導入事例

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院

電子カルテシステム、医事会計システムのデータを集約し瞬時に見やすい形で集計・可視化。
統一された経営指標で経営と業務の大幅な改善を実現

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院
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社会福祉法人恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院(以下、日向病院)は2023年3月の院内システム全面更新時にIQVIAソリューションズジャパンの病院向けデータ活用サービス「IQVIA Hospital Data Platform ダッシュボード」を導入した。電子カルテシステム、医事会計システムに散在するデータを一元化し、MotionBoardによる可視化機能によって、入退院患者数や病床の空き状況など経営改善や業務効率向上に役立つデータを迅速に集計・可視化。統一された経営指標を元に考え、よりよいアクションにつなげる新しい病院経営のかたちを目指している。

導入背景

病院内には電子カルテシステムや医事会計システムをはじめとする様々なシステムが存在し、それぞれ別々のデータを持っているため、一元化された正確なデータを取得することが困難だった。「IQVIA Hospital Data Platform ダッシュボード」導入によりデータを一元管理し、迅速に集計・可視化することで、病院経営の改善、業務効率の向上を目指した。

課題
  • 地方病院が質の高い医療サービスを安定的に提供するため、事務部門だけでなく、医局、看護部などあらゆる部門で経営的視点を持つことが求められている。
  • データが各システムに散在していたため、リアルタイムに正確なデータが得られず、経営改善や業務効率向上に活用することが困難だった。
  • システムから必要なデータを抽出したり、メンテナンスを行うことができるメンバーが限られており、属人化が進んでいた。
解決策導入ポイント
  • 「IQVIA Hospital Data Platform ダッシュボード」が院内各システムからのデータを集約。
  • MotionBoardによる可視化機能が、一元化されたデータを迅速にわかりやすく可視化。
  • リアルタイムに病院の状況を把握し、改善のためのアクションにつなげる。
効果
  • 入退院患者数、病棟稼働率、医師別稼働額など様々な切り口の経営指標を瞬時に見られることで、病院経営の改善と現場の業務効率向上に大きく貢献。
  • 統一された経営指標を各部門の担当者が共有することで、看護部と医事課など病院内の連携が深まった。
  • データを元に考え、行動する文化が定着しつつあり、職員の経営参画意識が高まっている。

より安定した経営、効率的な業務を実現するため、一元化されたデータに基づく経営指標が求められていた


 社会福祉法人恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院(以下、日向病院)は1958年、地域住民の強い要望により開設され、公的病院として救急医療を含めた地域医療の中心的役割を担ってきた。一般、地域包括、回復期リハビリテーション、療養、感染の199床を持ち、済生会の理念「患者さんのために、良質の医療を的確・迅速に、真心込めて提供します」をもとに、急性期医療から回復期医療、在宅医療まで、地域のニーズに幅広く応えている。


 患者数などのデータを迅速・正確に把握・分析し、安定した経営を実現することは、地域医療を支える病院にとってきわめて重要だ。また、病床の空き状況などをリアルタイムに把握することで、より効率のいい運営が可能となり、職員の業務負担も軽減できる。


 しかし、日向病院は一元的に管理されたデータの共有や統一された指標による経営状態の分析、リアルタイムなデータに基づく業務改善などの点で課題を抱えていた。


 院内には患者の基本情報や診療経過などを記載する電子カルテシステムと診療報酬の算定・管理などを行う医事会計システムが存在する。それぞれのシステムが持つデータには差異があり、一元化された正確なデータを取得することは困難だった。


 事務長の猪倉 裕永氏は次のように話す。


 「各部門の管理職が集まる幹部会議に提出する資料は電子カルテシステムのデータを元に作成し、済生会本部や九州厚生局などに提出する資料は医事会計システムのデータを元に作成していました。これらのデータは出所が違うため同じではありません。現状を正しく把握し、経営判断に活用するには、一元管理された正確なデータが必要でした」(猪倉氏)。


事務長 猪倉 裕永氏

 また、システムから必要なデータを抽出して資料を作成したり、システムをメンテナンスしたりするスキルもごく一部の職員に集中しており、そうした属人化も大きな問題だった。


