導入事例

株式会社カクイチ

株式会社カクイチ

17,000ヶ所の太陽光発電のデータを可視化
見逃していた異常をdejiren AIで検知し、対応スピード3倍を実現

株式会社カクイチ
業種

建設

自社が販売した倉庫やガレージの屋根を借りて太陽光発電設備を設置する「太陽光パートナー事業」を、全国17,000ヶ所超の規模で展開している株式会社カクイチ(以下、カクイチ)は、設備の異常検知を高度化するため、データ×AI活用のデータアプリ基盤「MotionBoard」とAIテクノロジー「dejiren AI」を導入し、さらにSlackチャンネルへ自動通知する仕組みを構築した。これにより、現場が動き出すまでの判断とスピードが上がり、発電効率の向上に寄与している。

導入背景

課題
  • 発電状況を確認できる情報が売電の入金データのみで、設備異常の発覚が1ヶ月以上遅れることもあり、収益機会の損失が発生していた
  • 異常判定の基準が粗い閾値しかなく、それに該当するほどではない発電量の低下を捉えられなかった
  • 対応の質とスピードが担当者個人の意欲や経験に依存し、全社で標準化されていなかった
解決策導入ポイント
  • 対前月・対前年・対前々年の比較が一目でわかる異常検知ダッシュボードをMotionBoardで構築
  • AI活用の手段として、MotionBoardとの親和性とSlack連携の両方を満たすdejiren AIを選定
  • 全社員が1日1回以上必ず開くSlackを通知先とし、営業所ごとのチャンネルに異常判定物件を配信
効果
  • 「前月比50%」という曖昧な異常判定しかできなかった状態から、AIが過去データと最新データの傾向を比較・分析する、より高度な異常判定の自動化を実現
  • 通知が担当営業所のSlackチャンネルに直接届くことで、営業担当が自分ごととして対応。異常を検知して現場が動き出すまでのスピードは体感で2〜3倍に
  • 同じ仕組みをグループ会社へ横展開。前日の生産実績を毎日Slackに配信し、製造現場に「数字を見る」意識が浸透


全国17,000ヶ所超の「小さな発電所」を運営


 カクイチは1886(明治19)年に銅鉄金物商として長野で創業し、現在はガレージや倉庫を中心に、樹脂ホース、鉄鋼二次建材、ミネラルウォーター、モビリティ、ホテルなど多岐にわたる事業をグループで展開している。


 東日本大震災を契機に、中央集権型の電力網に対する疑問から、自立分散型のインフラ構築を目指して、2013年に太陽光パートナー事業を開始した。


 さいたま営業所 髙橋 洋介氏は「太陽光パートナー事業は当社が販売したガレージやカーポートの屋根をお借りして、当社所有の売電用太陽光設備を設置する事業です。売電収入は当社が受け取りますが、屋根をお貸しいただく施主様には、賃料としてキャッシュバックをしています。また、地震や台風などによる停電時には、太陽光発電による非常用電源としてお使いいただける、BCP対策の側面も持つサービスです」と説明する。


 設備の設置費用はカクイチが負担するため、施主の初期投資は不要だ。こうした特長が支持されて導入が拡大し、全国でおよそ17,000ヶ所の屋根に発電設備が載っている。 


入金データだけが頼りだった、月遅れの異常検知


 ただし、この太陽光パートナー事業には運用上の課題があった。設備が正常に発電しているかどうかを判断する材料は、電力会社からの売電入金データだけなのだ。入金は月次で発生するため、パワーコンディショナー(太陽光パネルの直流電力を、送電網に流せる交流に変換する装置)が故障しても、パネルが汚れて発電量が落ちても、それが数字に表れるのは遅ければ1ヶ月以上先になってしまう。


 本社で売電入金データの管理を担当する DX推進グループ業務システム刷新チーム 丸山 芳敬氏は、その仕組みを次のように説明する。「2019年から脱Excelに向けて、MotionBoard Cloudを導入しました。そのため、すべての物件の入金状況が見られるようになっていましたが、あくまで経営層が売上を俯瞰するために導入したダッシュボードだったため、異常検知のための機能は実装していませんでした。数字は並んでいても、異常を見つけ出すには1件ずつ見比べるしかなく、そもそも異常検知に使おうという意識すら持てていませんでした」


 長岡営業所 西村 将己氏が話を続ける。


 「稼働状況を集約して一元的に監視する部署や仕組みは存在せず、屋根の管理は各営業所の担当者に委ねられているため、対応の質やスピードが担当者個人の意欲や経験に依存していることも課題でした」


