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電子帳簿保存法の「事務処理規程」とは?作り方やメリット・デメリットを解説!

法対応作成日:2024.02.16 更新日:2024.02.16

2022年1月の改正を経て、電子帳簿保存法への対応に着手している企業は少なくないことでしょう。
なかでも、「紙の保存に代える措置」が廃止されたことで「電子取引」への対応は多くの企業にとって急務となりました。
そして、電子取引への対応を検討するうえで重要なキーワードのひとつが「事務処理規程」です。

しかし、
「電子帳簿保存法の事務処理規程とは?」
「事務処理規程で電子取引に対応できる?」
「事務処理規程の作り方は?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、電子帳簿保存法における事務処理規程の基礎知識や作り方、事務処理規程の策定で電子取引に対応するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
電子取引への対応を実現するソリューションや事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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電子帳簿保存法の改正により要件が緩和された一方で、企業として適切な対応をするためには押さえるべきポイントがあります。
・どのような流れで対応を進めればいいのだろう…
・自社にはどんなシステムが合うのだろうか…
とお悩みの方へ、電子帳簿保存法対応のための5つのステップをご紹介します。

事務処理規程に関する基礎知識

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そもそも電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類の一部または全部について、要件を満たすことで電子データでの保存を認める法律のこと。
電子帳簿保存法には、「可視性の確保」と「真実性の確保」という2つの要件が定められています。
そして事務処理規程は、電子帳簿保存法の電子取引における「真実性の確保」を満たすための要件のひとつです。

まずは電子帳簿保存法の電子取引について簡単におさらいしつつ、事務処理規程の概要を確認していきましょう。

電子帳簿保存法の電子取引とは?

電子取引は、電子帳簿保存法で定められている保存区分のひとつであり、電子的に授受した取引情報をデータのまま保存する方法が該当します。

たとえば、以下のような取引は電子取引に該当します。

  • 電子メールで送受信した請求書データ
  • WebサイトからダウンロードしたPDF形式の領収書
  • クラウドサービスで発行した契約書
  • EDIシステムを介した取引データの送受信
  • ペーパーレスFAXで受信したPDF形式の注文書

など

従来、電子取引で授受した取引情報を書面に印刷して保存する「紙の保存に代える措置」が認められていましたが、2022年1月の電子帳簿保存法改正によって「紙の保存に代える措置」が廃止となりました。
「紙の保存に代える措置」に関して、2023年12月までは宥恕措置が、2024年1月からは猶予措置が設けられているものの、電子取引で授受した取引情報は電子データのまま保存することが原則となった形です。

この改正により、多くの企業にとって電子帳簿保存法の電子取引への対応が急務となったのです。

電子帳簿保存法の事務処理規程とは?

事務処理規程は、保存する電子データの訂正削除の防止に関する体制やルールを明文化した文書であり、先述の通り電子取引における「真実性の確保」を満たすための要件のひとつです。

電子取引の「真実性の確保」は、事務処理規程のほかにも以下のいずれかの方法で対応することが可能です。

(1)タイムスタンプが付された後の授受
(2)速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
 ※ 括弧書の取扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。
(3)データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う
(4)訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け
(引用元:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|令和5年6月|国税庁

(1)~(3)はタイムスタンプの付与や訂正削除の記録が残る、あるいは訂正削除が行えないシステムを利用することを前提とした対応方法です。
つまりシステムなどを導入しない場合、(4)の事務処理規程による対応が求められます。

事務処理規程のサンプル・作り方

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国税庁は、電子取引における事務処理規程のサンプルを法人向け・個人事業者向けの2種類公開しています。
これらはあくまでサンプルでありそのまま使用することはできませんが、自社の業務の流れや体制に応じてアレンジするのに役立てることができるでしょう。

次は、国税庁が公開している事務処理規程のサンプル(法人向け)をもとに、記載すべき事項や作り方のポイントを確認していきましょう。
(参照:参考資料(各種規程等のサンプル)|国税庁

  • 目的
  • 適用範囲
  • 管理責任者
  • 電子取引の範囲
  • 取引データの保存
  • 対象となるデータ
  • 運用体制
  • 訂正削除の原則禁止
  • 訂正削除を行う場合

