導入事例

丸紅新電力株式会社

丸紅新電力株式会社

データドリブンな営業戦略と顧客ロイヤリティ向上で、
電力事業の新たな価値を創造

丸紅新電力株式会社(以下、丸紅新電力)は2016年の電力自由化による業界の競争激化をうけて営業組織の抜本的な改革をおこなった。特にこれまで社内システムに散らばったデータを集めてExcelで作成していた売上実績レポートをMotionBoard Cloudのダッシュボードに移行し、業務負荷の大幅な削減と時系列での予実管理を同時に実現した。また、データを営業戦略や顧客ロイヤリティの向上にも活用している。

導入背景

営業実績を把握するために、毎週月曜日は早朝出勤してExcelでレポートを作成。Salesforceや他のシステムからデータをダウンロードして作り上げており、項目は100を超えていた。また、このレポートでは週次の実績が明らかになるが、売上の見込みや過去の推移を示せなかった。

課題
  • 業界の競争激化による、営業組織の改革の必要性
  • Salesforceを基軸とした業務の効率化ニーズ
  • Excelでのレポート作成業務の負荷
解決策導入ポイント
  • Salesforceとのシームレスな連携
  • ノンプログラミングで可能なダッシュボード作成
  • データの可視化による予実管理の実現性の高さ
効果
  • データに基づいた予実管理により、売上の予測が可能となった
  • 社内システムにちらばったデータを集めてExcelで作成していたレポート業務がなくなった
  • データドリブンな営業戦略や顧客満足度の向上にもつながるダッシュボード活用を実現した

Salesforceに登録される案件情報のデータをMotion Board Cloudと連携することで、今期の予算とそれに対する現在の売上実績をリアルタイムで定量的に可視化している。個別の案件は受注確度によって分類されるため、精度の高い売上の着地予測が可能となった。

電力自由化がもたらした営業改革の機運


 2016年に解禁された電力自由化は、ほぼ独占市場となっていた電力業界に大きな変化を促した。電力事業は商材の特性上、価格以外の差別化が図りづらい。電力自由化によって参入障壁が下がり業界の競争が激化したことで、各事業会社は価格以外の新たな付加価値を提供する必要に迫られている。


 丸紅新電力はこうした市場環境の変化において従来の営業スタイルを一新し、データドリブンな営業組織を実現した。さらにはデータを活用した顧客ロイヤリティ向上にむけて、新たな一歩を踏み出している。


 「丸紅新電力は2000年に丸紅株式会社の一つの部署として立ち上がり、2015年11月に丸紅新電力株式会社として事業会社化しました。当時は入札がメインで官公庁など大型の案件を受注していたため、営業が扱う案件数は多くありませんでした」と、同社で営業部長と法人営業チーム長を兼務する辻 俊宏氏は語る。しかしその後、電力自由化に伴う競争激化により、入札市場において価格破壊が起こると予見し、顧客のターゲットを民間へシフトすることを決断した。


 「民間シフトの最も大きな影響は、案件数の増加による営業オペレーションの作業負荷でした」と語るのは営業部 法人サポート課 課長で法人サポート第二チーム長も兼務する瓦井 雄貴氏だ。従来は扱う案件数が少なく販売方式も入札だったため、営業が担当する業務量はそれほど多くなかった。しかし民間にターゲットを移行したことで1案件あたりの受注金額は減り、そのぶん扱う案件数は大きく膨らんだ。そして販売もパートナーを介した形式に変化したため、営業フローにおける業務量も大幅に増加した。これまでおこなっていたExcelによるオペレーションでは人的ミスが多発し、ミスの発生元を突き止めることも難しい。また、増加する営業案件の全体像を正確に把握する仕組みも整っておらず、予実管理の必要性も高まっていた。これらの状況により、丸紅新電力では営業関連の業務の抜本的な改革を迫られたのだ。


毎週月曜日はExcelレポート作成のために早朝出勤


 丸紅新電力が描いた営業部門の業務改革には、Salesforceが中心に据えられている。2016年の導入後は顧客管理システムのみの用途に留まっていたが、業務効率化の実現にむけてSalesforceを起点とした営業関連の業務の可視化および自動化を目指した。


