そもそも電子取引における紙保存措置とは
まずは「電子取引における紙保存措置」が具体的にどういうものか、3つのステップで解説していきます。
ステップ1:電子帳簿保存法3つのカテゴリを理解しよう
電子帳簿保存法は大きく分けると、3つのカテゴリに分けられます。
- 電子で作成した帳簿書類を電子データのまま保存
- 紙の帳簿書類を電子化して保存(スキャナ保存)
- 電子取引における取引情報保存
その1つが今回の改正で注目を集めている電子取引です。電子取引時の取引情報の保存は、義務要件となっていることに注意が必要です。
ステップ2:電子取引の具体例を知る
では、電子取引とは具体的にどんなものがあるでしょうか。
いわゆる、データのやりとりで成立する取引のことを指しますが、電子帳簿保存法では主に以下の4つの取引を電子取引の具体例として案内しています。
- EDI(電子データ交換)
- インターネット
- 電子メール
- FAX
インターネットとは、例えば、ECサイトで物品を購入して、そこからPDF等で請求書をダウンロードした場合や、Webで取引先に請求書を配信するなどが当てはまります。また、FAXも紙のFAXは電子取引に当てはまりませんが、インターネットFAXやFAXサーバーを利用した電子FAXでのやり取りは電子取引に該当します。
ステップ3:電子取引情報の保存要件を確認する
では、ステップ2で挙げた4つの取引をしていれば、電子帳簿保存法の電子取引の要件を満たすことができるのでしょうか。
答えは「ノー」です。電子帳簿保存法では電子でやり取りされた取引情報を電子帳簿保存法の要件に合った形で保存する必要があります。
|電子帳簿保存法の保存要件:電子取引(国税関係書類以外の書類)
電子取引で電子保存する際の保存要件のポイントは以下2つです。
- 真実性の確保に下記3つの要件のどれか一つを満たす必要がある
- タイムスタンプの付与、且つ、取引データ保存者情報の確認
- 訂正削除が考慮されたシステムの利用
- 電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程の備付けと運用
- 可視性の確保として、取引情報を探すための検索機能が必要
電子取引でやりとりしている情報(請求書や領収書など)の保存が上記要件を満たしていない場合、現行の電子帳簿保存法では、情報(請求書や領収書など)を紙に出力して保存することが認められていました。
しかし、「電子取引における紙保存措置廃止」が適用されると、電子で送受信した情報(請求書や領収書など)は、電子帳簿保存法の保存要件を満たした上で電子保存しなければならないということになります。
極端なことを言えば、電子帳簿保存法の保存要件を満たさない場合、取引先との取引は電子取引をやめて、郵送や手渡しなど紙でのやり取りに戻さなければならなくなります。
2021年12月に公表された令和4年度税制改正大綱により、2022年1月より適用予定だった「電子取引における電子保存の義務化」について、2年間の猶予が認められることが発表されました。
以下の条件を満たす場合には、2年間の猶予が認められます。
- 所轄税務署長がやむを得ない事情があると認める
- 保存すべき電子データを書面に出力して保存し、税務調査等の際に提示または提出ができるようにしている
なお、やむを得ない事情の認定については、所轄税務署長への申請手続き等は不要です。
紙保存が認められる猶予期間は、2023年12月31日までです。
2年間の猶予ができたからこそ、現在電子取引の取引情報を紙で出力し、書面で保存している場合には、運用の見直しを進めましょう。
パターン別にみる「電子取引における紙保存措置廃止」NG例
次に、具体的な電子取引のパターン別に、今回の法改正でNGとなる例をみていきましょう。
上図の通り、FAXを紙で受け取った受信側と、FAXを紙で送った送信側以外は全て紙保管が認められなくなります。
FAXでも、インターネットFAXやFAXサーバーを利用した電子FAXでのやり取りの場合は、電子で送受信した控えを紙で保存することはNGとなりますので注意が必要です。
繰り返しとなりますが、この措置は2024年1月1日の電子取引から全て適用になりますので、それまでに自社の運用を見直しておきましょう。
電子取引における改正電子帳簿保存法対応のポイント
これまで、電子帳簿保存法の改正によりNGとなる運用例についてみてきました。
現時点でまだ改正電子帳簿保存法に準拠した保存を整備していない場合でも、文書の真実性確保のための「タイムスタンプ」と可視性担保のための「検索項目(取引年月日、金額、取引先)」を付与することで、2022年1月以降の電子取引要件に対応することができます。
今すぐ簡単に対応ができる「電子帳簿保存法対応スイート:invoiceAgent」
電子取引要件への対応は、ウイングアーク1stが提供する文書管理ソリューション「invoiceAgent 文書管理」をうまく活用することで、簡単に行うことができます。
電子取引で受け取った請求書を例として、対応方法を解説していきます。
※2022年6月より「SPA/SPA Cloud」は「invoiceAgent 文書管理」「invoiceAgent AI OCR」に名称を変更しました。
ポイントは真実性の確保となるタイムスタンプの付与を文書管理ソリューションの「invoiceAgent 文書管理」で行い、検索性の確保は基幹システムや会計システムを利用するといったように、複数のシステムで対応することです。
〇請求処理の手順
- メールなど電子で受け取った請求書を見て、基幹システムにデータを登録します。
※取引先名、取引年月日、取引金額を登録 - 1.のデータ登録時に発行される伝票番号を取得します。
- invoiceAgent 文書管理に文書を保管します。
※invoiceAgent 文書管理では保管した文書に自動でタイムスタンプを付与、または、訂正削除の防止に関する規定の整備により真実性を確保することができます。 - 2.で取得した伝票番号を3.でinvoiceAgent 文書管理に保管した文書の属性(カスタムプロパティ)に登録します。
〇請求書検索の手順
- 基幹システムでデータを検索します。
※検索項目は取引先名、取引年月日、取引金額 - 1.でヒットしたデータの伝票番号を取得します。
- 伝票番号でinvoiceAgent 文書管理に保管した請求書を検索します。
いかがでしょうか。上記の運用なら、今の請求処理の業務をあまり変更することなく、電子取引における紙保存措置廃止への対応を行うことができます。
危急に対応しなければならない法対応という壁を業務効率化の推進に変える大きなチャンスにもなるでしょう。
まとめ
今回は、2022年1月より施行される電子帳簿保存法改正において、特に注意すべき「電子取引における紙保存措置の廃止」について解説しながら、今すぐできる対応方法をご紹介しました。
ウイングアーク1stが提供する文書管理ソリューション「invoiceAgent 文書管理」は、JIIMA認証を取得している、電子帳簿保存法に対応するための法的要件を満たしているソフトウェアです。
AI OCRによる文書の電子化や文書管理をワンストップで行うことができ、電子帳簿保存法へのスムーズな対応および業務効率化を実現します。
電子帳簿保存法への対応を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。