目的

事務処理規程の目的と参照する法律を明記します。

適用範囲

事務処理規程が適用される人物の範囲を定めます。
基本的には、自社の役員および従業員(雇用形態を問わず)を適用範囲として問題ありません。

管理責任者

誰が事務処理規程の管理責任者であるかを明記します。
管理責任者を担当する人物の名前を記載するほか、役職名を記載して管理責任者を指定する方法もあります。

電子取引の範囲

電子取引の範囲を記載し、「どういった取引が電子取引に該当するのか」を明確にします。
メールやクラウドサービスを利用した取引情報の授受、EDI取引などのほか、自社で行っている電子取引を具体的に列挙し、不足のないよう対象範囲を記載することが大切です。

取引データの保存

取引データの保存場所や保存期間について記載します。

対象となるデータ

対象となるデータを記載し、「どういった取引情報が保存の対象になるのか」を明確にします。
「電子取引の範囲」と同様、自社が電子取引で取り扱う情報を列挙し、不足がないように記載することが大切です。

運用体制

運用体制として、保存する取引情報の管理・処理における責任者を明記します。

訂正削除の原則禁止

保存する取引関係情報の内容について、訂正および削除を原則禁止とする旨を明記します。

訂正削除を行う場合

やむを得ない事情で保存している取引関係情報の内容を訂正または削除する場合の措置や手順について記載します。

事務処理規程で電子取引に対応するメリット・デメリット

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電子取引への対応を検討している方のなかには、システム導入による対応か、あるいは事務処理規程の策定・運用で対応するか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
次は、事務処理規程による電子取引要件への対応のメリット・デメリットを見ていきましょう。

事務処理規程による対応のメリット

事務処理規程で電子帳簿保存法の電子取引に対応するメリットとして、金銭的コストを抑えられる点を挙げることができるでしょう。
事務処理規程の策定・運用以外の方法で電子取引の「真実性の確保」を満たす場合、タイムスタンプの付与や訂正削除の記録が残る、あるいは訂正削除が行えないシステムを導入する必要があります。
当然ながら、システムの導入・利用には初期費用や月額費用が発生してしまいます。

一方、事務処理規程の策定・運用であれば専用のシステムが不要なので、金銭的コストを抑えつつ電子取引に対応することができるでしょう。

事務処理規程による対応のデメリット

事務処理規程の策定・運用のみで電子取引の「真実性の確保」に対応する場合、以下のようなデメリットが想定されます。

  • 規程を詳細に作りこむ必要がある
  • 規程に沿った運用の負荷が大きい

規程を詳細に作りこむ必要がある

ひとつめのデメリットとして、規程を詳細に作り込む必要があるという点が挙げられます。

たとえば、取引の範囲や対象となるデータに抜け漏れがないように、自社で行われている電子取引の形態や扱う取引情報の種類を徹底的に洗い出さなければなりません。
また、訂正削除を行う場合の手順は実行可能かどうか、社内の業務フローや業界の慣習などと照らし合わせて検証する必要があります。
もちろん、策定した事務処理規程の内容が法令に準拠しているかどうかという点についても確認が必須と言えるでしょう。

規程に沿った運用の負荷が大きい

事務処理規程はただ策定すればよいというものではなく、規程に沿った運用が求められます。

たとえば、やむを得ず保存データの削除訂正を行う場合、以下のような対応が必要になります。

  1. 処理責任者は「訂正削除申請書」に以下の内容を記載し、管理責任者に提出する。
    ・申請日
    ・取引伝票番号
    ・取引件名
    ・取引先名
    ・訂正・削除日付
    ・訂正・削除内容
    ・訂正・削除理由
    ・処理担当者名
  2. 管理責任者は「訂正削除申請書」の内容を確認し、正当な理由があると認める場合のみ承認し、処理責任者に対して取引関係情報の訂正及び削除を指示する。
  3. 処理責任者は、管理責任者の指示に従い取引関係情報の訂正および削除を行う。
  4. 訂正および削除の完了後、当該取引関係情報に訂正・削除履歴がある旨の情報を付すとともに、「訂正削除完了報告書」を作成して管理責任者に提出する。
  5. 「取引情報訂正・削除申請書」および「取引情報訂正・削除完了報告書」は、訂正・削除の対象となった取引データの保存期間が満了するまで整理・保存する。