 さらに看護部長の松田 聖美氏は以前の看護現場の状況を次のように振り返る。


 「重症度、看護必要度や緊急入院件数、退院後の在宅復帰件数など施設基準をクリアするために必要な数値を、毎朝電子カルテから手作業でホワイトボードに書き写し計算していました。その数字に基づいて、患者さんをどの病棟に受け入れるのが最適かなどを判断していましたが、かなりの負担になっていました」(松田氏)。


看護部長 松田 聖美氏

 こうした課題を解決するため、2023年3月、日向病院は院内システムの全面更新に合わせて、IQVIAソリューションズジャパンの病院向けデータ活用サービス「IQVIA Hospital Data Platform ダッシュボード」(以下ダッシュボード)を導入した。ダッシュボードは電子カルテシステムや医事会計システムからのデータを集約し、そのデータを素早く集計・可視化する。この可視化機能を担っているのがウイングアーク1stのMotionBoardで、日々の病院運営や経営改善に必要な稼働率や空き病床数、在院患者数など経営指標となるデータを瞬時に見やすい形で可視化することにより、新たな気づきと業務効率化を支援する。


病院経営・業務に必要なデータを素早く表示
きめ細かいサポートとカスタマイズで活用が浸透


 2022年1月、新しい電子カルテシステムの導入決定を前に、ダッシュボードのデモンストレーションが行われた。


 「ダッシュボード上に必要な数値が、素早く正確にわかりやすく表示されるのを見て、これが必要だと強く思いました。こうしたシステムは入れて終わりではなく、制度や業務の変化に柔軟に対応することが求められます。機能はもちろんですが、きめ細かい情報提供やサポート力を評価しました」と猪倉氏は振り返る。


 松田氏は「導入決定前にIQVIAソリューションズジャパンの担当者の方が看護部のミーティングに来られ、業務に必要な数値を書き込んだホワイトボードを撮影されていきました。私たちが求める数字をしっかりとコンテンツに盛り込もうとする姿勢を見て、きっと私たちの力になってくれると確信しました」と話す。


 ダッシュボードに搭載されている病院経営、病床管理のために必要なテンプレートは、容易に変更・追加することができる。可視化機能を担うMotionBoardが柔軟なカスタマイズを可能にしており、顧客ニーズに沿ったこうした「自由度」も選定における大きなポイントとなった。さらに操作性、サポート体制、費用対効果なども決め手となり導入が決定。2023年3月より稼働を開始した。


 2023年9月現在、看護部、医事課、事務部、情報システム部門などで活用されている。 


統一された経営指標を元に考え、話し合い、行動する文化が浸透しつつある


 導入による効果について猪倉氏は「標準コンテンツで表示される入退院状況、ベッド一覧、入院稼働額、外来稼働額はもちろん、病棟機能別や診療科別の稼働額など病院の状況を様々な切り口から効率的に分析できるので非常に助かっています。得られたデータを元に資料を作成し、幹部会や医局会などの会議で発表しています。統一された指標を見ながら議論し、経営改善のための行動につなげられることは大きなメリットです」と話す。


在院患者状況ダッシュボード ※本画面はサンプルデータを使用したデモ画面となるため実際の画面とは内容が一部異なります。

入院稼働額ダッシュボード ※本画面はサンプルデータを使用したデモ画面となるため実際の画面とは内容が一部異なります。

 松田氏は看護現場での業務効率向上に大きく貢献していると語る。


 「施設基準維持のために必要な数値など、毎朝電子カルテから拾ってホワイトボードに書いていた数字が、朝来るとすぐダッシュボードで確認できるようになりました。病床の空き状況もすぐにわかるので、この患者さんはこの病棟に入院していただくという判断も素早く適切に行うことができます。各病棟の忙しさも把握できるため、業務負担を平準化するための人員配置や指示も具体的な数値を根拠に行うことができます。また、病棟別の入院稼働額を示すことで、看護師のモチベーションも向上します。『いくら稼いでいるのか?』を意識してもらうことで、徐々に看護師の経営への参画意識を高めていきたいと考えています」(松田氏)。