 もちろん、手をこまねいていたわけではない。ローコード開発やワークフロー自動化のツールを導入して改善を図ったものの、克服できないでいたという。


 さらに、異常に気づいた後の動きにも時間がかかった。担当者が現地で状況を確認したうえで電気工事業者に修理を依頼するため、発生から復旧までのフローはどうしても長期化していた。 


組織横断のタスクとして、AIによる異常値対応に着手


 この状況を動かしたのが、カクイチの社内制度「タスク」とAIの進展である。DX推進グループ業務AI実装チームの神田 進吾氏はタスクについて「拠点も年齢も職種も異なる5人1組の組織横断型チームで、3ヶ月の期限内に経営課題を解決する取り組みです。テーマとゴールの設定、メンバーの人選は経営層が行いますが、進め方はチームに委ねられます」と説明する。


株式会社カクイチ DX推進グループ 業務AI実装チーム リーダー 神田 進吾氏

 そのタスクの1つとして設定されたテーマは「再起をかけた戦い!FIT異常値対応をAIで最適化し成績3割向上へ」。太陽光発電の異常値への対応をAIで最適化する、という内容だ。


 なぜ、AIが前提だったのか。AIに対する現場の抵抗感はなかったのか。DX推進グループ 業務AI実装チーム 六角 勇亮氏は「ChatGPTの登場以来、生成AIを使った業務改善はよくタスクのテーマに設定されていました。私自身も、ショールームのブログ記事をSlackの投稿や日報から自動生成する仕組みや、社員が悩みを気軽に壁打ちできるチャットボットを手がけてきました」と話す。 


株式会社カクイチ DX推進グループ 業務AI実装チーム 六角 勇亮氏

MotionBoardで発電量の変化を可視化し、異常に気づきやすく


 タスクチームがまず取り組んだのは、MotionBoard上に異常検知用のダッシュボードを作り込むことだった。最新の入金データを、前月、前年同月、前々年同月と突き合わせ、差の大きいものを一次エラー候補として抽出する。比較の軸を増やすことで、検知の感度を高める設計だ。


 「設計で重視したのは、BIツールの専門知識を持たない現場の担当者が、一目で異常を判断できることでした。グラフを見て、『今年は明らかに発電量が少ないな』『グラフの形がおかしいな』とわかるように工夫しました」(神田氏)


 そして大きく変えたのが、異常と判定する基準だ。従来は「入金額が前月比50%減」という粗い閾値でしか拾えなかったが、閾値を引き下げたうえで、過去データと最新データの傾向を生成AIが比較・分析し、「本当に異常なのか」を判断する仕組みとした。これにより、20%程度の変動でも検知できるようになった。さらに、異常と判定した理由や根拠となる売電金額推移データがdejiren AIからSlackへ自動で届くため、担当者が自らダッシュボードを見に行かなくても異常に気づける。MotionBoardとdejiren AIを組み合わせて初めて成り立つ仕組みだ。


 六角氏は、「明らかにおかしいものではなくても『おかしそうだな』と気づいた設備に出向いて掃除できるようになりました。実際、現場に足を運んで判明する異常の大半は、送電網への接続が切れているか、パネルが汚れているかのいずれかで、すぐに対応できるものです。裏を返せば、早く気づくことが重要なのです」と語る。 


MotionBoardとSlackを念頭にdejiren AIを採用


 タスクチームでは、次の段階として、ダッシュボード上の変化を捉えて通知するためのAIを選定した。数多くある手段のなかで採用したのは、ウイングアークのdejiren AIだった。dejiren AIは、データをAIで一元的に活用できるAIテクノロジー。さまざまなサービスとの連携やAIエージェントのノーコード構築が可能だ。


 「社内には他にも利用可能なツールがありましたが、データを持つMotionBoardとの親和性と、Slackとも連携できるという2点から、事実上はdejiren AI一択でした」(神田氏)


 開発で最も気を配ったのは、Slackでの通知の届け方だ。カクイチのSlackには営業所ごとにチャンネルがあり、売電物件にはそれぞれ担当営業所が紐づく。異常と判定された物件は、AIによる異常判定の理由や、判断のもととなった売電金額推移データを含めて、担当営業所のチャンネルへ1件ずつ投稿していく。


