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デジタルツインとは?シミュレーションとの違いや活用事例も解説

作成日:2022.09.16 更新日:2024.01.23

デジタルツインとは、製造業で活用が重要視されているDXの技術の1つです。
しかし、この技術は比較的新しい概念なため、どのような特徴があるかわかりにくいと感じている方は多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、デジタルツインの特徴やメリット、活用事例などをわかりやすく解説します。
将来的に自社でDXを推進したい方や、デジタル化した既存データをさらに活用したい方は、ぜひ参考にしてください。

IoT活用からはじめる製造現場のDXとは?

 
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デジタルツインとは

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デジタルツインは仮想(デジタル)空間に、現実(リアル)空間を再現する技術で、リアルをデジタルコピーする「デジタルの双子」という意味があります。

最先端テクノロジーを活用することで、収集データを仮想空間でリアルタイムに再現・シミュレーション可能です。

工学分野では古くから主にシミュレーション技術の1つとして、この言葉は使われてきました。現実空間と仮想空間を対に扱う概念は、宇宙開発分野におけるNASA(米航空宇宙局)のアポロ計画が最初といわれます。
(参考:The Digital Twin Paradigm for Future NASA and U.S. Air Force Vehicles|NTRS

デジタルツインとシミュレーションの違い

前述したように、デジタルツインはシミュレーション技術の1つです。
しかし厳密には、デジタルツインと一般的なシミュレーションは、次の2点で異なります。

  • リアルタイム性の高さ
  • 現実世界へのフィードバック

 

リアルタイム性の高さ

一般的なシミュレーションでは、想定できるシナリオを人が仮定し、予測や実験、検証をする必要があったため、リアルタイム性が乏しい傾向にありました。

しかし、デジタルツインは常に現実世界と連動してリアルタイム性の高い予測ができ、一般的なシミュレーションよりも、さらに現実的なシミュレーションが可能です。

現実世界へのフィードバック

デジタルツインと一般的なシミュレーションの違いは、予測のリアルタイム性の高さだけではありません。

一般的な仮想空間でのシミュレーションと違い、デジタルツインは予測を現実世界にフィードバックすることが可能です。

現実的なシミュレーションで得られた結果をもとに、将来的に発生し得る問題に対して、現実世界で事前に備えられます。

【参考】デジタルツインとメタバースの違い

メタバースは、デジタルツインと同じく仮想空間の技術を意味します。しかし、両者の示す内容は全く別物です。デジタルツインとはシミュレーションを目的とした空間なのに対し、メタバースとはコミュニケーションを目的とした空間のことです。

メタバースは、デジタルツインのような現実世界の再現を意味しません。メタバースでは、アバターと呼ばれる仮想空間上で動作するユーザーの分身が、他のアバターとコミュニケーションをとります。

デジタルツインが注目される背景

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デジタルツインが注目される背景の1つに、IoTとの親和性の高さがあげられます。

昨今のIoTの浸透により、あらゆる情報の収集や数値化が可能になってきています。ただし、IoTはデータ収集能力に優れている反面、情報活用の能力は弱いことも明らかになってきました。

しかし、デジタルツインの技術をIoTと併用できれば、現実世界で収集したデータを仮想空間で蓄積・分析した後、現実世界に一体として機能させられます。

デジタルツインは適用範囲が広く、製造業やエネルギー産業など、多種多様な業界で活用可能です。また製造過程で生じるコストを抑え、高品質な製品開発に生かすこともできます。

DXとデジタルツインは切っても切れない関係

近年、企業のDXは国をあげて推進されるほど、重要視されています。デジタルツインも、そのDXの手段の1つです。

企業のデジタル技術やデータの効果的な活用ができる手段として、DXとデジタルツインは密接な関係性があります。

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用によって、ビジネスの変容や変化、変革をおこない、持続可能なビジネスを展開することです。

DXと似た言葉にIT化がありますが、両者の意味は異なります。DXの目的が仕組みそのものの変革であるのに対し、IT化はDX推進のための手段に過ぎません。

デジタルツインとDX

DX推進には、収集した情報をデジタル活用できる、デジタルツインの存在が欠かせません。デジタルツインのシミュレーション精度を高めるには、現場で得たデータを仮想空間で試用する必要があるからです。

また、データ収集や分析、シミュレーション、現場へのフィードバックなどの一連の企業活動の流れにも、この技術は活用されます。デジタルツインは、企業の単なるIT化で終わるのではなく、DXへとつながる重要な意味をもちます。

製造業におけるデジタルツインのメリット

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デジタルツインの効果が期待される業界の1つが製造業です。

