発注書(注文書)とは?役割や発行のタイミングを確認
発注書とは、商品やサービスなどを注文する際に発注者側が交付する文書で、注文書とも呼ばれます。
日常生活ではほとんど見かけることがない文書ですが、なぜビジネスにおける取引では発注書が発行されるのでしょうか。
ここでは基礎知識として、発注書の役割や必要性、そして発注書を発行するタイミングについて確認していきましょう。
発注書の必要性と役割
まずは、発注書の法的な必要性と、発注書が果たす役割についてご紹介します。
下請法の対象取引では発注書の発行が義務
下請法の対象になる取引においては、発注内容を明確に記載した発注書の発行が義務付けられています。
下請法とは、立場が弱くなりがちな下請事業者が不利益を被らないように保護し、取引を公平に保つことを目的とした法律です。
下請代金支払遅延等防止法第3条では以下のように規定されています。
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
(引用:下請代金支払遅延等防止法:公正取引委員会)
取引内容によって条件は異なりますが、発注者(親事業者)と受注者(下請事業者)の資本金規模に差がある場合は、下請法の対象取引となる可能性があるので注意が必要です。
下請法の対象となる取引の条件は以下の通りです。
- 資本金3億円超の親事業者から資本金3億円以下の下請事業者への発注
- 資本金1千万円超3億円以下の親事業者から資本金1千万円以下の下請事業者への発注
- 資本金5千万円超の親事業者から資本金5千万円以下の下請事業者への発注
- 資本金1千万円超5千万円以下の親事業者から資本金1千万円以下の下請事業者への発注
取引の円滑化とトラブル防止
下請法に該当しない取引の場合、発注書の発行は義務ではありません。実際に、発注書を発行せずに取引が進められるケースも存在します。
ただし、発注書には以下のような役割があるため、下請法に該当しない取引であっても発行する企業は少なくありません。
- 取引の円滑化
- トラブル防止
発注書を発行することによって、「記載した内容で商品・サービスを注文します」という意思表示になり、受注側は安心して納品に向けた作業を進めることができます。
とくに、はじめて取引する企業や個人事業主が相手の場合、取引の流れに不安を感じてしまう可能性があります。
不安を解消して円滑に取引を進めるためにも、発注書の意義は大きいと言えるでしょう。
また、発注書には注文した商品・サービスの内容や金額が記載されるため、納品内容や請求金額に関する認識違いやトラブルの防止にも効果が期待できるでしょう。
発注書を発行するタイミング
一般的な商取引の流れは、「見積り→発注(注文)→納品→検収→請求→支払い」という順に進みます。
受注側から提示された見積書を確認し、その内容に合意したタイミングで発注側が発注書を作成して、受注側に送付します。
また、見積書兼発注書を採用している企業もあります。
見積書兼発注書は、1枚の書類のなかに見積書と発注書の領域があり、発注側が見積内容を確認して合意した後、発注書の欄に必要事項を記入して返送するという形式です。
発注書と混同しやすい文書の例
企業間取引ではさまざまな書類のやり取りが発生しますが、発注書と混同しやすい文書もあります。
ここでは発注書と混同しやすい文書の例として、注文書や契約書、注文請書の意味や違いを確認していきましょう。
発注書と注文書は同じもの
すでにお伝えしていますが、発注書のことを指して注文書と呼ぶケースがあります。
発注書・注文書のどちらも同じ文書のことであり、文書の持つ役割や記載事項、発行のタイミングなども基本的には一緒です。
発注書と契約書の違い
発注書と混同しやすい文書のひとつとして、契約書を挙げることができます。
発注書は発注側が注文の意思を示すために一方的に発行するのに対し、契約書は双方の合意内容を書面に残すために作成する、という点が違いだと言えます。
発注書と注文請書の違い
注文請書(発注請書)もまた、発注書と混同しやすい文書のひとつと言えます。
発注側が受注側に対して発行する発注書に対し、注文請書(発注請書)は受注側が発注側に対して発行する文書です。
発注書と注文請書は発行者の立場が違うため注意が必要です。
発注書(注文書)の記載項目・書き方
次は、発注書(注文書)に記載するべき項目や書き方、作成時のポイントについて確認していきましょう。
