予定と実績の差異理由などをBIに直接入力できることが 素早い原因の把握と解決のためのアクションを可能にする

Company Profile

社名:日本トランスオーシャン航空株式会社
事業内容:①定期航空運送事業及び不定期航空運送事業 ➁航空機整備事業 ③その他の事業
資本金:45億3,720万円
設立:1967年6月20日(運航開始同年7月1日)
URL:https://jta-okinawa.com/
業種:その他
利用製品:MotionBoard、Dr.Sum
用途:予算実績管理 研修受講管理

お話を伺った方

日本トランスオーシャン航空株式会社
路線事業部 路線業務グループ 課長補佐
国吉 真也氏

JTAインフォコム株式会社
システムグループ
具志堅 古一郎氏

JTAインフォコム株式会社
システムグループ
仲栄真 一成氏

JTAインフォコム株式会社
システムグループ
金城 琢巳氏

JTAインフォコム株式会社
システムグループ
古謝 洋子氏

  • DX
  • グループ展開
  • データ活用促進
  • 人材育成
  • 社員体験価値(EX)向上
  • 顧客体験価値(CX)向上

BI導入で部門別採算制度の運用を効率化
選択の決め手となった入力アイテム機能

日本トランスオーシャン航空株式会社(以下JTA)はJALグループの一員として「沖縄に一番必要とされるフルサービスキャリア」となることをビジョンに、地域への貢献と安全運航の堅持に力を注いでいます。

 JTAは2020年に「New WINGプロジェクト」を立ち上げ、「社員一人ひとりの人生が豊かになるような、新たなワークスタイルへと変革し、社員とJTAの成長を実現する」ことを目指しており、社内全部門で取り組みを進めています。

 DXに積極的に取り組み、顧客体験価値(CX)については、JALグループプラットフォームを活用し、沖縄の発展に貢献する施策を展開。社員体験価値(EX)については、業務プロセス変革により働き方改革を加速させるとともに、次世代を担う人材育成に資する活用を目指しています。

 JTAは2017年にDr.Sum、Dr.Sum Connect、MotionBoardによるBIを導入(※)。その背景には2010年、JALの会長に就任した稲盛和夫氏が浸透させた部門別採算制度(アメーバ経営)がありました。当時、毎月の財務実績を集計し、当月・翌月の予定と見通しを立て、予定と実績との差異理由を報告するには多大な工数がかかっていました。システム導入の最大のねらいは、部門別採算制度を効率的に運用するための仕組みづくりでした。

 新システムにより、財務、運航、人事給与などの各データベースからDr.Sum Connectによってデータを抽出・加工し、Dr.Sumに格納。一元管理されたデータを元にMotionBoardで実績の集計と予定・見通しの分析を行うことで、大幅な工数の削減が実現しました。各部門の担当者が予定と実績の差異理由をMotionBoardに直接入力することで、マネージメントから経営トップまでが鮮度の高い現場の状態を理解することが可能となり、判断のスピードアップと正確な意思決定が実現しています。

※2019年に公開した導入事例はこちら

 BI導入を担当したJTA 路線事業部 路線業務グループ 課長補佐の国吉 真也氏は次のように振り返ります。

「MotionBoard選択の決め手は他社製品とは違い、データ入力機能があることでした。それぞれの部門、職種の社内ユーザー自身が様々な情報を入力することができます。データの可視化だけでなく、業務アプリケーションのように活用できるところが、MotionBoardの強みです」

 同社は財務関連の機能だけではなく、教育受講管理にもMotionBoardを活用しています。受講履歴をiPadで閲覧・入力できる機能を2022年に追加。運航乗務員や客室乗務員、整備士などが、自分の受けるべき教育を確認し、受講完了をすぐに報告できるため、受講履歴管理も大幅に効率化されました。

ユーザー数が全社員800名に
システム利用を促進するポイント

 2017年のBI導入時の社内ユーザーは100名でした。その後、機能を追加するにつれユーザー数が増え続け、2019年には300名に到達。iPadで利用できるようになった2022年には全社員約800名がユーザーになりました。現在BIシステムによって、財務、教育、旅客収入分析など、約50の機能が稼働しています。

 BIの利用を促進するため、どのような施策がとられたのでしょうか?

「2017年の最初の導入時にはBIシステムを使うよりExcelの方が早いという声もありました。そこで本社と那覇空港、整備の拠点を回って説明会を行い、運用方法が変わる背景を説明しながら、マニュアルや手順書をきちんと用意して進めていきました。2022年に全社員800名に広げる際にも反発する部署もありましたが、利用によるメリットや目的を説明会や資料で丁寧に伝えていくことで普及させることができました」

と国吉氏は話します。

JTA_kuniyoshi_0010-INO00041.jpg▲国吉氏

 国吉氏は活用を浸透させるポイントとして、データの二重登録をできるだけ避け、Dr.Sumに一元化して格納すること、各ダッシュボード画面から操作手順書を呼び出して参照できること、ITスキルが十分ではない人でも迷うことなく使用できる操作性を挙げました。また、経営陣がDXに積極的で、2021年よりDX担当社員を1名増員し、2名体制で活用推進に取り組めたことも大きかったと振り返ります。

