グループ24社の経営管理統合DBをたった3名の経理で完全内製化 半期で2,500を超えるExcel受渡を大幅削減し分析中心の業務へ変革

Company Profile

社名:株式会社メイコー
事業内容:プリント基板等の設計、製造販売および電子関連事業
資本金:128億88百万円
設立:1975年11月
URL:https://www.meiko-elec.com/
業種:製造
利用製品:MotionBoard、Dr.Sum
用途:グループ経営資料作成の効率化、経理・会計業務の効率化

お話を伺った方


株式会社メイコー
執行役員 経理本部 本部長
本多 正行氏

株式会社メイコー
経理本部 係長
山本 真子氏

  • 脱Excel
  • DX
  • グループ展開
  • データ活用促進
  • 業務改革
  • 製造業
  • 資料作成工数の削減

プリント基板の国内トップメーカーである株式会社メイコーは、2021年8月経営管理統合DBプロジェクトを開始。グループ全社の勘定科目、会計処理ルールを統一し、BIツールを導入・活用することで、非連結対象の会社を含む全てのグループ全体の収支、予実などを効率的に管理・分析・比較できる会計DXを実現しました。同プロジェクトの狙いや得られた効果、会計業務にBIを活用するメリット、成功の秘訣などをお聞きしました。

グループ全社統一のデータベース構築に取り組み、会計DXを実現

株式会社メイコー(以下メイコー)はプリント基板の設計・製造技術を軸に、EMSから各種メカトロニクス開発まで柔軟に対応する、エレクトロニクス分野のトータルソリューションカンパニーです。日本、中国、ベトナムに主な生産拠点を持ち、グループ会社は24社を数えます(2023年8月現在)。

2021年8月、同社は経営管理統合DBプロジェクトを開始。上流から下流までグループ全社で統一したデータベースを構築し、経営層から各職場の担当者まで同じデータを見て議論ができる環境の実現、Excel中心の手作業からデータベース化により効率化・迅速化・生産性向上を目指したプロジェクトをスタートさせました。

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執行役員 経理本部 本部長の本多 正行氏は同プロジェクトでDr.Sum、MotionBoardを採用し、会計DXを先導しました。本多氏は次のように話します。


「当時の連結会社12社だけでなく、非連結会社11社も含めたグループ全社について、同じ仕組みとルールでデータを収集し、同じ形式のレポートで比較・分析できることが必要と考えていました。データ回収のフォームが各社それぞれの様式・ルールだと、回収側(経理本部)で膨大な加工作業が発生します。また、各社のデータをまとめたアウトプットの様式がバラバラだと見る側(経営層など)は確認するのが大変で、どこに何が載っているのか理解しにくくなります」。


本多氏は2015年よりグループ全社の勘定科目と会計処理ルール統一に注力してきました。国内7社については国内の統一会計システムの導入によりデータベース化に必要な前提条件の整備を完了。しかし海外についてはそれぞれの国の税制などに対応した会計システムが最適と考え、あえてシステムの統一は行わず、連結会計システムにデータ収集するために連結勘定科目と会計処理ルールの整備を進めました。


非連結会社についても、連結勘定科目を意識した勘定科目マッピングを整え、月1回のデータ回収はデータ収集システムで行うようにしました。


現在も経理本部は主要な会社とグループ経理会議を毎月開催し、損益の状況・変化点の報告を聞くと同時に、科目の処理方法などの共有・周知を続けています。また、小規模な会社についても、2か月に1回のオンライン会議、メールベースのQ&Aなどで定期的なコミュニケーションを行っています。


「勘定科目と会計処理ルールの統一が実現して初めて、グループ全社の収支、予算・実績(予実)などを"横串"で管理・分析・比較できるようになります」(本多氏)。

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▲本多氏

様々なシステムとのデータ連携が柔軟に行えるDr.Sumで、人的エラーを無くす

経理本部の山本真子氏は、経営管理統合DBプロジェクトで中心的な役割を果たし、現在ほぼすべての経理関係コンテンツを作成しています。山本氏はプロジェクト開始前の状況を次のように振り返ります。 