 「開発には手間がかかりましたが、通知が形骸化するのを避けるために必要なことでした。福岡の営業所に関東の物件情報が流れたとしても、意味がありません。それどころか、関係のない情報が混ざることで、通知そのものが見過ごされるようになってしまいます」(神田氏)


 カクイチにおいてSlackは、単なる連絡ツールではない。2018年の情報改革以来、経営情報を含むほぼすべての社内情報が流れる基盤であり、全社員が毎日必ず目を通す場所だ。その動線に、担当者が確認すべき異常だけがピンポイントで届く。新しいツールを覚える必要も、AIの存在を意識する必要もない。 



検知し動き出すスピードは2〜3倍に。グループ会社への横展開でも実績


 取り組みの成果について、神田氏はこう語る。


 「検知し動き出すスピードは体感で、2~3倍になっていると思います。MotionBoardとdejiren AI、Slackの組み合わせは、組織のスピードを上げるのには持ってこいの仕組みです」


 同じ組み合わせは、太陽光パートナー事業の外へも広がっている。樹脂ホースを製造するグループ会社では、前日の生産実績をMotionBoardから取得し、dejiren AIを介して毎日Slackへ配信する運用が始まった。


 「Slackは全社員が1日1回以上絶対に見るツールなので、そこにdejiren AIで数字を加工したり表を送ったりすることで、数字の意識が、現場の作業員にもかなり浸透してきたと思います」(六角氏) 


構成図

さらなる検知の高度化と技術継承でもdejiren AI活用を視野に入れる


 3ヶ月のプロジェクト期間中、ウイングアークは一貫して伴走支援を行った。


 髙橋氏は「メンバーの挨拶から始まり、取り組み内容を模索する期間も含めて3ヶ月しかありませんでした。そのなかで当初から打ち合わせに参加いただき、報告会で一緒に発表してもらう話も出たほど、一体となって関わってもらえました」と振り返る。


 「dejiren AIの開発環境にも入っていただいて、一緒に見ながら作っていきました。最初のサポートが充実していたので、安心して作ることができました」(神田氏)


 「ボードの作り込みで最後の最後まで要望をくんで、限られた期間で一緒にボードイメージを考えてくれました」(丸山氏)


 この取り組みは、同時に走った30のタスクの中で最も高い評価を得ているという。数字で示された成果と、属人化していた対応を仕組みに落とし込んだ点が評価された。


 もっとも、取り組みはまだ途上にある。異常検知の一次情報が入金データである以上、検知サイクルは月次のままだ。カメラなどのセンサー導入も考えられるが、次の一手として構想されているのが気象データの取り込みである。積雪や台風の時期といった外部要因を織り込めれば、季節による正常な変動と本当の異常とを切り分けられ、空振りに終わる現地訪問も減らせるはずだ。


 そしてもう1つ、カクイチがdejiren AIの可能性に期待するのが、技術継承の課題解決だ。


 「ベテランの知識を後輩に引き継ぐ仕組みにも、AIを活用したいと考えています。気象データの取り込みとあわせて、dejiren AIとウイングアークの協力に期待しています」(神田氏)


 140年の歴史を積み重ねてきた老舗企業のカクイチは、「守ること」ではなく「進化し続けること」が使命だという。ウイングアークは、今後もBIとAIの可能性を提案しながら、その道のりを伴走していく。 


Company Profile

株式会社カクイチ

創業:1886年
本社:〒380-0813長野県長野市鶴賀緑町1415 大通センタービル10F
事業内容:ハウス事業/ホース事業/鉄鋼二次建材製品事業/ミネラルウォーター事業/ホテル事業/アクアソリューション事業/太陽光発電事業/EVフォーク事業/MaaS事業/シリカライム事業
URL:https://www.kaku-ichi.co.jp/

株式会社カクイチ
DX推進グループ 業務AI実装チーム リーダー 神田 進吾氏 (写真手前一番左)
DX推進グループ 業務AI実装チーム 六角 勇亮氏(写真手前一番右)
DX推進グループ 業務システム刷新チーム 丸山 芳敬氏
さいたま営業所 髙橋 洋介氏
長岡営業所 西村 将己氏

※本タスクのリーダーは西村氏が務めました。髙橋氏、丸山氏、西村氏はオンラインにてご参加いただきました。

導入製品

様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。

主要生成AIを活用し、あらゆるクラウドサービスのハブとして機能するAIプラットフォーム。生成AIを意識せず、業務データの活用高度化を実現。

 
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