「地方自治情報化推進フェア2019」イベントレポート③

行政サービスの高度化や地域の課題解決のためのICT活用を推進する「地方自治情報化推進フェア2019」が、2019年10月10日(木)・11日(金)に東京ビッグサイト青海展示棟Bホールで開かれた。ウイングアーク1stは同イベントに出展。官民データ活用推進基本法及び「デジタル・ガバメント推進方針」に沿った変化が求められる行政に向け、ソリューションの展示やセッションを行った。

第三回となるこの記事では櫻井雅浩(さくらい・まさひろ)柏崎市長によるセッションの模様をレポートし、同市で導入が進められているデジタル予算書システムについてご紹介する。ウイングアーク1stとオプテージ社、そして柏崎市の3者が共同で構築している同システムはどのようにデータを管理し、どのような未来に行政を導くのだろうか。

市長自らの手による行政改革が発端

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柏崎市の魅力について語る櫻井市長

セッションは櫻井市長ご自身による新潟県柏崎市の紹介から始まった。原子力発電所を所有し、日本石油(現JXTGエネルギー)株式会社や株式会社リケンと深いつながりを持つなどエネルギー事業・工業の盛んな柏崎市だが、多くの地方市町村と同様に人口減少が目下の課題。労働力の不足により、新潟県の小学校教員採用試験の倍率は約1.2倍に。2018年度の柏崎市の財源は約47億円不足していたそうだ。
人口減少やそれに付随する労働力・財源不足に対処すべく、市長は自ら行政改革をスタート。849の事務事業を洗い出し「やらなくてもいい業務」と「やるべき業務」の峻別を行った。その結果、2億400万円のコスト削減に成功し、その分の財源を介護事業に回すことができたという。
そして、櫻井市長が改革の対象として次に目を向けたのは「予算書のデジタル化」だった。

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全国の自治体から参加者が集まった超満員の会場

分かりやすいデジタル予算書システムの効果とは?


これまで行政はデジタル化が非常に遅れていたが、資料を分かりやすく見える化することで市民・議員・職員の誰しもに有益な情報を与えられるはずだと櫻井市長。まずは行政のベースとなる予算書をデジタル化し閲覧性・検索性を高めることに着手したいという。デジタル予算書のコンセプトは次の通り。

  • 「施策」「事務作業」「予算項目(科目別)」といった様々な角度から「シンプルに閲覧できる」
  • 「検索」や「ソート」、「絞り込み」といった「デジタル技術が得意とする機能の充実」
  • 「地図情報」、「写真」といった数字以外の情報を用いた「分かりやすさ」
  • 庁内でバラバラに管理されていた「Excel」や「システム」の「情報の一元管理」

それでは実際にデジタル予算書の実際の活用画面を見てみよう。紙の予算書にはない利点としてまず挙げられるのが"検索性の高さ"だ。

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画像1(検索画面・事業概要)

デジタル予算書では、画像1左上のように条件を絞り込んだりキーワードを入力したりするだけで該当する資料を呼び出すことが可能となる。
目当ての予算書が見つかったら、詳細ボタンをクリック。その結果「事業概要」「事業実績」「事業評価」「路線情報」のそれぞれが分かりやすく整理されたページが呼び出せる(画像1右下)。「事業の目的・概要」は表、「予算・決済の推移・財源の内訳」は棒グラフなどそれぞれに適したチャート形式で数値が表示され、1画面で事業予算の詳細が把握できる。

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画像2(事業実績・路線情報)

ほかのタブでは「事務事業の活動情報や目標」をグラフで確認したり、地図上で対象となる市道を確認したりすることもできる(画像2)。
すなわち、デジタル予算書システムは「事業の内訳を見たい視点で見る」ことを可能にしてくれるツールといえる。従来の紙ベースの予算書と比較すれば、その分析しやすさは一目で分かるだろう(画像3)。

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画像3(紙ベースの予算書)

デジタル予算書システムは、2018年度に議員を対象に行われたデモンストレーションにおいても高評価が得られたとのこと。オープンデータを見やすくするだけでなくクローズドなデータは区別して管理できるため事務担当者の使いやすさも高いという。
再度のデモと改善を経て2020年より本格導入される予定となっている。

目指すは「洗練された田舎・柏崎」


デジタル化の価値を高く評価する櫻井市長だが、アナログを否定するわけではない。重要なのはデジタルとアナログを融合させ、「住民にとって便利で優しい行政を実現すること」だという。
これからの柏崎市のビジョンとして市長が掲げるのが「洗練された田舎・柏崎」。大様で牧歌的な田舎の良さを大事にしながら洗練されたデジタル行政を実現し、住民満足を実現できる自治体をつくっていきたいとの決意表明とともにセッションの幕を閉じられた。

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ウイングアーク1st 公共グループ:public@wingarc.com

 

 

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