日本トランスオーシャン航空株式会社
ETL、データウェアハウス、ダッシュボードをワンストップで導入し、
財務、教育、サービス関連のレポート・分析業務を自動化
今後は他部門からのシステム化要求にも対応
- 業種
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その他
沖縄県を拠点とするJALグループの日本トランスオーシャン航空株式会社(以下、JTA)は、システムの老朽化によって多大な工数を費やしていたデータ集計やレポート作成などノンコア業務の課題を解決すべくBI ツールに注目。システムを構築する上で必須となるETL、データウェアハウス(DWH)、ダッシュボードの3つの機能を、ウイングアークのDr.Sum Connect、Dr.Sum、MotionBoardの一連のソリューションで構築した。
財務や教育、サービス品質向上などの業務を支援する5つの機能を提供。これによってデータ分析の精度向上とスピードアップ、工数削減など多くの成果を実現した。
導入背景
データが各担当者で散在、会社資産である重要情報が統合的に一元管理できておらず、必要なデータを必要な時に閲覧することもできず各部門で重複作業を実施する等、全社的にも非効率な面が散見されていた。
- 課題
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- 手作業のデータ集計やレポート作成などのノンコア業務に多大な工数を費やしていた
- 解決策導入ポイント
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- BIシステムを実現するETL、データウェアハウス、ダッシュボードの3つの機能をオールインワンで提供
- 導入前のプレゼンテーション時にJTAが要件定義をした仕様をほぼ忠実に再現
- 効果
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- 予実差異分析の効率化、分析精度向上およびスピードアップ
- 各部門で毎回4時間以上を費やしていたExcel によるデータ集計、レポート作成作業をなくした
毎月実施しなければならない予実差異分析の効率化、分析精度向上およびスピードアップに大きく貢献。各部門で毎回4時間以上を費やしていたExcelによるデータ集計やレポート作成の作業も、ほぼなくすことができた。また、業務現場の担当者の要望に応えた独創的なボードを提供し、そこでもノンコア業務に追われていた各部門の効率化に貢献している。
Excelによるデータ集計やレポート作成の課題が明らかに
沖縄県の島々の架け橋として1967年に誕生したJALグループのJTAは、その後50年以上にわたり安全運航と航空保安を堅持している。さらに沖縄県外にも路線を拡大し、今では全12路線、1日70便(2019年6月現在)を運航している。また、沖縄美ら海水族館とのコラボレーションで実現したオリジナルペイント機「ジンベエジェット」の機内では、Wi-Fiを使った世界初のVR(バーチャルリアリティ)体験サービスを提供するなど、最先端のIT 活用したユニークな取り組みでも注目されている。
そしてJALグループが一丸となって推進する2017~2020年度中期経営計画のもと、JTAは「沖縄に一番必要とされるフルサービスキャリア」となることをビジョンに掲げ、次なる成長戦略につながる取り組みを加速させている。そうした中で課題となってきたのが、様々な業務を支えるITシステムだ。
「整備や空港、運航、客室などの現場業務ではJALのシステムを利用していますが、間接部門のシステムはグループ個社に任されています。当社の間接業務の関連システムは老朽化が進んでおり、これにより手作業に依存したノンコア業務に多大な工数を費やしていたのです」
と語るのは、JTA 路線事業部 路線業務グループ 課長補佐の国吉 真也氏だ。
実際に2017年1月に間接部門の担当者にヒアリングしたところ、特にデータ集計やレポート作成に関連する作業で下記のような課題が明らかとなった。
