に取り込んでいますが、それらが監視・管理すべきKPIとして本当に正しいのであれば、不良は出ないはずです。でも現実には、少なくなったとはいえ不良は出ています。私たちが気づいていない、認識できていない良品条件がまだまだ残っているということです。それを解き明かして、モニタリングし、不良を作らないことが、MotionBoardを生産現場で活用することの本当の目的です。

―とはいえ、不良をゼロにすることは容易なことでありませんよね。

古川氏 おっしゃるとおりです。これまで製造業では、ある程度の不良が発生するのは仕方がない、不良の発生率が許容範囲を下回っていれば良いとする考え方が支配的でした。私たちはそういった普通のモノづくりの壁を破って、一段上のレベルのモノづくりに飛躍したいのです。

―こうありたいという具体的なモデルはありますか。

古川氏 例えば電力会社です。私たちが事業や生活で供給を受けている日本国内の電力は、瞬電したり、電圧が低下したり、周波数が変動したりといった不良はまず起こりません。その裏側で電力会社がどんなことを行っているのかというと、発電所や変電所、送電などの現場の方々が右往左往しているわけではなく、中央でモニタリングして指令を送っているだけです。電気を作って送り届けるまでの途中のプロセスは非常に複雑なはずですが、良品条件が見極められ、しっかり管理されているからこそ、それが可能なのでしょうね。

私たちはモノづくり全体をそういう世界にしたいのです。いまの段階では理想論かもしれませんが、それをどこまで極められるかによって、今後のグローバル市場での競争力にも差が現れてくると考えています。

実際に経営面ではこの理想像に近いことが実践されており、決して夢物語ではないと実現性に確信を持って臨んでいます。

―経営面というのは、これまでDr.Sum EAをベースに取り組んでこられた、生産計画や調達業務、原価管理業務などの見える化、会計精度向上といった成果によるものですか。

古川氏 そうです。Dr.Sum EAを導入したのは2013年ですが、すでに情報プロセス改革チームによるサポートの手を離れ、様々な生産現場が主体となった活用が進んでいます。その結果、各製造課のマネージャーは、担当製品の出来高をその日のうちに把握することが可能となりました。さらに、その実績データは製造部、事業所へと自動的に上げられ集められていき、経営陣は全体の出来高を把握することができます。

こうした日々の数値を積み上げていけば、わざわざ集計し直すまでもなく自ずと四半期や年間の決算も見えてきます。弊社内では「締める」という言葉は、だんだん死語になってきているほどです。

いま現在の状況を遅延なくモニタリングしながら、経営をタイムリーに舵取りできるようになったことは、Dr.Sum EAによる最大の成果です。それと同じことを品質管理の世界でも実現すべくMotionBoardの活用を進めていきます。経営と生産現場のモニタリングを両立することができれば、それはまさに会社全体の見える化の実現です。

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