導入事例

新潟県柏崎市

新潟県柏崎市

行政情報を統合データベース化し、「デジタル予算書」として公開
行政デジタル化の一歩先のかたちを示す

新潟県柏崎市
製品
業種

行政

新潟県柏崎市は、行政情報の可視化・オープン化や高度な行政経営の実現を目的に、情報活用ダッシュボード「MotionBoard」を活用し、市の予算・決算、事業の進行・評価・報告までの情報を体系的に結び付けた仕組みを構築。このデータを基にした「デジタル予算書」をインターネットでも公開している。自治体予算書のデジタル化に加えて予算関連データを統合的に紐づけ、かつデータベースとして蓄積するこの仕組みは、自治体における情報活用・公開の先進的な取り組みとして広く注目されている。

導入背景

自治体の予算書は、市の職員や市議会議員の活動の基本となるものだ。柏崎市の場合、その厚さは3.2cmほどもあり、WebサイトではPDFファイルの形式で公開していたが、見づらさや分かりづらいという声が寄せられていた。また、市の予算・決算、事業の進行・評価・報告までの情報を体系的に結び付けた仕組みも求められた。

課題
  • 予算・実績、進行管理、事業報告などの情報が部署ごとにバラバラに管理されていて活用しづらかった
  • 庁内職員や市議会議員、市民によるコミュニケーションを活性化させたい
  • インターネットで公開していた予算書・決算書が、分かりづらかった
解決策導入ポイント
  • 政策関連情報を統合可能に
  • 庁内職員や市議会議員、市民が同一データを共有可能に
  • 条件検索やソート、関連情報とのリンク等を可能に
効果
  • 横断的な情報確認を実現
  • 市民行政間のコミュニケーションの活性化に期待
  • 従来把握されづらかった情報へのアクセス性を向上

市政のデジタル化で市民の安心・安全と快適な日常の創出を目指す


 新潟県のほぼ中央に位置する柏崎市は、海と山に囲まれた風光明媚な都市で、人口約8万1700人を数える。古くから北国街道の宿場町、北前船の寄港地など、交通の要衝として栄え、その利便性により縮(ちぢみ)の行商が盛んに行われ豊かな経済と伝統文化を築いた。明治時代には石油が噴出したことにより多くの製油会社が設立され、それを背景に機械金属工業も発展し、現在の産業の基盤となっている。


 そんな同市では昨今、櫻井 雅浩市長のリーダーシップのもと、「市政のデジタル化」によるさらなる行政サービスの向上に取り組んでいる。例えば、市議会では議員全員がiPadを利用し、配付資料のペーパーレス化を図っており、また2021年度には、ゼロ歳から3歳までの子どもを持つ子育て世代を対象とした子育て応援券のデジタル化も実施する予定だ。


 国を挙げてデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進が提唱されているなか、同市では2020年度にデジタル・トランスフォーメーション推進計画を策定し、暮らし・産業・行政のDXなどを推進していく構えだ。そのDXの推進において櫻井市長が最も重要とするのが、市民の様々な生活シーンにおいて、サービスの利便性が向上し、その成果として市民の安心・安全が確保され、快適な日常を送れるようになることだ。これらの実現に向けて、全庁的に現状の課題とデジタル化による改善の可能性を洗い出すとともに、効果が認められるものからスピード感をもって実現していくとしている。


行政情報の可視化でも豊富な実績のある「MotionBoard」を採用


 行政のデジタル活用において柏崎市のDXの取り組みを象徴するのが「デジタル予算書」だ。その誕生のきっかけは、従来ながらの紙やPDFファイルの文書形式による予算書・決算書の見づらさや分かりづらさにあった。


 従来、同市の予算書は、厚さが3.2cm、重さ1.4kgにもなるものであり、市の職員のみならず、市議会議員(市議)もこの予算書をもとに業務を行っていた。また、予算書・決算書はWeb上からPDFファイルで公開していたが、市民からは見にくい、分かりにくいといった声も寄せられていたという。櫻井市長自身、30年前に市議として予算書を使うことになった時から、何とかデジタル化ができないものかと考えていたことから、2017年、予算書のデジタル化に向けた取り組みがスタートした。


図1
厚さ3.2cm、重さ1.4kgにもなっていた柏崎市の予算書

 柏崎市 総合企画部 企画政策課 課長代理の若月啓満氏は、「紙やPDFでの配布・公開が一般的な予算書のデータ活用およびデータの可視化を通じ、デジタル化による高度な行政経営を実現することを目指しました。その最初の取り組みとして、市民、市議、市職員など誰もが使いやすく、分かりやすい予算書となることを追求しました」と振り返る。


 予算書のデジタル化プロジェクトでは、市の構想に基づき、オプテージ社が提供する行政経営管理コンサルティングサービスを適用。両者は2018年にデジタル予算書にふさわしいシステムについて検討を重ねた結果、データを可視化する基盤として採用を決定したのがウイングアークの情報活用ダッシュボード「MotionBoard」だった。


