東北工業大学
大学IR活動の高度化に向け、統合データ分析基盤を構築
TableauとDr.Sumの柔軟な連携で、データ加工の手間が削減され活用が促進
- 業種
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教育
東北工業大学は、大学IR(Institutional Research)活動の推進に不可欠となる、学内データの高度な活用を実現するため、ウイングアークのデータ基盤ソリューション「Dr.Sum」を導入した。多種多様なデータの統合管理を実現するともに、TableauなどのBIツールとの柔軟な連携により、IR活動を加速させるためのデータ分析・可視化を効率的に行える基盤を構築した。
導入背景
近年、文部科学省から国公私立大学に対して、学修成果の可視化と情報公開が求められるようになっている。この情報公開の要請に加えて、学内に蓄積されている多種多様なデータを収集・分析することにより、学内での意思決定や教育の改善に向けた施策の立案や実行、検証を行うIR活動を加速させるため、東北工業大学ではデータ分析基盤の構築に踏み出した。
- 課題
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- 収集するデータの増加や多様化に伴い、Excelによる保管・管理が限界に達していた
- BIツールを利用したデータ分析に、複数のExcelファイルから必要なデータを抽出、加工するといった処理が発生し煩雑化していた
- 解決策導入ポイント
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- Dr.Sumの採用により、Excelで作成された各種マスターファイルを統合、将来的なデータ増にも対応できる基盤を構築
- Excelとの高い親和性、自動化によるデータ加工、BIツールとの柔軟な連携により、可視化やデータ分析をスピーディに行える環境を実現
- 効果
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- データの可視化や分析にかかる時間や工数を大幅に削減、IR活動の推進を加速
- 教員や職員が自らデータを活用し、業務や教育の質の向上に役立てられる環境を構築
学修成果の可視化と「内部質保証」の向上を目的にIR活動を推進
「わが国、特に東北地方の産業界で指導的役割を担う高度の技術者を育成する」ことを建学の精神に掲げ、1964年、宮城県仙台市に創設された東北工業大学。創設以来、大学院も含めた卒業生は4万人を超え、時代の変化に対応できる真に社会が求める人材を輩出することで、東北地域、ひいては日本の産業・経済の発展に大きく貢献している。
東北工業大学では、学内に蓄積されている多種多様なデータを収集・分析することで、学内における意思決定や教育の改善に向けた施策の立案や実行、そして検証を支援する「IR(Institutional Research)」活動にも継続的に努めてきた。
大学企画室 室長の小山内 幸広 氏は、「本学のIR活動は、2015年頃から本格的に始まりました。目的は、本学が定める4つの方針(AEGGポリシー)に基づく教育成果の検証、特にディプロマポリシー(学位授与方針)に定める本学学士力を、卒業時にどの程度身に付けられたのか、修得単位数以外の方法で可視化すること、そしてそれらのデータをエビデンスとして教育活動の自己点検評価を行い、その結果をもとに改革・改善に努める『内部質保証』を推進していくことにありました」と説明する。
このIR活動を推進していくために不可欠となるものが、データの高度活用だ。例えば、学修成果の可視化に関しては、当初、入試時のデータや在学時の成績データを用いた分析から着手したものの、小山内氏によると、それだけでは不十分であることを指摘している。
それ以降、学生へのアンケート調査のほか、2020年からは成績データからだけでは読み取りにくい汎用的な能力を測定するアセスメントテストを開始するなど、多種多様なデータを収集し、多面的な分析を実施している。その結果を学生にフィードバックすることで、学生自身の学修目標の振り返りやキャリア形成支援にも役立てている。
また、内部質保証についても、学生からの授業評価をはじめとしたさまざまなデータに基づき、授業内容を改善していくといった取り組みが行われている。
データの増加と多様化に伴いExcelを用いた管理が限界に
こうしたIR活動を推進するための高度なデータ活用において、浮上していた課題が、大量のデータを統合し、いち早く分析を行うためのデータ分析基盤の構築である。これまで東北工業大学では、多彩なデータ群について、主にExcelによる保管・管理を行っていたほか、データ分析にはBIツールの「Tableau」を活用していた。
