Company Profile
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社名:株式会社ユーラスエナジーホールディングス
事業内容:
風力および太陽光発電事業
資本金:181億9,920万円
設立:2001年11月
URL:https://www.eurus-energy.com/
業種:電気・ガス
規模:617名(2024年4月現在)※ユーラスエナジーグループ
利用製品:MotionBoard Cloud for Salesforce
用途:開発の案件進捗管理のおよび開発費の予実管理の業務効率化
お話を伺った方
株式会社ユーラスエナジーホールディングス
国内事業企画部長
小杉 晃氏
株式会社ユーラスエナジーホールディングス
国内事業企画部 兼 経営企画部 DX推進グループ 担当マネージャー
兼 株式会社ユーラスグリーンエナジー電力小売事業部長 兼 事業運営グループ長
瓦井 雄貴氏
株式会社ユーラスエナジーホールディングス
国内事業企画部
石井 緑氏
株式会社ユーラスエナジーホールディングス
海外事業部 兼 法務部
高木 里菜氏
- 脱Excel
- DX
- データ活用促進
- 予算管理
- 企業文化改革
- 業務改革
- 資料作成工数の削減
- 開発
風力および太陽光発電事業を行う株式会社ユーラスエナジーホールディングスは2021年4月、開発部門(発電所開発全般を担う部署)にMotionBoardを導入し、業務の見える化と生産性の向上を短期間で実現しました。開発部門内から始まったデータ活用への取り組みは全社へと広がり、ユーラスエナジーHD をデータドリブン企業へと変えつつあります。導入の背景や実際の取り組み、活用推進の秘訣、将来の展望などをお聞きしました。
業務の属人化解消と効率向上のためBIツールの導入を検討
株式会社ユーラスエナジーホールディングス(以下ユーラスエナジーHD )は豊田通商のグループ企業として風力および太陽光発電事業を行っています。「クリーンエネルギーの普及・拡大を通じ、地球環境保全の一翼を担う」という企業理念のもと、日本・米国・欧州を中心に、15の国と地域で 事業を展開。企業ビジョンである「地域とともに発展し、社会から信頼される企業」を目指しています。
ユーラスエナジーHD の開発部門は発電所の立地選定、地域住民への説明、地権者との交渉や土地に関する許認可手続などプロジェクト開発全般 を担当しています。その中で国内事業企画部は各部署の活動が円滑に進むように調整し、部門内のデータ活用を推進する役割を担っています。
国内事業企画部長の小杉 晃氏は、2020年10月稚内支店から同部署に異動しました。その際に感じた課題を次のように振り返ります。
「開発案件にはそれぞれに担当者がつき、現地に長期出張したり、駐在したりするケースが多いため、業務の状況や進捗などに関するデータは属人化が進みがちでした。本社と現地がリアルタイムにデータを共有する手段がなかったため、たとえば案件ごとの人員の適正配置など、データに基づく意思決定を行うことが困難でした。それでは責任ある経営を実現できないという危機感があり、BIツールの導入を検討しました」(小杉氏)。
▲小杉氏
同じ頃、瓦井 雄貴氏がユーラスエナジーHDに入社し、国内事業企画部に配属されました。瓦井氏は現在、国内事業企画部と経営企画部 DX推進グループ並びにユーラスグリーンエナジー(電力小売事業会社)を兼任しています。
「管理や報告書作成など様々な場面でExcelを多用しているなという印象を受けました。集計を行うためにExcelでデータを受け渡し、それを別のシートに転記、その集計結果をまた別のシートに転記して集計するなど、多大な業務負担が生じていました」(瓦井氏)。
▲瓦井氏
瓦井氏は前々職の電力会社でMotionBoard Cloud(以下MotionBoard)を導入・活用した経験があったため、その導入を小杉氏に相談しました。小杉氏と瓦井氏は現場データの共有・可視化、業務の効率化を目的にMotionBoardの導入を役員会で提案し、承認されました。
選択の決め手となったのは誰でも使いこなせる操作性の良さと手厚いサポートでした。また、入力機能があること、多額の投資を必要とせずスモールスタートから広げられる点も高く評価されました。トライアル期間を経て、2021年4月、開発部門にMotionBoardが導入されました。
