4,000名以上がデータを有効活用し 法人営業の効率化・高度化を実現

Company Profile

社名:株式会社りそな銀行
事業内容:預金業務、貸出業務、商品有価証券売買業務、有価証券投資業務、
内国為替業務、外国為替業務、社債受託及び振替債に関する発行・支払代理人業務、
金融先物取引等の受託等業務、信託業務、銀行代理業務、附帯業務
資本金:2,799億
設立:1918年5月(営業開始日:2003年3月3日)
URL:https://www.resonabank.co.jp/
業種:金融・保険
規模:有人店舗数 324点、店舗外ATM 552ヶ所
利用製品:MotionBoard Cloud for Salesforce、Dr.Sum Cloud
用途:法人営業活動の効率化・高度化

お話を伺った方

株式会社りそな銀行
コーポレートビジネス部
営業力強化グループ
グループリーダー
小川 悠也 氏
入行以来、8年間で3つの営業店勤務を経験し、法人向けの融資や営業を担当した後、本部へ異動。現在はこれまでの経験を生かして法人営業のデジタルシフトに取り組んでいる。

  • salesforce連携
  • アジャイル開発
  • モデル店
  • 効率化
  • 取引先カルテ
  • 営業のデジタルシフト
  • 大規模ユーザー
  • 引継ぎ書
  • 業界評価
  • 渉外活動
  • 高度化

りそな銀行は法人営業の強化を目的に2018年4月より、セールスフォース・ドットコムの営業支援および顧客管理システム「Salesforce」 とウイングアーク1stのBIダッシュボード「MotionBoard」の活用を進めています。導入の背景、定着への取り組み、活用法と得られた効果、将来展望などを、システムの活用促進と機能拡充に取り組む小川悠也氏に聞きました。

営業の効率化・高度化を
お客様のメリットに繋げる

りそな銀行は都市銀行として唯一信託部門を併設し、不動産や年金などの幅広いニーズに対応。顧客本位の取り組みによって、様々な困りごとの解決や成長戦略実行の支援を行うとともに、地域経済の活性化、社会課題の解決に取り組んでいます。

小川悠也氏はりそな銀行のコーポレートビジネス部 営業力強化グループでビジネスリーダーをつとめています。営業力強化グループはデジタル技術の活用などを含めた法人営業の高度化・効率化をミッションとしています。

小川氏は入行以来、8年間で3つの営業店勤務を経験し、法人向けの融資や営業を担当した後、本部へと異動。現在は主に、セールスフォース・ドットコムの営業支援および顧客管理システム「Salesforce」とウイングアーク1stのBIダッシュボード「MotionBoard」の活用促進と機能拡充を実現しながら、法人営業のデジタルシフトに取り組んでいます。

りそな銀行では、法人営業の強化を目的に2017年11月からSalesforceとMotionBoardの導入を検討。2018年4月より営業店での試行を開始し、2019年4月に全店展開に踏み切りました。ユーザー数も当時の2200名から現在では4420名(2021年12月、グループ企業を含む)へと増加し、活用シーンも増え続けています。

そもそもSalesforce導入の目的は何だったのでしょうか?小川氏は次のように話します。

「これまで各営業店の営業担当者が持っている情報は属人化しており、十分な共有・活用ができていませんでした。これはおそらく金融機関共通の課題だと思われますが、約3年前後で異動を繰り返し、引継期間も短いため、せっかくお客様から聞き出した情報が活用されないまま消えてしまう。しかし日々そうした情報をSalesforceに入力しておけば、急な異動でも情報は受け継がれ、継続性を持った営業活動が実現できます。また、各営業店で入力された情報を本部の、たとえば不動産や年金の部署の担当者が共有することで、営業店の担当者と一緒にお客様を訪問し、より専門的な見地から価値ある提案を行うことができる。このように属人化した暗黙知を形式知として蓄積し組織で活用すること、さらに本部・営業店間の情報の共有と活用を促進することで、営業活動の効率化・高度化を図ることが目的でした」

▲(左)小川氏 (右)ウイングアーク担当営業 居壁

ではMotionBoard導入の理由は何だったのでしょうか?

