企業におけるFAXの利用状況
PCやスマートフォンが普及した現在、プライベートでFAXを利用しているという方はあまり多くないかもしれません。
総務省が公表している通信利用動向調査によれば、FAXの世帯保有状況は平成21年(2009年)の57.1%をピークに減少し、令和2年(2020年)には33.6%まで落ち込んでいます。
(参照:統計調査データ:通信利用動向調査:報告書及び統計表一覧(世帯編))
では、企業や官公庁でのFAX利用についてはどのような状況なのでしょうか。
FAX利用状況に関する調査
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が公表している調査結果によれば、FAXが現在もビジネスシーンで活用されていることが示されています。
この調査では、全国の20~69歳の会社員4,000人を対象に「勤務先でFAXを使用しているか」というアンケートを行い、約半数の49.7%が「日常的に使用している」もしくは「たまに使用している」と回答しています。
また、FAXで送受信している文書の種類については、報告・連絡に関する書類や受発注に関する書類が多数を占めていることが示されています。
このことから、企業での情報伝達や取引先とのやり取りにファックスがいまも現役で使われていることがわかります。
(参照:「ファクシミリの利用調査結果」を公開 ~ 今、ファクシミリはどのように使われていて、どのような期待があるかを探る ~ | CIAJ 一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会)
FAX廃止に関する政府の動き
2021年4月13日、当時の行政改革担当大臣である河野太郎氏が、記者会見のなかで「省庁におけるFAX利用の廃止」について言及しています。
河野氏はこの会見のなかで、「FAXがテレワークの阻害要因のひとつであり、FAXに替えて電子メールで業務を行うことは不可能ではない」という考えを示しました。
(参照:河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年4月13日 - 内閣府)
その後、内閣官房の行政改革推進本部は各省庁に対して、FAXの利用を原則廃止して電子メールに切り替えるよう通知を出します。
(参照:河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年6月15日 - 内閣府)
この通知を受けた各省庁からは「FAX廃止は難しい」という旨の回答が400件ほど寄せられたものの、外務省では2021年6月末時点で原則FAXの利用を廃止したことが報告されるなど、省庁でのFAX廃止に一定の進展があることがわかっています。
FAX廃止後の代替手段
「FAXを廃止した場合の代替手段」について気になっている方も多いのではないでしょうか。
次は、FAXに代わる情報伝達手段として、以下の3つをご紹介します。
- メール・チャットツール
- 電子帳票サービス
- インターネットFAX(e-FAX)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メール・チャットツール
FAXの代替手段の代表例が、メールやチャットツールです。
とくに、社内での業務連絡にFAXを利用している場合には、メールやチャットツールへの移行がもっとも手軽なFAX廃止の手段だと言えます。
ただし、機密情報が含まれる企業間取引文書などのやり取りに関しては、情報漏えいや改ざんなどのリスクに配慮し、然るべきセキュリティ対策を講じる必要があります。
電子帳票サービス
請求書や受発注に関する書類など、企業間取引にFAXを利用している場合には、電子帳票サービスの利用がおすすめです。
一口に電子帳票サービスと言ってもさまざまなサービスが存在し、特徴や搭載している機能も多種多様です。
たとえば、クラウド上のプラットフォームに文書データをアップロードするだけで取引先に配信することができるサービスや、OCR機能によって紙の文書をデータ化できるサービス、帳票だけでなく契約手続きもクラウド上で完結できるサービスなどがあります。
インターネットFAX(e-FAX)
電話回線を使用する従来型のFAXの代わりに、インターネットFAX(e-FAX)を導入するのもひとつの方法です。
インターネットFAXとは、インターネット回線を使って送受信を行うサービスのことで、送られてきたFAXをPDFなどのデータとして、PCやスマートフォンなどのデバイス上で確認することができます。また、自社からPCやスマートフォンからデータとして送信し、相手方のFAXで紙として出力することも可能です。
FAX廃止で得られるメリットとは?
次は、FAXを廃止することによって得られるメリットとして、以下の5点をご紹介します。
- ペーパーレス化の促進ができる
- 業務効率化が進む
- DX推進基盤の構築ができる
- テレワークへの対応が簡単にできる
- セキュリティ・ガバナンスの強化
各メリットについて、詳しく確認していきましょう。
ペーパーレス化の促進
FAX廃止の大きなメリットとして、ペーパーレスが促進される点を挙げることができます。
後述する業務効率化やDXだけでなく、近年はSDGsの観点でもペーパーレス化の重要性が高まってきています。
FAXを使った情報伝達では、送る側・受け取る側の双方で紙を使用しなければならず、送受信する文書の種類によっては一定期間の保存も必要になります。
FAXを廃止して情報伝達をデジタル化することによって、ペーパーレス化が促進するだけでなく、印刷コストや設備維持・メンテナンスのコストも削減することができるでしょう。
業務効率化
FAXを廃止することで、業務効率化の効果も期待できます。
FAXを使った業務には独自のマナーが存在し、情報伝達という本来の目的とは関係のない作業が発生しがちです。
たとえば、「FAX送信前の連絡」や「送り状の作成」といった作業が慣例となっているほか、「大量の書類を一度に送るべきではない」といったマナーも見受けられます。
情報伝達手段をFAXからデジタルに切り替えることで、FAX特有の非効率な業務から解放され、業務効率化を促進することができるでしょう。
DX推進基盤の構築
FAX廃止は、DX推進の基盤づくりとしても有効です。
DXの推進にはデータ活用が不可欠ですが、FAXでやり取りされる紙文書の情報は、そのままではデータとして活用することができません。
一方、情報伝達手段をデジタル化することで、FAXでやり取りしていた紙文書の情報をデータとして扱うことができます。
