POSデータの基本概要
POSデータには、さまざまな情報が記録されます。ここでは、POSデータとは何か、なぜ注目されているのかを確認しながら、POSデータに含まれる情報についても見ていきましょう。
POSデータとは
POSデータとは、商品が購入されるたびに記録されるデータのことです。POSは「Point of Sale(販売時点)」の略称で、商品の購入が確定した時点で、価格や数量、販売日時や店舗といった情報が自動的に登録されます。
これらのデータは売上の記録だけに使われるデータではなく、消費者の購買行動や市場動向を分析するための基礎情報です。多くの企業がPOSデータを経営判断や現場改善に活用しています。
なぜPOSデータが重要なのか?注目される理由
小売や流通の現場では、情報共有のスピードと正確さが成果に直結します。POSデータは、現場で何が起きているのかを数値で正確に把握できる情報源なのです。
例えば、特定商品が売れた時間帯や地域ごとの売上動向が把握できれば、販売促進や在庫配置に即応できます。情報の粒度とリアルタイム性を兼ね備えているPOSデータは、マーケティングに欠かせないデータです。
また、データを多角的に分析することで、数値を根拠にした客観的な意思決定と経営改善に活用できることも、POSデータが注目される理由だと言えます。
POSデータに含まれる情報
では、POSデータにはどのような情報が含まれているのでしょうか。ここでは、販売そのものに関する基本的な情報と、ID-POSの2種類に分けて見ていきましょう。
販売日時・店舗・商品・価格などの基本項目
POSデータの基本項目としては、「いつ」、「どこで」、「何が」、「いくらで」、「いくつ売れたか」が記録されます。具体例としては、以下のようなイメージです。
POSデータの項目例 | POSデータの例 |
---|---|
販売日時 | 2025年〇〇月△△日(土) 14:23 |
販売店舗 | 代官山店 |
商品名 | オーガニックハーブティー |
商品コード | OH‐0203 |
価格(税込) | 540円 |
販売数量 | 2個 |
支払い方法 | クレジットカード |
販売員ID | staff0012 |
販売されたのが同じ商品でも、立地によって売れ方が異なる場合は、店舗別に仕入れ量を調整する際の根拠としてデータを活用可能です。現場の判断に必要な情報が数値で裏付けされるため、勘や経験に頼った属人的な対応を避けることにも繋がります。
ID-POSで把握できる顧客の属性・行動履歴
「ID-POS」は、顧客IDと購買情報を紐づけしたPOSデータです。ポイントカードや会員情報と連携させることで、だれが何を買ったのかを特定できます。
ID-POSの基本項目は、上記POSデータの基本項目に加えて、以下のような項目が挙げられます。
項目 | データ例 |
---|---|
会員ID | A000000000 |
顧客属性 | 30代・男性・東京都在住 |
購入金額合計 | 1,650円(税込) |
累計購入回数 | 12回 |
累計購入金額 | 18,200円(税込) |
直近の来店間隔 | 前回から12日ぶり |
このようなデータが把握できれば、30代の男性が平日の日中に、どのような商品を購入しているのかなどの行動パターンを分析することができます。POSデータに人の属性や行動履歴が加わることで、売上記録から顧客理解ができるようになるのです。
POSデータを分析するメリット
POSデータの分析にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つの主なメリットについて見ていきましょう。
売上予測と在庫管理の効率化
POSデータの活用は、売上予測や在庫管理を効率化させ、さらに精度向上に繋がります。
例えば、商品Aが月末に売れやすい傾向があると分かった場合です。過去の販売実績から需要を予測して、月末に適切な個数を仕入れることができます。これにより、品切れでの機会損失や過剰在庫によるコストの増加を防ぐことが可能です。
また、POSデータは販売時点で即時にデータが集計されるため、各店舗や拠点の在庫状況をリアルタイムに把握できます。本部と店舗の情報が連携できるため、店舗間での在庫移動や発注調整などの判断を正確かつスピーディに行えます。
特に、流通業やサービス業では、季節やイベントごとの需要変動が大きいため、データに基づいた判断が重要です。POSデータは、このような予測と対応精度を支えるインフラとなります。
顧客理解とマーケティング施策の向上
POSデータは、売れた商品を知るためだけではなく、どのような顧客がどのようなタイミングで商品を購入したのかを分析する情報です。ID-POSと組み合わせれば、年齢や性別、購買頻度といった顧客の属性を踏まえたマーケティング施策ができます。
