ミルシート(鋼材検査証明書)とは?
ミルシートとは、鋼材の材質や品質を証明するための書類のことです。
工場や製作所を意味する「ミル(mill)」と、用紙や印刷物を意味する「シート(sheet)」を組み合わせた和製英語で、「鋼材検査証明書」とも呼ばれます。
一般的に、ミルシートは鋼材メーカーが発行し、注文者はミルシートを確認して設計上の基準や規格をクリアしているかどうかを判断します。
基本的に、ミルシートに記載された製造番号(ロット番号)と一致する現物がある限り、ミルシートの有効性は失われません。
過去に納品した鋼材のミルシートについて、発注者から問い合わせや再発行を依頼されるケースもあるため、発行したミルシートは適切に保管しておく必要があります。
ミルシートの記載内容
ミルシートには決まった書式が存在しないため、メーカー独自に作成したミルシートを使用しているケースが一般的です。
とはいえ、ミルシートの記載項目はある程度共通しており、主な項目として以下を挙げることができます。
- 発行元の名称…ミルシートの発行元の名称として、鋼材を製造した鉄鋼メーカー名を記載します。
- 注文者の名称…注文者の名称として、鋼材を発注した施主や商社などの流通業者の名称を記載します。
- 最終需要者…工事を受注したゼネコンなど、最終的な需要者を記載します。
- 各管理番号…問い合わせや再発行依頼に対応するため、証明書番号や伝票番号、契約番号など、各管理番号を記載します。
- 製品情報…製造番号(ロット番号)やJIS適合コード、品名、寸法、数量など、製品に関する基本情報を記載します。
- 検査方法…鋼材の化学成分や機械的性質に関する検査方法を記載します。
- 化学成分…「炭素(C)」や「ケイ素(Si)」、「マンガン(Mn)」、「リン(P)」、「硫黄(S)」など、化学成分の上限値と実測値を記載します。
- 機械的性質…引張強さ、降伏点または耐力、伸び、硬度など、機械的性質を記載します。
類似用語との違い
ミルシート(鋼材検査証明書)と混同されがちな書類に、「材料証明書」や「検査成績書」があります。
ここでは、これらの書類の意味やミルシートとの違いを確認していきましょう。
材料証明書との違い
材料証明書とは、ゴム・化学薬品・鋼材・木材など、材料全般の材質・品質を証明するための書類です。
つまり、鋼材の材質・品質を証明するミルシートは、材料証明書の一種だと言えます。
鋼材に関するやり取りで材料証明書の提出を求められた場合、一般的にはミルシートを提出すれば問題ありません。
検査成績書との違い
検査成績書は品質管理書類の一種です。
ミルシートは製品の材料・素材となる鋼材の品質を証明する役割を果たすのに対し、検査成績書は加工済みの製品の品質を証明する点が違いだといえます。
電子化でミルシートの管理が効率化!
従来、ミルシートは紙媒体で管理する方法が一般的でしたが、検索性・閲覧性の低さや、管理工数や印刷・郵送コストの負担、セキュリティの面で課題を感じている企業は少なくありませんでした。
そうしたなか、近年はOCRソフトで紙のミルシートをデータ化したり、文書管理システムを用いて電子的にミルシートを管理したりといった企業が増加しつつあります。
次は、ミルシートを電子化することのメリットとして、以下の4点をご紹介します。
- 業務効率化
- 検索性の向上
- 印刷・郵送コストの削減
- セキュリティの強化
業務効率化
ミルシートの管理を電子化することで、業務効率を高めることが可能です。
紙媒体でミルシートを運用している場合、連続帳票として出力されるミルシートを一通ずつ切り離して仕分けを行う手間や、納品先や別拠点に郵送する際の封入封緘作業などが発生します。
これらを手作業で行っていると、多くの工数がかかってしまうだけでなく、人的ミスも起こりやすくなります。
一方、ミルシートを電子化することで人手による作業を削減することができ、納品先への送付や拠点間での共有も即座に行うことが可能になります。
そのため、紙媒体よりも効率的に業務を行うことができ、作業工数を削減することができるでしょう。
検索性の向上
ミルシートを電子化することで、検索性の向上が期待できます。
鋼材メーカーは、商品の納品時だけでなく、発注者から求められた際にミルシートを発行しなければなりません。
そのため、過去に発行したミルシートに関する問い合わせや再発行依頼があった際、大量の書類のなかから該当のミルシートを探し出す手間が発生してしまいます。
一方で、ミルシートをデータ化していれば速やかに該当のファイルを検索することが可能です。問い合わせや再発行依頼にも迅速に対応することができ、顧客サービスの向上にもつながります。
印刷・郵送コストの削減
ミルシートを電子化することで、コスト削減につなげることも可能です。
ミルシートを紙媒体で運用している場合、紙代やインク代などの印刷コスト、取引先に郵送する際の配送コストが発生します。
さらに、ミルシートの控えを保管しておくためのファイルやキャビネット、保管庫などの設備・備品コストも発生します。
電子化されたミルシートであれば、印刷コストや配送コスト、保管のための設備・備品コストを削減することができるほか、先述した業務効率化や検索性向上の効果によって人的コストを削減することもできるでしょう。
ガバナンスの強化
ミルシートの管理では、偽造や改ざんを防ぐためのセキュリティ対策が必要です。
しかし、紙媒体でミルシートを管理している場合、第三者による閲覧や持ち出しを防ぐための物理的な対策を講じる必要があり、管理ルールの徹底も不可欠です。