しかし、データの増加や多様化に伴い、Excel上に保管・管理されているデータ量はこの10年間で約1,300万件に達した。さらに直近では、半期で60万明細におよぶデータが作り出されるようになるなど、今後もさらなるデータ増が予測される中、Excelによる運用管理には限界を極めていたという。
また、Excelを用いたデータ管理では「入試」「就職」「アセスメントテスト」「学生調査」など、担当部署ごとにマスターファイルが作成されており、複数のマスターファイルを横断的に連携させたデータ分析を行うための作業が非常に煩雑化していた。例えば、各部署の担当者が変わるごとにマスターファイルの定義に生じるズレを補正したり、元ファイルに修正が発生した場合は、その都度データを差し替えるとともに、再度データ連携・加工・分析などの作業を行わなければならなかったという。
「そうした修正を加え続けなければならないことに伴い、『どのファイルが最新版なのか判別が難しくなる』こともありました。その場合、データ分析における正確性が担保できなくなってしまいます。そうしたことから、常に最新版のデータを入手し保持し続けられるような基盤が必要と考えていました」と小山内氏は補足する。
同様にBIツールを用いたデータ分析に際しても、その度に複数のExcelファイルから必要なデータをエクスポートしてかけ合わせる、といった事前の加工処理に多くの時間と手間を要していたことも課題として挙げられていた。
「エンジニアでなくてもすぐに使える」容易な操作性を評価し、Dr.Sumの導入を決定
これらの課題を解決するため、東北工業大学は、Excelで管理されていたデータを統合し、だれもが簡単に必要なデータを自由に取得でき、分析・参照ができるデータ分析基盤の構築に舵を切った。そして、複数のデータベース製品を比較検討した結果、最終的に選ばれたのが、ウイングアークの「Dr.Sum」だった。
Dr.Sumは、企業や組織のデータ活用に必要な機能をオールインワンで提供するデータベースエンジンである。その特徴は、データの高速処理をはじめとした多彩な機能を備えるほか、Tableauをはじめとした多彩なBIツールとの連携が可能であることだ。加えて、専門的な知識を習得することなく簡単に操作できるため、より高度なデータ分析のための基盤の迅速な構築が可能であることも特徴の1つと言える。
「Dr.Sumを選択した最大の決め手は、その使いやすさにありました」と、小山内氏は強調する。そして次のように続ける。
「私も含め、担当職員はデータベースやプログラミングの知識に長けているわけではありません。しかし、Dr.Sumのトライアル版を操作してみたところ、難解な命令文を用いることなく、データインポートのほとんどの処理がドラッグ&ドロップで行えるなど、専門的な知識がなくとも簡単に操作できることが分かりました。これであれば、私たちが求めるデータ分析基盤をすぐに構築できると考えました」(小山内氏)
小山内氏が評価するように、Dr.Sumの特長は、データ分析基盤として必要な機能を備えていることに加え、ノンプログラミングで簡単に構築が行えることにある。ドラッグ&ドロップでCSV/Excelファイルをインポートできるほか、Excelデータの変換も自動的に行える。さらに、使い慣れたExcelからデータ入力やマスターデータの更新が可能であるため、データ分析にかかる工数を大幅に削減でき、すぐに高度なデータ活用にとりかかれるようになる。
このDr.Sumの機能性に加え、ウイングアークによる国内ベンダーならではの手厚いサポートも、導入を後押ししたという。小山内氏は、「導入後、設定や操作にとまどい、データ分析基盤の立ち上げに時間を費やすのは避けたいと考えていました。これに対して、ウイングアークはDr.Sumの試用段階から親身に相談にのってくれました。こうした対応を通じて、『これであれば運用開始後も安心してサポートを任せられる』と実感したことも、Dr.Sumを選んだ決め手となりました」と振り返る。
ExcelのマスターファイルをDr.Sumに統合し
データ分析・可視化に必要な作業が大幅に効率化
現在、東北工業大学では、「外部への情報発信」「学内での情報共有・分析」「学生へのフィードバック」の3つを柱としたIR活動の推進に向け、Dr.Sumをデータ分析基盤にTableau、そしてDr.Sum Datalizer for Excelを用いて、データ集計と可視化、分析に取り組んでいる。
具体的な活用例には、毎年発行される大学全体の基礎統計資料の「ファクトブック」をはじめ、学生の成績やアンケート結果の集計・分析、学修成果の可視化のためのディプロマサプリメントなど、定期的なレポート作成が挙げられる。この他にも、日常で生じる課題の解決や状況把握のため、学長や教員、入試や教務部門の要請を受け、スポットでデータ分析も行われているという。