まずは業務に欠かせない開発費管理のダッシュボードを構築
MotionBoard導入の際、開発部門だけでなく全社を対象にした説明会が開催され、MotionBoardを広く社内に周知させました。構築作業が行われ、2021年10月、第一弾となる開発費の予算と実績を管理するダッシュボードが完成しました。
国内事業企画部で事務作業や各種業務のサポートを担当する石井 緑氏は、MotionBoardを使用した印象を次のように話します。
「それまで開発費のデータはExcelを使って集計していたのですが、手作業による転記も多いため、非常に時間と手間がかかり、間違いも生じがちでした。特に月末月初は締めと集計作業が重なるため、かなりの業務負担が生じていました。MotionBoardに移行する際、データを扱うための準備や勉強は必要でしたが、一旦ひな形ができてしまえば、一瞬で開発費管理表が完成するようになりました。これまでの作業はいったい何だったのかなと思いました」(石井氏)。
▲石井氏
国内事業企画部では月に合計10時間ほどかかっていた開発費管理表作成の作業がなくなり、年間約120時間を別の作業に振り分けられるようになりました。
高木 里菜氏は開発部門の海外事業部で開発費管理表の作成を担当していました。
「海外の複数の拠点から様々な形式でデータが送られてきます。それをExcelに打ち込んで日本円に換算し、Excelで集計する作業を一人で行っていました。各海外拠点に必要な形式でデータをもらえるよう依頼する必要はありましたが、MotionBoardを使えばクリックするだけで作業が完了することに感動しました」(高木氏)。
▲高木氏
瓦井氏は
「まずは開発部門の業務に欠かせない開発費管理のダッシュボードから始めました。MotionBoardで作成したダッシュボードはExcel形式で出力することができます。Excelを使っている部門もあるため、Excelを否定するのではなく、上手に共存させて活用できる点も大きなメリットでした」
と話します。
予算作成ボード、ToDoボードによって「業務の見える化」が大きく前進
2022年4月、MotionBoard CloudからMotionBoard Cloud for Salesforceに移行しました。Salesforceと親和性の高いMotionBoard Cloud for Salesforceにすることで、データの入口(入力)はSalesforceで、出口(出力)はMotionBoardで行うという基本構想が実現に向けて進み始めました。
2022年11月には開発費予算作成ダッシュボードを構築し、運用を開始しました。
「開発費管理以外の用途でも活用できることを示すことでMotionBoard活用・浸透のギアを一段上げるのが狙いでした。案件ごとの開発費予算をMotionBoard上で入力し、見られるようにしました。構築にあたって社内のリソースだけでは足りなかったため、ウイングアーク1stのカスタマーサクセスの支援を受けました。このダッシュボードによって、案件ごとの予算申請の作業が大きく効率化しました」(瓦井氏)。
2023年4月には契約・検収・支払いに関するToDoダッシュボードの運用が開始されました。Salesforceのタスク管理機能であるToDoの内容をMotionBoardで表示するもので、各個人が自分の対応が必要な場合にはアラートが表示されます。
「管理職が自分の部署の状況を把握するのにも役立ちます。契約と支払いの状態もわかるため、これまで難しかった『業務の見える化』が大きく前進しました。また、あるメンバーがお休みしたとき、そのメンバーの業務の状況がわかるので他のメンバーがフォローしやすくなり、進捗が滞らなくなりました」(瓦井氏)。
丁寧な説明とプッシュ、外部リソースの有効活用が浸透の秘訣
業務の効率化から見える化へとMotionBoardの活用用途は広がっていきました。ユーザー数も2021年4月導入時の10名から、同年10月には約100名に、2023年4月には開発部門だけでなく技術ユニットや財務経理部、法務部などコーポレート部門の一部も含めた約200名まで増加しています。MotionBoard活用浸透の秘訣はどこにあったのでしょうか?
