導入事例

今井金商株式会社

今井金商株式会社

鉄鋼卸売業界における積年の課題を先駆的に解決
ミルシートの検索性向上と押印作業の自動化で大幅に負荷を軽減

今井金商株式会社
業種

卸売・小売

北海道全域をカバーする総合建材商社の今井金商株式会社(以下、今井金商)では、鉄鋼製品の流通において添付されるミルシート(鋼材検査証明書)の管理をウイングアークの「invoiceAgent 文書管理」「invoiceAgent AI OCR」を活用することにより効率化。札幌本店で業務負荷を大幅に軽減できることを確認し、今後は取り組みを他の拠点にも展開して、さらなる効率化や人材価値の向上にもつなげていく。

導入背景

ミルシートは鉄鋼製品メーカーによって主に紙で発行されるもので、今井金商のような流通業者は建設会社などの需要者が求める部数をコピーし、指定通りに押印を行って転送しなければならない。ミルシートの項目やフォーマットは工場によっても異なるため、電子化が難しく、管理の煩雑さやコストは業界共通の課題となっている。

課題
  • 多岐にわたるミルシートを管理しなければならず、検索や出力にかかる作業が属人化していた 
  • 繁忙時は印刷・押印作業に他部署の支援を必要とするほど、労力とコストの負担が大きかった
  • 決められた期限内に納める必要があるため、担当者がストレスを感じていた
解決策導入ポイント
  • 指定したミルシートに対して、個別要件の印影をまとめて付加し印刷できる仕組みを導入
  • PDF化したミルシートをAI OCRでデータ化し検索性向上
効果
  • 最大10人程度を動員していた作業を1〜2人で対応できるようになり、業務負担が削減
  • フォルダ管理や検索、作業指示などにかかる属人化の解消
  • すき間時間を活用して作業ができるようになり、依頼を受けてからの作業時間が短縮可能に
  • 期限までの余裕が生まれて担当者のストレスが減

明治時代から150年の伝統を受け継ぐ総合建材商社


 北海道内最大規模の総合建材商社である今井金商は、鉄鋼・建材を中心とした建設にまつわる材料を販売している。札幌、旭川、釧路、苫小牧、帯広に拠点を構え、道内全域をカバーする販売網を形成している。


 昭和24年の設立から70年以上の歴史を有するが、さらに源流をたどれば北海道開拓が本格化して間もない明治5年創業、以来150年にわたって伝統を受け継いできた。実績を積み重ねてきた同社に対して建築・土木業界からの信頼は厚く、大型物件建設の主要なサプライヤーとして鉄鋼や建材を供給。ひいては豊かで魅力ある北海道の発展と人々の暮らしに資する企業であり、その姿勢は基本理念「社会と共に存在価値ある企業/社業の発展を通じて社会に貢献する企業」で明確に示している。


ミルシート管理の効率化は鉄鋼卸売業界の懸案事項


 今井金商の事業は、鉄鋼部門・建材部門・工事部門の大きく3つで構成されており、鉄鋼部門は鋼材・鋼管、コンクリートを支える鉄筋などの棒鋼、建築物の外装などに使用する鉄鋼製品、基礎工事で広く用いられる鋼矢板や鋼管杭をはじめとする土木製品を、仕入れから加工・成形、物流までスピーディーに対応している。 


 鉄鋼製品は、メーカーが製品情報・化学成分・検査方法などを記載したミルシートを発行し、それを需要者のもとに渡す必要がある。今井金商のような流通業者が注文して販売する場合には、受け取ったミルシートを保管しておき、販売後にコピーし需要者の求める通りに記名・押印して転送しなければならない。 


 流通業者におけるミルシート管理の問題を、執行役員 業務本部長の伊藤明彦氏は次のように説明する。 


 「管理対象のミルシートは、数え切れないほど多くの種類があります。例えばパイプ一つにしても、厚さや構造が異なればミルシートも違いますし、ロットによって記載される製造番号が変わるのでミルシートもそれにあわせて発行されます。大きなH形鋼のような製品はミルシートが1対1なのでまだ管理しやすいのですが、まとめて作られた20本を仕入れて小出しに販売するようなケースでは、1本でも残っていれば売り切るまでそのミルシートを残しておき、間違えずに探し出して添付できるようにしておく必要があるのです」 