RPAツールによる定型作業の自動化や、BIツールによる情報の可視化などが可能になり、DXを効率的に推進していくことができるでしょう。
テレワークへの対応
FAX廃止は、テレワークの促進という面でも効果的です。
業務の中でFAXを利用する場合、オフィスにいなければFAXを送ることができないだけでなく、取引先などから送られてくるFAXを確認することもできません。
FAXを廃止することで、オフィスにいなくても円滑に情報伝達を行うことが可能になり、テレワークに対応することが可能になります。
セキュリティ・ガバナンスの強化
FAXを廃止することで、セキュリティ・ガバナンスの強化につなげることも可能です。
FAXで送られてきた文書はオフィスにいる誰もが閲覧できてしまうため、担当者以外の人物に盗み見されてしまったり、無断で持ち出されてしまうリスクを否定できません。
一方、データによる情報伝達であれば、閲覧権限を設定して個別に送信することができ、タイムスタンプや証跡管理機能などによって改ざんを防止することも可能です。
FAX廃止を推進する際のポイント
続いて、FAX廃止を推進する際のポイントとして、以下の3つをご紹介します。
- 取引先への配慮が不可欠
- 段階的に代替手段に移行
- 電子帳簿保存法への対応
取引先への配慮が不可欠
企業間でFAXのやり取りをしている場合、自社の都合だけでFAX廃止を推し進めるのはNGです。
取引先の通信環境や業務フローによっては、FAXでなければ対応できないというケースも考えられます。
まずは、FAX廃止を検討していることを伝え、取引先の視点でのメリットや取引先の負担に配慮した代替手段を提案することが大切です。
段階的に代替手段に移行
先述したように、FAX廃止は自社の意向だけで進められるものではないため、段階的に代替手段に移行していくことが大切です。
たとえば、社内の業務連絡をメールやチャットツールに切り替える、一部の取引先から電子帳票サービスでの送受信に切り替える、といった具合です。
また、取引先からFAXで送られてくる文書をOCR(光学的文字認識)でデータ化するのも、FAX廃止に向けた有効な施策だと言えます。
電子帳簿保存法への対応
FAXでのやり取りを廃止して、請求書などの国税関係帳簿書類をデータ化するのであれば、電子帳簿保存法への対応が必要になります。
電子帳簿保存法とは、紙での保存が原則とされている国税関係帳簿書類の電子保存を認める法律のこと。
電子帳簿保存法に対応しつつFAX廃止を進めるのであれば、JIIMA認証を取得している電子帳票サービスの利用がおすすめです。
JIIMA認証とは、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による認証制度で、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトウェアに対して付与されます。
JIIMA認証を取得しているサービスであれば、電子帳簿保存法への対応とFAX廃止を同時に実現することができるでしょう。
ペーパーレスを促進するソリューション「invoiceAgent」
FAX廃止に向けた具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」をご紹介します。
「invoiceAgent」はJIIMA認証を取得しているため、電子帳簿保存法の法的要件を満たしつつFAXでやり取りしていた紙の文書を電子化することが可能です。
企業間取引の電子化「invoiceAgent 電子取引」
「invoiceAgent 電子取引」は、受発注や請求などの企業間取引を電子化するソリューションです。
帳票のPDFデータを「invoiceAgent 電子取引」上にアップロードするだけで、取引先へと配信することができ、取引先から返信される関連帳票も「invoiceAgent 電子取引」上で受け取り可能。
また、書面の郵送サービスも利用すれば、紙と電子のハイブリッド運用を実現可能。まずは一部の取引先からスモールスタートしたい場合にもおすすめです。
発注書(注文書)や請求書といった企業間取引文書をFAXでやり取りしている場合には、「invoiceAgent 電子取引」がおすすめです。
紙文書のデータ化「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙の文書をデータ化するソリューションです。
高精度な5つのOCRエンジンと自動補正機能により、紙の文書を高い認識率でデータ化することが可能です。
まずはFAXで受信する文書のペーパーレス化から始めたい場合や、過去にFAXで受信して紙のまま保管している文書を電子化したい場合には、FAX廃止の第一歩として「invoiceAgent AI OCR」をおすすめします。
文書管理を一元化「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、電子化した文書の一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent AI OCR」や他システムで出力した文書データをまとめて取り込み、自動で仕分け保存することが可能。
さらに、文書の保存期間にあわせた自動削除機能や、証跡管理機能を備えているため、文書のライフサイクルマネジメントを効率化します。
FAXでやり取りしていた文書をデータ化し、効率的に管理していきたいと考えている場合には、「invoiceAgent 文書管理」の活用をおすすめします。
契約業務の電子化「invoiceAgent 電子契約」
「invoiceAgent 電子契約」は、契約手続きを電子化するソリューションです。
法律上、FAXでも契約を締結することは可能ですが、トラブルに発展してしまった際の証拠力は十分とは言えません。
「invoiceAgent 電子契約」は、面倒な契約手続きをクラウド上で完結できるため契約の迅速化を実現。さらに、ウイングアーク1stが立会人となって電子署名とタイムスタンプを付与し、契約の証拠力を担保します。
まとめ
今回は、FAXの利用状況や代替手段、FAX廃止のメリットや推進のポイントをご紹介しました。
日本の商習慣を支えてきたFAX文化ですが、業務効率化やテレワークへの対応、コンプライアンスなどの観点から、FAX廃止の流れは今後ますます加速することが予想されます。
FAX業務からの脱却を考えている企業は、今回ご紹介した情報も参考に「invoiceAgent」による脱FAXに着手してみてはいかがでしょうか。