2021年4月のMotionBoard導入以降、石井氏、高木氏をはじめとする7人が選ばれ、ウイングアーク1stのトレーニングプログラムを受講しました。まずはダッシュボードを構築することができ、メンテナンスが行えるトッププレーヤーを育成し、そこを起点に部門全体に広げていくことが狙いでした。
「トッププレーヤーを選ぶ際は、システムに詳しいなどではなく、業務の課題を意識し、それを解決したいという意欲を持っているかどうかを重視しました。そうした課題意識を持ったメンバーに仲間に入ってもらうことがとても重要でした」(瓦井氏)。
2021年10月、開発費管理ダッシュボードができた際には説明会を3回実施。説明会では瓦井氏とともに石井氏が講師をつとめました。説明会の後、石井氏と高木氏は実際に開発部門内を回ったり、個別にメールを送ったりすることでMotionBoardの活用を強力にプッシュしました。
MotionBoardへのログイン方法などの初歩から、使いこなしまでを細かく伝えながら、同時にユーザーが困っていることや要望などを細かく聴取。その内容を瓦井氏に伝えました。
瓦井氏はそうした現場の声に応え、問題点の解消やダッシュボードの改修などをできるだけ迅速に実行していきました。
2022年11月の開発費予算作成ダッシュボードや2023年4月のToDoダッシュボードの運用開始時にも同じように説明会と各部署へのプッシュを行い、その活動は現在も続いています。
「最近では現場の方から活用方法の提案が上がってくるなど、自然と活用が進んでいく好循環に入ってきました」(瓦井氏)。
こうした活動と並行して役員が活用を促す発信を行い、説明会にも出席。会社として正式に取り組んでいるというメッセージを送ることで、ボトムアップとトップダウンの両方向から活用を推し進めました。
社外リソースの活用も大きなポイントでした。特にウイングアーク1stのカスタマーサクセスが実施している伴走支援プログラムは有効でした。ウイングアーク1stのカスタマーサクセスマネージャーによる支援プログラムを通して、アイデアの検討やサンプルの作成などを支援します。
「開発費予算作成ダッシュボードは2022年10月中に完成させる必要がありましたが、そのための社内リソースが足りませんでした。しかし同年の8月から10月までカスタマーサクセスによる支援を受けることで、期日までにダッシュボードを構築することができました。少人数でも外部リソースを活用することで、レバレッジを利かせながら着実に活用の幅を広げることができました」(瓦井氏)。
その後、バージョンアップへの対応、資産管理ダッシュボードの構築、インターフェースの改善などを目的に複数回支援プログラムを活用しています。
また、開発費管理や予算作成、契約・検収・支払いに関するToDoなど日々の業務を落とし込んだダッシュボードを構築したこと、画面やインターフェースなど使いやすさに徹底的にこだわったことも活用が進んだ要因といえます。
具体的な数字や事実を元に考え、議論し、行動する文化が浸透
データとMotionBoardの活用が進むことで、ユーラスエナジーHDの業務スタイルや社員の意識にはどのような変化が生じているのでしょうか?
瓦井氏は様々な業務の状態を数字で把握できるようになったと話します。
「どの部署の誰にどれだけの負荷がかかっているのか、ある案件の契約や支払いの状況はどうなっているのかなど、これまで多分こうだろうと感覚的にとらえていたものを、具体的な数字や事実を元に知ることができます。データをベースに考え、議論し、次の手が打てるようになったのは大きな変化です。ようやくデータドリブンの土台が固まってきたと感じています」(瓦井氏)。
小杉氏は開発部門での取り組みが全社に広がりつつあると感じています。
「2020年にできることからやってみようという部門内での取り組みが短期間で具体的な成果を出した結果、全社のデータ活用やDXへの考え方が変わり、経営方針にも盛り込まれるようになりました。次にどう行動すべきかをデータを元に意思決定する文化が着実に浸透しつつあります」(小杉氏)。
国内事業企画部のこうした一連の取り組みが評価され、2023年には社長特別賞が授与されました。
今後、ユーラスエナジーHDはどのような点に取り組んでいくのでしょうか?
瓦井氏は全社にデータ活用を広げていくことだと話します。
「MotionBoardの普及が一部にとどまっているコーポレート部門とは、依然としてExcelを介したやりとりや報告書の作成作業が残っています。元となるデータは既にあるわけですから、コーポレート部門でもMotionBoardを活用し、必要なデータを自部門内で得られるような形にしていきたい。最終的には全社員がデータを活用するデータドリブンな会社の実現を目指しています」(瓦井氏)。
瓦井氏は
今後Dr.Sumによる統合データベースの構築と活用、MotionBoardの地図機能などを用いた可視化表現の強化などにも取り組んでいきます。
石井氏は
一人でも多くのMotionBoardユーザーに便利になったと感じてもらうことと、その業務の経験がない人でもデータを活用することですぐに活躍できるようになる環境を目指しています。
高木氏は
今後データがたまっていくことで、様々な費用や活動の推移などが見られるようになり、それが一層の効率化につながっていくことを期待しています。
小杉氏は
「MotionBoardによるデータ活用によって、業務負担の軽減やミスの削減、業務の見える化による属人化の解消など『守りのDX』はある程度実現しました。今後はどの案件に力を注ぐべきか、人員の適正配置による組織改革をどう行うかなど『攻めのDX』に力を入れていきます」
と語りました。
現場の身近な課題解決から始まったDXを全社へ展開するための戦略的な社内推進術は非常に印象的でした。
「やった方が絶対に皆のためになる」という信念を持ち、現場への落とし込みを徹底的に実践し外部の力を最大限活用して必要なタイミングまでに必要なデータを整えていったというお話は現場感を正しく理解しているメンバーだからこそ成し得たことだと感じました。
現在、MotionBoard Cloud for Salesforceを活用されているユーザーの皆さまや、今後の活用を検討されている方々にとって、ユーラスエナジーホールディングス様の「現場目線」を意識した社内攻略の事例が、全社的な活用へ広げるための貴重なヒントとなれば幸いです。
nest企画室 藤本