

旭川信用金庫
内製文化を生かしたアジャイル開発で実現!MotionBoardによる相続業務の本部集中化とDX基盤構築
年間約3,000時間の営業店事務を削減し、顧客対応の時間を拡大

- 製品
- 業種
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金融・保険
旭川信用金庫は、BIツールの置き換えを契機にDX戦略の中核システムとして、ウイングアークの「MotionBoard」を導入。データ入力機能やワークフロー機能を活用して各種システムを内製開発。相続管理システムは、相続センターによる業務集中化と併せて年間3,000時間の営業店事務の削減を実現した。今後はアプリケーション基盤や全社的なデータ活用基盤としてMotionBoardを活用し、さらなる業務改革を推進していく。
導入背景
既存BIツールのサポート対象OSが古いことなど、DX推進における6つの課題に直面。また、相続案件を効率的に管理するシステムが必要になった。これらの課題を統合的に解決できるプラットフォームが求められていた。
- 課題
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- Windows更改を実施すると使用不可となるBIツールの置き換えが急務だった
- 蓄積したデータの利活用が不十分だった
- 営業店の負担だった相続案件処理の本部集中化に伴い、管理システムが必要だった
- 解決策導入ポイント
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- MotionBoardの「データ分析」「入力」「ワークフロー」機能とSVFの「帳票出力」機能を組み合わせて6つの経営課題を一挙に解決
- 内製開発の文化を生かして柔軟にシステムを構築
- 相続業務の本部集中化を実現するため、MotionBoardの入力機能を活用し、柔軟なシステム構築を実現
- 効果
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- 相続管理システムおよび本部集中化により、年間3,000時間の営業店事務を削減
- 事務負担削減で顧客と向き合う時間が増加。さらにデータ利活用による充実を見込む
- 営業店から活用アイデアが自発的に提案されるなど、全社的なDX推進の機運が向上
110年の歴史を次につなぐDXへの挑戦
旭川信用金庫は、旭川市を中心に40店舗を置き、1914年創立以来110年にわたって道北地域の経済発展に貢献してきた地域金融機関だ。「明日をひらく」を経営理念に定め、基本方針「課題解決型営業の追求」のもと、事業者への伴走支援や地域住民の資産形成に取り組んでいる。
旭川信用金庫 理事 システム部・事務部担当 石田 裕一氏は「人口減少や少子高齢化による慢性的な人手不足の影響が大きな地域経済において、人財育成の強化と盤石な経営基盤の構築を進め、「お客さまの幸せを実現し、地元を元気にする」ことが使命です。2024年5月に策定したDX戦略では、お客さまへの新たな価値の提供、業務・働き方改革の実現、デジタル人財の育成という3つの大きな目標を掲げています。同年9月には北海道の金融機関としては初めて、経済産業省のDX認定を取得しました」と語る。

6つの課題を一挙に解決する統合プラットフォーム
同金庫は、ITシステムおよびDXの観点で以下の6つを課題と捉えていた。
課題1:OS更改後に既存BIツールが使用不可
課題2:蓄積した情報の利活用が不十分
課題3:非効率的な報告・集計とそれに伴う情報開示の遅延
課題4:保有情報の非連携による入力作業の重複や記入
課題5:紙媒体利用によるデータ化の阻害と非効率事務(非ペーパーレス)
課題6:OS(Windows)/ブラウザー(IE)更新による情報系システムの再構築負荷
旭川信用金庫 システム部 DX担当 調査役 田所 祐都氏は、このうち既存BIツールの課題について「BIツールがサポートするWindowsが古く、これまでBIツール専用のPCを維持してきました。業務PCを新しいOSで統一すると利用できなくなることが喫緊の課題です(課題1)。加えて、主に定型帳票の出力にとどまっており、これまで蓄積してきた情報の利活用が不十分でした(課題2)。そのためには複数のデータベースに接続し、利用者自身の手で分析しやすい新しいツールが欠かせません」と説明する。