グループ会社と協力した運用で
素早い開発、的確な対応が可能に

 JTAではJALのデータベースから取得しているデータもあり、JALによる別ツールを使ったデータ分析も存在するため、棲み分けながら、緊密な協力関係を築いています。

 BIの運用は、JTAの国吉氏とDX担当者、グループ会社のJTAインフォコム株式会社(以下JTIC)の常駐エンジニア4名の計6名体制で行っています。

内製化することにより、新機能の開発や改修を素早く柔軟に行うことができます。また、6名のメンバーはそれぞれ機能別に担当を持っていますが、全員がデータの抽出・加工、データベース、画面設計などについての総合的な知識を持っているため、問い合わせに対しても常に的確でスピーディーな対応を行うことができます」

と国吉氏は語ります。

 運用メンバーの一人として、旅客収入分析のダッシュボードを作成するJTIC システムグループ 古謝 洋子氏は

「常に利用者目線で見やすさと操作のしやすさに気を配り、ユーザーが思わず利用したくなるようなダッシュボードを実現できるよう心がけています」

と話します。

JTA_kosha_0021-INO00081.jpg▲古謝氏

JTIC システムグループ 具志堅 古一郎氏はJTAで作成した収支計画のダッシュボードをグループ会社に展開する業務を担当。

「複数名で利用されるボードの場合、入力される方が多ければ多いほど入力ミスが発生する可能性が高まります。ミスが生じない、わかりやすいボードづくりを目指しています」

と語ります。

JTA_gushiken_0013-INO00048.jpg
具志堅氏

 JTIC システムグループ 金城 琢巳氏は教育受講管理システムのダッシュボードを、仲栄真 一成氏は運航実績のダッシュボードを担当しています。

「JTAとJTICはグループ会社として互いを理解し合い、課題や目的を共有しているため、円滑に運用を進めることができます」(国吉氏)。

JTA_Kinjyo_0016-INO00058.jpg▲金城氏

JTA_nakaema_0026-INO00100.jpg▲仲栄真氏

データを元に課題解決法を見つけ
実際の行動に結びつける文化が定着

 データ活用によって、JTA社内の意識や組織はどのように変わったのでしょうか?

「一番大きいのは、データによって課題に対する解決法が見つけられるようになったことです。収支データで実績と予定に差異が生じた際、その差異の理由を各部門の担当者自身がMotionBoardに直接入力できるようになったため、報告のスピードと精度が格段に高まりました。差異理由は現場の担当者にしかとらえられず、入力することのできないリアルな情報です。一画面で予定と実績、その差異理由を見ることができるため、現場の社員からトップに至るまで、素早く原因を把握でき、解決のための行動に結びつけられるようになりました。データを活用する文化が定着し、生産性向上や働き方改革、人材育成の推進に貢献しています」

と国吉氏は話します。

 勤務時間管理もBIを活用することによって部署ごとの勤怠状況を集計・共有することができるようになり、残業削減のためのアクションが取れるようになりました。それに伴い、全社で生産性を向上させようという気運が高まり、社内で「この問題、MotionBoardで解決できないかな?」という声がたびたび聞かれるようになりました。

グループ会社にも広げ、相乗効果を生み出す
旅客収入分析ダッシュボードでより適切な打ち手を

 現在、JTAではこのBIの活用を、グループ企業限定ライセンスにより、沖縄エリアのグループ会社である琉球エアーコミューター株式会社やJTICにも広げています。各社の業務負担を軽減し、生産性向上と経営の効率化を図ることが目的です。将来的には旅行商品販売・売店経営などを行う株式会社JAL JTAセールス、県内空港の旅客サービスなどを手がけるJALスカイエアポート沖縄株式会社などのグループ会社にも広げることで、相乗効果を生み出していく考えです。

 また、JTAでは2023年3月より、航空券種別、路線別、時期別の旅客収入を分析したダッシュボードをMotionBoardで作成し、経営層や関連部署に向けて公開しています。数字の羅列ではなく、グラフなどを効果的に使うことでいっそうの「見える化」を推進。早い段階で高度な分析をわかりやすく提供することが、より適切な打ち手へとつながっていきます。

 JTAが推進するデータ活用への取り組みは、「全社員の物心両面の幸福を追求する」「お客さまに最高のサービスを提供する」「企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献する」というJALグループ企業理念の実現を後押ししています。

▼編集後記

取材に訪問させていただいたのはまだ寒い季節でしたが、沖縄の空は温かく取材陣一同晴れやかな気持ちで取材をさせていただきました。製品導入から6年。2022年初頭頃まではJTAインフォコムの当時のご担当者がnest九州・沖縄ワーキンググループに参加してくださり多くのノウハウを共有いただいていました。しばらくお目にかからない間にもどんどんバージョンアップしていくボードの数々に圧倒されました。使い手の心情を先回りして事前に準備された操作マニュアルは常に各ボード画面から遷移できるようになっています。このようなユーザーに対する細やかな気配りこそが全社活用の秘訣なのだと感じました。Employee Experience向上のためのデータ活用。この言葉にとても納得させられた取材となりました。
nest企画室 河村