

株式会社山形銀行
日次のExcel転記、営業店間のやりとり、定例の報告業務を効率化
預貸金管理・顧客整備・報告を自動化し、全行でリアルタイム共有

- 業種
-
金融・保険
山形銀行はDX戦略の一環として、全行的なデータ利活用の促進を図るべくウイングアークの「MotionBoard」と「Dr.Sum」を導入。営業店の預貸金残高管理および着地シミュレーションをはじめ、預かり資産管理顧客の整備、移管調整、特定先の残高管理といった業務の効率化・自動化、および本部への報告業務の工数削減を実現した。今後は、BIに関するスキルをもつ行内人材の育成と拡大を図ることで、より多様な課題解決に寄与するダッシュボード開発を進めていく。
導入背景
山形銀行では、営業店ごとにExcelで預貸金の計数管理や着地予測などを行っていたが、行内に散在するデータの収集や加工など、担当行員の手作業が常態化していた。加えて本部への報告業務などにより、内部作業に時間を要し、営業活動時間の捻出の障害となっていた。
- 課題
-
- 貸出金残高管理や本部への報告などを、営業店ごとの担当者の手作業に依存
- データ収集や加工をExcelで行っており、朝30分程度の手作業が常態化
- 預かり資産管理顧客の整備や移管調整などで、営業店間の頻繁なやりとりが発生
- 解決策導入ポイント
-
- 直感的な操作でダッシュボード(各種管理資料)を容易に作成でき、報告内容も直接入力できるBIツールとして「MotionBoard」を導入
- 必要な情報を一箇所に集約するデータマートとして「Dr.Sum」を導入
- 営業店間および営業店本部間で、リアルタイムに情報を共有できる仕組みを実現
- 効果
-
- 預貸金残高管理および着地シミュレーションにおいて、非効率な日次作業を削減
- 年4回実施していた本部に対する報告作業を廃止
- ダッシュボード開発の内製化により、多様な業務部門の課題解決を加速
営業店の業務に多くの手作業が存在し営業活動の妨げに
1896年の創立以来、地域に根ざした金融サービスを提供してきた山形銀行は、130周年を迎える2026年の期間中、長期経営計画「Pro-Act」を推進している。「お客さまの価値を共に創造し、地域ポテンシャルを最大化する金融・産業参画型ハイブリッドカンパニー」へと発展すべく、組織としての専門性(Pro)をさらに高め、一人ひとりの行員が積極的に行動(Act)することで、企業価値を向上しようとしている。
それに向けて、常態化していた非効率な業務の改善を進めている。顧客から預かった預金と、顧客への貸出金の残高を管理し、適切なバランスを保つ預貸金残高管理業務もその1つだ。
同行 営業企画部 チャネル戦略室 主任 斎藤 恵太氏は、「営業店ごとにExcelで貸出金残高管理や予測(着地シミュレーション)を行っていますが、各所に分散するデータの収集や加工など、担当行員の毎朝30分程度の手作業が常態化していました。加えて本部への報告業務も多く、営業活動の時間が削られているという問題がありました」と話し、こう続ける。「この問題を解決すべく、2023年4月立ち上がったDX推進プロジェクトのもとで、データ活用による業務効率化と営業力強化を目指し、データ分析基盤およびBIツールの導入検討を進めてきました」

データ利活用の基盤としてMotionBoard とDr.Sumを導入
複数ベンダーの製品を調査し比較検討を行った結果、採用を決めたのがウイングアークのBIツールの「MotionBoard」と、データ分析基盤「Dr.Sum」だ。
「MotionBoardについては、直感的な操作でダッシュボードを作成・編集できる点を高く評価しました。一方、必要な情報を一ヶ所に集約するとともに、各データを事前加工・集計・蓄積できるデータマートとして、Dr.Sumはとても使いやすいと感じました。なかでも決め手となったのはMotionBoardの入力機能です。これは他社のBIツールではあまり見られない特徴的な機能であり、各営業店の担当行員の間で親しまれていたExcelに近い感覚でデータ操作から本部への報告まで一貫して行える仕組みを作りたいと考えていた当行の要望に、最もフィットする製品でした」(斎藤氏)
とはいえ導入当初は、さまざまな苦労が発生したのも事実である。同行は導入初期のダッシュボード作成を外部ベンダーに委託したが、金融機関固有の業務内容や専門用語などを伝えるのは簡単なことではない。一方で同行にとっても、本格的なデータ分析基盤やBIツールの導入は初めての経験だけに、システムの勘所が掴めない。「双方の知識のギャップを埋めつつ、ダッシュボードのUI設計を何度もやり直してきました。また大前提として預貸金の残高などに決して間違いがあってはならず、数字の整合性確認にも多くの時間を費やしました」(斎藤氏)
こうした苦労を乗り越える上でも、MotionBoardとDr.Sumは大きな貢献を果たしてきたという。同行 システム企画部 DX戦略室 調査役 前森 陽 氏は、「自由自在なデータ操作が可能であり、試行錯誤を伴うシステムの仕様変更にも柔軟に対応することができました」と強調する。

