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IoTとは?仕組みやできること、業界別の活用事例などを解説

作成日:2022.07.29 更新日:2024.01.23

IoTとは、モノのインターネットを意味する言葉で、モノとインターネットを通じてデータ交換を行う仕組みのことです。
IoTは私生活を便利にするものであると同時に、企業に導入することで生産性向上が期待できます。

この記事では、製造業でDXを進めたいと考えている部門担当者の人に向けて、IoTの基礎知識から業界別の活用シーンまでわかりやすく解説します。

IoT活用からはじめる製造現場のDXとは?

 
・IoTに投資したいけど どうはじめればいいかわからない…
・IoTデータをどう活用していいかわからない…
こんなお悩みがある方へ、シンプルなIoTからはじめる製造現場におけるデータ活用のフレームワークについてご紹介します。
 

IoTとは

IoTとはInternet of Thingsの頭文字をとったもので、モノのインターネットと直訳され、インターネットを介してモノとデータ通信をすることを意味します。

ここでいうモノは、家電や家具、自動車、工場の設備などさまざまなモノを指し、種類は限定されません。

外出先でスマートフォンからエアコンを遠隔操作するといった私生活に関わるものから、製造現場においてデータを可視化しDXを推進するものまで、IoTを指すものは幅広くあります。

IoTとM2Mの違い

IoTと間違われやすい言葉にM2Mというものがあります。

M2MはMachine to Machineを略した言葉で、機械と機械をネットワークでつなぐ仕組みのことです。

機械同士の相互通信を指し、ガス料金の自動検針、エレベーターの遠隔監視などがM2Mにあたります。

IoTはインターネットを利用してモノとデータをやり取りすることを意味するため、両者の特徴は似ています。

ただ、両者の使用目的に違いがあり、IoTはモノからのデータ収集・分析が目的で、M2Mは機械から情報を得て制御することが目的です

IoTの仕組み

IoTは以下4つの要素により構成されています。

  • モノ(デバイス)
  • センサー
  • ネットワーク
  • 可視化

モノ(デバイス)

インターネットで接続して、データの送受信や遠隔操作をする対象をモノやデバイスと呼びます。

モノ(デバイス)とは、家電、時計、スマートフォン、自動車といった私生活で使用するものや、製造業で使用する設備など、あらゆる物体が対象です。

製造業においては、センサーを取り付けてデータを送受信できるものはすべてモノとなります。また、人を介さなくてもデータを送受信できるバーコード、ドローンなどもモノとして含まれます。

センサー

センサーは置かれた場所の環境や状態を感知する装置です。

センサーにはさまざまな種類があり、種類によって温度、振動、音、におい、光、速度、圧力、かたむき、電磁気など検知できるものは異なります。人間でいうと目や耳、鼻など、周辺状況を感じるための器官にあたるものです。

モノにセンサーを取り付ければ、モノの状態がどのようなものか遠隔地にいても把握できるようになります。

ネットワーク

ネットワークはモノに取り付けられたデータを送信する、モノに対してデータを送る役割があります。

ネットワークには、モノと有線でつなぐ方法と、無線でつなぐ方法の2種類がありますが、現在無線ネットワークを採用することが一般的です。

無線ネットワークのなかでも、ルーターを介したWi-Fi回線、Bluetooth、SIGFOXなどさまざまな種類があり、つなぎたいモノやつなぐ目的に応じて適したネットワークを選ぶ必要があります。

可視化

集めたデータは、そのままの状態では膨大な数値の羅列であり、活用は難しい状態です。

そのため、必要なデータを抽出し、グラフや表などで可視化しなければなりません。

可視化は、情報を集め分析し、人間が理解しやすいかたちにする役割をもちます。

可視化アプリケーションの一つに、BIツールがあります。

BIツールとは、データを分析、可視化するアプリケーションで、ビジネスの意思決定にも役立ちます。各部署の現状を視覚的に把握したいときにおすすめです。

IoTでできること

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IoTを利用してできることは、具体的にどのようなものか解説します。

