「建設デジタルプラットフォーム」をクラウド環境に構築
技能労働者減少、改正労働基準法適用、物価上昇など、建設業界を取り巻く環境は厳しさを増す。竹中工務店は、創業400年にわたり脈々と受け継がれてきた「建築を業とするものは建築の職人であって、営利のみを追求する商人であってはならない。利害を超越すべし。」という「棟梁精神」のもと、デジタルを駆使して難局を切り開いていく。
そのうえで「お客様の課題解決と事業機会の創出」「圧倒的なお客様満足を生み出すものづくり」「建築とそのプロセスでのサステナブルな価値提供」を、デジタル変革で2030年に目指す姿とした。実現に向けて、全社的なデータ蓄積・活用を支える「建設デジタルプラットフォーム」をクラウド環境に構築。2021年11月から運用を開始した。

同プラットフォームのデータ利活用基盤に、建設DXの鍵を握るデータ蓄積・分析ツールと、業務を見える化するBIツールが採用されている。同プラットフォーム構築の7年前、2014年に国内メーカーのウイングアークが提供する2つ製品をセットで導入したと、竹中工務店の郷門 輝雄氏は振り返る。

「ホストコンピュータの撤廃と合わせて、データ活用ツールとしてDr.Sumを、BIツールとしてMotionBoardを導入しました。Dr.Sumは、大容量データの高速集計・多重処理、ノンプログラミングなどを高く評価しました。MotionBoardは、Dr.Sumとの親和性はもとより、他システムと連携し、データを入力してレポートに反映できるという点にアドバンテージを感じています。当初は事務系システムで利用していましたが、現在では建設デジタルプラットフォームとして、工事マネジメントや経営マネジメントへと活用範囲が広がり、“業務アプリなBI”の真価が発揮されています」
竹中工務店が挑む建設DXの「4つのポイント」
現場の見える化により、工事と人材マネジメントを実践する建設DX。竹中工務店は実践する中で、4つのポイントを見出した。
1.受注活動時のコストカルテ(営業活動ダッシュボード)
2.稼働現場の生産性と人員充足度を可視化(生産性ダッシュボード)
3.社員、外部人材の労働時間上限規制への対応(勤怠管理ダッシュボード)
4.受注の全体最適化、受注見込みシミュレーション(経営ダッシュボード)
4つの重要なポイントについて郷門氏に解説してもらう。
1.受注活動時のコストカルテ(営業活動ダッシュボード)
竹中工務店には、「この土地にビルを建てたいけれど、どのくらい費用がかかるのか」という問い合わせがお客様から寄せられる。従来は、人手でさまざまな情報を収集し費用を算出していた。しかし、MotionBoardで作成した「コストカルテ」と呼ばれる、営業活動ダッシュボードを使うことで、瞬時に概算費用を出すことができ顧客からの問い合わせにも迅速に対応できると、郷門氏は説明する。
「営業から依頼を受けた見積担当者は、お客様からの情報をもとにダッシュボードを使って過去の類似物件を一覧表示し、さらにドリルダウンして個別工事ごとのコストの詳細を表示します。建築地や着工年月などの設定を変更すると、社外の建設費指数や社内の統計値などをもとに地域性や市況、物価上昇に応じて自動的に補正され、瞬時に求めている概算費用が出てきます。このスピード感はこれまでにないものです。お客様からの問い合わせに対しすぐに回答することで、次のステップに迅速に進むことができます」
2.稼働現場の生産性と人員充足状況を可視化(生産性ダッシュボード)
生産性ダッシュボードでは生産性の各種指標を可視化することで、稼働工事の生産性を把握する。また、人手不足が深刻化する中、技能労働者の充足状況を日常的に把握することも非常に重要なことであると郷門氏は話し、こう続ける。
「ダッシュボードを使って技能労働者の工数データを全店で集約・可視化を実現し、また、職種別、協力会社別等の多面での工数分析を可能にしています。技能労働者の予定と実績工数から充足状況を把握し、工事繁忙期のひっ迫状況、ボトルネック職種を把握し対策を検討できます。さらに、採用工法等の評価をする省人化の達成状況等の把握が容易です。これらの結果は、次工事の精度の高い工数計画の立案につながっていきます」
3.社員、外部人材の労働時間上限規制への対応(勤怠管理ダッシュボード)
建設業における労働時間上限規制への対応では、社内だけでなく外部人材の勤怠情報の把握が必要となる。勤怠管理ダッシュボードは、社内システムの社員の勤怠情報と、外部サービスの外部人材の勤怠情報をDr.Sumへ自動連携し、2つの勤怠情報を統合した可視化を実現。効果について郷門氏は述べる。
「従来は、原則上長のみが上限時間・残業時間を把握していました。ダッシュボードにより関係者で情報を共有することにより法令順守の徹底が図れます。また、データに基づき人員配置に関わる対策の立案・実行が可能です」
4.受注の全体最適化、受注見込みシミュレーション(経営ダッシュボード)
建設業では、受注と利益、生産体制のバランスが重要となる。限りあるリソースの中で、適正な受注と利益確保をいかに図るか。さまざまな観点から可視化し経営判断を支援するのが「経営ダッシュボード」だ。郷門氏は「建設業にとって非常に有用なツールだ」と話し説明する。
「従来、需給バランスは勘と経験に頼っていた側面が強くあります。工事が大型化し、受注競争の激化する中、勘と経験だけでは対応が難しいのが現状です。経営ダッシュボードは、受注見込みに対するシミュレーションが行えます。A地域でこの工事、B地域でこの工事を受注とした場合、人員が足りているのかを見ながら、受注高、完成工事高、完成工事利益がどうなるのかを、瞬時に把握できます。また、発注時期、価格の変動に対する影響も瞬時に把握することが可能です。人員体制に応じた適正な受注量の把握と受注戦略を実現できます」
さらに規模別工事一覧と利益見込みにより、大型工事の発注にズレが生じた場合に、違う工事で埋めるという検討がタイムリーかつ適切に行える。「中小規模の複数の工事を挟むことで需給バランスの調整も可能」と郷門氏は強調する。
お客様に受注する意思があるかどうかを、できるだけ早く示す必要がある。経営ダッシュボードを利用することで、受注計画を見ながら当該案件の受注の可否を判断し、お客様に迅速かつ適切な回答を提示できる。

事務系の新入社員は4ヶ月間 MotionBoardの使い方を実習
竹中工務店がMotionBoardを使って作成したダッシュボード数は1万ボードに及ぶ。テスト的なものも多いが、それだけ作成しやすいということだ。「社内ホームページで活用事例や操作方法などを開示しています。また、事務系の新入社員は1年間の研修の中で、4ヶ月間デジタル室の先輩社員の指導のもとMotionBoardの使い方を実習します。こうした取り組みを通じて、MotionBoardの定着化を図り、裾野の拡大とともに、データ活用で課題を解決する文化を根付かせています」(郷門氏)。
MotionBoardにより地に足の着いた建設DXを進める竹中工務店。データドリブン経営が建設業を変えていく。





