地域密着の金融機関だからこそ、現場で役立つDXを目指す
宮城第一信用金庫は「地域とともに発展する」という理念のもと、地域に寄り添った金融サービスを提供し、「みやしん」の愛称で親しまれている。今年、創立75周年を迎え、2027年春には新本部・本店営業部の開設も予定している。
新たな節目を迎えている同金庫だが、地域金融機関を取り巻く環境は大きく変化している。そうした中で、「これからはDXが欠かせない」と話すのは、事務部部長の髙橋 明彦氏だ。
「仙台は金融機関の激戦区です。都市銀行や東北各県の地方銀行、証券会社など多くの金融機関が進出しています。その中で選ばれる金融機関であり続けるには、地域のお客様により良いサービスを提供し続ける必要があります。そのためにも、DXで業務を効率化し、お客様と向き合う時間を増やすなど、きめ細やかな対応が重要です」

DXを推進していくために同金庫では、2025年4月にDX推進担当を総務部から事務部へ移し、システム担当兼任として再編した。この組織変更には、髙橋氏の明確な考えがあった。
「DXだけを独立して進めると、新しいことだけを追いかけがちになります。システム運用と一体になれば、職員の日々の業務を理解した上でDXを進められます。現場職員やお客様に根差した改善につながると考えました」
渉外支援システムの導入で見えた、新たなニーズ――全店の営業活動を横断したデータ活用
DX推進の第一歩となったのが、2024年に導入した渉外支援システム(金融機関向け地図情報システム「Area Power」)だった。同金庫の営業担当者は、タブレットを持って顧客を訪問し、訪問内容や預かり業務、商談内容などをこのシステムに入力する。顧客情報をその場で入力・確認でき、地図とも連動しているため、営業活動の効率化が進んだ。
だが、このシステムには不都合もあった。各店舗における営業担当者の活動を確認できるものの、他店舗の状況の確認に非常に手間がかかる。全店を俯瞰して営業活動を把握・分析することが困難であったのだ。全店の状況を知るには、本部の担当者などがいったん渉外支援システムからデータを抽出し、Excelで加工し、印刷して配布する必要があった。
事務部DX推進担当兼システム担当の白崎 哲平氏は、「データ取得から配布までが全て手作業で、担当者の作業負担も決して小さくありませんでした。また、紙の資料では全店舗を横断した比較や分析も容易にはできません。他店舗がどのような営業をしているのか、訪問件数はどうか、どのような提案をしているのかが共有できれば、営業力の底上げにつながります」と振り返る。

100近くの帳票を起点に、全職員でデータを活用する基盤を構築
全店を俯瞰した営業活動を把握したいということの先には、各部署で利用している多様な帳票を共有・活用したいという、より大きなニーズがあった。
「各部署がExcelやAccessを使って作った帳票を個別管理するのではなく、一つにまとめたいという思いがありました。問い合わせたところ、100件近い帳票作成要望が出てきました。営業活動に限らず、さまざまな情報を全職員で共有・可視化できる仕組みが必要だと感じていました」と、髙橋氏は振り返る。
この目的を達成できるシステムとして、金融機関向けの展示会で知ったウイングアークのDr.SumとMotionBoardが選ばれた。
ダッシュボード開発に携わっている白崎氏は、初めてMotionBoardに触れたときの感想について、「Excelで集計したデータを、グラフや表などさまざまな形で表現でき、『こんなことまでできるのか』と驚きました。しかも難しいプログラミングではなく、直感的な操作で画面を作れるので、非常に使いやすかったです」と振り返る。
実際にDr.SumとMotionBoardを導入してから、最初に開発に着手したダッシュボードが、前述の渉外支援システムのデータを活用した「渉外担当日報」だ。営業面を統括する業務部からの強い要望があったという。
このダッシュボードでは、渉外支援システムに蓄積された営業活動データを自動的にDr.Sumへ連携させ、必要な情報をMotionBoard上で一覧表示させる。担当者ごとの訪問件数や活動内容、店舗別の実績などが一目で把握できるようになる。

勘定系システム「SK-FORCE」のデータとも連携し、より深い分析を可能に
白崎氏は試作の段階で、事務部副長の佐々木 俊郎氏にアドバイスを求め、どのようなダッシュボードにすればよいかを探っていった。
前職で店舗・人材マネジメントの経験をもつ佐々木氏は、「営業日報をそのまま画面に置き換えるだけでは、MotionBoardの良さを十分に生かせず、高価な日記帳になってしまうのではないかと感じました。数字を記録して表示するだけではなく、比較し、改善につなげることが重要だと考えました」と話し、こう続ける。「店舗同士を比較して見せたり、個人の実績と店舗全体の数字を重ねて見たりすることで、職員が同じ視点で一つの課題を共有できます。経営陣から現場まで同じデータを見ながら議論できる環境をつくりたいと思いました」

佐々木氏の考えを受け白崎氏は、さらに価値のあるダッシュボードにすべく、現在使っているデータをそのまま置き換えるだけではなく、預金や融資といった勘定系のデータなども組み合わせるよう開発の方向性を見直すことにした。具体的には、しんきん共同センター加盟の信用金庫向けサービス「SK-Force」のデータもDr.Sum経由でMotionBoardに表示させるというものだ。
営業現場をはじめシステムにも詳しい髙橋氏、店舗・人材マネジメントの経験を持つ佐々木氏、そして開発を担う白崎氏。それぞれ異なる視点の3人が議論を重ねながら、現場で本当に役立つダッシュボードづくりが進められている。
ダッシュボードの内製を後押ししてくれたウイングアークの支援
白崎氏によると、MotionBoardの開発は取り組みやすく、分からないことがあれば、ウイングアークの担当者へ相談し、カスタマーサクセスサイトやAIアシスタントも活用しながら、順調に開発が進んでいるという。とはいえ、苦心した部分もあった。
「複数のデータを組み合わせたり、見せ方を工夫したりするには経験が必要です。特に、データベースの知識がほとんどなかったので、SK-ForceとDr.Sumとの連携では苦労しました。しかし、ウイングアークの支援のおかげで、自動連携まで実現できました。また、ウイングアークの担当者は、金融業務にも詳しく、話が非常に早いです。他の金融機関の事例も紹介してもらいながら進められて参考になりました」と評価する。
現在、「渉外担当日報」のダッシュボードは最終調整段階で、全職員への公開を予定している。運用開始後は、紙による回覧を廃止し、全職員がパソコンから営業活動や実績を確認できる環境になる。また、公開後も、MotionBoardの「入力機能」を生かしたコメント入力や、地図情報の活用など、さまざまな改善も視野に入れている。
営業活動の可視化を起点に、全職員でデータを活用する組織へ
「渉外担当日報」以外にも、経営陣が一目で予実の進捗状況を確認できるダッシュボードの作成にすでに着手しているほか、各部署から「こんなボードを作成してほしい」という要望もいくつか寄せられているという。
髙橋部長は最後に、「DXは一人で進めるものではありません。現場を理解し、システムを理解し、みんなで協力して進めることが大切です。MotionBoardは、そうした取り組みを支える基盤になると期待しています」と話してくれた。
地域に根差した信用金庫だからこそ、現場に役立つ仕組みを積み重ねる。その第一歩として始まった営業活動の可視化は、やがて経営判断やデータ活用、さらには地域企業へのDX支援へと広がろうとしている。宮城第一信用金庫の「データを全員で活用する文化」を育てる取り組みは、これからも続いていく。