モノを遠隔操作する

インターネットでモノと接続すれば、離れた場所にいても遠隔操作ができます

具体的には、出先からスマートフォンで家のエアコンを操作する、遠隔地からペットの様子や餌の状態を把握し、必要であれば給餌する、といったことです。生活の利便性を向上するために活用されるケースが多いでしょう。

製造業の場合、遠隔地からロボット操作を行う、事務所からパソコン画面を監視し操作する、などが該当します。

モノの状態を把握する

モノの周囲の状況や環境をセンサーで感知し、その情報を遠隔地に送信することができます。

そうすることにより、モノの近くにいなくても状態を把握できます。家庭では、ペットの心拍数や体温を自動で検知し可視化する、周辺の温度を測定し、それに応じてエアコンの設定温度を設定する、ということが該当します。

製造業の場合、製品の品質を維持するために、あらかじめ設定した品質基準と照らし合わせて製品の状態を把握したり、在庫の状況などを把握したりすることができます。

また、工場の設備にセンサーを取り付けて稼働状況を監視することで、劣化状況を把握し、先回りして劣化した部品を交換したりメンテナンスをすることによって設備停止により機会損失を抑制することも可能です。

モノの動きを検知する

動きを検知できるセンサーの技術と組み合わせれば、モノや人の動きを検知できます

センサーは人がみつけられないようなわずかな動きも検知可能です。そのため、ごくわずかな異常もすぐに発見でき、異常や不具合の予防や早期発見につながります。

製造業でも、工場の生産ラインが正常に稼働しているか、異常がないかを検知するために活用することで、問題が生じた際にも迅速な対処が可能になります。

また、カメラと連携することにより、工場内の様子や作業者の動きをリアルタイムでモニタリングし、遠隔から指示を出すことも可能です。

モノ同士で通信する

モノとモノを通信させ、複数の電子機器を自動で動かすことも可能です。

モノの遠隔操作、モノの状態把握、モノの動き検知の3つを複合させたような機能で、ネットワークの進化にともない大きな発展が期待されています。

具体的には、自動運転で信号が赤になったときに車を減速させる、スマートスピーカーを通じて家電を操作する、といったものが代表的です。

製造業においても工場内の機械同士をインターネットでつなぎ工場全体の効率化を図るスマートファクトリーを実現するためには欠かせない機能です。

工場内のインターネット環境や機器の整備が進むと、モノ同士の通信は1つの工場内で完結するだけではなく、工場と工場、工場と本部をつなぎ、より全体最適な効果を得られるようになります。

IoTの実現が企業活動にもたらす効果

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生活のあらゆるシーンでも活用されるIoTですが、企業活動においてIoTを活用すると以下のような効果をもたらします。

利便性の向上

モノとインターネットがつながることで、モノを離れた場所から遠隔で操作・管理できたり、手動だった作業を自動化したりすることにより利便性が向上します。

IoT技術の活用は、社員の位置情報や施設の利用状況、出退勤時間の管理などを容易にし、働き方改革を推進することにもつながるでしょう。

データの見える化

IoTを導入することで、データの見える化が進み、データに基づいた判断や意思決定が可能になります。

例えば、人の手では管理できなかった異常音などのデータを収集・分析することにより、設備が故障して機会損失が起こる前に予兆を察知し、メンテナンスや部品交換などの対処ができるようになります。

これまで取得できていなかったデータを収集し分析することにより、何か問題が発生した場合でもボトルネックを特定しやすくなるでしょう。

コスト削減・業務効率化

IoTを活用することは、コスト削減につながり結果的に業務の効率化にもつながります

IoTでモノからデータを収集分析することにより、設備の効率的に稼働させる、適切な人材活用を行う、生産数を最適なものに維持する、といったことが可能です。結果として、さらなる生産性向上が期待できるでしょう。