一方、ミルシートの管理を電子化することで、閲覧権限を個別に設定したり、システムログで証跡を記録することで改ざんを防止・検知することが可能になります。
これにより、紙媒体でのミルシートの管理よりも強固なガバナンスを構築することができるでしょう。
ミルシートの電子化・一元管理なら「invoiceAgent」
次は、ミルシートの電子化・一元管理を実現するソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」を紹介します。
紙のミルシートのデータ化なら「invoiceAgent AI OCR」
「invoiceAgent AI OCR」は、紙文書のデータ化を実現するソリューションです。
高精度な5つのOCR/AI OCRエンジンを搭載しているほか、読み取り画像の歪みや傾きなどを自動補正する機能を備えています。
読み取り画像の特徴にあわせて適切なOCR/AI OCRエンジンを選択でき、1つの読み取り項目に対して複数のOCR/AI OCRエンジン処理を行うことも可能です。
これらの特徴により、紙媒体で保存しているミルシートを高い文字認識率でデータ化することができます。
ミルシートの一元管理を実現する「invoiceAgent 文書管理」
「invoiceAgent 文書管理」は、文書データの一元管理を実現するソリューションです。
「invoiceAgent」でデータ化した文書はもちろん、他システムで作成・出力した文書もまとめて取り込み、指定したルールに基づき自動で仕分け・保存を実行します。
高度な検索機能が備わっているため、必要に応じて保存データを速やかに参照・出力することが可能です。
また、保存期間に応じた自動削除機能や改ざんの防止・検知に役立つ証跡管理機能も備わっています。
これらの特徴により、ミルシートを含むあらゆる文書データを効率的かつ安全に一元管理することができるでしょう。
「invoiceAgent」でミルシートの管理を効率化した事例
最後に、「invoiceAgent」を活用してミルシートの管理を効率化した企業事例をご紹介します。
ミルシートなどの帳票電子化で月間50時間の工数削減(合同製鐵)
鉄筋用棒鋼や各種線材、構造用棒鋼など幅広い製品ラインナップを展開する合同製鐵株式会社は、「invoiceAgent」を活用してミルシートなどの紙帳票を電子化することに成功しました。
同社では従来、顧客に送付するミルシートなどを複写式の連続帳票に印刷して運用しており、一通ずつ切り離して仕分けしたり、控えを保存したりといった煩雑な手作業が発生していました。
また、発行したミルシートは各工場で保存していたため、顧客から問い合わせがあった際、回答までに多くの時間を要していました。
そこで同社は、手作業による工数削減と、問い合わせ対応の迅速化によるサービス向上を図り、「invoiceAgent 文書管理」を活用した帳票の電子化に着手しました。
「invoiceAgent 文書管理」の導入後、紙帳票に関わる手作業がなくなったことで月間50時間程度の工数削減に成功。
さらに、検索機能で瞬時に必要なファイルを参照・出力することができるようになり、顧客からの問い合わせの対応時間が大幅に短縮しました。
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合同製鐵株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
ミルシートのWeb開示による顧客サービス向上で“攻めのDX”を展開(ニッコー)
主力製品である炭素鋼鋼管やステンレス鋼管をはじめとした鋼管専門問屋である株式会社ニッコーは、ミルシートをWeb開示するための仕組みを「invoiceAgent」で構築しました。
「攻めのDX」による持続的成長を目指す同社では、ウイングアーク1stのデータ基盤ソリューション「Dr.Sum」を導入し、かねてよりBI活用の取り組みを進めていました。
そして、同社が次に取り組んだのが顧客サービスの向上でした。
従来、取引先に送付するミルシートや請求書、納品書などの帳票は紙で運用していましたが、これらの帳票をWeb開示することで顧客の利便性を高めていく方針が示されました。
そこで、ウイングアーク1stの帳票基盤ソリューション「SVF」と文書管理ソリューション「invoiceAgent 文書管理」を活用して帳票をWeb開示する仕組みを構築することを2019年末に決定。
2020年11月時点でWeb開示システムの構築作業を終えており、印刷する紙の量が半減し、帳票の仕分けや発送といった作業の手間が軽減したほか、郵送コストの削減にも効果が現れています。
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株式会社ニッコーのinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、鋼材を扱う企業にとって非常に重要なミルシートに焦点を当て、基礎知識や電子化のメリット、電子化を実現するソリューションをご紹介しました。
ミルシートは鋼材の材質・品質を証明する重要な役割を担っており、問い合わせや再発行依頼に応じるためにも適切に管理する必要があります。
そして、ミルシートをデータ化して電子的に管理することで、業務効率化や検索性向上、コスト削減、ガバナンスの強化など、さまざまなメリットが期待できます。
現在ミルシートを紙媒体で運用・管理している企業は、「invoiceAgent」によるミルシートの電子化を検討してみてはいかがでしょうか。