富士通メインフレーム事業撤退を受け、下したモダナイゼーションへの決断
長野県信用組合が直面したのは、長年勘定系システムの基盤としてきた富士通によるメインフレーム事業撤退の発表だった。当時、現行システムが稼働してからわずか1年というタイミング。通常であれば、多くの信用組合が採用する「共同センター」への加盟が既定路線とされるが、同組合はあえて「自律したシステム維持」の道を選択した。
その理由は、経営戦略の「独自性」と「スピード」を担保するためだ。システム部 部長の徳竹 修氏はこう振り返る。「数多くの信用組合を支える共同センターへの加盟や、実績ある他社パッケージなど、複数の選択肢を幅広く検討しましたが、お客様に迷惑をかけず、かつ変化の激しい金融業界で独自のプレゼンスを発揮し続けるためには、現行の業務資産を活かしたモダナイゼーションこそが最善だと判断しました」。
モダナイゼーション支援を行っているアクセンチュア株式会社(以下「アクセンチュア」と記載)協力のもと、既存のCOBOL資産をJavaへと自動変換するリライト手法を採用。基盤にはOracle Cloud Infrastructure(以下「OCI」と記載)を選定し、2027年中の稼働を目指すプロジェクトが始動した。
圧倒的な実績への安心感と拡張性への期待からSPAISを採用
この大規模な刷新において、避けて通れないのが「帳票」の扱いだった。長野県信用組合では、勘定系システムと情報系システムでそれぞれ異なる帳票管理ツールを併用しており、それぞれがメインフレームの制約に縛られていた。
「オープン化を機に、製品を自由に選べる状態になりました。そこで、分断されていた勘定系と情報系の帳票基盤を一本化し、運用効率とコストパフォーマンスを最大化すべきだと考えたのです」と、システム部 副部長の佐々木 真弥氏は語る。
新たな帳票基盤として選ばれたのが、ウイングアークの「SPAIS」である。選定の決め手は、ミッションクリティカルな金融基盤における圧倒的な実績と、将来を見据えた拡張性だった。
システム部長 徳竹氏は「プロジェクトのパートナーであるアクセンチュアのモダナイゼーション実績においても高く評価されており、安全・確実に移行するための最善の選択肢でした。メインフレーム上で稼働している複雑な帳票基盤をそのままオープン環境へ継承でき、さらに将来のデータ活用まで見据えた拡張性がある点を重視しました」と語る。
1,500種の帳票資産を徹底追求。SVFコンサルによる業務実態の解明と「自立」への支援
プロジェクト最大の難関は、1997年から蓄積されてきた膨大な帳票資産の整理だった。勘定系システムだけで約1,500種もの帳票が存在し、その多くが長年の運用で「ブラックボックス化」していた。
「帳票一覧は存在していましたが、網羅性が十分ではありませんでした。ウイングアークのサービス担当者(SVFコンサルティングサービス)の提案で、まずは現行システムから資源を抽出し、何が本当に必要なのかを洗い出す『帳票マスター』の作成から着手しました」と、システム部 第3システム企画開発グループ グループ長の西澤 肇氏は説明する。
ウイングアークの支援のもと、約1,500種の帳票を可視化。既存のオーバーレイを円滑にSPAIS環境へ移行する作業が進められた。システム部メンバーとプロジェクトに関わるアクセンチュア、ウイングアークなどパートナー企業が総力を挙げ、業務整理と現新突合を繰り返すことで、大規模な移行をスケジュール通りに進めることができたという。

今回の支援において、西澤氏は「単なる移行作業の代行ではなく、業務整理の段階からプロフェッショナルとして伴走してくれた」と高く評価している。サービス部門がお客様と同じ目線で課題に向き合い、技術的なノウハウを共有しながらプロジェクトを進めたことで、稼働後の自組合による自律的なシステム運用を見据えたスキルトランスファーまでが実現された。
また、本プロジェクトの基盤にはOCIが採用されたが、IaaSの種類に関わらず、オンプレミス環境と同様の堅牢なアーキテクチャで帳票基盤を構築・導入できる柔軟さがSVFコンサルによるプロフェッショナルサービス独自の強みとも言える。
帳票を「見る」ものから「活用する」資産へ
2027年の本稼働後、長野県信用組合は帳票運用のあり方を劇的に変えようとしている。
最大の変革は、営業店でのペーパーレス化の徹底だ。これまで紙で出力・還元していた帳票をすべてSPAIS基盤へ集約し、電子的に閲覧・管理する方針へ転換する。これにより、印刷コストの削減だけでなく、利用状況の可視化による不要な帳票の削減(スリム化)という「効率化のスパイラル」を生み出す狙いだ。
しかし、SPAIS導入の真の狙いはその先にある。「帳票を単に見て保管するだけの役割で終わらせたくありませんでした。帳票データは、いわば業務の結晶です。これをいかにデータとして再活用し、現場や経営に還元できるかが重要です」と佐々木氏は強調する。
将来的には、SPAISを介して集約されたデータをAIと組み合わせ、データドリブン経営の基盤として活用する構想を描いている。
「データがあっても、使えなければ意味がありません。可視化のプロセスを経て、AIなども活用しながら、お客様への新たな付加価値提供につなげていきたい。ウイングアークには、帳票基盤の枠を超えたデジタルトランスフォーメーションのパートナーとしての期待を寄せています」と徳竹氏は締めくくった。