リアルタイムな情報共有により営業店・本部双方の負担を軽減
こうして山形銀行は2024年6月よりシステムの試行を開始し、同年10月に正式運用へと移行。これにより同行の業務は劇的に改善された。
まずは、預貸金残高管理および着地シミュレーションの効率化だ。従前は営業店ごとに独自のExcelフォーマットで管理されていた預貸金残高が、全行で統一されたMotionBoardのダッシュボードで管理されるようになったことで、担当行員の作業負担は大幅に軽減されている。
「毎朝約30分間をかけて行っていたデータ取得およびExcelへの転記、貸出の実行予定や回収予定額の入力などの手作業がなくなりました。また、MotionBoardのダッシュボードは全行でリアルタイムに共有されているため、年4回実施していた報告作業も廃止されており、営業店と本部の双方の業務効率化を進めています」(斎藤氏)

これまでExcelのリストを使用し、営業店間や本部との間でやり取りを繰り返していた、預かり資産の管理顧客整備についても大きく簡素化されている。
「例えば店番変更となった顧客情報などもダッシュボード上でリアルタイムに確認できるため、営業店間で個別に顧客情報を連絡する必要がなくなりました。加えて推進店番変更に伴う管理顧客の登録漏れを防止するなど、本部側における業務効率化や業務品質向上にも寄与しています」(斎藤氏)
同様に貸出金の移管調整についても、営業店間での調整および本部への報告業務の削減が図られている。ダッシュボード上で自由自在にデータを活用することで移管債権を本部側で特定し、平残や利息額などの調整値を自動算出するのがポイントだ。これにより従前は営業店間で行われていた調整やデータ確認などの作業がすべて簡略化された。
さらに業務効率化の対象は、特定先の残高管理にも広がっている。MotionBoardのアドホックなダッシュボードを活用し、明細別や個社別といった柔軟な切り口で残高管理を行うことが可能となった。また取得した日足データをDr.Sumに蓄積することで、過去にさかのぼった自由自在な検索も実現している。
ダッシュボード開発の内製化によりDX推進を加速
MotionBoardとDr.Sumを活用することで多大な業務効率化・自動化の成果を上げてきた山形銀行だが、前森氏は「当行ではまだ保有しているデータの3割程度しか活用できていません」と語り、「さらなるデータドリブンな業務遂行を後押しすることで、営業店および本部から人手に依存した非効率な作業を排除し、それによって生み出された時間や工数をお客さま対応に充てられる環境を整えたいと考えています」と、今後のDXに向けた取り組みを見据えている。
そうした中で新たに浮上しているのが、「内製化」というキーワードだ。前述したとおり、同行はMotionBoardとDr.Sumの導入当初こそダッシュボード開発を外部ベンダーに委託していたが、現在は徐々に「自前」へと切り替えつつある。
「すでに30種以上のダッシュボードを自前で作成しており、営業企画部以外の業務部門からのリクエストも増加しています」と斎藤氏は言う。
こうしたニーズに応えるためにも急がれるのは、ダッシュボード開発のスキルを有し、プロジェクトを推進していく人材の育成にほかならない。
「行内だけでやれることには限界があるため、カスタマーサクセスサポートによる定着化支援をはじめ、ユーザー主導型コミュニティ『nest Working Group』などの活動にも大きな期待を寄せています」と斎藤氏は語り、ウイングアークと二人三脚のタッグを組みながら、さらなるデータ活用の拡大と業務変革を推進していく意向だ。
Company Profile
株式会社山形銀行
創立:1896年(明治29年)4月14日
本店所在地:山形市七日町三丁目1番2号 ※本店ビルの建替工事に伴い仮移転先で営業中
事業内容:預金、融資、為替、有価証券投資、金融商品仲介、コンサルティング業務
URL:https://www.yamagatabank.co.jp/

(写真左より)
営業企画部 チャネル戦略室 主任 斎藤 恵太 氏
システム企画部 DX戦略室 調査役 前森 陽 氏
導入製品
MotionBoard
様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。
Dr.Sum
あらゆるデータをリアルタイムに収集・蓄積・分析する、データベースエンジンを軸としたデータ分析基盤。10億件のデータも1秒台で集計する超高速集計を実現。