業務分析に必要なデータはシステム単位に管理されており、レポート作成の担当者は各部門に対して個別にデータ提供を依頼する必要がある。このため常にタイムラグが発生し、リアルタイムに近い鮮度の高いデータを入手できない。また、レポート作成は主にExcelが用いられ、データ集計や分析のためには複雑なマクロを駆使しなければならず、対応できるスタッフが限られてしまう。その結果、レポート作成の属人化とブラックボックス化を招き、作成者が他部門に異動してしまうと、誰もそのレポートをメンテナンスできなくなる。
加えて懸念されるのがセキュリティだ。Excel で分析を行うため、各担当者のPCに重要データが保存されることになり、情報漏えいや不正アクセス対策に十分に留意する必要がでてくる。
プレゼンテーションの内容が決め手となりウイングアーク製品を選定
どうすればこうした課題を解決できるのか――。インターネットで情報収集する中でたどりついたのがBI ツールである。情報サイトを通じてBI ツールのトップ10製品の資料を請求し、機能面を中心とした比較検討を実施。その結果、導入を決定したのがウイングアークのDr.Sum Connect、Dr.Sum、MotionBoard の3製品である。
「情報収集・調査の過程で、BI システムを構築するにはETL(データ抽出、変換、転送)、データウェアハウス(DWH)、ダッシュボードの3つの機能が必要となることが判明し、この3つをオールインワンで提供している国産ベンダーの製品として選定しました」と国吉氏は語る。
もっとも、とんとん拍子でこの選定が進んだわけではない。「実は最終段階まで、導入コストがよりリーズナブルだった別の製品が第一候補でした」と国吉氏は明かす。逆転の決め手となったのは、プレゼンテーションの内容だった。
「両社にテストデータを渡し、3つの機能のプロトタイプを作ってくれるよう依頼しました。
別の1社は3機能のうち2機能が未実装で、見せてもらえた1機能も不十分な仕様でしたが、ウイングアークのプロトタイプは、3機能とも私たちが要件定義をした仕様をほぼ忠実に再現していました。また、MotionBoardをベースに作られた画面も洗練されており、プレゼンテーションに参加した選定委員は満場一致でウイングアークに軍配を上げました。
プレゼンテーション時の技術的な質問に対しても、その場ですべての質問に即答してくれ、後のサポート面でも頼りになると感じられたことも、大きな評価のポイントです」と国吉氏は振り返る。
入力機能やExcel出力機能を備えた業務アプリケーションをBIツールで実現
2017年9月末にDr.Sum Connect、Dr.Sum、MotionBoard の3製品を正式導入したJTAは、すぐにシステム構築に着手した。「2018年度から本稼働を開始したい」という経営層からの要望に応えるためだ。
当初、国吉氏を含めてわずか2名という規模の開発体制だったが、徐々に体制が強化され2018年度内に以下の5つの機能(約40のサブ機能を含む)を構築している。
(1)収支予実分析機能
財務関連の収支データの実績・予定・見通しの登録、およびその予定差異分析・理由登録を行う。これにより毎月の業績報告会のために行っていたデータ分析を効率化する。また、採算表やJAL本社への報告用データ(JAL収支管理システム連携用データ)をワンクリックで出力、アップロードすることも可能で、Excel やJAL収支管理システムにデータを手作業で再入力していた工数を削減し、登録ミスもなくせる。
(2)MP登録機能
MPとはマスタープランを意味し、収支&投資計画策定、前年差異分析およびその理由登録を行う。これによりMP登録内容をリアルタイムで部内および全社で共有できる。また、部門単位で提出や勘定科目のマスタ管理を効率化し、データ集計やレポート作成のために費やしていた工数を削減する。
(3)社内教育申込機能
JALグループ全社員が、必ず受講しなければならない社内教育の一つとしてJALフィロソフィ教育がある。この教育実施に対して、スケジュール計画、教育申込・修正・削除、講師管理、講習会場での座席表出力、受講結果登録など行う。現在ではJTA 以外の沖縄グループ会社からの申し込みもこの機能で受け付けており、前日まで変更申込が可能、受講結果をリアルタイムで確認できるなど利便性を高めた。
(4)お客さまサービス品質評価登録機能
