滞留在庫が激減!データ活用による従業員の意識変化が顧客満足度を高め、業績が大幅に向上

Company Profile

社名:株式会社 買取王国
事業内容:総合リユース小売業として、買取王国・マイシュウサガール・工具買取王国・WHYNOT・おたから買取王国の直営店舗展開・運営
資本金:3,700万円
設立:平成11年10月
URL:https://www.okoku.jp/company/
業種:卸売・小売
規模:125名・アルバイトスタッフ270名(臨時従業員の年間平均雇用人員 1日8時間換算)
※2022年2月28日現在
利用製品:MotionBoard、Dr.Sum
用途:在庫の単品管理、POSデータ管理・分析

お話を伺った方

株式会社 買取王国 取締役社長兼営業本部長
嶋本 匡能 氏
株式会社 買取王国 管理本部 営業支援部部長
伊藤 悟 氏
株式会社 買取王国 管理本部 営業支援部 システム課
永坂 通康 氏

  • 脱Excel
  • データ活用促進
  • 人材育成
  • 営業支援
  • 在庫適正化
  • 店舗DX
  • 業務改革
  • 顧客満足度

「価値再生感動追求業」として総合リユース小売業を展開する買取王国は、各店舗の買取、販売、在庫のデータを可視化し、数字に基づいたより適切で効率的な経営を実現するため、2016年BIツールとしてMotionBoard、Dr.Sumを導入しました。導入から6年、どのような効果が生まれ、どのように組織や従業員の意識が変化したのでしょうか?
また、データ活用を浸透・定着させるため行ってきた方策とは? データ活用の意義、今後の展望とともにお聞きしました。

買取、販売、在庫のデータを「見える化」
資料作成の労力がゼロになり、即座にデータを共有

買取王国は事業ドメインを「価値再生感動追求業」と定義し、総合リユース小売業として、東海・近畿地方(愛知、岐阜、三重、静岡、大阪、京都、奈良)で約50店舗を展開。顧客から買い取った古着、ホビー、工具、雑貨、高級ブランド品など多様な商品を販売しており、それぞれの店舗の強みを活かす個店経営の長所を遺したうえで、情報を活かし標準化を推進しています。

しかし、リユース品は、ゲームソフトなどを除いてほとんどが一点ものであるため、その商品によって価値が大きく異なります。約50店舗それぞれのスタッフが「勘」と「経験」をもとにバラバラに買入価格と販売価格を決定し、売れない店頭在庫をそのまま放置していては業績の向上は望めず、「どんぶり勘定」の経営に陥ってしまうおそれがあります。各店舗の買取、販売、在庫のデータを可視化し、適切なアクションをとることで、計画的・安定的な成長につなげていくことが強く求められていました。

そうした課題を解決するため、POSシステムの刷新とともにBIツールとしてMotionBoard、Dr.Sumを導入。

導入の背景や経緯については、こちらからご確認ください。

2016年より本格運用を開始しました。各店舗のPOSから入力される買取、販売、在庫などのデータはバッチでDr.Sumデータベースに反映され、MotionBoardのダッシュボードにほぼリアルタイムで表示。エリアリーダー、店舗スタッフ、本社営業部員、経営陣など幅広い層がデータを把握し、それぞれの課題に気づくことで、次の適切なアクションにつなげることができます。

取締役社長兼営業本部長の嶋本 匡能氏は、

売場の状況は刻々と変化するため、その状況をリアルタイムで捉え、迅速なアクションを取ることが必要だと強調します。「MotionBoardによって『全店舗』→『各店舗』→『商品ジャンル別』とドリルダウンしてデータを確認できるため、『異常値』を素早く見つけて対策を行うことができるようになりました」(嶋本氏)

