導入事例

特定非営利活動法人 フローレンス

特定非営利活動法人 フローレンス

管理会計の効率化によりスピーディな経営意思決定をサポート
一人ひとりが自ら考え、行動できる組織へ

特定非営利活動法人 フローレンス
業種

その他

「病児保育問題」「待機児童問題」など、親子の笑顔をさまたげる社会問題の解決を目指す特定非営利活動法人フローレンス(以下、フローレンス)。2004年に設立され、約700名( 2021年3月時点)のスタッフを中心に数々の事業を手掛けている。2019年には、ウイングアークからの寄贈により「Dr.Sum」「MotionBoard」を導入。リアルタイムで業績を分析できるようになり、スピーディな経営意思決定をサポートできる財務チームをつくり上げた。

導入背景

組織規模の拡大に伴い、各事業部の業務管理が煩雑化。とくに、多くのスタッフの人件費管理をExcel上で行っていたためブラックボックス化が進み、会計システムの刷新を検討していた。

課題
  • 組織拡大に伴い、Excelでは人件費の管理ができなくなってきていた
  • 帳簿や予算の情報が散在し、予実管理に多大な労力がかかっていた
解決策導入ポイント
  • 帳簿データと予算・見込みデータを一元化
  • 給与データと社員情報をDB化。
効果
  • 各事業の業績管理の工数削減、働き方の変革を促進。
  • リアルタイムで財務数値を反映することで、スピーディな経営意思決定をサポート

「親子の困りごと」を解決し、「新しいあたりまえ」を創造する


「子どもが熱を出して保育園に行けず、会社を休んで看病したら、クビになった」


 フローレンスの代表を務める駒崎 弘樹氏は、ベビーシッターだった母親から、とある双子の母親の話を聞いた。一般的に、子どもが37度5分以上の熱を出すと保育園には預けられない。そのため、親は仕事を休まざるを得なくなり、子育てと仕事の両立を阻む大きな壁となっていたのだ。この話をきっかけに、親子を取り巻く社会問題の解決を目指して設立されたのがフローレンスだ。


 フローレンスは、2005年より日本初である訪問型病児保育の提供を開始。設立以来、無事故かつ安全安心な病児保育を提供し続けてきた。親が働きながら子育てをすることが当たり前になった昨今において、子育てと仕事の両立が可能な社会実現の一助を担っている。


 フローレンスでは現在「病児保育」以外にも、「待機児童問題」「障害児保育問題」など、様々な社会問題を解決する事業を展開。同団体で広報を担当している松井 香織氏は、「親子の困りごと」から事業は生まれ、それを解決するべく「新しいあたりまえ」を創造してきたと話す。


 「わたしたちは『親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する』というミッションのもと、ひとつひとつの問題に解を見つけては実践し、育ててきました。そして、より多くの親子をサポートできるよう、行政とともに制度に反映させることで、その支援を全国へ広げていっています」(松井氏)


事業の急成長に耐えうるシステムへの刷新を検討


 事業が急成長し、組織規模が拡大していくにつれて、課題となったのが各事業部の業績管理である。当時はExcelで予算や見込みを作成していたため、報告書を作成するための帳簿との突合作業に多大な労力がかかっていた。とくに、600人を超えるスタッフの人件費の管理については、ブラックボックス化していたという。当時、経理チームとシステムチームのマネージャーとしてDr.Sumの導入に携わった陣内 一喜氏は、次のように振り返る。


 「組織が拡大し、事業もどんどん増えていく中、管理会計の精度も高めていかなければいけなかったため、かなり厳しい状況にありました。当時利用していた別のシステムでは対応できない部分もあり、複数システムのデータを統合できる仕組みへ切り替えを検討していたんです。そんなタイミングで、Dr.SumとMotionBoardの寄付のお話をいただきました」(陣内氏)


 管理会計の効率化は、経営意思決定にも大きな影響を及ぼす。フローレンスは、データベースの構築による業績と人件費の可視化と、各事業の業績管理の効率化を目指し、Dr.SumおよびMotionBoardを2019年に導入した。現在は主に、予実管理と人件費管理に活用している。


財務数値をオンタイムで開示することにより、スピーディな経営判断をサポート


 Dr.SumとMotionBoardの導入後、「劇的にチームの状況が変わった」と語るのは、財務経理担当としてサブマネージャーを務める高橋 未央氏。導入以前は、会計帳簿を見ながら多くの工数をかけてExcelに数値をまとめていたため、報告書として出すまでに時間がかかっていたという。


