導入事例

読売新聞東京本社

読売新聞東京本社

150年の歴史を持つ読売新聞、DXで営業力強化と業務効率化を実現
伝統とイノベーションを融合した営業支援ツールの導入

読売新聞東京本社
業種

情報・通信

創刊150年を迎えた読売新聞を中心に、文化、スポーツ、レジャーなど多様な分野で事業を展開する読売新聞グループ。新聞広告をはじめ多様な広告・ビジネスを扱うビジネス局が、デジタル時代の変化に対応し、営業力を強化していくためにSalesforceとMotionBoard Cloud for Salesforce を導入。顧客情報や売上情報などのデータをスピーディーかつリアルタイムに可視化し、現場担当者からの素早い情報共有や売上予実管理業務の効率が大幅に向上した。長年の業務フローから段階的なシステム化を進め、ビジネス部門でのデータ活用文化の醸成を目指している。

導入背景

読売新聞のビジネス部門では、統合型マーケティングを推進する観点から、従来の広告会社経由の広告営業だけでなく、顧客との直接的なコミュニケーションによる営業にも力を入れている。そのため、広告主のニーズや過去の取引履歴の把握など、扱う情報の質と量が増大し、営業をシステム面から支える必要性が高まっていた。そこで、営業情報の可視化とナレッジ共有、業務の効率化といった課題を解決するために、営業支援ツールとしてSalesforceを段階的に導入した。さらに導入の過程で、Salesforceと連携でき、従来のExcelによる管理と親和性の高いBIツールを求めていた。

課題
  • 顧客との直接取引の増加で扱う情報の質と量が膨大になり、組織全体での共有が課題となっていた
  • 売上管理が各部署で異なる形式で行われるなど、データの統合や分析に多大な時間と労力を要していた
  • 手作業による入力ミスや重複作業が発生していた
  • これまでのExcel管理による業務フローとデジタル化の両立が課題となっていた
解決策導入ポイント
  • Salesforceを段階的に導入し、ビジネス局共通のプラットフォームとして情報管 理を実現
  • Excel管理との互換性を確保するため、MotionBoard Cloud for Salesforceを導入
  • 個人、部・グループ、ビジネス部門全体という3つのレイヤーで売上を管理、可視化する枠組みをシステム上に実装
効果
  • 営業の成功事例を全社ビジネス部門で共有できるようになり、特に他拠点への横展開が容易になった
  • 営業担当や、管理職の業務負担が軽減され、これまで複数のシートに入力していた作業が一括で行えるようになった
  • データの可視化により、より精緻な売上予測が可能になった
  • 案件情報の一元管理により、スムーズな引き継ぎと再提案が可能になった

若年層の新聞離れに直面し、従来のビジネスモデルからの変革に挑む


 2024年に創刊150年を迎えた読売新聞グループ。中核となる読売新聞は、東京、大阪、福岡に本社を置き、各所に編集局、ビジネス局、販売局、制作局など多様な部門を設置している。「職種のデパート」と呼ばれるように、報道、広告ビジネス、新聞販売、制作のほか、イベント企画や人事・総務など幅広い部門が存在する。新聞広告を中心としたビジネス、スポーツイベントや美術展の開催、Web広告やオンラインニュース配信、印刷システムの運用など、多岐にわたる事業を展開している。


 読売新聞のビジネス部門の中心となるのがビジネス局とイノベーション本部だ。ビジネス局は顧客の課題解決のため、広告ビジネスを中心とした多様な提案を行うセクションであり、イノベーション本部は報道機関としての公共性や公益性、信頼性を活かしたコンテンツ制作など、官公庁や各種団体向けの入札事業やデジタル分野に対応できる事業を展開するために新設された部門。この2つの部局が一体となって営業力を強化し、売上増・収益増を目指している。


 現在、営業支援や業務効率化のためにシステム導入に取り組んでいるのが、ビジネス局ビジネス戦略センターだ。読売新聞東京本社 ビジネス戦略センター 幹事 兼 イノベーション本部 山崎 聡 氏は、SFA(営業支援システム)が必要となった背景について次のように語る。 