製造業で活用することで得られる、代表的なメリットを6つ解説します。

製造現場の効率化

デジタルツインの活用によって、現場からのデータ収集や分析ができれば、製造プロセスの最適化が実現し、製造現場の効率化が図れます。

例えば、作業指示書や設備データなどの情報やノウハウを一元管理できれば、誰でもすぐに現場で必要な情報を調べられるため、作業員の経験による知識の差を埋めることが可能です。

情報のデジタル化により業務がさらに迅速化されるだけなく、結果的に製造期間の短縮にもつながります。

品質の向上

デジタルツインを用いれば、仮想空間でトライアンドエラーを何度でも繰り返すことができるため、製品の品質向上につながります。

データの解析やその解析によって明らかになった複数の要因を分析し、製品の不具合の原因を特定しやすくなる点もメリットです。迅速にビッグデータを収集・解析、反映できることにより、品質向上に良い影響をもたらします。

コストダウン・リスク低減

デジタルツインを導入すれば、製品の開発や設計段階でかかるコストを削減できます。

例えば、試作品を製造する際も、仮想空間で現実空間と同様の製品を再現することで迅速にフィードバックを反映でき、実際に製造する試作品の数を減らすことによりコスト削減につながります。

その他にも、製造に携わる人員に関するコストの試算もできます。仮想空間であらかじめ発生し得るリスクを把握し、そのリスクを低減させてから実際に開発や製造に移ることができるメリットがあります。

設備の予防・保全

製造ラインで故障が発生した場合、デジタルツインを活用することでリアルタイムにデータを収集・分析ができ、問題の把握や究明、改善まで素早く対応することができます。

従来は製造ラインや製品に何らかのエラーが発生した場合、現場からの調査報告や顧客からのフィードバックをもとに、原因の究明と改善が行われてきました。

しかしデジタルツインを活用することで、設備の稼働状況を同時進行で把握でき、事前に故障予測を行うことで、ダウンタイムを縮小することにもつながります。

さらに、リモートモニタリングによる設備監視もでき、予期せぬトラブル発生時にも、遠隔地から現場への指示だしが可能です。

アフターサービスの充実化

開発段階や製造中だけでなく、デジタルツインなら出荷後の製品の状態も確認できます。

例えば、仮想センサーで商品が顧客の手に渡った後もデータを取得し、製品のバッテリーの消耗具合や摩耗状況を把握できれば、適切なタイミングで顧客を自動でサポートすることが可能です。

このようなアフターサービスの充実化は、顧客満足度の向上にもつながります。

デジタルツインを支える技術

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デジタルツインはどのようにして作られるのでしょうか。デジタルツインを実現するうえで必要な技術を解説します。

IoT

IoTは「Internet of Things」の頭文字をとった略称で、現実空間のさまざまなモノをインターネットとつなげることで情報を収集し、通信をおこなう技術です。小さなセンサーを製品に設置するタイプのものや、監視カメラ、ドローン、衛星データなどもIoTに含まれます。

高精度な仮想空間を作るには膨大なデータを収集する必要があるため、IoTの技術はデジタルツインの実現に不可欠な要素です。

5G

5Gとは、「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略称です。5Gなら大容量のデータを超高速で、超低遅延かつ多数の端末で送受信できます。デジタルツインへの活用場面で5Gは、情報を仮想空間に反映する際の、リアルタイム性にかかわる重要な要素です。

さらに、5Gはクラウド上にデータを集約する間の通信手段としての役割もあります。基本的にIoTのセンサー数が増え、取得できるデータの精度が高くなるほど、必要となるデータの総量が大きくなります。しかし、5Gを活用すれば効率的なデータ処理が可能です。

AI

AIとは、「Artificial Intelligence」の略称で、日本語では人工知能とも呼ばれます。デジタルツインで期待されるAIの主な役割は、高精度な未来予測です。

現実世界でIoTが収集した大量のデータを、仮想空間でリアルタイムに高精度で再現するには、高度なデータ分析力が必要です。AIの情報分析能力の高さは、より正確な未来予測を必要とするデジタルツインに欠かせません。

AR・VR

ARとは、「Augmented Reality」の略称で、日本語で「拡張世界」と呼ばれる技術です。VRとは、「Virtual Reality」の略称で、日本では「仮想現実」とも呼ばれます。

デジタルツインにとってARやVRは、仮想空間を視覚的に伝えるうえで有用な技術です。ARやVRの技術を用いれば、仮想空間で発生したトラブルやエラーを、よりリアルにフィードバックできます。

デジタルツインにより解決を期待できる課題

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デジタルツインを活用すれば、世の中の多種多様な課題を解決できると期待されています。どのような課題を解決できるのかを解説します。