発注書の記載項目・書き方
発注書には主に以下のような項目を記載します。
- 文書のタイトル
- 発注先(受注者)の名称
- 発注者の情報
- 発注年月日
- 発注内容(取引内容)
- 発注金額(取引金額)
- 納期
各記載項目について、書き方とあわせて確認していきましょう。
文書のタイトル
「何についての文書なのか」が伝わるよう、文書のタイトルを記載します。
文書の中央上部に「発注書」もしくは「注文書」と記載しましょう。
発注先(受注者)の名称
「誰宛の発注書なのか」を明確にするため、発注先(受注者)の名称を記載します。
略称などは使用せず、正式名称を記載しましょう。また、法人の場合は会社名の後に「御中」を、個人の場合には氏名の後に「様」を付けます。
発注者の情報
発注者の情報を記載します。
会社名や担当者名はもちろん、会社の所在地や電話番号もあわせて記載しておきましょう。
発注年月日
いつ発注された取引か迷わないように、発注書の発行日を記載します。
西暦・和暦のどちらでも問題ありませんが、社内で表記ルールが定められている場合があるので確認して統一しましょう。
発注内容(取引内容)
発注内容(取引内容)として、品名・個数・単価などを具体的に記載しましょう。
合意した見積書に記載された通りに記載することで、発注先との認識のズレを防ぐことができます。
発注金額(取引金額)
発注金額(取引金額)として、小計金額と消費税額、合計金額を記載します。
発注内容と同様、見積書に記載された金額と合致していることを確認しましょう。
納期
発注した商品・サービスの納期を記載します。
見積書で提示された納期(注文から〇日以内、など)を参考に納期を設定しましょう。
発注書を作成する際のポイント
発注書を作成する際は、上述したような項目を記載するほか、押さえておくべきポイントが存在します。
次は、発注書を作成する際に覚えておきたいポイントをご紹介します。
フォーマット(形式)の統一
取引先から指定がある場合や、見積書兼発注書でやり取りする場合を除き、発注書のフォーマット(形式)は社内で統一することをおすすめします。
発注のたびに、フォーマットが異なる発注書を1から作成するのは非効率であり、抜け漏れなどのミスも発生しやすくなってしまいます。
また、継続的に発注している取引先の場合、毎回発注書のフォーマットが違うことで混乱を招く恐れもあります。
業務効率や取引先への配慮という観点から、発注書のフォーマットを統一しておきましょう。
見積書の内容と合致していることを確認
発注書は、取引先から発行される見積書や納品書、請求書などの書類と連動しています。
納品物や請求金額に関する認識のズレや発注ミスが起こらないように、発注書に記載された内容が、最終的に合意した見積書の内容と合致しているか入念に確認しましょう。
とくに、発注内容や金額の調整などで見積書が複数回発行された場合には、誤って過去の見積書と照合してしまわないように注意が必要です。
発注書に収入印紙の貼付は不要
発注書は印紙税法で定められた課税文書に該当しないため、基本的には収入印紙の貼付は不要です。
ただし、発注書という名目で発行されていても、実質的な内容が請負契約書などの課税文書に当てはまる場合には収入印紙の貼付が必要になるため注意が必要です。
発注書の発行・送付方法
発注書を発行・送付する方法は、大きく以下の2パターンにわけることができます。
紙媒体で作成・発行した発注書を郵送
ひとつめが、Excel(エクセル)やWord(ワード)などで作成した発注書を書面に印刷して、取引先に郵送する方法です。
従来、多くの企業でこの方法が採用されていましたが、書面の印刷や封入封緘の手間、取引先に届くまでのタイムラグといったデメリットから、次に紹介する電子データとして送付・配信する方法に切りかける企業が増えつつあります。
電子データとして送付・配信
ふたつめが、電子データとして取引先に送付・配信する方法です。
PDF形式で出力した発注書データをメールに添付して送付する方法や、電子取引システムを利用して取引先に配信する形式などが該当します。
詳しくは後述しますが、発注書の発行・送付を電子化することで多くのメリットが期待でき、近年は電子データとして発注書を送付・配信する企業が増えてきています。
発注書(注文書)の保存期間・保管方法