執行役員 業務本部長 伊藤 明彦氏

 総務部 部長の北村 隆二氏が話を継ぐ。


 「ミルシートは主に紙で発行し流通させるのが業界の慣例となっています。また、記載項目やフォーマットは統一されておらず、同じメーカーであっても工場によって異なるケースもあります。そのため管理や発行には無視できないほどのコストや業務負荷を強いられており、同業者からはミルシートを印刷して押印するための専任者を置いているという話も聞きました。業界全体が問題視してきたものの、根本的な解決につながるような具体的な動きは見られないまま今日に至っているのです」 


 今井金商では営業職や事務職の担当者が、本来の業務のかたわらミルシートを処理している。ミルシートはPDF化して共有フォルダに保存していたが、保存枚数が多いため表示するまでに読み込み時間も含めて1分程度かかり、さらに印刷し押印する手間がかかる。大型物件ではミルシートの数も多くなり、予備に2部ずつ欲しいと言われることもあるので数百枚に上ることも珍しくない。また、押印はいわゆる横印だけでいい場合もあるが、得意先によっては角印や担当者印を求められることもあり、複数種類を押すとなると大変手間がかかる。 


 実務者としての経験を持つ札幌本店 鉄鋼部 課長代理 東海林岳氏は、「他の部署からも力を借りて、数日がかりで対応したこともあります。検索や作業指示で属人化が生じていましたし、直接的に利益を生み出す作業ではないため、どうにかして変えたいという思いがありました。また、期限内に納めなければならないため、ストレスを感じる作業でもありました」と現場の苦労を説明する。 


invoiceAgentはデジタル化の専門家が提案する最適解の手法


 こうした状況を改善しようと今井金商では、同業界の事例やミルシートを発行する鉄鋼業界の変化を待つのではなく、先んじて管理方法を見直すことにした。伊藤氏はデジタル化による業務変革をサポートする事業者の中から、付き合いのあった2社に相談し、そのうちの1社から、ウイングアークのinvoiceAgent文書管理でミルシートの保管から印刷・押印までを完結させる構想を提案された。


 ミルシートをメーカーから受領するとPDF化するまでは変わりはないが、検索に役立つ記載項目をOCR技術によって自動で読み取り、デジタルデータ化することで検索性を高めることができる。印刷時には対象のミルシートをピックアップすると、取引先の要件にあわせて印影を加えたPDFが印刷対象用のフォルダに格納されるので、あとは一括で印刷指示を出すだけという仕組みだ。 



 伊藤氏はウイングアークから話を聞いて理解を深め、この提案を前向きに捉えた。また、提案を依頼したもう1社に他の解決方法がないか尋ねたところ、「invoiceAgentより優れたソリューションを探しだせない」と提案を辞退したことも、invoiceAgentが最善策だという判断する後押しになった。その後、本当に効率化につながるのか、デモを通じて確認するなどしながら検討を進めた上で導入に踏み切った。


 営業職や事務職の誰もが業務で欠かせないプロセスだけに、伊藤氏は導入ステップや運用面にも気を配った。導入は札幌本店から着手して、ノウハウを蓄積して質問や相談を受けても速やかに対応できる体制を築いてから、各支店へと展開することにした。 


 システムの導入作業は2022年2月ごろから始まり、6月ごろから使用を開始。その過程を三氏は以下のようにふり返る。


 「ミルシートは再発行の依頼もあるため、過去分についても保管しておく必要があり、過去2年分を新たな仕組みでの管理対象としました。札幌本店だけでも2000枚あるため、読み込み作業は営業サイドだけでカバーしきれないと判断して、外部のアウトソーシングサービスを利用しました」(北村氏)


総務部 部長 北村 隆二氏

 「ミルシートの種類が増えたり、メーカーの合併でレイアウトが変わったりすることが予想されるため、本来であれば設定やOCRの精度を高めるための調整は自分たちで対応できるようにしたいところですが、今回は利用を重視し割り切って外部に発注しました。また、社内の利用者への指導も依頼しました」(伊藤氏) 