「データの分析・可視化については主にTableauを利用しています。一方で、入試から卒業までのさまざまな学生データを統合、一覧化し、グラフではなく数字を並べた帳票のような見せ方をしたい場合には、よりフォントやレイアウト調整に融通が利き、Excelに近い操作感のDr.Sum Datalizer for Excelを一部で利用しています」(小山内氏)
Dr.Sumは東北工業大学に多くの効果をもたらしている。その1つが、データ分析・可視化における作業の大幅な効率化だ。小山内氏は、「これまでのTableauを用いたデータ分析・可視化では、複数のExcelファイルにTableauからその都度アクセスし、さらに分析のための加工処理を行わなければなりませんでした。特に、横断的に経年推移を見るような分析を行う場合には、煩雑な作業を強いられていたのですが、Dr.Sumに加工済みデータを統合したことで、迅速に必要なデータを取得し、Tableauで分析、可視化にとりかかれるようになりました」と評価する。
実際、業務の担当者からも『当初想定していた以上に使いやすい』との評価の声や、『こんなに簡単にグラフ化ができるようになるのか』との驚きの声が寄せられています」(小山内氏)
また、年に一度発行されるファクトブックの制作についても、従来はさまざまな部署から寄せられたExcelデータの集計や加工に2ヶ月ほどをかかっていたのが、Dr.Sumにデータを統合したことで、それらの作業負担の大幅な削減、期間の短縮化が見込めそうだという。
大量データの高速集計というDr.Sumの優位性についても、大きな期待が寄せられている。
「現時点ではDr.Sumに既存のデータを統合し終えたばかりであり、パフォーマンスの向上に関してメリットが感じられるのはこれからでしょう。しかし今後、蓄積されるデータ量がさらに増加していくことは明らかであり、その際には、Dr.Sumの優れた処理能力が大いに効果を発揮してくれると期待しています」(小山内氏)
より充実した学生生活を送ってもらうためさらなるデータ分析に注力
Dr.Sumを中心としたデータ分析基盤を構築した東北工業大学。今後は、この基盤を生かしたさらなるデータの可視化や分析を推進していきたい構えだ。その取り組みの1つが、教員や職員が自らデータを活用し、分析を行えるようにする環境の実現である。「現在、大学企画室以外のIR活動に直接関連しない部署の中で、データ活用に興味をもっている担当者に、Dr.SumやTableauの利用方法を習得してもらっています。また、全教員にTableau Viewerアカウントを配布し、学生の評価アンケートや成績データを参照してもらえるような取り組みも進めています」と小山内氏は話す。
このほか、学外に公開している情報の一部についても、Tableauを使って参照できる仕組みの実現にも取り組んでいきたいという。
最後に小山内氏は、今回のプロジェクトを振り返りつつ、今後の展望を語ってくれた。
「IR活動を促進するためのデータ分析基盤の構築に際して、人的リソースなどの面からなかなか踏み出すことができない教育機関は少なくないと思われます。そうした悩みに対する回答の1つがDr.Sumであり、そのメリットは『とにかく使いやすい』という言葉に集約できます。東北工業大学も、さらなるデータの分析・可視化を進め、学生たちがより充実した学生生活を過ごせるような環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。そのための基盤として、引き続きDr.Sumが活躍してくれると期待しています」(小山内氏)
Company Profile
東北工業大学
創設:1964年
所在地:八木山キャンパス 〒982-8577 仙台市太白区八木山香澄町35-1
長町キャンパス 〒982-8588 仙台市太白区二ツ沢6
大学概要:1964年、宮城県仙台市にて工学系の単科大学として開学。工学部に加えて、2008年度にはライフデザイン学部、2020年度には建築学部を設置し、現在では3学部8学科にて運営を行っている。2023年には、よりよい未来と暮らしのために能動的にゼロから構想を練り、考え、描き続けるという本学の強い意志を表した新たなブランドスローガン「未来のエスキースを描く。」を策定。「ひろく学び、知をつなぐ」場を提供し、「InnovativeでImaginative」な大学を目指している。
URL: https://www.tohtech.ac.jp/
導入製品
Dr.Sum
社内外のあらゆるデータをリアルタイムに収集・蓄積・分析を可能にするデータベースエンジンを軸としたデータ基盤ソリューションです。10億件のデータも1秒台で集計する超高速集計がビジネスを加速します。
Dr.Sum Datalizer for Excel
Dr.Sum DatalizerのExcelインターフェイスは、Microsoft Excelの画面上で複数の集計結果を比べながら集計分析する拡張ソフトです。使い慣れた環境を変えることなく、さらなる分析業が可能となります。