▲ 嶋本氏

その商品をいくらで買い取って、そこにどれだけの利益を乗せて販売価格を決定するか? この値入れ率((販売価格-買取原価)÷販売価格×100)は全社の業績に大きく影響します。MotionBoardによっていつ誰がいくらの価格をつけたかがわかるようになり、従業員の「目利き」のスキルが向上。値入れ率の適正化に役立っています。また、全店舗の在庫状況がすぐに把握できるため、在庫が余っている店舗から、在庫が不足している店舗へ商品を適切に移動できる点や注力すべき商品ジャンルの優先順位がわかる点も、店舗運営の効率化に大きく貢献しています。

実績資料作成の時間と労力も大きく削減されました。従来は情報システム部門(当時は情報本部、現在は営業支援部)のメンバーが基幹業務システムからAccessを使って各店舗の実績データを抽出し、それをExcelで集計していました。毎日2人がかりで約2時間をその作業のために使っていましたが、MotionBoard導入によって、最新データが自動的にダッシュボードに反映されるため、資料作成の工数がほぼゼロになりました。

管理本部 営業支援部 部長の伊藤 悟氏は

「実績資料作成の作業がなくなったことで、データ活用の促進や経営のサポートなどに、より多くの時間が割けるようになりました」

と話します。

滞留在庫への意識が劇的に変わり
評価損1%以上削減により業績向上

BIツール導入から6年、組織はどのように変ったのでしょうか?嶋本氏は滞留在庫への意識が劇的に変ったと指摘します。

「この店舗のこういう商品がこれだけの期間、売れ残っているということを本社商品部だけでなく、各店舗のスタッフも強く意識するようになりました。評価損になる前に価格や売り方を変えて売り切るという意識が確実に根づきました。6年前は評価損の対象比率は3%台だったのですが、BI導入によって1%以上下がり、現在は2%台を維持しています」(嶋本氏)

管理本部 営業支援部 システム課でBIツールの運用を担当する永坂 通康氏はデータが可視化されることで得られた効果を次のように語ります。

「以前、滞留在庫について営業部や経理部が試算を行い、現在の数字をこう変える必要があるということを全社にデータで示しました。すると各店舗が半年の一度の棚卸しの時期などにすごくがんばって、滞留在庫を減らしていきました。努力の結果が具体的に数字で見えるので、みんなやる気になって、どんどん成果が上がっていく。 リアルタイムにデータがわかるので「今月はあと○○円!」という目標も明確になる。ダッシュボードを見ることで、この人努力してるんだな、この店本当にがんばっているんだなというのがわかり、他店舗との比較が自分たちのモチベーションにつながる。アルバイトの方も含め、みんなのがんばりが見えるというのが非常に大きな効果だと思います」

▲ 永坂氏

毎日の朝礼や研修でデータを活用し
よりよい売場づくりを実現していく

伊藤氏は、以前は勘や経験をもとにした売場運営が主流だったが、MotionBoardが浸透することで、数字に基づいた売場づくりが定着してきたと話します。買取王国はデータ活用を普及・浸透させるためにどのような方策を行ってきたのでしょうか?

買取王国の全店舗では朝一番に「店舗用スタートボード」によってその店舗の買取数と販売客数、売上、前年同月比、目標への進捗率が表示されます。このデータが毎日の朝礼で店長、アルバイトを含む店舗スタッフで共有され、数字をもとに店舗としてどのようなアクションをとるべきかが話し合われます。

嶋本氏が店舗から本社の経営に移る際、自らの売場づくりのノウハウを伝えるためにつくったのが「チェック&アクションシート」でした。自店舗の売場における粗利や在庫、坪単価などMotionBoardで見るべき数字をわかりやすく示し、それぞれの基準値に達していない場合は注意を促して「あなたの店舗の売場はこのようになっていませんか? そんな場合はこんな対策を取ってください」と状況別にマニュアルを参照できるようにしています。

「売場づくりの定石として、このマニュアル通りにやれば誰でも成果をあげることができます。まずは適正な品揃えを行う。その上でお客様にもっと『わくわく、ドキドキ』を感じていただけるような売場づくり、お店づくりを店舗スタッフの感性を活かして行ってもらう。大事なのは店舗スタッフに無駄な動き、成果の上がらないことをさせないこと。そうすることで余った時間や労力をもっとお客様に振り分けることができます」