「Dr.Sum、MotionBoard導入前、予実管理はMSアクセス・エクセルで行っていましたが、実績部署、予算部署管理が複雑で苦労していました。データ収集システムによりデータ回収のフォームは統一されましたが、そのデータをAccessで集計し、会議などの資料作成はExcelとAccessを駆使して行っていました。業務の仕組みが複雑なため属人化が進み、他のメンバーへの引継ぎも困難な状態でした」

Dr.Sum、MotionBoard導入後は連結会計システムや営業系システム、生産管理システムなど様々なシステムのデータがDr.Sumに集約され、手作業を行うことなく『自動』で欲しい情報を入手できるようになりました。

「手作業ではどうしても人的エラーが生じます。1度入れたデータを何度も何度も入れ直さない、コピー&ペーストしない、リンクしないことを目指し、データの回収段階から効率的なデータベースの構築を目指しました」(本多氏)。

Dr.Sum、MotionBoardを選択した理由について、本多氏はBIツールとしての使いやすさを挙げます。特にDr.Sum Connect(ETLツール)  によって他システムから柔軟にデータを取り込める機能を重視。また、操作性やスピードに優れ、グループ限定ライセンスによる料金体系がメイコーグループ全体の会計DX基盤構築に最適だったと話します。

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現状の詳細な把握や意思決定のスピード・精度の向上が実現

Dr.Sum、MotionBoardを含めた経営管理統合データベースによって、経理本部の業務を集計・作表から分析へと変えていく環境が整いました。従来は、半期で2,500を超えるExcelの受け渡しを行う必要があり膨大な手間がかかっていましたが、それを激減させることで  業務の精度、効率が向上。予算管理業務を自動化するとともに、PL(損益計算書)などからのドリルダウン、ドリルスルーにより売上、仕入、経費明細など伝票単位での分析も可能となりました。グループ全社のKPIを同じ基準で比較できるようになり、たとえば拠点間でのエネルギー費の高騰の度合を横並びで比較 するなど、様々な切り口での分析が瞬時に把握することが可能になりました。しかも、実績だけではなく計画と実績や過年度の推移も含めて可能になり生産性・効率性・精度が飛躍的に向上しています。

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経営管理統合DBのデータはMotionBoardで参照され、経営層はグループ24社の経営状況や収支、競合他社との比較などに、各部門では自部門の予実管理などに活用。現状の詳細な把握や意思決定のスピード・精度の向上に貢献しています 。

現在240コンテンツ、380ダッシュボードが運用中で、PLやBS(賃借対照表)などの会計データだけではなく、誤謬の発見・不正防止・牽制を目的とした「リスク分析」のダッシュボードも作成・運用しています。

「各社のリスク分析だけでなく、グループ全社の状況を一画面で確認できるようにしています。そこである会社を選択すれば、ドリルスルーで伝票までを確認することができます」(山本氏)。

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少人数でも各社に寄り添い、きちんと役割分担することで活用を浸透

経営管理統合DBは経理本部の3名によって内製化されました。どのように、少人数でスピーディーにDr.Sum、MotionBoardを導入し、活用を浸透させていったのでしょうか?

収支管理の仕組みづくりやコンテンツ作成を担当する山本氏は、次のように話します。

「当初自分には十分なIT知識がなかったため、最初はすべてが壁でした。しかし独学でAccessの使い方を修得する中で(データ活用に関する)基礎スキルを身に着けた事もあり、MotionBoard、Dr.Sumは試行錯誤を重ねることで使いこなせるようになりました。Dr.Sum Connectには多少苦労しましたが、ウイングアークさんのサポートも受けながら、SQLを習得することで活用できるようになりました」。

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▲山本氏

経理本部はグループ各社の担当者にDr.SumやMotionBoardの活用方法をアドバイス。各社の担当者に寄り添うことで活用浸透を図っています。

「2022年10月にメイコーグループに加わったメイコーエンベデッドプロダクツ株式会社の担当者から、Dr.Sumについて学びたいという申し出がありました。使い方を教えるだけではなく、最終的にどのようなアウトプットがほしいのかというイメージを共有し、そのためには生産管理システムからどんなデータをDr.Sumに持ってくるのか、どんなマスタを整備すべきかを一緒に検討していきました。現在では自分たちでコンテンツを増やし、分析業務を進めてもらっています」(本多氏)。

本多氏が他部門との調整・交渉などコミュニケーションを担当することで、山本氏は具体的な仕組みづくりやコンテンツ作成に専念することができました。こうした明確な役割分担も素早い活用浸透につながりました。

会計領域でBIツールを利用するメリット、成功の秘訣とは?

