導入事例

旭鉄工株式会社

旭鉄工株式会社

人と情報のラストワンマイルを埋める
旭DXのエンジンにdejirenを組み込み、現場主導で生成AIを駆使

旭鉄工株式会社
業種

製造

愛知県碧南市に本社を構える自動車部品メーカーの旭鉄工株式会社(以下、旭鉄工)。同社は、さまざまな現場部門から兼任メンバーを集め「DX推進室」を2021年に立ち上げた。その中心的な取り組みとして「データを収集・統合し、素早く判断する仕組み」の実現を目指し、「Dr.Sum」「MotionBoard」を活用したデータ活用基盤を構築した(過去公開事例参照→https://www.wingarc.com/product/usecase/762.html)。さらに、コミュニケーションプラットフォームに「dejiren」を導入し、従業員がデータに基づいて柔軟で迅速に意思決定できる仕組み作りに踏み出した。

導入背景

データ活用基盤の構築により、コスト削減や業務効率化を達成した旭鉄工。同社がさらなるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向けて掲げた目標が、必要な時に、必要な人に情報が提供でき、柔軟かつ迅速に意思決定をする支援ツールを作ること、すなわち判断する仕組みを構築することだった。

課題
  • 収集・蓄積されたデータから、経営層や現場の従業員が最適な判断を行い、行動につなげられる仕組みを実現したい
  • 従業員の間で差が生じていた、製造現場におけるトラブル対応の共有や平準化と、スキルの向上
  • 生成AIを活用したデータ活用のフェーズアップに現場主動で取り組む
解決策導入ポイント
  • さまざまなシステムと連携し、必要なデータを集約・活用できるプラットフォームとしてdejirenを採用
  • 過去の取り組みのノウハウ情報を改善DBに蓄積し、チャットから問い合わせを行い、適切な対応手段を取得する仕組みをdejirenで実現
  • dejiren + One 生成AI活用テーマを、各現場で実現したいことを集約し推進担当がプロジェクト化
効果
  • 製造現場の状況をいち早く把握でき、より高度なデータ活用と迅速で適切な判断、行動できる仕組みに着手
  • トラブル対応のノウハウ、成功事例に関する情報が取得でき、従業員のスキル向上に貢献する仕組みができた
  • 旭DXエンジン構想の元、社員が率先してデータ活用やAI活用を推進し、自身の業務を改善する文化が醸成されている

100年に一度の変革期を迎えた自動車業界
意思決定と行動スピードの向上が打開の鍵を握る


 1941年、愛知県碧南市で創業した自動車部品メーカーの旭鉄工。粗材から「Assy」と呼ばれる複数のパーツが組み合わされた構成部品まで一貫した生産を行えることを強みとして、エンジン、ミッション、ボディ、シャシーなど、多岐にわたる自動車部品の製造を手がけている。


 これまで同社では、「新しいことに挑戦!」を企業ビジョンに掲げて、ITを採り入れた業務効率化や生産性向上に積極的に努めてきた。その一例が、IoTを用いた生産工程の見える化ツールの自社開発だ。2016年にはこれらのツールを社外にも販売する目的でi Smart Technologiesを設立し、製造ライン遠隔モニタリングサービス「iXacs(アイザックス)」として提供を開始するなど、先進的な取り組みを続けてきた。


 そして、旭鉄工がDXの主軸に据えて現在挑んでいるのが、データの高度活用により人の行動や意思決定を支援する仕組みの実現だ。海外メーカーによる電気自動車の躍進をはじめ、現在自動車業界は、100年に一度の大変革時代を迎えているといわれている。執行役員 サプライチェーンマネジメント部 部長 DX推進室 室長の黒川 龍二 氏は、「劇的な変化に追従していくには、圧倒的なスピードで物事に対処できる環境の実現が急務です。旭鉄工では、高度なデータ活用を目指して、『データを収集・統合し素早く判断する仕組み』と、『柔軟かつ迅速に意思決定する支援ツール』の構築に踏み出しました」と話す。


執行役員 サプライチェーンマネジメント部 部長 DX推進室 室長 黒川 龍二 氏

3つのフェーズで「旭DX」を推進
ペーパーレス化で年間約800万円のコスト削減


 旭鉄工はDXの推進にあたって、3つのフェーズによるロードマップを策定している。2020年10月、導入期に該当する第1フェーズで行われたのが、「データを収集し、活用できる基盤の構築」である。具体的には、ウイングアークの支援のもと、データ分析基盤に「Dr.Sum」、ダッシュボードにBIツールの「MotionBoard」、製造現場の実績収集に「i-Reporter」 を採用し、「旭DXエンジン」と名付けられたデータ統合基盤を構築した。生産管理をはじめ、営業、製造、経理、調達などさまざまな現場から創出されるデータを一元化し、リアルタイムで参照できる環境を実現した。