新しいビジネスの創出

IoT化すれば、人の手では到底追いつかないくらい、モノから膨大なデータを得られます。

それを活用すれば、新たなビジネスを創出することもできるでしょう。遠隔操作や動きの検知といった機能を使った、新たなサービスも生まれるかもしれません。

また、既存ビジネスを磨き上げるような使い方もできます。リアルタイムでモノから状況を把握できるため、いち早くユーザのニーズやサービスの改善点などに気づけるでしょう。

業界別にみるIoTの活用シーン

業界によってどのようにIoTが活用されるのか、具体的な事例について解説します。

製造業界

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設備の環境や、作業工程の効率化が重要である製造業界では、IoTを以下のように活用できます。

設備稼働時間の効率化

IoTで設備の稼働状況を検知することにより、設備稼働時間の効率化が可能となります。

設備が停止している時間が長いと生産性が落ちるため、設備が止まる原因を追求し、設備停止時間をなるべく減らす必要があります。

設備ごとに、設備の非稼働時間や件数を可視化し分析することで原因を追求しやすくなるでしょう。

結果として設備稼働時間の効率化につながります。

人手不足・熟練者依存の解決

製造業では、人手不足や熟練者依存による属人化が問題となっています。

IoTを活用すれば、それぞれの工程を分析、最適化し、必要な人員を削減したり、遠隔地からモノを操作したりすることができます。

少ない人員、経験不足な人員でも設備を稼働できるようになるため、生産性向上、品質向上につながるでしょう。

物流業界

在庫や注文を管理する物流業界では、規模が大きくなると手作業で対応することは難しくなります。

大量の注文を受ける企業では、在庫管理、入出荷管理、配送管理をIoTで行うと便利です。

IoTで在庫状況を自動で検知できれば品切れをリアルタイムに通知できますし、入出荷や配送の管理も自動的に行えます。手作業の削減にもつながり、業務効率化が可能です。

医療業界

医療業界ではIoT化による在宅医療支援、遠隔地からの医療提供が期待されています。

IoTで遠隔地から患者の体温や血圧、患部の画像をリアルタイムに確認できれば、医師が家に訪問しなくても在宅医療が可能です。

地方では医師不足が問題となっています。遠隔地から医療を提供できれば、医師がいない地方在住者も安心でしょう。

医療業界では医師や看護師の高負担も大きな課題の一つです。IoTによる支援で医師や看護師の負担軽減が期待されています。

農業業界

IoTでデータ化し作業を標準化することにより、長年の勘や経験が必要だった農作業を標準化、マニュアル化できます。

そのため、IoTを活用すれば、経験や知識が乏しい新規企業も参入しやすくなるでしょう。農業業界で問題となっている、人手不足や後継者不足の解決につながると期待されています。