 業務改善の必要性が特に高かったひとつは予実管理に関する作業だ。「営業実績を把握するために、毎週月曜日は早朝出勤してExcelでレポートを作成していました。Salesforceや他のシステムからデータをダウンロードして作り上げており、項目は100を超えていました。」と辻氏は語る。問題は毎週の重いルーチンワークが存在するだけではない。Salesforceではスナップショットがとれないため、レポートは毎週ファイルサーバーに保存しなくてはならなかった。また、こうして苦労して作成したレポートも、あくまで週次の実績が明らかになるだけで、売上の見込みや過去の推移を示すものではない。


 「この状況は営業部にとっては致命的でした。ダッシュボード(羅針盤)がないままクルマを走らせるようなものです」と辻氏は振り返る。


 当初のSalesforceを起点とした改革も念頭に置き、こうした予実管理の課題解決として導入したのがMotionBoard Cloud for Salesforce(以下MotionBoard Cloud)である。「最初からBIツールを導入しようと考えていたわけではありません。あくまでSalesforceを軸とした業務改善を目指した結果、Salesforceと直接連携できるMotionBoard Cloudに行き着きました」と瓦井氏は話す。


 こうして、「月曜日の早朝出勤を無くす」をスローガンにダッシュボード活用がスタートした。


営業部 部長 兼 法人営業チーム長 辻 俊宏氏(写真右)/営業部 法人サポート課 課長 兼 法人サポート第二チーム長 瓦井 雄貴氏(写真左)

営業部内のメンバーでダッシュボード作成に取り組む


 実際のダッシュボードの活用にあたっては、営業部門の現場のリーダーである瓦井氏自身もダッシュボードの使い方を習得した。営業部内の要望を汲み取り、スピーディーにダッシュボードを展開することが現場での定着化を進めるカギにもなるため、自部門内での作成にもこだわった。そこで担当として瓦井氏と共にダッシュボード作成に携わったのが、同じく法人サポート課の法人サポート第一チームで営業サポートを担当していた寺久保佑希子氏だ。寺久保氏はこれまでシステム開発やプログラミングの経験があったわけではなく、Excelを利用していた程度。しかしウイングアークのサポートを受けて新たに使い方を習得し、営業部内で現在に至るまで利用されているダッシュボード作成の立役者となった。「当初は、うまく扱えるかどうか不安がありましたが、ウイングアークのカスタマーサクセス部門の担当者によるきめ細やかなレクチャーをメールや電話で受け、ツールの知識を学びながら問題なくスムーズに開発することができました。今では簡単なダッシュボードはだれの手も借りずに一人で作れるようになりました」と寺久保氏は話す。


営業部 法人サポート課 第一チーム 営業サポート担当 寺久保 佑希子氏

予実管理から営業戦略の立案まで、営業部門の核となるダッシュボード活用


 現在、営業部門では多数のダッシュボードが活用されている。その中心となるのが予実管理用のダッシュボードだ。Salesforceに登録される案件情報のデータをMotionBoard Cloudと連携することで、今期の予算とそれに対する現在の売上実績をリアルタイムで定量的に可視化している。個別の案件は受注確度によって分類されるため、精度の高い売上の着地予測が可能となった。以前は受注が決定した案件の情報しか把握できなかったのが、近い将来の状況が見通せるようになったことで予測を踏まえて迅速に対策を打てるのが大きな変化だ。


 また、案件情報は売上金額や受注件数、提案エリアなどさまざまな角度から分析し、営業戦略の立案に役立てている。たとえば受注単価の平均推移を定期的にウォッチし、ダウントレンドが確認されたら提案社数を増やすアクションにつなげるといった動きだ。ほかにも、顧客の電力使用率と受注単価を業種別にマッピングすることで、現在の市況や狙うべきセグメントを明らかにしている。「電力は全産業が対象になる商材のため、すべての業種が見込み顧客になり得ます。しかし、だからといってどこでも営業しにいくのは戦略ではありません。客観的なデータをもとに、価格設定やターゲットを絞っています」と辻氏は語る。


 そしてダッシュボードがもたらした恩恵は予実管理だけではない。営業の本来のミッション外である社内向けの作業を大きく削減することにも成功している。たとえばマネージャーとメンバーによる進捗会議では、これまで営業実績を把握するために毎回レポートを作成していたが、ダッシュボードによってこうした準備が不要になった。また、全国に顧客やパートナーを抱える営業メンバーは出張も多いが、遠隔での会議であっても同じダッシュボードを見ながら話を進めることで、コミュニケーションも円滑化した。