このように、事務処理規程に準拠した運用は多くの手間が発生し、担当者の負担が大きくなりがちです。

上記はあくまでも一例であり、必ずしもこの通りの対応をする必要はありませんが、施行規則によって訂正削除の履歴を保存すること、原則訂正削除禁止にすることなどが求められているため、訂正削除業務をする場合には運用の負荷が大きくなる点に注意しましょう。

システム導入による電帳法対応がおすすめ

ここまで、電子帳簿保存法の事務処理規程の概要や作り方、メリット・デメリットについて解説してきました。

事務処理規程による「真実性の確保」への対応は、金銭的コストを抑えられるというメリットがある一方で、策定するための準備や実際の運用面で負担が大きいのも事実です。
また、電子帳簿保存法に対応するには、「真実性の確保」だけでなく「可視性の確保」の要件も満たす必要があります。

対応に向けた準備や体制整備、運用面の負担も考慮すると、システムによる対応、とくに「JIIMA認証」を取得しているシステムによる対応を推奨します。
「JIIMA認証」とは、公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会が管理する認証制度で、電子帳簿保存法の要件を満たすソフトウェアに認証が与えられます。
「JIIMA認証」を取得しているシステムであれば、「真実性の確保」および「可視性の確保」の要件に対応する機能が備わっているため、確実かつスムーズに電子帳簿保存法に対応することができ、運用面の負担も軽減できるでしょう。

電子帳簿保存法への対応なら「invoiceAgent」

次は、電子帳簿保存法に対応するための具体的なソリューションとして、ウイングアーク1stが提供する「invoiceAgent(インボイスエージェント)」をご紹介します。
「invoiceAgent」は「JIIMA認証」を取得しており、電子帳簿保存法へのスムーズな対応が可能です。
では、「invoiceAgent」の特徴を見ていきましょう。

文書データの送受信なら「invoiceAgent 電子取引」

「invoiceAgent 電子取引」は、企業間取引文書の送受信を実現するソリューションです。

PDFファイルをアップロードするだけで取引先との間で文書データを送受信することができ、帳票の発行・受領のどちらも電子帳簿保存法への対応を支援します。

また、電子帳簿保存法だけでなく、インボイス制度への対応という面でも有効です。
「invoiceAgent 電子取引」はデジタルインボイスの標準規格である「Peppol(ペポル)」経由のデータ送受信に対応しており、受領した適格請求書のデータ化や適格請求書発行事業者の登録確認も「invoiceAgent 電子取引」を介して行えます。

文書データの一元管理なら「invoiceAgent 文書管理」

「invoiceAgent 文書管理」は、文書データの一元管理を実現するソリューションです。

「invoiceAgent」で作成・出力した文書データだけでなく、他システムで作成・出力した文書データも取り込み、事前に設定したルールに基づき自動で仕分け・保存を実行することができます。
保存した文書データは高度な検索機能で速やかに参照・出力することができ、社内や取引先からの問い合わせや、監査時にデータの提出を求められた際もスムーズに対応可能です。
また、文書の保存期間に応じた自動削除機能や、改ざんの防止・検知に役立つ証跡管理機能を備えているので、効率的かつセキュアな文書管理を実現します。

紙文書のデータ化なら「invoiceAgent AI OCR」

「invoiceAgent AI OCR」は、紙媒体で受領・保存している文書のデータ化を実現するソリューションです。

高精度な5つのOCR/AI OCRエンジンを搭載しているので、読み取り文書の種類や特徴に応じてOCR/AI OCRエンジンを選択できるほか、ひとつの読み取り文書に対して複数のOCR/AI OCRエンジンによる処理を実行することも可能です。
また、読み取り文書の歪みや傾きを自動補正する機能も備わっているので、認識率の低下を防ぎつつ効率的に文書のデータ化を実現することができます。

「invoiceAgent」で電帳法対応を推進した事例

最後に、「invoiceAgent」で電子帳簿保存法への対応を推進した事例を紹介します。

改正電帳法への対応を短期間で実現(住友不動産)

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住友グループの総合不動産会社である住友不動産株式会社は、「invoiceAgent」の導入により、取引先から受領する電子請求書における改正電子帳簿保存法対応を実現しました。