と嶋本氏は語ります。

買取王国ではこうしたMotionBoardの数字を日々の活動に役立てるため、階層別の集合研修や業務改善の研修を実施。店長を中心にそれぞれの数字の見方や損益計算書から予算を立てる方法などの教育に力を入れています。

MotionBoard導入当時は社内の様々な部署から情報システム部門に「こんなことも見たい」と多数のダッシュボード作成の要望が寄せられました。要望に従って作っていったところ、一時は100を超えるダッシュボードが存在したといいます。

▲ 伊藤氏

「あまりにダッシュボードが増えすぎると、本当に見なくてはならないものが埋もれてしまい、誰も見ないダッシュボードが氾濫してしまう。『あなたの部署ではこれだけは絶対に見てください』とシンプルに整理して案内することが大切だと感じました(伊藤氏)

また、永坂氏はダッシュボードを作成する際に、作成を依頼した人や部署のねらいを十分に理解していないと、本当に見やすく、役に立つダッシュボードを実現できないと話します。なぜその数字が見たいのか、その背景もわかった上でダッシュボードをつくることが、MotionBoardとデータ活用を普及・浸透するためには重要だと指摘しました。

データは従業員を成長させ
顧客満足度を高めるためにある

嶋本氏は今後最も取り組みたいのは、データを活用して従業員の自己成長への意欲を高めることだと語ります。

「たとえば数字を活用して店舗の状態を改善する際にも、もっとみんなが楽しみながら作業ができないかと考えています。今の若い方はみなさんゲームに親しんでいると思うのですが、一種のRPGゲームのように、視覚的に自分自身や店舗の強みや弱みを把握し、様々な選択を行いながら経験値を上げて、レベルアップしていく仕組みができればなと。数字を扱うのが苦手と思っている人にも楽しんでもらえる、そんな楽しみながら成長していけるようなシステムが実現できないかと構想しています」(嶋本氏)

伊藤氏は

「これまで感覚的に行ってきた様々な活動を、数字という共通言語によって『自分たちは正しい方向に向かっているのか?』をさらに客観的に検証していきたい。数字から読み取れるお客様の反応を敏感につかんで、具体的なアクションにつなげることが重要です。また、店長だけでなく店舗スタッフ、アルバイトの方の努力や成長をきちんと評価できる仕組みづくりを支援していきたいと思います」

と話しました。永坂氏は

「現在のPOSデータだけでなく、気温や天気などの気象データやWEB上の様々なデータを取り込むことで、より多角的な分析を行いたい。MotionBoardによってWEB出品の商品データも効率的に管理できるようになりました。今後はECデータと店舗売上データを掛け合わせて新たな気づきを得ることで、より効果的なアクションにつなげていきたいですね」

と語りました。

嶋本氏は最後に

「仕事は成果が出なければ楽しくないし、人材も育ちません。一人ひとりが成果を上げながら成長を実感できる環境をつくること。そうすることでお客様満足度も従業員満足度も向上させることができます。弊社が最も大事にしているのは『すべての行動はお客様のまた来るねの一言のために』という考え方。お客様にとって本当に魅力的な商品を見極め、品揃えをすることが『また来るね』につながると思っています。BIツールやデータの活用も、すべてはそのためにあります」

と締めくくりました。

編集後記

2017年に導入事例を取材させていただいた後5年。企業の変化について改めて取材させていただきました。導入当時は売場や商品管理におけるデータ活用でしたが、現在は顧客満足度の向上や、従業員の成長に向けデータを駆使し業績向上という成果にまで繋げられているサクセス事例です。データの利用者がいかに馴染みやすく楽しんでデータに触れてもらえるか、、、そんなアイデアが非常に魅力的です。
DX推進に取り組まれているかた、これから取組みを検討されている方にぜひ参考にしていただけると幸いです。

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マーケティング担当 池田