 営業部門で活用されているもう一つが、「営業権マップ」と呼ばれる日本地図のダッシュボード。自社の営業がまだ当たれていない見込み顧客の所在地が地図上にマッピングされており、新規顧客の開拓に役立てられている。パートナー経由の販売とはいえ、20名足らずで全国を網羅しているため営業メンバーは効率的な活動が求められる。このマップを活用することで出張先のスケジュールをムダなく組んだり、未開拓の事業所が多いエリアを中心に営業活動を展開したりする戦略が実現した。


受注のオペレーション管理工数も可視化し、対応漏れを回避


 Salesforceを中心に営業部門に関する業務を効率化する一環として、作業漏れ防止に寄与するダッシュボードの活用もおこなわれている。それが受注後の工事件数を管理するダッシュボードだ。


 電力事業はその特性上、受注後に電力を供給するための工事が必ず発生する。入札が中心だった頃は案件数が少なくExcelで管理しきれたが、民間にシフトし案件数が激増してからは人力での管理に限界を迎えていた。そこで新規の工事が発生したら必ずSalesforceに登録し、その進捗ステータスをダッシュボードで可視化することで、対応漏れを見逃さない仕組みを整えた。ワークフロー管理でもあり、工事件数の見える化により工事のピーク時期が明らかになる効果も生まれている。「必要な機能をゼロから開発すると数千万円かかると言われましたが、SalesforceとMotionBoard Cloudを利用して実装することができました」と瓦井氏は振り返った。


営業担当パートナー獲得実績一覧(※本画面ではサンプルデータを利用しています)

電力データを生かした顧客ロイヤリティのさらなる向上


 データドリブンな営業スタイルが根付きつつある丸紅新電力では今後、売上予測のさらなる精度向上を目指している。「エリアやパートナー、案件規模によって受注率も変わるので、それらに応じた売上予測を目指しています」と辻氏は語る。


 そしてデータの力を営業部門内だけではなく、顧客へ提供するサービスの価値を高めるために活用していく考えだ。


 例として挙げられたのが、すでに運用が始まっているカスタマーサポートでのダッシュボード活用だ。丸紅新電力のコールセンターでは電力供給の開始から3ヶ月後に顧客へフォローコールし、満足度のヒアリングを実施している。ヒアリング結果のデータはSalesforceに記録され、ダッシュボードでビジュアライズされる仕組みだ。質問項目はサービスの満足度はもちろん、パートナーが販売時に必要事項の説明をぬけ漏れなく顧客に伝えていたかどうかなど、パートナーの評価も含まれる。こうした結果をデータで蓄積することで、顧客のフィードバックをサービスに反映したり、問題が生じていれば即座に営業がフォローしたりすることが可能だ。また、パートナーの顧客対応力も定量的に明らかになるため、パートナーとの協働を加速するヒントを得ることもできる。


 「現代ではネガティブな要素があれば、すぐに口コミをインターネットに書かれてしまいます。そうした事態が起きてからでは遅いので、顧客の声を自発的に集める体制を整えていきます」と、辻氏は強調した。


 前述したように電力業界は扱う商材が同一のため、コスト競争に陥りやすい。電力自由化によって競争が激化する中で、丸紅新電力はこうした付加価値で他社との差別化を図っていく戦略だ。


 他にも、電力事業で顧客ロイヤリティを高めるデータ活用のアイディアは多岐にわたる。電力事業者には電力の使用状況の計測が30分ごとに定められているため、顧客のライフスタイルデータを可視化する可能性を秘めているのだ。たとえば真夏に一般家庭で電力需要が極端に低ければ、クーラーの未使用の可能性があると判断して住人やその家族にアラートを上げるような仕組みが挙げられる。また、法人向けであれば顧客の施設で電力を過剰に消費する原因を突き止め、そのコントロールやコンサルティング提案をおこなうサービスも考えられる。


 このように、電力事業のデータを生かした新たなサービスの可能性は数多く存在する。丸紅新電力では今後も、電力の供給のみにとどまらず、新たな価値提案を目指していく。


予実管理用ダッシュボード(※本画面ではサンプルデータを利用しています)

Company Profile

丸紅新電力株式会社

設立 :2011年1月22日
所在地 :東京都中央区日本橋
事業内容 :国内電力小売事業
URL :https://denki.marubeni.co.jp/

2000年の国内電力小売の一部自由化の下で、海外電力事業で実績を持つ丸紅の国内電力小売事業部門として、2002年からPPS(特定規模電気事業者)事業をスタート。2016年4月の電力小売の全面自由化に向け、2015年11月から丸紅の100%子会社として国内電力小売事業の本格展開を開始している。

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