「行政情報の可視化においてさまざまな実績を持つMotion Boardを用いることで、各情報の見やすさやアクセス性を向上できると考えました」(若月氏)


 まず2018年秋に、MotionBoardを使ったトライアルのシステムを構築し、庁内職員や市議に対してデモを実施した。市議に対しては、デモと合わせてデジタル予算書の構想の説明を行った。すると、その分かりやすさなどから市議からの評価は高く、コンセプトの正しさが実証されることとなった。


 柏崎市 財務部 財政管理課 財政係 主査の板谷大良氏は、「市議の方々は既に議会でiPadを使っていることもあって、予算書がデジタル化されることで、重い紙の予算書を持ち歩かなくともiPadで見られるというのは歓迎だったのではないでしょうか」と話す。


図2

見やすさ・分かりやすさにこだわったユーザーインターフェイス


 2019年度には、コンセプトの検証結果を踏まえて具体的なデジタル予算書の導入計画を策定。そこには市民への提供方法も記されている。そして、2020年に入ると、要件定義から運用までの設定をつめていき、操作マニュアルも作成した。


「財務会計システムのデータと、それ以外の総合計画の進捗状況にかかるデータや各地区情報など、それまで個々に管理してきたデータをどう連携し活用できるようにするかで苦労しました。技術的な問題に限らず、関係部署との連絡や調整などを行いながら諸々の課題を解決していきました」(板谷氏)


 デジタル予算書の活用シーンについては、職員の目線、市議の目線、市民の目線とそれぞれで想定し話し合いながら、ユーザーインターフェイスなどをつめていった。


「特にWeb版のユーザーインターフェイスについては、2021年2月12日のWeb公開ギリギリまで、ここはこう見せた方が分かりやすいのではないかなど、市長とのやり取りが続きました。この点に関しても、ウイングアークの方々には、直前まで画面構成の調整を行ってもらう等、さまざまな協力をしてもらいました」(若月氏)


行政デジタル化の先駆者として横展開も視野に


 柏崎市のデジタル予算書は、まず2020年11月4日に庁内での運用をスタートし、2021年2月12日よりインターネット公開されている。


図3

 デジタル予算書では、これまで個々に管理されていた予算・実績、進行管理、事業報告といった政策関連情報を統合データ化することで、横断的な情報確認を実現するとともに、条件検索やソート、関連情報とのリンク等により、従来把握されづらかった情報へのアクセス性の向上も実現している。


 また、既存公開情報との連携およびアクセス性の向上により、行政関連情報をより多くの市民と共有可能となったうえ、庁内職員や市議、市民が同一データを共有し議論できるようになったことで、市民行政間のコミュニケーションの活性化にも期待が集まる。


図4
MotionBoardを活用した「デジタル予算書」

 インターネット公開後に実施した市議向けの操作説明会では、とりわけその検索性の高さを評価する声が目立ったという。また庁内職員からも、予算の確認がしやすい、分かりやすい仕組みだといった評価の声が寄せられている。


 「これまで市議会では、2つのかばんに分けて予算資料を持ち込んで答弁するといった姿が当たり前のように見られましたが、そうした光景も変わってくることでしょう。議会の中身についても、従来は議論のベースとなる情報のやり取りがどうしても多くなりがちでしたが、情報共有が進むことでそうした情報を踏まえた上で、未来の市政のあり方により特化して語り合えるようになるのではと期待しています」(若月氏)


 柏崎市が全国に先駆けて開発したデジタル予算書は、国や他の自治体からも注目を集めている。今後、同市では、そうした他の行政機関とも積極的に情報交換をしながらシステムをブラッシュアップしていくとともに、データ比較など、デジタル予算書をベースとして、多くの自治体と高度な行政経営について広く議論していくことを視野に入れている。


Company Profile

新潟県柏崎市

市制施行 :昭和15年
人口 :86,833人(2015年国勢調査)
URL :https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/
新潟県のほぼ中央に位置する柏崎市は、古くから北国街道の宿場町、北前船の寄港地など交通の要衝として栄え、豊かな経済と伝統文化を築いた。明治時代には多くの製油会社が設立され、それを背景に機械金属工業も発展し、現在の産業の基盤となっている。現在同市では、「市政のデジタル化」によるさらなる行政サービスの向上に取り組み、2020年度にはデジタル・トランスフォーメーション推進計画を策定し、暮らし・産業・行政のDXなどを推進している。

柏崎市 総合企画部 企画政策課 課長代理
若月 啓満 氏(写真右)

柏崎市 財務部 財政管理課 財政係 主査
板谷 大良 氏(写真左)
* 部署名は取材当時のものです。

導入製品

BIツールを超えたダッシュボード「MotionBoard」。様々なデータをリアルタイムに可視化。クラウドサービスは月額30,000円から

 
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