例えば、「30代の男性が商品Aを、月末にまとめ買いをする傾向がある」といったパターンが分かれば、そのタイミングに合わせた販促施策やクーポン配信を行うことも可能です。顧客の行動に合わせた施策を実行することで、反応率向上やリピーター獲得に繋がるでしょう。
代表的なPOSデータの分析手法
POSデータは、適切な分析手法を使うことで、利益向上や迅速な意思決定に繋がります。ここでは、代表的な4つの分析手法を見ていきましょう。
ABC分析
ABC分析は、売上や利益への貢献度を指標にして商品をランク付けする手法です。Aランクは全体売上の大半を占めている重要商品、Bランクは一定の売上を担う中堅商品、Cランクは売上が少ない商品というように分類します。
例えば、累計構成比が70%~80%未満のものをAランク、70%~90%未満のものをBランク、90%~100%のものをCランクと整理されるのが一般的です。
この分析により、重点的に販促すべき商品や、販売スペースの最適配分を判断することができます。在庫管理や仕入れ効率化にも繋がるため、実店舗やECサイトなど、幅広い業種で導入されている分析方法です。
トレンド分析
トレンド分析は、売上や客数の推移を時系列で把握する分析手法です。週次・月次・年次といった単位でデータを並べることで、曜日や季節の影響、新商品投入の効果などを可視化できます。また、複数店舗のトレンドを比較することで、地域ごとの需要や売れ筋商品の違いも見えてきます。長期的な戦略だけではなく、現場の短期的な対応にも活用できる分析手法です。
RFM分析
RFM分析は、「Recency(最終購買日)」「Frequency(購買頻度)」「Monetary(購買金額)」の3つの軸で評価する分析手法です。ID-POSを活用することで属性や行動履歴などのデータを得て活用します。
例えば、購買頻度と購買金額が高く、かつ直近で購買している顧客を優良顧客に分類し、特別なキャンペーン案内を行う対象にすることができます。一方、以前は頻繁な購買が見られたものの、直近で離れている顧客に対しては、再来店を促すアプローチが必要なことが分かります。
バスケット分析
バスケット分析は、一緒に購買される商品を見つけ出す分析手法です。どのような商品が合わせて買われているかという傾向を把握することで、関連商品の提案や棚割り、セット販売などの企画に繋げることができます。例えば、「パスタを購入した人は、トマト缶を一緒に買う確率が高い」といった関係性を見つけ出すのです。このようなデータを基に、レジ前に関連商品を置いたり、ポイントキャンペーンを組んだりするなど、売り場改善や売上向上に生かすことができます。
POSデータ分析の課題
POSデータはマーケティングに欠かせない情報源ですが、導入や運用にはノウハウや知識が必要です。ここでは、POSデータ分析における主な課題について見ていきましょう。
データ量が多く分析に時間がかかる
POSシステムには毎日の取引情報が蓄積されるため、膨大なデータ量になります。店舗数や商品点数が多い企業では、分析対象となるデータ量は増大します。
例えば、日別・店舗別・商品の売上データを基に傾向を分析しようとすると、単純な表計算ソフトでは処理しきれないケースも少なくありません。抽出や加工に手間がかかり、迅速な意思決定が難しくなる場面もあります。
このように、分析に着手するまでの時間や集計にかかる時間がネックとなり、POSデータを生かしきれないという課題に繋がるのです。
高度なデータ分析スキルが必要
POSデータを多様な角度から分析するには、目的に応じて適切な切り口で情報を扱うための知識が必要です。どの項目を軸に見るべきか、どのようなデータ加工が必要か、どの指標で比較すべきかといった判断には、現場経験だけではなく分析スキルが欠かせません。
また、分析結果を現場の施策に繋げるためには、データの裏にある意味を正しく読み解き、ステークホルダーに分かりやすく伝える能力も不可欠です。このように、データを出力するだけではなく、「使える形に整える力」が求められる点が、POSデータ分析の難しさとも言えます。
POSデータを含めたあらゆるデータ分析ならウイングアークにおまかせ
POSデータを活用するには、膨大な情報をスムーズに扱える仕組みと、それを現場で生かすための可視化をする仕組みが欠かせません。そこで活用したいのが、データ分析基盤から活用までを一貫して支援するソリューション「Dr.Sum(ドクターサム)」と「MotionBoard(モーションボード)」です。
大量データの高速集計を実現する高度なデータ分析基盤 Dr.Sum