 次に、デジタル化の取り組みを全社に浸透させるため、2021年1月にDXの旗振り役となる組織として、社内のいろいろな部門から人材を招き入れ、「DX推進室」を立ち上げている。


 「定着期」と定めたフェーズ2では、各部署の主導により解決したい課題を挙げ、自主的に改善活動を進めていくような組織作りを進めた。「現場の担当者自身が今抱えている課題や問題を提起し、責任を持って改善を行えるような『人財』をつくる、という狙いがありました」と黒川氏は強調する。


 そして、「発展期」となるフェーズ3では、これまでの取り組みで創出された成功事例を社内に横展開するとともに、旭鉄工の新ブランド、すなわち新事業の柱に昇華させることを定めた。


 こうしたDX化の取り組みによって、旭鉄工はすでに多くの成果を上げている。その1つが「ペーパーレス化」だ。サプライチェーンマネジメント部 調達室 調達グループ GL DX推進室の高瀬 大輔氏は、「これまでの製造現場では、生産日報や不良記録の作成にあたり、現場の担当者が、現地調査をはじめ、手作業での計算や帳票への記入を行っていました。しかし、i-Reporterを活用した帳票入力やMotionBoardによる自動集計、手作業を電子化したことで、用紙代や作業工数を含め年間約800万円のコスト削減を達成しました」と成果を説明する。


サプライチェーンマネジメント部 調達室 調達グループ GL DX推進室 高瀬 大輔 氏

dejirenをDXのプラットフォームに採用
データに基づいた迅速な判断や行動を促進


 現在、旭鉄工がDX化の本丸として挑んでいるのが、データを「人が活用して判断し行動につなげていく」ための基盤作りである。黒川氏は、「人は同じインプット情報を得ても、判断が変わる事がある。データを見て人がどのように判断をするのか?情報インプットと判断アウトプットのデータを集めていく必要があると考えていた」と話す。


 同社は人による判断と、その成功事例をデータ化し共有化することに加え、第三者視点として生成AIによる提案も加えることで、個人の経験や勘によるばらつきを解消し、ベストな判断と行動を促せるような仕組みの実現に踏み出した。


 この構想を具現化するためのプラットフォームとして選択されたのが、ウイングアークから提案された「dejiren」である。dejirenは、人と人、人とデータ、データとデータをつなぐプラットフォームだ。さまざまなシステムとの連携機能に加えて、ビジネスチャット機能、複数のサービスにわたる業務フローをノーコードで自動化・効率化するバーチャルアシスタント機能、データの蓄積と一覧化を実現するフォーム&データベース機能など、多彩な機能が1つのプラットフォーム上に統合されている。


 「dejirenは、『人が何かしらの判断を求めた際に、さまざまなシステムや生成AIとの連携により、最適な回答を導いてくれるツールになりそうだ』と実感しました」と、黒川氏は採用の理由を説明する。そして現在、旭鉄工では、現場の担当者が実現したいことを集約し、DX推進室メンバーが中心となり、以下を含む複数のプロジェクトでdejirenを活用している。


(1)ビジネスチャット要約


 DX推進室のスタッフ間で行われたビジネスチャットの内容やウイングアークのコンサルチームが同社のDX推進をサポートするための両者間のビジネスチャットの内容を、経営層のメンバーに向け要約、チャットを通じて定期的に送信するプロジェクト。この取り組みの背景には、チャット内に多くのチャンネルが作られた末、必要な情報を入手したり、再度参照したりすることが難しくなったことだった。「どのチャンネルで、どういったメンバーが、どのような内容について会話したのか、後で参照しようとしても、開発テーマごとにルームが分かれておりそのチャンネルの所在が分からなくなるケースが現れていました。そこで、dejirenのバーチャルアシスタント機能に生成AIを組み合わせ、やりとりされたメッセージを取得するとともに生成AIで解析、分かりやすく要約し、傾向推移の状況の分析からアクションプランを配信する仕組みを構築しました」と黒川氏は説明する。


dejirenによる推移分析結果とアクションプラン配信

(2)過去トラCopilot化プロジェクト


 旭鉄工の過去のトラブル対応に関するノウハウや事例の情報を蓄積し、dejirenのチャット機能を通じて問い合わせを行うことで、必要な情報を取得できるようにするものが、「過去トラCopilot化」プロジェクトだ。


過去トラCopilot化概念図

 コンサル事業部 次長の大西 羊一 氏は「収集された各製造部門からの過去トラブルの対処ノウハウや事例、改善データを、誰もが参照して利用できるようにすることで、従業員でばらつきがあった対応の標準化とスキルの底上げに役立てようと考えました。dejirenと生成AIの活用により、蓄積されたデータを誰もがすぐに引き出せるような仕組みを構築しています」と説明する。