 「私たちは使い方を覚えて慣れる必要があっても、特に印象に残るほどの苦労はありませんでした。修正の相談をした際にはウイングアークの担当者が来社してサポートしてくれるなど、支えがあったからでしょう」(東海林氏) 


ミルシート出力の負担が目に見えて軽減し、すき間時間の有効活用も可能に


 札幌本店でinvoiceAgent文書管理の利用を開始して1年ほどが経過し、実際に利用してきた東海林氏はどのように評価しているのか。 


 「実感では初回の条件検索で8割程度は意図したミルシートを取り出せています。100%を求めがちですが、それは難しいことだと理解できれば便利に利用できると思います。私以外の社員も、特に出力するミルシートが多ければ多いほど楽になったと言っていますし、見ていても負担が軽減されていることは明らかです。以前なら他部署の手伝いも依頼して10人体制だったような量でも、今では多くて12人で完了できていますから、その差は歴然です」と話し、こう続ける。 


 「出力が比較的多い得意先を担当しているのですが、以前は依頼を受けてから納期に追われる中で対応していました。ところが今では、依頼されそうなものを先回りして対応できるように。例えば空いている5分で10枚だけ出しておくような対応を重ねることで、依頼が来てから必要な作業時間が減り、ストレスも減っています」 


札幌本店 鉄鋼部 課長代理 東海林 岳氏

全拠点への展開によって効率化を進め、さらに人材の価値向上も目指す


 札幌本店で目に見える成果が出て、ノウハウも蓄積できていることから、伊藤氏は支店への展開を決定して準備を進めているところだ。取り組みの全体像を描くために、各拠点に対して対象となるミルシートの枚数を集計するよう依頼したところ、迅速な回答が集まったことからも、関心の大きさを感じている。ただし、まだ社内での利用者が限定的なため、使い続けていく中でより使いやすい仕組みにブラッシュアップしていく考えだ。 


 「これまでウイングアークに要望すると、開発に携わっている方が札幌まで来て話を聞き、それを機能に盛り込んでいただけました。ミルシートに特化した製品ではないので、もちろん全てに対応できないことは理解していますが、聞く姿勢が大変素晴らしいと感じます。これからもいろいろな面で支援をお願いしたいと思っています」(北村氏) 


  東海林氏は、invoiceAgentで構築した使いやすい仕組みの広がりが、効率化をさらに進めようとする機運の高まりにつながることを期待する。 


 「ミルシートを通して新しい手法や外部の力を借りれば楽にできるのだとわかれば、これまで課題感を抱えながら行ってきた業務も、変えられるのではないかという発想が生まれ、効率化が促進されるでしょう。また、自社だけでなく得意先の利便性を高められる選択肢を提供することも考えていきたいです。invoiceAgentの拡張機能による電子配信も、その一つだと思います」 


 伊藤氏は、札幌本店を含む全5拠点でミルシートに関する新たな業務が浸透すれば、将来では効率化にとどまらない変化が生まれるものと期待している。 


 「これまで手作業が多かっただけに、ヒューマンエラーの抑制につながります。また、属人化が解消すれば他の業務にも目を向けられるため、ジョブローテーションで業務知識やスキルを複合的に習得するなど、1人ひとりが価値を高められるようになるでしょう。弊社の取り組みはまだ緒についたばかりですが、成果を共有して業界全体の発展にも寄与できるような水準にしたいと考えています」 


 明治時代に開拓が始まって以来、フロンティア精神が根付く北海道の地で始まった取り組みは、鉄鋼卸売業界における積年の課題を解決する手がかりになりそうだ。 


Company Profile

今井金商株式会社

設立:昭和24年(創業明治5年)
所在地:北海道札幌市
事業内容:北海道全域において鉄鋼・鉄鋼二次製品・建設諸材料・非鉄金属・一般金物の販売を行っている。
URL:https://www.imaikinshou.co.jp/

執行役員 業務本部長 伊藤 明彦氏(写真中央)
総務部 部長 北村 隆二氏(写真左)
札幌本店 鉄鋼部 課長代理 東海林 岳氏(写真右)

導入製品

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