IoTは畜産業でも、水や餌の自動供給、集糞や浄化槽の稼働状況の検知、動物がいる場所の温度や湿度、酸素濃度の自動測定、といったことで活用されています。

自動でできる部分を機械に任せることにより、従業員の生産性は向上するでしょう。

交通業界

バスや電車などの公共交通機関では、今現在車両がどこを走行しているのかを把握するためにIoTを活用しています。

運行状況がリアルタイムでわかれば、乗客はあとどのくらいでバスや電車が到着するのか把握することが可能です。

また、複数のタクシーの稼働状況、現在地を一括で把握できれば、効率的に車両を配車できます。

IoTがあれば、リアルタイムで渋滞状況もわかるため、渋滞を回避して最適なルートを選ぶことも可能です。

身近なIoTの活用シーン

IoTは企業だけではなく、一個人の生活も便利にします。IoTの身近な活用シーンを紹介します。

トイレ

多くの人が利用するような施設の大規模なトイレは、どの個室に人が入っているのかわかりにくいときがあります。

奥のほうの個室が空いていることに気が付かず、個室を効率的に使えないこともあるかもしれません。

しかし、IoTでトイレに人が入っているかどうかを検知し可視化すれば、どの個室が空いているのか一目瞭然です。

トイレの混雑緩和、案内する人の削減、犯罪防止につながるため、利用者、管理者、清掃担当者すべてにメリットがあります。

トイレのIoT活用は、ファッションビルなどの商業施設、オフィス、病院などで導入されています。

ゴミ箱

公園などの公共スペース、店舗では、複数のゴミ箱が設置されていることが一般的です。

ゴミ箱のたまり具合に関係なくすべてのゴミ箱を回収してまわると、時間コストも労力も大きくなってしまいます。

しかし、IoTを活用すればゴミ箱が満杯かどうか自動で検知し通知可能です。ゴミ箱が溜まったときだけ回収すればよくなるため、ゴミ箱回収に関わる人員削減でき、コスト削減につながります。

IoTで注目される通信技術

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IoTはモノをインターネットにつなげるため、通信技術が重要です。
IoTで注目されている通信技術について解説します。

5G

5Gは5th Generation(第5世代)を略したもので、正式名称は第5世代移動通信システムです。

5Gは4Gよりも性能が高い通信技術で、高速、大容量、低遅延、多接続という特徴があります。

スマートフォンやタブレットを複数接続すると、4Gは遅延しやすいのですが、5Gは最大で100万ものデバイスを接続可能です。

通信速度も早く、大容量通信にも耐えられるため、一般人の利用だけではなく、大規模な製造業や物流業界でも通信品質を維持できるのではないかと期待されています。

LPWA

LPWAは「Low Power」「Wide Aria」の頭文字を略したものです。少ないパワーで広いエリアに対応できる、という意味になります。

LPWAの特徴は省電力、低コスト、広範囲、低速です。最大250kbps程という低速ではありますが、通信コストを抑えつつ広い範囲で利用できます。

また、省電力能力はかなり高く、ボタン電池でも数年稼働できるほどです。

IoTとAIの関係

膨大なデータを扱うIoTにとって、AIは欠かせない存在です。

IoTにより集めた膨大なデータはそのままでは利用できません。あまりにデータが多いため、数値の相関関係や異常値を人の手で発見することは不可能でしょう。

AIはビッグデータを収集し分析することができるため、IoTで集めたデータを処理するにはAIが必要です。

IoTだけではなく、AIと組み合わせることにより、IoTの活用の幅を大きく広げられます。

IoTの活用により生産性向上を実現した企業事例

ここまでIoTの基礎知識について紹介してきましたが、IoTはあくまでも技術の1つであり、実際に企業活動の中で活用するためには、現場の課題を明確にした上で必要な技術を設計し、改善を重ねていくということが重要です。

IoTの活用により改善活動を進めた結果、実際に生産性の向上に成功した企業事例を紹介します。

設備可動率が4ヶ月で22%アップ(Siam Asahi Manufacturing)

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旭鉄工株式会社のタイ工場のSiam Asahi Manufacturingでは、生産性向上のためにIoTを活用しています。

この工場では、22のラインを活用して自動車部品を製造していますが、改善する前の可動率(べきどうりつ)は56%ほどでした。

そこで、22ラインすべてにシンプルな光センサー、磁石スイッチを取り付けデータを収集・分析することでボトルネックを洗い出し、改善活動を進めた結果、可動率を78%まで向上させることに成功しています。

まとめ

IoTはモノをインターネットでつなげ、データを送受信することでさまざまなことを実現します。

IoTを活用すれば、私生活の利便性を高めるほか、企業では作業効率や生産性向上が可能です。

ウィングアーク1stは、IoTを活用したデータ収集からデータの可視化までできるソリューションを提供しています。

記事中で紹介したようなIoTの活用ができるようになるため、企業の作業効率化や生産性向上につながるでしょう。

ぜひお気軽にご相談ください。

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