そこで同金庫ではBIツールの選定を開始。オンプレミス環境が必須というセキュリティ要件もあり、選択肢は限られるなかで着目したのがMotionBoardとSVFだった。
「MotionBoardはデータ分析・表示というBIツールの本来の機能だけでなく、データ入力機能や簡易ワークフロー機能を備えています。さらに、SVFと組み合わせることで帳票出力機能も活用でき、6つの課題すべてに対応可能でした。特に、データ入力機能によって汎用的に活用を広げられるという点でMotionBoardは優れていました。もしMotionBoard以外のBIツールを選ぶなら、複数のツールで対応しなければなりませんでした。BIツールの置き換えとデータ活用のみを目的に掲げたのでは費用対効果が見えづらいですが、それ以外の具体的な効果も示せると、新ツール導入の後押しとなります」(田所氏)
相続業務の集中化にもMotionBoardを活用
システム部がBIツール選定にあたっていたのと同時期に、事務部では相続センター準備室を立ち上げ、相続事務を本部に集中化して営業店の負担を大幅に軽減することを計画していた。旭川信用金庫 事務部(相続センター) 調査役 佐野 千尋氏は当時の課題を説明する。

「相続業務は戸籍謄本や印鑑証明書などの公的書類の確認が必要で、相続人ごとに異なる対応が求められる専門知識を要する複雑な業務です。預金額も大きくなることが多いため、もしミスが発生した場合のリスクも高い。営業店では相続事務の負担が非常に大きく、人財不足が進む中で事務処理に時間を取られ、お客さまへの提案活動に充てる時間が十分に確保できない状況でした」
相続センター発足にあたり相続案件管理の専用システム導入を検討したが、ベンダーから提案された内容では、費用が多額であることが判明。この時、事務部とシステム部を統括する石田氏が思い描いたのがMotionBoardの活用だった。
「相続管理システムの機能要件を聞いた時、MotionBoardの入力機能を使えば構築できると考えました。個々に高価なシステムを導入するより、ワンプラットフォームでさまざまな業務に適用でき、さらにカスタマイズも含めて柔軟に対応できる。MotionBoard導入の費用対効果も高まります」(石田氏)
トライアルで実現可能性と費用対効果を実証
同金庫では、MotionBoard のトライアルを2024年7月から9月にかけて約2ヶ月間実施。旭川信用金庫 システム部 調査役 志村 拓氏は「トライアル実施を承認する役員会議で、ウイングアークの担当者がデモンストレーションや説明を行ってくれました。こうした会議でベンダーに参加していただいたのは初めてです。トライアルでは6つの課題に対応するボードを作成し、当庫が想定する要件を満たすことを検証で確認できました。費用対効果の評価では、相続パッケージの導入費用も加味して定量的な効果を示すことで、スムーズに役員承認を得ることができました」と続ける。

田所氏も、トライアルにおけるウイングアークのサポート体制について、「投資信託の申込み業務を簡素化できないかと話をしたところ、デモボードを作って見せてくれました。MotionBoardとSVFを組み合わせることで、やりたいことが実現できるのだと実感した印象的なできごとでした」と振り返る。
内製文化が生きたアジャイル開発で現場目線のボードを実装
MotionBoardの活用は、まず相続管理システムから着手し、システム部と相続センター準備室が密に連携して進められた。同金庫は15年ほど前から情報系システムを内製開発して根付いた文化があり、MotionBoard活用用途を踏まえ、今回も自社で構築することを選択した。
志村氏は開発手法について、「従来のウォーターフォール型では、要件定義に時間がかかる上に、完成まで実態が見えないという問題がありました。MotionBoardはローコードツールの側面もあるため、ラフ画のような状態をもとに何度も修正を重ねながら利用者のイメージアップと並行して開発を進めました。アジャイル開発によって、現場が本当に使いやすいシステムを構築できました」と強調。ウイングアークのサポートについては「営業を含め非常に真摯な対応で、ベンダーとしての信頼感があります。カスタマーサクセスのレベルも本当に高く、実現方法についてサンプルボードを作成してくれたり、機能がなくても間接的に実現する方法を提案してくれたりと、解決へ努力してくれる姿勢が印象的でした」と語る。
旭川信用金庫 事務部 (相続センター) 調査役 櫻田 加奈子氏は「営業店での相続事務の経験を生かし、現場目線で使いやすい設計を目指しました。当庫独自の事務取扱方法に合わせ、営業店が入力作業に負担を感じないシステムが実装できました」と話し、こう続ける。「相続専用パッケージを導入した他金庫では、修正に時間がかかり、結局Excelを併用せざるを得ないと聞きます。当庫は内製システムならではの柔軟性で、法令改正などに伴う変更に対応しやすく、必要に応じて修正して、常に最新の運用に合わせたシステムを維持できています」