「情報の入力や蓄積を可能にするだけではなく、その情報をユーザーがどのように把握・理解し、活用するのかという点が重要でした。数千人を対象にシステムを導入するとなると、ユーザーは年齢も経験も知識もバラバラで、ITが不得手な方も当然いらっしゃいます。そのため、誰にとってもわかりやすく情報を表示し、容易に活用してもらうにはBIツールが不可欠だと判断しました。いくつかのBIツールを比較検討した中で、MotionBoardは直感的に操作でき容易に内容が把握できる点、表現力や拡張性に優れている点、Salesforceとシームレスに連携し、MotionBoardへの入力や更新が直接Salesforceに反映される点などを評価し、導入を決定しました。SalesforceとMotionBoardをセットで導入することは車の両輪のようなものでした」

しかし決してシステムを導入することだけを重視していたわけではありませんでした。

「お客様の経営課題や困り事の解決に役立つということが最も重要です。業務を効率化することで本来力を注ぐべき作業により時間を割けるようなる、情報の共有によってさらに価値の高い提案ができるようになる。そのようにデジタルやデータを上手に活用し、それをお客様のメリットに繋げていくことが最終目標です」

数千名を対象にシステムを導入
定着化に必要なこととは?

2018年4月から始まった全国の営業店、本部への導入作業はシステム部ではなく、コーポレートビジネス部 営業力強化グループの5名のメンバーが担当しました(現在は6名に増員)。営業経験者とシステムに詳しい人員の混成でしたが、MotionBoardに精通しているメンバーはおらず、ウイングアーク1stの担当者と緊密に連絡を取り合い、綿密なサポートを受けながら機能構築を進めていきました。

「営業経験者がいたことで、現場の目線や感覚を取り入れ、より使いやすいものにできたと思います」

しかし、わずか5名のメンバーで数百の営業店、数千名を対象に導入と活用を進めるのは並大抵のことではありませんでした。全国の各営業店を回って説明会を開催するメンバー、本部でシステムの開発・調整を行うメンバーに分かれて取り組みました。説明会は一日に距離の離れた営業店で複数開催することもあり、忙しく日常業務をこなしている営業店に時間を割いてもらう困難もありました。

「私は営業店も本部も経験しているので理解できますが、新しいシステムが導入されると『また新しいことを学ばなければいけないのか?』という反応が必ず起こります。そこで活用によって得られるメリットをしっかりと説明していくのですが、頭で理解していただくだけでは駄目で、実際に使うことで慣れていただく。そして活用によるメリットを実感していただく。この理解と慣れの両方を地道に促進していくことが、定着化には必要です」

また、経営陣にさまざまな会議でシステム活用の必要性を説明してもらう一方、社内に配信される「お役立ち情報メール」など社内インフラも活用して積極的に情報を発信しました。

営業店での活用を促進するためには、上手にシステムを活用する「モデル店」を作り、その成果を幅広く伝えることが有効です。なるべくシステムを利用する人数の多い大規模店であること、支店長の理解度が高いことを基準にモデル店を選定し、システム活用による実際のメリットをアピールすることで、効果的に利用促進を行うことができました。

現在でも機能追加や新しく参加したメンバーへの説明のため、説明会を毎月複数回開催しています。

素早く改善し、機能追加を行う
アジャイル方式で取り組む

同行ではこれまでシステム開発を要件定義に時間をかけるウォータフォール方式で行ってきましたが、著しい経営環境の変化や技術の進歩に対応するため、このプロジェクトはアジャイル方式で進められました。営業店や本部のユーザーからの意見を集約し、利用状況や有効性を検証しながら、改善と機能追加を短いスパンでスピーディーに実施し続けています。

プロジェクトは大きく2つのフェーズで進行されました。第1フェーズは業績評価と案件管理の見える化です。各営業店では毎週業績や案件の進捗についての会議を行うのですが、そのための資料は各人がExcelを用いて作成し、印刷・配布していました。

Salesforceに入力しておけば、情報がMotionBoard上で見やすく表現されるため資料作成や印刷などの手間がなく、ExcelやPDF、PowerPointなど最適なファイル形式で出力できる上、気になった項目はドリルダウンで詳細に確認することが可能です。会議の出席者はiPadで素早くMotionBoardのダッシュボードを確認できるため、これまでより深い議論が可能になりました。