不動産業界ではいまだ紙のやり取りが多く残っていることに加え、事業規模の大きさから取引量も多い同社では、業務効率化を図る上でペーパーレス化が大きな課題となっていました。
そうした背景もあり、同社では社内の申請書類やオフィスビルのテナント宛ての請求書などに関して、ビジネスプロセスの電子化を進めてきました。
その過程で電子帳簿保存法の改正が決まり、取引先から送られてくる請求書を改正電帳法の要件を満たす形で電子保存する仕組み作りを検討することになりました。
グループ会社を含め社内の電子取引状況やどのような請求書を使っているかを調査したうえでシステム選定を実施し、「invoiceAgent」の導入に至りました。

システム構築とテスト運用を経て、請求書の受領から支払い承認までのワークフローを兼ね備えた電子保存の仕組みを整えることに成功しました。

  • 請求書受領者が「取引年月日」「取引先名」「金額」の組み合わせでファイル名を設定
  • 請求書ファイルを「invoiceAgent」にアップロードし、承認者である上長に申請
  • 上長が請求書ファイルの内容確認と支払承認を行うと、承認日時の電子スタンプが自動押印
  • 経理担当者がスタンプ押印済みの請求書ファイルを確証として電子保存

現在、「invoiceAgent」のユーザーはグループ全体で約700名に達し、年間約3万枚規模の請求書の電子保存に対応する見込みとなっており、業務スピードの向上を実感しています。
さらに同社では、今回の電帳法対応を第一ステップとして、今後さらなるペーパーレス化を推進していくことを計画しています。

▼事例詳細はこちら
住友不動産株式会社のinvoiceAgent導入事例をもっと見る

月7,000枚の月報兼請求書を電子化(ロジクエスト)

【ロゴ変更】case_logiquest.png

『あらゆる届けるを解決する』という理念を掲げて物流事業を展開する株式会社ロジクエストは、「invoiceAgent」の導入により電子帳簿保存法に対応する仕組みを構築しました。

全国に5,500以上の契約ドライバーや協力会社を抱える同社では、毎月約7,000枚の月報兼請求書を受領しています。
FAXで送られてくる月報兼請求書を複合機で受け取り、紙に印刷して保管する運用方法を採用していましたが、保管用倉庫のコストや過去の書類の検索性の面で課題を感じていました。

そこで同社は、電子保管によるペーパーレス化を決断し、電子帳簿保存法への対応方法を検討し始めます。
電子帳簿保存法について調べていくうちに、FAXで送られてくる帳票を複合機で受け取る同社のフローは電子取引に該当することがわかり、具体的なシステム検討に着手。
「JIIMA認証製品」「コスト」「導入しやすいクラウド型」「使いやすさ」といった点を評価し、「invoiceAgent」の導入に至りました。

導入後、以下のようなフローを確立し、月報兼請求書を電子保存する仕組みを整えることに成功しました。

  • 各支店で受領した月報兼請求書の電子データを社内の共有フォルダに集約
  • 担当者のチェック後、「invoiceAgent」に一括アップロードするための監視フォルダに移動
  • 「invoiceAgent」でOCR処理を施しデータ化し、タイムスタンプを付与して保管

印刷に使用するコピー用紙の削減など、すでにペーパーレス化の成果が表れており、今後は月報兼請求書以外の帳票の電子保存にも取り組んでいく考えです。

▼事例詳細はこちら
株式会社ロジクエストのinvoiceAgent導入事例をもっと見る

まとめ

今回は、電子帳簿保存法の電子取引における「事務処理規程」について、その概要や作り方、電子取引に対応するポイントを解説しました。

「紙の保存に代える措置」が廃止になったことで、電子取引で授受した取引情報は電子データのまま保存することが原則となりました。

事務処理規程による対応も可能ではあるものの、確実かつ円滑に電子帳簿保存法の電子取引要件に対応するためには、「JIIMA認証」を取得しているシステムによる対応がおすすめです。

今回ご紹介した情報も参考に、記事内でご紹介した「invoiceAgent」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

5ステップ!改正電帳法対応ガイドブック【完全版】

電子帳簿保存法の改正により要件が緩和された一方で、企業として適切な対応をするためには押さえるべきポイントがあります。
・どのような流れで対応を進めればいいのだろう…
・自社にはどんなシステムが合うのだろうか…
とお悩みの方へ、電子帳簿保存法対応のための5つのステップをご紹介します。

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  • 電子帳簿保存法の「事務処理規程」とは?作り方やメリット・デメリットを解説!

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