
客観的事実に基づく判断を行うために学生情報の分析環境を整備
アメリカ人宣教師であり医師であるJ.C.ヘボンが開設した私立学校「ヘボン塾」を起源とする明治学院は、「キリスト教に基づく人格教育」を建学の精神とし、昨年(2013年)で創立150周年を迎えた。大学は文系学部6学部を擁し、同学の学生数は約12,000人。情報システム関係のサーバー管理やシステム運用保守などは「情報センター」が担当しているが、全学的なIT利用の方針策定などは大学執行部(学長を議長とする運営機関)の直下に位置する「総合企画室」が担当している。
「総合企画室は、各種の調査や執行部への情報提供・提案などを担当し、大学運営の方針やビジョンの策定における実務を行います。今回のデータ分析基盤は、『客観的事実に基づく判断を行うために、学生情報を分析するための環境を整備したい』という執行部からの依頼が出発点でした。客観的事実を知ることで、それに基づいた教育方法の改善や制度の見直しが可能になり、結果として学生の満足度の向上にもつなげられると考えました」と、同室課長の小川 善継氏は導入の背景を説明する。
製品選定から3ヶ月で稼働BIに関する経験やノウハウを評価
同学ではまず、学内のデータベースについて調査を行った。当初は、「学生ポータル」をベースに構築しようと考えていたが、調査の結果、全学的に利用するには情報が不十分だった。そこで、教務システムや学生用システム、その他の部門のデータを統合する新しい分析用データベースを作ることにした。
学生の属性情報をベースにデータベースの設計図を作成し、それに基づいた提案を複数社から求めた結果、最終的にウイングアークの提案を採用した。選定の理由について導入プロジェクトを主導した同課の高野 真氏は、次のように話す。
「製品選定から約3ヶ月後の2013年4月には稼働させたかったので、ゼロからツールを使って作り込むよりも、パッケージ製品を選びコンサルティングの力を借りて構築するのが最善と考えました。ウイングアークの製品は、パッケージ製品としての成熟度が高く導入実績も多い。また、製品の背後にコンサルタントの豊富な知識や経験、サポート力があるのを感じました。全学規模でのデータ分析基盤を構築するのは初めてだったこともあり、ウイングアークのBIに対する知見を評価したのです。製品に関しては、IT専門部署ではない総合企画室でも使いこなせそうだと感じましたし、グラフなどの豊かな表現力も魅力的でした」
2013年1月に採用を決定し構築段階に入ってからも、BIコンサルティングチームのノウハウが活かされた。例えば、分析に必要な項目の選定や年度の切り替わり対応、例外データが存在したときの処理をどうするかなどだ。特に、年度の切り替わりについては、設計の段階から議論を重ね、特別な作業を年度末に行う必要がないように作り込んだ。また例外データの処理については、対処方針に迷うと稼働開始の遅れにつながるが、経験を踏まえた適切なアドバイスでスムーズに進めることができた。
学生の傾向把握にデータの裏付け教育方法や制度の改善につなげる
こうして当初の予定通りに、2013年4月から稼働を開始した。入試から就職までを一元化して分析可能にしたことで、いままで感覚や経験に頼って判断していた学生の傾向を、客観的な事実として捉えることができるようになった。例えば、指定校推薦や自己推薦、センター試験、一般入試など、近年入試制度が多様化しているが、どんな入試制度を経たかによって、入学直後の学力にも違いがあると言われている。また、一般入試を乗り越えた学生の方が就職決定が早いと言う人もいる。それらは主観的な経験則でしかなかったが、こうしたことも、データの蓄積によって裏付けがとれるようになるわけだ。
「学生にひもづくデータ項目は非常に多く、本学の場合、出身地域、出身高校、入試制度、履修内容、留学、所属サークル、TOEFLスコア、就職先業種、など約120項目にもわたります。こうした多様な項目を分析することで、客観的事実に基づいた実情に合った教育方法の実践や学内組織の企画ができるようになります。例えば、新しい教育方法を取り入れるときでも、『まず一部で試験的に行い、その成果を分析した上で実施範囲を拡大する』といったことです。また、今後10年、15年と情報を蓄積し続けていくことで、学生へ『目指す人材像へ近づくには何をすればよいか』を示すなど、学生にとって直接役に立つデータベースになると期待しています」(高野氏)
これまで執行部へ提出する定型レポートは、Excelでその都度作成する必要があったが、MotionBoard導入後は、一度設定してしまえばデータを入れ直すだけで、表現力豊かなレポートが素早くできるようになった。また、描画の速さも、「事務用PCでも待ち時間はほぼなく表示され、期待以上」(高野氏)と評価が高い。単純な集計作業には、Dr.Sum EA Datalizerも活用しており、クロス集計などの複雑な操作もPCスキルがそれほど高くない職員でも直感的に操作できると好評だ。
執行部からの評価も上々のようで、小川氏は、「MotionBoardで新しいレポートを作成すると、執行部から『こんなレポートも作れないか』『ここを変えてほしい』といったリクエストを受けることも増えています。また、『教室の稼働状況』などの学生情報以外の分析ニーズも生まれ、さっそく実現しました」と話している。
データ分析の意識を、組織的に定着させる将来的に学生ビッグデータの活用も視野に
同学では稼働後も、通常のソフトウェア保守のほか、BIコンサルティングサービスの保守契約を結んでいる。「こういう分析はできないだろうか?」といった踏み込んだ質問についても、同学のシステムや事情を理解しているコンサルタントが最適な方法を提案するため、大きな安心感につながっているという。
最後に、今後の展望について次のように話す。「組織的に、意識的に定着させることがテーマです。客観的なデータによる分析・提案を継続的になしうる組織体制を作ることが重要だと思います」(小川氏)
「学内に散在するデータを集め、執行部が事実に基づく判断をするための基盤が整いました。データを蓄積することで、今後はより精度の高い傾向把握や予測を可能にするなど、より踏み込んだ活用をしていきたいと考えています。さらに、図書館での滞在時間など、ICカードなどで学生の行動情報を付加して分析することで、事象の相関関係の把握や、教育サービスの一層の充実・強化、さらには学生の生活・学習支援の拡充につなげていくことを検討しています」(高野氏)
同学の、事実に基づく判断による満足度の高い学生サービスを提供するための試みは、これからも続いていく。