 医事課 課長の奈須 睦子氏は同じ指標を見て話しができるようになったため、医事部と看護部の連携がより深まったと話す。


 「以前、看護部は電子カルテシステム、医事部は医事会計システムと別々のデータを見ていたのですが、今はダッシュボードにより、お互いが病棟や病床の状況を同じデータでリアルタイムに確認することができます。その患者さんの状況が最優先なのはもちろんですが、どの病棟への入院が最適かを、看護部と話し合いながら決められるようになりました。院内での連携が深まり、より効率的で患者さんにとってもメリットが大きい業務が実現しています。また、看護部にも診療報酬やコストへの意識が少しずつ浸透してきているのを感じます」(奈須氏)。


 医事課 主任の中芝 拡美氏はダッシュボードを活用することで業務の効率が格段に向上したと言う。


 「経理部や厚生局などに提出する患者数などの資料や他部署から依頼される新しい加算の実績集計などをダッシュボードから抽出したデータをもとに作成しています。月末締めの患者数データなどは、月半ばでも速報値という形でほぼリアルタイムに出せるようになったため、経営改善に役立つ情報を看護部などに伝えることができるようになりました。また、システムが変わる際にこれまでの業務を見直したため、業務の無駄な部分や非効率な部分を改めることができました。たとえば入力コードの改定によって外来患者数の集計が効率化し、これまで2~3日間かかっていた作業が、半日で完了するようになりました」(中芝氏)。


 情報システム担当の梶原氏は、限られたメンバーしかデータを活用できないという属人化や帳票など決まったフォーマットでしか出力できないという制約が解消されたと指摘する。


 「たとえば医事課で『この検査を受けた患者さんだけを抽出する』など標準コンテンツにないデータ抽出も担当者レベルで行なえるようになりました。集計画面では行列項目の自由配置やグラフ形式の表示も可能です。抽出や集計、分析を現場レベルでも行えるようになったため、各部門からの分析や報告が上がるようになってきました。病床稼働率など数字を意識する文化が定着し、みんなが統一された経営指標を元に考え、話し合い、行動するための下地が生まれたと感じています」(梶原氏)。


(左から)医事課主任 中芝 拡美氏/医事課 課長 奈須 睦子氏/総務課 情報システム係 主任 梶原 丈生氏

データ活用が病院経営を強力に支援
良質な医療の安定的な提供に貢献


 今後のダッシュボードの活用について、奈須氏は地図を用いた分析コンテンツ活用によって、来院患者のエリア分析を行い、より効率的に集患する施策を検討したいと話す。


 梶原氏は、将来的にはリハビリテーション部門、薬局部門、検査部門、医局などでもダッシュボードを見ることで、全職員が業務効率の向上と病院経営の改善に取り組む未来を構想している。


 松田氏は容易にデータ取得ができるようになったため、日本看護協会が行う労働と看護の質向上のためのデータベース(DiNQL)事業に参加し、客観的に日向病院の看護の質を測定することに取り組んでいる。


 猪倉氏は「データを活用することでさらなる病院収支の改善を実現していきたい。安定した経営を実現することが、良質な医療を地域の方々に提供し続けることにつながります」と語った。


 少子高齢化の進展、医療制度やニーズが変化する中、IQVIA Hospital Data Platform ダッシュボードとMotionBoardが医療機関の経営を力強く支援し、安心して暮らせる地域づくりに貢献していく。


Company Profile

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 宮崎県済生会 日向病院

開設:1958年5月15日
所在地:宮崎県臼杵郡門川町
診療科:内科、糖尿病内科、脳神経内科、小児科、外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、形成外科、放射線科、麻酔科、リハビリテーション科
病床数:199床(一般98床、地域包括26床、回復期リハビリテーション42床、療養29床、感染4床)

(画像から)
医事課主任 中芝 拡美氏
総務課 情報システム係 主任 梶原 丈生氏
看護部長 松田 聖美氏
事務長 猪倉 裕永氏
医事課 課長 奈須 睦子氏

導入製品

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