 「以前は、経営会議で『この数字ってどのタイミングの数字?』『この数値は、例の件を反映させてある?』といった会話が交わされていました。事業が進んでいくスピードと、数値が見える化されるまでに、タイムラグがあったんです。Dr.SumとMotionBoardの導入後は、各数値をスピーディに見える化できるようになりました。“今、各事業がどういう状況にあるのか”が、すぐに分かる状態になり、業務の質が大幅に向上したと思っています」(高橋氏)


 その変化は、経営陣から見ても明らかだったようだ。それを実感したのは、長年財務を担当していた理事がDr.SumとMotionBoardの導入前に退任し、2年の期間をあけて、再び着任したときだった。


 「財務担当の理事から、『数値がわかりやすく可視化されるようになったね』とお褒めの言葉をいただきました。財務数値が左右するのは、経営の意思決定だけではありません。我々のようなNPOは寄付者様をはじめたくさんのステークホルダーがいるので、そういった方々に情報開示をしていくことは大事な業務のひとつだと思っています。こうして財務数値をきちんと見える化、かつオンタイムで開示ができるような状況が整ったことは、すごく大きな変化です」(高橋氏)


 リアルタイムで財務数値の確認ができるようになると、より細やかな意思決定や業績管理が可能になる。導入を担当した陣内氏は、管理会計の実現により、よりスピーディな経営意思決定をサポートできるようになったと振り返る。


 「今では『経理財務チーム』と言っていますが、以前は『経理チーム』でした。今回Dr.SumとMotionBoardを導入したことによって、安定した業務運用を成立させ、経営陣に意味のある情報を提示できるようになりました。私の役割は経理マネージャーからシステム系のマネージャーに変わりましたが、違う立場から見ても、以前に増して経営陣から頼りにされていると感じています」(陣内氏)



一人ひとりのメンバーが目的に沿った意思決定をできる組織へ


 フローレンスは、数値の情報開示を経営陣や管理職のみに限定するのではなく、すべてのスタッフに開示することで、組織文化の形成にも活用していきたいと話す。


 こうした点は、「ティール組織」と呼ばれる概念にも通じるところがあるかもしれない。ティール組織とは、組織の目的に沿って自ら意思決定を行い、行動し、進化していく組織のこと。トップダウンで意思決定が行われるヒエラルキー組織と違い、一人ひとりのメンバーに一定の意思決定権があるのだ。


 「各々が目的に沿った意思決定を自ら下していくためには、財務上の数値が重要なツールになると考えています。MotionBoardでは、とても見やすい形でデータを表示することができます。この機能を活用して、今までは数値を見る機会が少なかった保育園や保育者のスタッフたちにも数値を開示していけるよう、プロジェクトをスタートさせようとしているところです」(高橋氏)


ソーシャルセクター×DXの可能性


 フローレンスは2020年の4月から「新型コロナ子ども緊急支援プロジェクト」という取り組みで、様々なかたちで緊急支援を実施してきた。その中で、従来型のIT活用における新たな課題も見えてきたという。


 「今、お住まいの地域に既にある社会資源に自ら繋がれる方もいらっしゃれば、そうでない方もいらっしゃる、ということが今回の取り組みで見えてきました。支援が必要であるにもかかわらず、それが届いていない人たちに対して、いかに利用者目線でアウトリーチできるか。そうしたことを考える上で、IT活用だけでは限界があります。利用者目線からITの価値を問い直すこと、すなわちソーシャルセクターのDXが重要だと思っています」(松井氏)


 文化的な背景や寄附金で運営するという特性上、ソーシャルセクターにおける「ITへの投資」はまだまだ一般的ではないかもしれない。しかし、業務の効率化やデータ分析をITの力で推し進め、それを利用者とっての価値に換えていくことで確実に社会問題解決は加速するはずだ。近年はSTO(ソーシャル・テクノロジー・オフィサー)と呼ばれる立場もあるように、ソーシャルセクターとしてのDXを追求することで、社会に与えるインパクトはより大きくなっていくはずである。


 デジタル化になかなか取り組めていないソーシャルセクターも多い中、積極的にデータ活用を取り入れているフローレンス。ウイングアークも同団体のサポートを通じて、「ソーシャルセクター×DX」の可能性を広げ続けていきたい。


Company Profile

特定非営利活動法人 フローレンス

設立:2004年4月
所在地:東京都千代田区
事業内容:訪問型病児保育事業、小規模保育事業 等
https://florence.or.jp/

写真右より
特定非営利活動法人 フローレンス(認定NPO法人 フローレンス)
働き方革命事業部 仕組み革命担当 サブマネージャー
陣内 一喜氏

働き方革命事業部 経理財務担当 サブマネージャー
高橋 未央氏

みんなで社会変革事業部 広報担当 サブマネージャー
松井 香織氏

導入製品

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