会計領域でBIツールを利用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

本多氏は

「会計は数値中心であり、文字や写真などの非構造化データではないため最もデータベース に向いている領域です。アウトプットから逆算してマスタを整備し、データを繋げ、データベース間合計一致の整合性のあるものにしていく。BIツールを活用することで、データの集計・分析の自動化・迅速化・精度向上を実現できます、データ(伝票)はインプットで終わらせてはデータをインプットしている意味が半減してしまうので、今あるデータで何が出来るか?新しいアウトプットを得るために必要なインプットは何か常に考えています。データは使い倒さないといけないという意識で取り組んでいます。」

と話します。


山本氏はDr.Sumへのデータ集約ノウハウについて、経営層が見る一番大きな数字を大項目とし、中・小の項目を設定。ドリルスルーで伝票まで見られるようにするため、グループ全体のマスタが一つで完結するよう整備することが重要だと指摘します。部署の集約については本部制をとり、メイコー単体では14本部、グループ全体では37本部に分けています。作成するコンテンツに関しては部や課などの末端部門でも閲覧できるよう検索に盛り込んでいると話します。

本多氏はBIツールの活用を成功させる秘訣として次のようなポイントを挙げました。

  • 明細科目では各社独自の様々な科目があってもいいが、連結で集約する科目の内訳は各社同じになるようにするべき。そのため本社経理本部で各社の科目の中身を理解・分析することが必要。
  • 販管費部門と製造科目部門はきちんと部門コードで分ける。
  • DBを作る前にどんなアウトプットが必要か?そのためには、どのような区分をもっていないといけないか?データベースのイメージをきちんと描けていることもとても大事。
  • 自動化のためには、従来Excelで手作業でやっていたことをすべて把握(リストアップ)し、それを一つひとつどうやってDBで自動化して行くのかをデザインしていくプロセスが必要。
  • 予算については、末端の組織コードすべてで予算を持つと煩雑になるので、予算管理部門で集約するマスタの設計ができていること。
  • 課、部、事業部、本部、事業場など部門のくくりと、PL管理のくくりのデザインがきちんと整理できていること。組織構造のツリーを整理してDr.Sumに入れる。
  • 海外については、その国独自の慣行はあるものの、IFRS(国際会計基準)集約の際には必要な科目=統一したルールの科目に集計できるマッピングができていること。
  • 外部システムとの連携については、アウトプットに必要な項目のI/F(インターフェース)ができるか整理する。元のシステムからデータを受け取る際、そのデータの項目がDr.Sum側にあるかを確認する。

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今後は経営に寄与する コンテンツを充実させ、AIの活用も模索

メイコーは今後のDr.Sum、MotionBoardおよびデータ活用についてどのような展望を持っているのでしょうか。


本多氏は

「より管理会計を強化するコンテンツを増やす仕組みをつくっていきます。たとえば新しい製品群に関する詳細なデータがほしいというニーズが経営層にあるため、それに応えていく。もう一つはAIを活用したデータ分析の自動化です。監査領域では十分活用できると思いますが、日常の経理業務においては、どう利用するのが生産性の向上に繋がるのか?メイコー独自の環境を構築し検証を進めています」

と語ります。

山本氏は

「予算管理では計画対比90%で黄色の点滅、超過で赤の点滅など画面上でのアラートやメールの自動送信などを活用していますが、各Boardで適切なしきい値を設け、アラートやメール送信などを組込みより一目で状況が把握できるような工夫を盛り込んでいきたいと考えています。」

と語ります。

▼編集後記

データ活用を推進していくためには、調整役とシステム運用担当者でしっかりと役割を分担し、一緒になって取り組む体制が非常に大事であると感じさせられた取材でした。また本多様が強く提唱されていた「会計領域でこそBIツールを活用すべき」というご意見とその理由。またその具体的なメリットやプロジェクトの進め方は、現在MotionBoardやDr.Sumの活用浸透に奮闘されているユーザーの皆様にとって大いにご参考にいただける内容ではないでしょうか。ぜひ全社へ活用を広げていく際のヒントにしていただければと思います。

nest企画室 春