
クラウドサービスのさらなる質向上を目指し統合運用管理のレベルアップを進める
福岡の地で創業以来50年の実績を持ち、SIから、ソフトウェア開発、情報ネットワークサービス、BPOまで全方位のIT事業を展開しているBCCが、その卓越した運用ノウハウを生かして強化に向かっているのがクラウドサービス事業である。同社の理事でありCIOの立場からもクラウド事業を統括する長濱 利直氏は、「建物、電気設備、空調設備、セキュリティのあらゆる面で、コストを掛けず知恵と工夫で最高レベルのティア4に迫る条件をクリアしたデータセンターを整備しました」と語る。中でもBCCが中心的なユーザーとして想定しているのが中堅・中小規模の企業群で、そのビジネスサイズに見合った適正価格やサービス提供により需要を掘り起こすことを目指している。
価格を抑制するからといってサービス品質に妥協は許されない。ユーザーに最優先で提供すべきクラウドサービスの価値は、あくまでも “安心・安全”と考えるBCCが推進してきたのが、データセンター内の機器の統合運用管理への改革だ。「ITILのサービスサポート(通称:青本)ならびにサービスデリバリー(通称:赤本)を参考に、運用プロセスを再定義しました。また、障害が発生した際にSEに業務を引き継ぐだけでなく、運用担当者自身もその場で可能な対処を行う現場改善活動でも、迅速な対応が可能になるように、早期復旧のための体制を強化しました」と長濱氏は話す。
MotionBoardを活用し、機器の異常レベルをオンタイムで「赤、黄、青」の信号で表示
BCCが目指した統合運用管理への変革の鍵となるのが、機器の状況をいかに見える化するか、ということだった。しかし、商用製品の中にはそれを実現する最適なツールが見当たらなかった。そこでBCCは自社開発に乗り出し、MotionBoardを使った「くらうどView」と「すまぁとGUARD」という2つの内製ツールで構成された総合監視システムを構築し、2015年6月より運用を開始した。なお、長濱氏はプロジェクトの主要メンバーに新卒入社1年目の新人2名を含む若手を大胆に抜擢している。「今回のような前例のない見える化を実現するためには、柔らかい発想が欠かせません」とその意義を示すとともに、「複雑なプログラミングが不要で、新人であってもさまざまなアイデアを試行錯誤しながらブラッシュアップしていける開発環境として、MotionBoardには他のBI製品にはないメリットがありました」と語る。
監視対象のカテゴリには、
「稼働監視(バッチ処理結果、バックアップ処理結果など)」
「インフラ基盤監視(CPU使用率、RAM使用率、ディスク使用率など)」
「セキュリティ監視(IDS/IPS、次世代ファイアウォール、ウイルスチェックなど)」
「ネットワーク監視(帯域使用率、コリジョンなど)」
「性能監視」・「温湿度監視」
があり、各機器から5分間隔でデータを自動収集して「見える化DB」に蓄積している。
これまで紙ベースで管理していたこの「外形監視」を、iPad入力により電子化したのが「すまぁとGUARD」だ。「異常を発見した場合には、サーバー室のレイアウトを表示した画面からエリアを指定するだけ。報告のスピードアップを実現しました」と長濱氏。このデータもまた即座にWi-Fi送信されて「見える化DB」に蓄積される。そして、「見える化DB」に集まってくるこれらのデータを、マスター登録されたしきい値に基づいて判別し、リアルタイムにモニタリングするのが「くらうどView」だ。「フロントにMotionBoardを活用することで、状況レベルを赤(緊急)、黄(注意)、青(安全)の信号表示で通達するとともに、異常個所をその場でドリルダウンして迅速に原因追及を行える仕組みを実現しました」と長濱氏は語る。
「くらうどView」の画面を大型ディスプレイにも表示
全社員が異常に気付く環境を整える
MotionBoardを活用した「くらうどView」の画面は、運用担当者が詰めているサーバー室だけでなく、約60名の社員が席を並べるオフィス内の大型ディスプレイにも表示している。数名の運用担当者だけに監視を任せるのではなく、すべての社員が異常に気付く環境を整えたのだ。担当業務を超えて詳細確認や障害判断にあたり、組織全体として迅速な問題解決にあたっている。
「この結果、異常発生から復旧までの時間を従来の1/5に短縮できました」と、長濱氏はスピードアップの効果を語る。加えて障害発生件数そのものを前年比で1/4に削減したほか、保守作業の効率を5%アップ、きめ細かな温湿度調整による空調電力の適正化、監視の自動化による無人化したサーバー室への入退室削減(情報リスクの低減)といった、多岐にわたる成果を上げることができた。もっとも、BCCにとって現状は、まだ”STEP1”の課題をクリアしたにすぎない。「引き続き現在も、統計分析に基づいた予測的な障害抑制やセキュリティ監視などの仕組みを計画中で、先手管理、リソース運用のさらなる高効率化、日常化(運用の自律化)に至るステップアップ計画を推進していきます」と長濱氏は意気込みを示す。
MotionBoard やOSSの活用による低コストでのシステム開発
総合監視システムの外販も開始
今回の総合監視システムのもう一つのポイントは、画期的なROI(投資対効果)の高さだ。「ある同業他社も同様の監視システムを構築しようとベンダーに依頼した際、そこで提示された費用に対して、われわれがシステム構築にかけた費用はそのわずか1/10にすぎません」と長濱氏は明かす。OSS(オープンソース・ソフトウェア)を活用したデータ統合ツールや、データベースとMotionBoardを組み合わせたシンプルな構成により、低コストのシステム構築を実現した。そして2015年10月、BCCはこの成果を協業企業との間でも広く共有すべく、全国各地のパートナー企業に対して総合監視システムの外販を開始した。
「自社データセンターやサーバー運用改革に活用していただき効果を実感できたら、ぜひ、その先のお客様にも提案してくださいと各社にアピールしています。個別の要望に応じて導入支援やカスタマイズの相談にも積極的に応えていく計画です」と長濱氏は語る。パートナー企業各社の先のユーザー企業には、病院をはじめオンプレミスでのサーバー運用に悩みを抱えている現場も数多いだけに、BCCが開発した総合監視システムは、運用現場の目線に立った等身大のソリューションとして広く普及していく可能性を秘めている。