「Dr.Sum」は、大量のデータ活用に必要な機能を備えるデータ基盤ソリューションです。POSや在庫システムなどのシステムデータやExcelデータなど、さまざまなデータと接続でき、各データを「Dr.Sum」で統合して分析データを構築できます。例えば、2,000万件の販売データも1秒以内に処理可能な高速集計・多重処理のデータベースエンジンを搭載しているため、即座に分析結果を共有できます。また、BIツールなどと組み合わせることで、可視化されたデータをリアルタイムに確認可能です。
POSデータなどのさまざまなデータをリアルタイムに可視化するMotionBoard
「MotionBoard」は、さまざまなデータをダッシュボード上に可視化できるBIツールです。カスタマイズ性が高く直感的な操作が魅力で、上述のDr.Sumと連携して活用できます。POSデータを抽出して、集計分析やKPIの定点観測、売れ筋商品などをMotionBoardのダッシュボード上でリアルタイムに把握・共有可能です。
例えば、MotionBoardでID-POSデータを活用する場合です。分かりやすい操作で各種データを集計して可視化してくれます。データが一目で確認でき、どのカテゴリの製品の販売が好調なのかなど、データ分析と共有がスムーズです。
Motionboard例:「カテゴリごとの業態シェア」
また、分析手法のRFM分析などもMotionBoardで行うことが可能です。以下は一例ですが、RFM分析ではダッシュボードを表示できます。
Motionboard例:「RFM分析ダッシュボード」
POSデータの活用事例:株式会社チュチュアンナ
主な用途:売上・在庫の分析、予測
株式会社チュチュアンナは、女性用の靴下やインナーウェアを中心とした商品の企画・販売を手掛ける企業です。レッグウェア、インナー、ウェア、服飾雑貨等の商品企画、小売、卸売を行っています。
同社で使用していた旧来のデータ活用基盤は、決められた仕様の中でデータを収集し、定型的な分析しか行えませんでした。そのため、新たな分析ニーズが生じた際には、複数のシステムから分析に必要なデータを手作業で集めて統合する手間がかかる上、分析項目の追加開発が必要なケースもありました。そこで同社では、これら課題を「Dr.Sum」と「MotionBoard」導入によって解決したのです。
課題
- BIシステムを中心にした従来のデータ活用環境では、固定的な分析しか行えない
- データの集計処理に時間がかかり、BIツールのレスポンスも悪い
- BIツールによるドリルダウン、ドリルスルーが容易に行えない
- データの分析・活用が進んでおらず、経験と勘に頼った運営が行われていた
これら課題解決のためにDr.Sumと MotionBoardを導入。 データ活用基盤を再構築するとともに、分析データを可視化するMotionBoardを各店舗に導入し、店舗でのデータドリブン型のオペレーションの実現を目指しました。
「Dr.Sum」と「MotionBoard」導入の効果
- 分析データの取得スピードが最大60倍に高速化
- 自由分析が実現し、より質の高い分析が行えるようになった
- MotionBoard活用で各店舗でもデータを視覚的に確認しやすくなった
Dr.Sum の導入で分析スピードは最大60倍になり、分析の対象範囲も広がりました。また、MotionBoardを使うことで、各店舗の店長は自店舗の状況を一目で確認できるようになりました。また、これらソリューションは、今後のAI活用を見据えたデータ活用基盤となります。
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分析データの取得スピードを最大60倍に高速化し、分析の自由度も向上 「誰でもできるマーチャンダイジングの実現」を目指す
POSデータを効果的に分析・活用して成果を上げよう
POSデータは、単に現場で発生する商品購入データを記録した数値ではありません。売上予測や在庫管理、顧客理解やマーケティング施策など、企業活動全体を支える重要な情報源なのです。しかし、膨大なデータを上手に扱って成果に繋げるには、適切な分析手法とそれを支える仕組みの導入が欠かせません。また、高い分析精度とスピーディな現場へのフィードバックを行うためには、高速なデータ処理が可能なソリューションの選定が重要なポイントになります。属人的な勘や経験に頼らず、データに基づく判断ができる環境は、小売・流通・サービス業において不可欠なものです。
本記事で紹介した「Dr.Sum」や「MotionBoard」ならば、現場のPOSデータを迅速に可視化して、業務改善や売上向上、意思決定の根拠として活用できます。