発注書(注文書)は取引の事実を証明する証憑書類に該当するため、適切な方法で管理する必要があります。
次は、発注書の保存期間と保存方法についてご紹介します。
発注書の保存期間
発注書は、法令によって一定期間の保存が義務付けられており、法人と個人事業主で保存期間が異なります。
法人の場合、原則として7年間の保存が義務付けられており、欠損金の繰越がある事業年度に関しては10年間の保存が必要です。
青色申告・白色申告を問わず、個人事業主の場合は5年間の保存が必要です。
なお、これらの保存期間は、発注日ではなく取引が発生した事業年度の確定申告期限日の翌日が起算日となるため注意が必要です。
発注書の保管方法
発注書は確定申告の際に提出が義務付けられている書類ではありません。ただし、税務調査や監査の際に提示を求められる場合があるため、速やかに提示できるよう管理しておく必要があります。
発注書の保管方法は紙での保存が原則ですが、電子帳簿保存法の要件を満たすことで電子データとして保存しておくことも可能です。
紙媒体で保存する場合は、取引先名や取引年月日などで仕分けてファイリングを行い、速やかに取り出すことができるようラベリングしておくなどの工夫が必要です。
また、紙媒体での保存は、保管場所の確保やセキュリティ、業務効率などの面で課題が存在します。
紙ならではの課題に加え、2022年1月の電子帳簿保存法改正で電子保存のハードルが下がったこともあり、近年は発注書などの書類を電子化して保存する企業が増えつつあります。
電子帳簿保存法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
発注書(注文書)を電子化するメリット
近年は、ペーパーレスの一環として、発注書(注文書)を含む企業間取引文書の電子化に着手する企業が増えてきています。
次は、発注書を電子化することで得られる主なメリットとして以下の4点をご紹介します。
- コスト削減
- 業務効率の改善
- テレワークの促進・定着
- セキュリティの強化
コスト削減
発注書を紙ベースで発行したり保管している場合、紙代やインク代などの印刷コストや、取引先に送付する郵送コスト、保管スペースの賃料やキャビネットなどの備品コストも発生します。
一方、電子化した発注書であれば、印刷や郵送、保管にかかるコストを削減することが可能です。また、後述する発注書にまつわる業務の効率化により、人的コストを抑えることもできるでしょう。
発注業務の効率化
発注書を電子化することで、印刷の手間や郵送準備、手作業によるファイリングなどの作業が不要になります。
また、データとして保管することで、取引先名や発注年月日、発注内容などで検索することが可能になり、後から内容を参照する際や、税務調査や監査で提示が求められた際も速やかに対応することができるでしょう。
テレワークの促進・定着
発注書の電子化は、テレワークの促進という面でも有効です。
紙ベースの発注書の場合、作成した発注書を印刷して押印し、封入などの準備をして郵送という一連の業務は、オフィスにいなければできないケースがほとんどでしょう。
発注書を電子化することで、オフィスにいなくても発注業務を完結することができ、後から発注内容を参照する際もパソコンなどのデバイス上から確認することができます。
セキュリティの強化
発注書などの証憑書類は、紛失や破損、改ざんといったリスクへの対策が必要です。
しかし紙の発注書の場合、鍵付きのキャビネットで保管したり、保管場所への入室制限を設けるなどのアナログなセキュリティ対策になりがちです。
発注書を電子化することで、物理的に紛失してしまう恐れがなく、閲覧権限やパスワードを個別に設定することもでき、セキュリティ強度をコントロールすることが可能です。
発注書の電子化なら「invoiceAgent」
先述したメリットを得るために発注書(注文書)を電子化するのであれば、ウイングアーク1stが提供する文書活用ソリューション「invoiceAgent(インボイスエージェント)」の活用をおすすめします。
「invoiceAgent」は、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会によるJIIMA認証を取得しており、電子帳簿保存法に対応するための法的要件を満たしているソフトウェアです。
※2022年6月より「SPA/SPA Cloud」は「invoiceAgent 文書管理」「invoiceAgent AI OCR」に名称を変更しました。