産業課題

デジタルツインは製造業をはじめエネルギー業界、建築業界、物流業界など多種多様な産業で活用されています。

製造業では主に、次の3つのタイミングに関する課題解決場面で、この技術が用いられます。

  • 製品を製造する前(DTP)
  • 製品を製造した後(DTI)
  • DTIを集合体にしたとき(DTA)

メリットでもご紹介したように、仮想空間で生産や設備をテストし、リスク課題を解決するシミュレーションは、デジタルツインの得意分野です。また、IoTによるセンサーデータをもとに、現場の問題確認や遠隔指示するオペレーション場面での活用も期待されています。

社会課題

SDGsのような世界規模の社会問題を予測し、最適化する役割がデジタルツインに期待されています。SDGsとは環境問題や差別、貧困、人権問題などの世界の課題を、世界全体で2030年までに解決するための計画や目標です。

例えば、気象災害を想定した避難訓練や避難行動の改善、現場の高齢化にともなう労働力不足の解消、都市の未来予測などに、デジタルツインを役立てる動きがあります。現実世界で生じ得る社会課題を発見し、解決策をフィードバックする際にデジタルツインは必要不可欠です。

医療課題

医療分野では、バイオデジタルツインによる医療課題の解決が期待されています。バイオデジタルツインとは、仮想空間で写しだした患者それぞれの身体や心理に関するデジタルツインです。

手術や治療のシミュレーションをはじめとした、医師の補助的な役割として収集データは活用されます。病気の早期発見や予防などにも、この技術は有用です。さらに医療従事者の不足や偏在、地域格差などの問題の解決策として、医師や看護師の労務管理にも役立てることが可能です。

デジタルツインの活用事例

デジタルツインが活用される代表的な分野に関して、具体的な事例をもとに解説します。

製造業

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特に自動車産業を中心とした製造業で、デジタルツインの活用事例が増えています。

例えば生産量や在庫などに関する生産計画や、工場レイアウトの最適化、生産進捗・設備の異常検知など、リアルでは試しにくいような事柄を仮想空間であらかじめ試すことが可能です。

製造ラインでの活用だけでなく、製品そのものにデジタルツインを搭載させることで、製品の安全性や動作の判定ができます。

物流業界

物流業界では物流の設計・管理の最適化を目的とした、デジタルツインの事例があります。例えばリアルタイムに再現される仮想倉庫で、オペレーションの効率化を図ることが可能です。

また、車両についたセンサーデータをもとに、渋滞の予測や在庫管理、輸送ルートの検証など、物流の過程を追跡・可視化することで、効率的な物流管理が実現します。

さらに、運転中のドライバーの心拍数や体温などの計測、車両の挙動やブレーキの頻度などをデータ収集することで、運転手の健康管理が可能です。

小売業

小売業では製品のアフターフォローの場面で、デジタルツインが活用されている事例があります。IoTとの連携によって、納品後も製品状況の把握や寿命の予測ができるため、顧客満足度を高めるための働きかけが可能です。

また、店舗内での人の動きや環境データを収集し、ムダや非効率な作業を可視化することで、店舗業務の効率化を推進できます。人手不足の解消にも効果的です。さらに、スタッフの動きに応じて環境データを収集できれば、日報を自動作成することも可能です。

航空業界

航空業界では、特に航空機エンジンのメンテナンスに関連する業務で、デジタルツインの活用事例があります。

例えば、エンジンに取り付けたセンサーからリアルタイムでデータを収集し、航空機の実際の状態を仮想空間での複製が可能です。また、AIがエンジンの状態を分析し、メンテナンスをすべき適切なタイミングの把握もできます。

デジタルツインを活用すれば、精度の高い安全性や保守費用のコスト削減につながるでしょう。

スマートシティ

デジタルツインはスマートシティの設計にも活用されています。スマートシティとは、デジタルツインに関連する先端技術を使った、住みやすい都市です。

例えば人口や渋滞、建設などのリアルタイムデータを用い、バーチャル都市を仮想空間に作れば、都市開発のシミュレーションができます。日本の国土交通省のプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」やシンガポールの「バーチャル・シンガポール」などが活用の一例です。

まとめ

製造業のデジタルツインとは、現実世界の工場と仮想空間のモデルを同期させ、生産活動の最適化を支援することを指します。

この技術は主に、生産計画やレイアウト設計、異常検知などに活用することができます。

ウイングアーク1stでは、デジタルツインを実現するBIツール「MotionBoard」を提供しています。

「MotionBoard」の3Dマップのもつ圧倒的にわかりやすい表現を用いることで、その場にいなくても現場の状況が手に取るようにわかるようになり、多面的なデータに基づいたスピーディーな意思決定に役立ちます。

投資対効果の見込めるデジタルツインの実現に課題を感じている企業は、ぜひお気軽にご相談ください。

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