コンサル事業部 次長 大西 羊一 氏

 「部品リストなど膨大なアイテムを有するものの中から必要な情報をピンポイントで見つけ出すのに、dejirenと生成AIによって、簡単ですぐに検索できるようになりました。現時点では、製造部におけるサイクルタイムと可動率に関するトラブル対応を対象としていますが、今後は検索の精度を高めるとともに、カーボンニュートラルの事例も取り込むなど、適用範囲を拡大させていく計画です」と大西氏は加える。


過去トラCopilotによる改善事例の抽出配信

 また、将来的には、MotionBoardなども組み合わせ、製造業向けのトラブルシューティングツールとしてパッケージ化するなど、新規事業にもつなげていく構想もあるという。


(3)経営会議における月次会計データ解釈サポート


 経営会議の支援を目的として、月次会計データのMotionBoardの画像を生成AIによって解釈させるというプロジェクトだ。サプライチェーンマネジメント部 次長 調達室 室長の渡邉 信裕 氏は、「例えば、過去に最も利益が上がった月と当月を比較した場合、どのような違いがあるのかなど、dejirenを通じてあらゆる角度から問い合わせを行うことで、経営状況に関する多面的な分析が行えるようになっています」と話す。


サプライチェーンマネジメント部 次長 調達室 室長 渡邉 信裕 氏

 「また、生成AIの併用により、これまでは見えにくかった状況が可視化されるとともに、関係者全員の認識を合わせることもできました」(渡邉氏)


経営会議における月次会計データ解釈サポートの概念図

 本プロジェクトは始まったばかりであるが、同じ情報であっても人により判断のばらつきが生じる、その判断のばらつきをサポートし、組織共通の判断を生み出し素早い経営判断に繋げる「旭DXエンジン」の目指す方向性を体現するものとして期待されている。


(4)製造ダッシュボード分析


 製造部が利用しているMotionBoardのダッシュボード情報を生成AIで分析し、その結果を現場の職長に自動通知するという取り組みにも着手した。高瀬氏は、「製造部の役職者は、職務上製造に関してさまざまなダッシュボードを参照し、状況を把握する必要があります。しかし、数多くのダッシュボードを1つ1つ見ていくのは大変です」と語る。


 「そこで、MotionBoardと生成AI、dejirenの組み合わせにより、何か対処が必要となった場合には自動的に報知し、現場の職長がすぐに行動に移せる仕組みの構築に取り組んでいます」(高瀬氏)


dejirenは旭DXエンジンの核に
システムと人財の両輪でさらなる革新に挑む


 dejirenの採用により、データを活用した迅速な意思決定と行動が行えるような体制作りを推進させる旭鉄工。さらなるDXを推進すべく、黒川氏は次のように展望を語る。


 「大きく2つの側面から変革に取り組んでいきます。1つはシステムに関して、事実を素早く判断して提示し、人が即座に行動を起こせるような仕組みをさらに作り上げていくこと。もう1つは、『人財』の育成です。DXを推進するにあたり、私たちは新しい取り組みに積極的に挑戦できる人財を作り上げていきたいと考えています。より強化されたシステムとチャレンジする人財が一体化することで、旭鉄工のDXプロジェクト、ひいては当社のビジネスに次なる成長がもたらされるようになると期待しています」(黒川氏)


 こうした取り組みは、社員自らがデータを活用し、自身の業務を改善する意識が醸成され始めているという。データ活用の文化をさらに社内に拡大させていくためにも、dejirenを主軸に据えた旭DXエンジンをいち早く作り上げていくのが狙いだ。


旭DXエンジンの概念図

 さらに「製造業が従来型のビジネスに固執しては、今後の成長を妨げてしまいかねません。そうしたなかで、dejirenを活用した新規ビジネスの創出にも力を入れていきたいと考えています」と黒川氏は強調する。


 ウイングアークの伴走支援により、DXに果敢に挑み続ける旭鉄工。製造業が向かうべき変革のモデルケースとして、今後も同社の取り組みには目が離せない。


Company Profile

旭鉄工株式会社

設立:1941年8月
所在地:愛知県碧南市
事業内容:自動車部品製造
URL:http://www.asahi-tekko.co.jp/

写真左より
旭鉄工株式会社
執行役員
サプライチェーンマネジメント部 部長
DX推進室 室長
黒川 龍二 氏

サプライチェーンマネジメント部
調達室 調達グループ GL DX推進室
高瀬 大輔 氏

コンサル事業部 次長
大西 羊一 氏

サプライチェーンマネジメント部 次長
調達室 室長
渡邉 信裕 氏

導入製品

あらゆるクラウドサービスと連携して、コミュニケーションから意思決定まで全てをチャットで完結できる、バーチャルアシスタントサービス

BIツールを超えたダッシュボード「MotionBoard」。様々なデータをリアルタイムに可視化。クラウドサービスは月額30,000円から

社内外のあらゆるデータをリアルタイムに収集・蓄積・分析を可能にするデータベースエンジンを軸としたデータ基盤ソリューションです。10億件のデータも1秒台で集計する超高速集計がビジネスを加速します。

 
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