相続業務で年間3,000時間の削減を見込む
櫻田氏はMotionBoardによる相続管理システムのメリットと価値について、次のように話す。
「これまで勘定系システムから平均10枚程度の照会票を出力して確認していた作業が、必要な情報だけを集約した1枚の相続照会票で完結するようになりました。また、遺言書や遺産分割協議書の有無、相続人の構成などのパターンを入力すると自動的に必要書類が判定され、一覧で管理できるようになったため、ミス防止にも大きく貢献しています。相続センターと営業店とのやり取りは、MotionBoardのワークフローで通知。PDFで書類を添付することで、書類の紛失防止にもつながります。今後は蓄積されたデータを分析し、営業活動に活かすことも可能になります」
このシステムの活用を前提に、同金庫は2025年7月より全40店舗の相続事務を相続センターに集中化。櫻田氏は、具体的な効果について「事務が簡素なものは引き続き営業店で完結させていますが、年間約1,500件が本部で集中化しています。従来は営業店で1件あたり平均2時間かけて処理していたため、年間約3,000時間の営業店事務を削減できる見込みです」と説明する。
現在、相続管理システム以外にも、顧客照会システム、伴走支援型特別保証制度フォローアップ報告書、委託者別振込件数照会など、複数のシステムがMotionBoard上で稼働。そのうちの伴走支援型特別保証制度フォローアップ報告書については、ウイングアークのユーザーコミュニティ「nest」の金融データ活用ワーキンググループで提供されている共有ボードを改修して活用している。
同時導入したSVFの価値について石田氏は、「SVFでMotionBoardを適用できる業務範囲が格段に広がり、プラットフォームの汎用性がより高まると考えています。完全にペーパーレスにはできないものもありますが、お客さまの負担を少しでも減らしたいという思いがあります。お客さまの住所などの基本情報はデータベースから自動で取得して印字し、少ない入力やサインだけで書類が完成する仕組みをSVFで実現でき、今回の相続管理システムにも活用しています」と語る。
DXの基盤としてMotionBoardを活用
営業店職員の意識改革にもMotionBoardが貢献している。田所氏は「MotionBoardで何ができるかを営業店に周知し、活用アイデアを募集したところ、多くの提案が集まりました。職員が自発的にシステム活用を考えるようになったことは、DX推進における大きな成果です」と手応えを語る。今後は募集した活用アイデアも取り入れながら、さらに業務アプリケーションを追加していく。また、約1年後を目処に、既存BIツール上の700~800のレポートを精査した上でMotionBoardに移行する計画だ。
旭川信用金庫 システム部 成瀬 史哉氏は、「MotionBoardは設定項目が多岐にわたり、やりたいことを実現するために隅々まで確認が必要です。最初は複雑に感じましたが、それは同時に細かいところまで設定できる柔軟性の表れでもあります。カスタマーサクセスサイトで提供される無償範囲内のサポートが手厚く、特にAIアシスタントの導入で飛躍的に使いやすくなりました。これからもサポートをいただきながら、活用範囲を広げていきたいです」と語る。

志村氏は今後の方向性について、「業務アプリケーションのプラットフォームとしての利用は進んでいますが、BIツールとしてのデータ利活用はまだスタートラインに立ったばかりです。MotionBoardを介して営業店が常に分析できる環境を整備し、新しいアイデアが生まれる基盤を作っていきます」と強調する。旭川信用金庫は、MotionBoardを単なるBIツールとしてではなく、DX戦略の中核を担うプラットフォームとして位置づけ、内製開発による業務改革を加速させていく。
Company Profile
旭川信用金庫
創立:1914年4月
所在地:北海道旭川市
事業内容:預金および定期積金の受け入れ、資金の貸付および手形の割引、為替取引など
URL:https://www.shinkin.co.jp/ask/

(写真左より)
システム部 調査役 志村 拓 氏
システム部 成瀬 史哉 氏
事務部(相続センター) 調査役 佐野 千尋 氏
事務部(相続センター) 調査役 櫻田 加奈子 氏
理事 システム部・事務部 担当 石田 裕一 氏
システム部 DX担当 調査役 田所 祐都 氏
導入製品
MotionBoard
様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。
SVF
基幹・業務システムからの帳票出力を最適化する帳票基盤ソリューション。柔軟な帳票レイアウトの設計や各社プリンター印刷、多様な出力形式での帳票運用を実現。