高精度なAI OCRで発注書を電子化
「invoiceAgent AI OCR」には高精度なAI OCR(光学的文字認識)エンジンが5つ搭載されており、発注書などの紙文書を正確にデータ化します。目視による確認作業の負担を大幅に軽減可能で、RPAツールと連携すれば業務システムへの入力を自動化することもできるでしょう。
発注書を含む帳簿書類の一元管理を実現
「invoiceAgent 文書管理」は発注書を含む帳簿書類の一元管理を実現します。
OCR機能で電子化された文書データはもちろん、他システムから出力された文書データや、新たに作成した文書データを自動で取り込み仕分け保管することが可能です。
保存期間に応じた自動削除機能や証跡管理機能によって、ビジネス文書に求められるガバナンスを満たしつつ一元管理することができます。
FAXで送られてくる発注書を電子化した事例
最後に、「invoiceAgent」を活用して発注書(注文書)の電子化を実現した事例をご紹介します。
注文書のWeb配信でリモートワークとBCP対策を実現(CTCビジネスエキスパート)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)グループの経理・財務や受発注業務を受け持つCTCビジネスエキスパート株式会社は、「invoiceAgent」を活用して注文書をWeb配信する仕組みを構築しました。
CTCにおける調達の多くは、同社を通じて仕入先各社に発注する体制となっており、従来は紙に印刷された注文書を仕分け・封入封緘して仕入先各社に郵送する運用方法を採用していました。
人手による郵送作業は発注担当者の負担が大きく、コロナ禍でも出社しなければならない要因となっていました。
また、コロナ禍でメールで注文書を送ってほしいという要望が増加したことで、個別対応やメール誤送信防止のダブルチェックが必要になるなど、業務が煩雑化。
そこで同社は、リモートワーク実現、BCP対策、発注手段の一本化を目的に、注文書を電子化してWeb配信することを決定しました。
既存システムや業務フローへの影響が少ない点や電子帳簿保存法に対応している点、外部との連携機能などを評価し、「invoiceAgent」の導入に至りました。
運用開始後、月間で最大6,000件以上の注文書配信が自動化され、発注業務が大幅に効率化。
リモートワークとBCP対策の実現にも成果を得たほか、下請法の遵守徹底という面でも効果を実感しています。
▼事例詳細はこちら
CTCビジネスエキスパート株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る
発注書を含む帳簿書類の電子化を実現(クワザワ)
建設資材の総合商社である株式会社クワザワは、FAXや郵送でやり取りされていた発注書や契約書などのペーパーレス化を図り「invoiceAgent」を導入しました。
導入以前、FAXで届いた発注書などの書類を外出先から検索・確認したいという営業職社員からの要望が多かったほか、最大10年間保存しなければならない帳簿書類の管理負荷が大きい点が課題となっていました。
「invoiceAgent」の導入により、発注書を含む帳簿書類の電子化を実現し、外出先や在宅勤務時でも受発注状況を確認できるようになりました。
また、導入以前は難しかった複雑な条件による書類検索が可能になったことで書類管理の負担が軽減し、監査対応の工数においては従来の半分以下まで削減されています。
▼事例詳細はこちら
株式会社クワザワのinvoiceAgent導入事例をもっと見る
まとめ
今回は、発注書(注文書)の意味や必要性といった基礎知識から、書き方や作成のポイント、電子化のメリットや事例についてご紹介しました。
発注書はトラブルを防止しつつ取引を円滑に進める上で重要な文書であり、下請法の対象取引の場合は発行が義務付けられています。また、最大10年間にわたって保存しなければならないため、適切な方法で管理することも大切です。
記事内でご紹介したように、発注書を電子化することで業務効率化やセキュリティの強化などのさまざまなメリットが期待できます。
発注書の電子化を検討している方は、今回ご紹介した「invoiceAgent」で帳簿書類の電子化および一元管理に着手してみてはいかがでしょうか。