これにより計数把握の簡素化や会議の準備にかかる時間の大幅な短縮が実現。現在では法人分野の主項目については営業店での活用がほぼ定着し、共通のプラットフォームに入力されることで、営業店、本部双方の管理の効率化、案件進捗状況の見える化が実現しています。

第2フェーズは顧客情報の一元化と蓄積です。2020年10月にMotionBoard上に「ヒアリングシート」という機能を追加し、顧客から聞き出した様々な情報を蓄積・共有できるようにしました。また、担当者の異動によって失われてしまう情報を確実に組織に残すため「引継書」の機能を実装。担当者が属人的に把握し暗黙知となっていた情報を、組織の形式知として蓄積し、活用する仕組みをMotionBoard上で構築しました。

さらに2021年5月には、顧客を訪問する前に顧客情報を一元的に把握できる「取引先カルテ」をMotionBoardに実装。ヒアリングシートのサマリーで顧客の業績や取引履歴などの重要ポイントが一目で確認できることで、営業活動の効率化・高度化に貢献しています。

「それぞれのデータは別々の場所にあるのですが、それらを一画面で集約して見ることができます。お客様のニーズを素早く的確に把握することで、クロスセルなどを含めより効果的な営業活動が実現しています」

各営業店の担当者が入力した情報は、前述のように本部の不動産や年金など各部署の担当者と共有され、そこにニーズや提案できる可能性が見つかると、本部担当者から営業店担当者へと連絡し、一緒に顧客を訪問して提案を行います。このように情報を蓄積・活用することで、顧客の課題や困りごとを効果的に解決し、それが本部担当者、営業店担当者双方の成果につながるというPDCAが回っていきます。現在は情報の蓄積と本部の様々な部署がさらに密接に連携する情報活用の体制を構築中で、継続的に情報が更新されていく仕組みづくりに取り組んでいます。

組織文化の変化を実感
顧客の課題解決にさらに貢献

導入から約3年が過ぎ、日々営業店から活用についての相談が寄せられるなど、積極的に活用するユーザーが増えています。案件の登録率も導入当初の65%から、現在ではほぼ100%に向上。法人営業担当者に毎日ログインしてもらえるようになり、小川氏も定着化を実感しています。

「営業力強化グループから各部署にこういう活用ができるのではないかという具体的なアイデアを提案し、何度も話し合うことで活用シーンを増やす試みを続けています。ユーザーに寄り添い、機能を改善しながら利便性を感じていただくという活動に力を入れています」

最近、MotionBoard上にビジネスマッチングのシステムを構築。これまで本部のコーポレートビジネス部の専門チームが経験と勘をもとに、売りや買いなどニーズのマッチングを行っていましたが、結果が出るまでに約1週間という時間を要していました。しかしこのシステムを活用すれば、キーワードを入力するだけで、ほんの数分で結果を得ることができます。精度に関して改善の余地はあるものの、ビジネスのスピードを格段に上げることが可能になります。

また、同行では2020年に「Dr.Sum Cloud」を導入し、扱えるデータ量を増やすことでMotionBoardの活用範囲をいっそう拡大していく考えです。

「MotionBoardの導入・活用によって、行内で営業のデジタルシフトが必要という意識が醸成され、組織文化が変りつつあると感じています。今後も営業店が能動的に情報の蓄積を図り、本部がその情報を有効活用することでお客様の課題解決に繋がるという好循環を強化し、継続していきたい。そのためにMotionBoardをいっそう活用していきたいと思います」

と小川氏は語りました。

編集後記

4,000名を超えるユーザーを対象としたデータ活用の定着化活動は一足飛びではいかない。数年掛かると腹を括って活動をしています。そう仰られた小川様は営業経験者ならではの視点で活用者に寄り添ったデータ活用推進に取組まれています。この経験や取組みがデータ活用の推進に悩む多くの企業様の参考になれば幸いです。

nest Membership Portalサイトでは、活用アイデアやノウハウを多数ご紹介しています。また、ユーザー同士の交流が活発に行われており生きた活用術の交換が日々行われています。是非ご活用ください。

カスタマーマーケティング担当 河村