「地方自治情報化推進フェア2019」イベントレポート①
2019年10月10日(木)・11日(金)、行政の情報システムにまつわるベンダーや専門家が一堂に会する「地方自治情報化推進フェア2019」が東京ビッグサイト青海展示棟Bホールで開かれた。行政は官民データ活用推進基本法及び「デジタル・ガバメント推進方針」に示された方向性を具体化し、実行することを目指している。そんななか、人口減少・高齢化を始めとする地域の課題に対処し行政サービスを高度化するためのICTの活用を推進すべく、同イベントは開催された。
本記事では同イベントでウイングアーク1stが展開したソリューションを紹介し、その有用性と活用のポイントに迫りたい。
「自治体データを力に変える」デジタル行政ソリューション
2019年、ウイングアーク1stのデジタル行政ソリューションとしては以下の5つが提示された。
- 文書データ活用・AI-OCR
- 自治体レポーティング
- 行政データ活用
- 行政評価・EBPM
- データヘルス
5つのソリューションの目的は「自治体データを力に変える」こと。実際に自治体の現場で活用が始まっており、そこからのフィードバックを取り込むことで昨年以上に進化・深化しているのがポイントだ(昨年のレポートはコチラ)。
さらに本年よりウイングアーク1stの製品を活用するベンダーや行政の現場から生の声を伝えるミニセッションも開催されることとなった(特別セッションの詳細レポートは第二回、第三回)。
1.文書データ活用・AI-OCR ┃書類をデータ化、同時に整理
文字や記号をスキャンし、デジタル化するOCR。ウイングアーク1stのSPAは手書き、活字、記号などの文字をAI-OCRによってデータ化し、タイトルや項目を基準に自動で分類してくれる。
データ活用を進める際、障害となるのがアナログ資料の山だ。紙やFAXによる申請書、給与支払報告書などに対するデータパンチの手間やコストがかかっている、原本が紙のために活用できていないことが多いのではないだろうか。
SPAであれば時間と人手がかかるデータの入力と分類の手間を省けるうえ、データ化した書類の高速検索、公開できない箇所の黒塗りなどをオールインワンで処理できる。会場では手書き文書のスキャニングを通して識字率や大量帳票からのデータ活用イメージをリアルにつかめるデモンストレーションが用意されていた。
2.自治体レポーティング┃わかりやすいレポートを誰もが簡単に
取り入れたデータはわかりやすい形に変換することで利用価値が一気に高まる。
そのサポートツールとしてウイングアーク1stが提示するのがMotionBoard。単なる数字の羅列からグラフや表形式、マップなどを組み合わせた最適な形にデータを加工してくれるBIダッシュボードツールだ。
例えば予算編成を行う際に、執行額の積み上げと月別支出額を重ね合わせたグラフを見せることで、予算オーバーの理由をデータの相関関係から分析できるようになり、誰もが適正な意思決定ができるようになる。また展示内では、単年度の情報のみで判断しがちな人事評価にタレントマネジメントの考え方を取り入れ、過年度の推移や上司、部下の評価状況の差異を明らかにする考え方が示された。
3.行政データ活用┃データから行政の実態を捉える
様々なデータを活用するためには、異なるデータ資源にアクセスするためのプラットフォームが必要となる。
MotionBoardやDr.Sum(誰でも抽出・分析できる形でデータを一元管理可能なプラットフォームシステム)を活用することで、データをシームレスかつ高速に見やすく加工するための環境が整うだろう。会場では人口分布や、人口動態と連携したマップを例として提示。年齢や世帯でソートをかけ一定のレベル別に色分けするなど、多様なデータの加工例が示された。
その結果、例えば「この地域の3点間には5歳以下の児童が多いから働きながら子育てができるよう託児所を設置しよう」など合理的な行政サービスの策定が可能に。前述のミニセッションでも、データを生活保護ケースワーカーの見回りに生かすなど独自の活用法がみられた。
4.行政評価┃EBPMによる行政経営の高度化
ウイングアーク1stは、関西電力グループのオプテージ社でコンサル事業を手掛ける同社ビジネスコンサルティング部と共同でEBPMの導入による行政経営の高度化に取り組んでいる。
自治体には限られた財源で最大の効果を上げるため、客観的・具体的なデータに基づいた行政経営を実行することが求められる。会場では、予算・決算・行政評価などの情報一元化による行政マネジメントサイクルへのデータ活用だけでなく、総務省や内閣府が公開しているオープンデータを加工して使いやすい形で独自に提供する「他自治体との比較可能な統計データ」など、データに基づいた政策立案を支援する様々なサービスが紹介されていた。
両社の取り組みについては、第三回の記事でも詳しく取り上げている。
5.データヘルス┃地域と健康の可視化
高齢化の進む日本で大きな課題となっている医療費の肥大化。
医療費の適正化を実現するため、MotionBoardを活用して地域の医療データ、健(検)診データ等を可視化し"活用"しようというのがウイングアーク1stのデータヘルスサービス。本サービスはデータヘルスの分野でパイオニアといわれるデータホライゾン社と共同で企画、開発された。
地域住民の医療状況や受診状況をグラフィカルに、かつ地域性を把握するためマップ上で総覧することで健康管理に役立てられるのがそのポイント。例えば未受診者の多い地域をマップで表現することも可能だ。そのマップに紐づけられた集団、個人へ受診を促すことで、病の悪化を防ぎ地域の健康増進とともに医療費の適正化に取り組める。
「腎症重症化予防」「脳梗塞発症予防」「COPD早期発見」など医療行政の担当者が知りたいポイントごとにメニューが用意されているため、"実際に使える"ことは一目瞭然だ。
本イベントではこのように、自治体の現場からのリアルなフィードバックとともに、自治体データの様々な活用例やイメージが示され、データ活用によってどのように自治体業務が変革していくのか、ウイングアーク1stのソリューションから示された。