読売新聞東京本社 ビジネス戦略センター 幹事 兼 イノベーション本部 山崎 聡 氏

 「新聞業界では若年層の新聞離れが進み、従来のビジネス手法では成長が難しくなっています。そこで、2019年頃からビジネス手法を変革するための新しいシステム導入を検討し始めました。しかし、新聞社の従来の仕事のやり方を考慮すると、一気に全てを変えるのは難しいため、Salesforceを小規模な導入から始めました」(山崎氏)


 Salesforceは2020年度に導入を決定し、2021年4月からLightningプラットフォームで運用を開始。その後、2023年10月にSalesCloudへの切り替えを完了するなど、段階的に利用を拡大してきた。また、Salesforceの導入を検討し始めた頃から全社的にDXが検討されるようになり、Salesforceと密接に関連する基幹システムの刷新が2025年3月を目指して進行中だ。


 「これまでは営業の成功事例があっても共有されにくく、特に他拠点への横展開が難しかったのですが、Salesforce導入により、それが容易になりました。システム活用で営業力を底上げできるのは大きなメリットです。メディアビジネスが置かれている厳しい環境下、全社的な営業力強化は喫緊の課題であり、その解決策の一つとしてこうしたシステムが非常に有効だと実感しています」(山崎氏)


 山崎氏が営業管理領域の業務を担当しながらシステム導入を推進する一方で、マーケティング領域から関わっているのが、読売新聞東京本社 ビジネス戦略センター 次長 兼 イノベーション本部の吉池 千絵 氏だ。


 「これまで読売新聞への広告は、広告会社を経由することがほとんどでしたが、統合型マーケティングの推進により、直接広告主と向き合う機会が増えました。そのため私たちが扱う情報の質と量も増大し、SFAによる管理が不可欠になりました。これらがないと広告主のニーズや過去の取引履歴の把握が困難だからです。広告会社の仲介がない場合、情報管理の重要性がより高まり、これが私にとって最も大きな変化だと感じています」(吉池氏)


 一方で、広告主の環境も大きく変化している。以前は宣伝部が予算を一元管理し広告会社を介してメディアと取引する企業が多かったが、現在は各事業部門が販促予算を持つようになった。事業部単位で商品販売の責任を負い、売り場直前までのプロセスを重視するようになったため、宣伝部の役割も変化し、これが広告環境の変化を加速させている。 


従来のExcel管理とSalesforceを橋渡しするMotionBoardの採用


 しかし、読売新聞のような伝統的で大きな組織では、デジタルツールの導入は一足飛びにはいかない。Salesforceが段階的に導入されていった背景もこのような要因がある。Salesforceの導入により、全社共通のプラットフォームでの売上情報管理が可能になったが、それまで東京、大阪、福岡など各拠点ではExcelと紙を使った売上レポートで管理を行っていたため、それまでの手法との整合性が必要だった。そこで、Excelで行っていた帳票に対応しつつSalesforceと連携できるBIツールとしてMotionBoard Cloud for Salesforce(以下、MotionBoard)を導入した。


 「Salesforce対応のBIツールは他にもありますが、私たちには幹部を含め、週次・月次単位での売上管理業務に適合するアウトプットが必要でした。ビジネスを円滑に進めるには、これらの業務に対応できるツールが不可欠です。そこで、Salesforceの良さを活かしながら従来のExcel管理に近い表現ができるMotionBoardを選びました。システム化への最初のステップとして最も取り組みやすいと判断したからです」(山崎氏) 


Before

After
After

 売上の予測や実績は週次・月次で集計・管理される。これまで営業担当者は日々の商談や売上情報を各部やグループで管理するExcelに入力し、各部の管理職がそれを「週報」にまとめ、予算に対する進捗を週次で確認する会議を行っていた。さらに、各部で確認した売上を、ビジネス部門全体での売上管理シートとして集約し、これをもとに幹部が営業情報、売上情報を把握するという流れだった。このExcelベースでの売上管理をSalesforceとMotionBoardに変更したのだ。


 導入したシステムでは、個人の週報、部・グループの週報、全社の売上情報という3つのレイヤーでの枠組みがすべて実装されている。以前は各部・グループ単位では個別に売上管理を行っていたが、新システムの導入により営業の数字の進捗状況を一元管理できるようになった。


 「以前は、営業担当者が個別にExcelで売上管理をし、ビジネス部門全体での売上管理も別のシートで管理していました。これらが連携していなかったため、手間がかかり、ミスも発生しやすかったのです。部長や次長が売上会議でデータを確認し、手動で更新する必要があり、2重、3重の入力が必要でした。この重複作業が残業が増える一因にもなっていました」(山崎氏) 