約240名の客室乗務員を対象に身だしなみや振る舞いなどの評価を行うもので、リーダーやマネージャーによる一次/二次評価の登録、評価時のコメント入力、評価点数の自動計算、面談用通知シート出力などのサブ機能を提供する。
(5)旅客収入分析機能
旅客収入分析(航空券種別、路線別)のほか、お盆期間の予約状況把握などを担うもので、現在トライアル中(2019年6月現在)である。
各部門の要求に応えてボードを拡充
BIツールを使い倒す
これらの5つの機能を俯瞰しつつ、国吉氏は現段階での成果を次のように語る。
「最も広く使われているのが収支予実分析機能とMP登録機能で、毎月実施しなければならない予実差異分析の効率化、分析精度向上およびスピードアップに大きく貢献しています。各部門で毎回4時間以上を費やしていたExcelによるデータ集計やレポート作成の作業も、ほぼなくすことができました。また、社内教育申込機能やお客さまサービス品質評価登録機能も業務現場の担当者の要望に応えた独創的なボードで、ノンコア業務に追われていた各部門の効率化に貢献できたと考えています。同様に現在トライアル中の旅客収入分析機能についても、データをリアルタイムに捉えたスピード経営の推進に大きく役立つものになると確信しています」
また、2017年10月より本プロジェクトに加わり、当初から各機能の開発を担ってきたJTAインフォコム株式会社 システムグループの大城氏も手応えを感じている。
「ここまで開発してきた機能は、データ入力画面や検索画面・リスト出力画面等がメインのため、グラフィカルなチャートを使った一般的なBIシステムというよりは、業務アプリケーションに近い仕様となっています。開発当初は、このような機能をBIツールを使って開発してよいのか、率直なところ戸惑いもありました。しかし、通常のWebシステムを構築する開発スピードと比べすぐに機能開発できることや、業務が効率化されたとユーザーから直接 感謝の声をもらったことで、BIツールの新たな可能性を感じることができました」
さらに、2018年10月より新たにメンバーに加わり、主に旅客収入分析機能の開発を担当しているJTAインフォコム システムグループの古謝氏も、「ここで目の当たりにしたBIの導入効果の高さは驚くほどです。既存画面の見た目のブラッシュアップにも取り組みながら、より多くのユーザーに使われ、喜ばれる機能に育てていきたいと思います」と抱負を語る。
もちろん、JTAにおけるボード開発はこれで終わりではなく、2019年度に向けてもさらに加速していく。路線事業、人財、財務、教育、運航・客室、空港、整備など、関連部門から寄せられている案件が山積みだ。例えばMP策定業務の自動化、旅客収入分析の効率化、人件費分析の効率化、投資計画の策定効率化、減価償却費の分析などの案件がロードマップに上がっている。「これらの計画のほかにも各部門からシステム化の要望が上がってきた場合は、業務上の優先度を鑑みながらできる限りのスピード感を持って対応していきます」と国吉氏はボード拡充への意欲を示す。
さらにその先には、JAL グループ各社に向けたシステムの横展開も視野に入れている。JTA が今回構築したDr.Sum Connect、Dr.Sum、MotionBoardをベースとしたエンタープライズBIは、これからも同社のデータ活用の拡大、事業の成長に大きく寄与していくに違いない。
Company Profile
日本トランスオーシャン航空株式会社
設立 :1967年6月20日
所在地 :沖縄県那覇市
事業内容 :定期航空運送事業及び不定期航空運送事業、航空機整備事業
URL :https://jta-okinawa.com/
導入製品
MotionBoard
BIツールを超えたダッシュボード「MotionBoard」。様々なデータをリアルタイムに可視化。クラウドサービスは月額30,000円から
Dr.Sum
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Dr.Sum Connect
メール、データベース、表計算。社内の情報はインフラが分散され、一括管理なんて出来る訳がない。Dr.Sum Connectでは、既存のシステム資産を十分活かし、新たな統合環境を構築し、企業に新しい情報戦略のイノベーションを生み出します。