業務負担を軽減しながら、データの可視化で、より正確な売上予測と健全な営業活動を促進


 これまでExcelによる手作業で行っていた作業は、今ではMotionBoardから出力できるようになっている。これにより、以前は部長や次長が毎週手入力していた作業が、システム化され簡易に行えるようになった。現在はまだ、情報の入力はSalesforceと基幹システムとで重複している状態だが、読売新聞のビジネス部門では2025年に基幹システム自体の刷新も予定しており、この基幹システム刷新後は、2システムの緊密連携が実現されるため、大幅に業務負担が軽減されると期待している。


 吉池氏は「10年以上前から、この煩雑な入力作業を何とかしたいと思っていました。私自身、100件以上のクライアントを担当し、複雑な料金体系を手作業で管理していた経験から、システムの全面刷新を夢見ていたのです。SalesforceとMotionBoardの導入で、ようやくシステムを一元化できました」と語る。


 営業の進捗度合いを確認するために「積上額」という形で受注待ちの案件を自動で表現できるようになったことは大きな効果だ。積上額は、Salesforceの商談機能で確度が80%以上になった案件の売上を示しており、ビジネス部門全体で共有される売上として管理されている。一方、確度80%未満の案件については各部内で管理し、進捗を確認するというように、業務上のルールもシステム化に適した形に見直した。これまでの売上予測は、各部・グループで基準があいまいだったが、この積上額ルールを定めたことで、部・グループによるブレを解消でき、予測と実際の数値の精度が向上している。


 「システムは正直にデータを出すので、営業の活動がそのまま数字に反映されます。これにより、数字への向き合い方が正直になり、営業のやり方も丁寧になってきました。雑な対応では通用せず、ガバナンスが効くようになったのは良い変化だと思います。一昔前のようなアバウトな数字はなくなり、より健全な売上管理が行われるようになったと感じています」(吉池氏) 


データ駆動の意思決定を全社文化に―戦略的分析への応用と組織への浸透を目標に


 Salesforceには売上関連の数字だけでなく、クライアントに関する情報のコメントも入力できるため、組織での顧客情報や案件の共有、また担当の引き継ぎの際もスムーズになった。これまで引き継がれにくかった失注案件の情報も、来年の同じ時期に再提案する可能性があるため、大切な情報として捉えている。この情報を活用することで、今後の営業戦略の改善や類似案件での成功率向上につながる可能性があるからだ。


 「失注案件のデータは将来の受注やマーケティングに活用できる重要な情報源です。アンケートデータもMotionBoardで管理していて、将来的には広告主の出稿状況や業績なども一緒に分析し、マーケティング的な視点で活用していきたいと思っています。そのために、MotionBoardのハンズオンセッションに積極的に参加して、より効果的な分析方法を学びたいですし、成功事例の共有もお願いしたいですね」(吉池氏)


 SalesforceとMotionBoard の機能を組み合わせることで、読売新聞のニーズに合ったシステムが実現した。2025年に控える基幹システムとの連携で、Salesforce上で提案していた案件が確定した後、基幹システムで新聞制作や請求管理にまでワンストップでつながる形になる。これにより、営業担当部署だけでなく、ビジネス部門全体のDXが完成する。


 山崎氏は「ビジネス戦略センターでは、DXにより蓄積されていく多様なデータを基に、今後の分析にも役立てていきたいと考えています。また、こうしたシステムは、導入後も改善を重ねていくことが肝要です。2025年のDX完成後も、継続的に検討し改良を重ねていき、ビジネス局とイノベーション本部のメンバーに、より使われるシステムになることで営業力や収益力を上げていけるような持続的な仕組みを構築したいです」と今後の目標を語ってくれた。 


Company Profile

読売新聞東京本社

創刊:1874年(明治7年)11月2日
所在地:東京都千代田区大手町1-7-1
主な事業内容:総合メディア事業
URL:https://info.yomiuri.co.jp/

読売新聞東京本社 ビジネス戦略センター 幹事 兼 イノベーション本部 山崎 聡 氏 (写真)
読売新聞東京本社 ビジネス戦略センター 次長 兼 イノベーション本部 吉池 千絵 氏

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