法改正で請求書の発行数増加とインボイス対応が必須、新システム開発が課題に
関西電力100%子会社の関西電力送配電(以下、関西送配電)は、近畿地方と一部北陸地方に電力を供給している一般送配電事業者だ。一般送配電事業者とは、小売電気事業者である電力会社から要請を受け、発電事業者から引き取った電気を需要家の元へ送り届ける役割を担っている。これを託送と呼び、その対価として小売電気事業者に託送料金を請求していた。
ところが2024年4月から「発電側課金」という発電事業者に対しても託送料金の一部を請求する新たな制度が導入されることになった。このため一般送配電事業者は、小売電気事業者だけでなく発電事業者に対してもインボイス請求書を発行しなければならなくなった。関西送配電 託送営業部 ネットワークサービスセンター 料金グループの東川 祥己氏は「これまでは小売事業者100社程度に対する請求業務だったのですが、一気に2,000件超の発電事業者に対応しなければならなくなりました」と話す。

発電事業者は、企業だけとは限らない。一般家庭でも自宅の太陽光発電設備で生まれた余剰電力を売却できるため、個人宅へのインボイス請求書を送付する必要もある。そのため既存の請求書システムでは対応しきれず、新しいシステムの開発が必要になった。
問題になったのは開発スケジュールだ。新制度のスタートは決まっていたが、制度詳細の決定に時間がかかったため、一般送配電事業者が開発に当てられる猶予期間が削られていった。そこで同社は自社開発を断念し、請求業務ニーズに適合するソリューションを導入することを決定した。
各種法制度に対応した託送料金請求システムを短期開発すべく、invoiceAgentとSVF Cloudを採用
ソリューションの選定に当たり、外せない要件は3つあった。同 情報技術部 託送・事務システムグループの稲垣氏は「第1に、インボイス制度と電子帳簿保存法に対応し、かつ一般送配電事業者に求められるルールに適合していること。第2に制度スタートに間に合うこと。第3に費用が予算内であること。この3点を重視して選定に当たりました」と説明する。そこで選んだのが、ウイングアークの電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」だった。

invoiceAgentは、企業間のさまざまな帳票のやり取りをデジタル化すると共に、基幹システムと連携してバックオフィス業務のDXを促進するプラットフォームだ。稲垣氏は「将来的にはインボイス発送を郵送からWeb配信に切り替えたいと考えていたので、Web配信ができる点も条件に合いました」と話す。
invoiceAgentは既存の帳票フォーマットをそのままデジタル化できるので、ペーパーレス化や業務効率化にもつながる。だが、新しい請求業務では、従来の請求書と異なる項目が発生するので、既存の帳票フォーマットを流用することは難しく、帳票リニューアルも必要になった。
そのため同社は、invoiceAgentに加えてクラウド帳票サービスである「SVF Cloud」の導入も決定。SVF Cloudは、30年にわたって導入数トップを走り続けている帳票開発プラットフォーム「SVF」を、クラウド環境で手軽に利用できるサービスだ。こうして、invoiceAgentとSVF Cloudの導入により、2024年4月から始まる発電側課金制度に間に合わせるべく開発をスタートさせた。
ウイングアークのサポートを受け、新システムを3ヶ月で開発
新システムの開発を任されたのは、当時入社3年目だった同 料金グループの宮部氏だった。料金グループへ配属されたのもわずか半年前で、もちろん業務システムの開発も初めてだったという。
宮部氏はまず、発電事業者向けインボイス作成のため、SVF Cloudを活用して必要項目を盛り込んだ帳票を作成。託送システムから出力されるデータを、年月や企業・個人の情報に合わせて適切に変換し、正確なインボイスが出力できる仕組みを実装した。
次いで、同社の託送システムから出力される顧客情報のCSVファイルを、SVF Cloud用のインターフェースモジュールである「Universal Connect/X」を利用して分解し、帳票データとして出力できるように整備。帳票の設計ファイルをinvoiceAgentに組み込み、発電事業者ごとに住所・氏名・契約種類などの情報を正しく挿入されたインボイス請求書を、郵送またはWeb配信できるようにした。「差し込むデータの種類が異なるため、パラメーターを設定して正確に挿入できるよう調整を重ねました」と宮部氏は振り返る。

開発と同時に、東川氏は請求書発行のために連携が必要な顧客情報管理部門との調整を担当した。制度対応によって関連部署の業務負担が増えることを考慮し、それらの部署の理解を深める取り組みを行いつつ、必要なデータを適切に出力できるよう調整を行った。

制度開始まで残された時間はわずかだったが、宮部氏はウイングアークの担当者の支援を受けながら、SVF Cloudの帳票開発を1ヶ月で完了。その後2ヶ月でUniversal Connect/Xのデータ取込設定、invoiceAgentの発行設定、電子帳簿保存法対応の保存設定を終わらせた。半年前に着任したばかりの部門で初めてのシステム開発担当となったが、わずか3ヶ月で新システムの開発を完了し、無事制度スタートに間に合ったという。
ウイングアークの対応の速さ、製品環境の統一が成功のポイント
開発に当たって宮部氏は、ウイングアークの担当者から受けたオンラインサポートを録画し、何度も見直してシステムの理解を深めていった。不明点があったらすぐに問い合わせることを繰り返し、急ぎながらも丁寧に開発することができた。宮部氏は、各種法制度対応が求められる新システムを短期間で開発できた成功要因について、「ウイングアークの対応の早さに助けられました」と感謝の意を示す。「問い合わせると翌日には回答がいただけるスピードでサポートしていただきました」(同)
さらに、東川氏と宮部氏は「帳票開発とデータ連携、請求システムを全てウイングアークの製品で統一したことのメリットも大きかった」と口をそろえる。「複数社のツールを使っていたら、開発時に何か問題が発生した場合、問い合わせ先を切り分けるところから始めなければなりません。今回は窓口がウイングアークに一本化していたおかげで、迅速な解決につながりました」(宮部氏)
制度スタート後の請求書発行業務は、直後こそ発電事業者からの問い合わせや郵送宛先不明などの混乱はあったものの、現在はほぼ問題なく運用できている。東川氏は「インボイス制度への対応で悩んだ時に、ウイングアークから制度への対応策や参考事例を教えていただいたことで乗り切れました」と振り返る。今後同社は効率化・ペーパーレス化の促進に向け、請求書のWeb配信比率を上げるべく発電事業者への訴求を強化しながら、より一層の電力安定供給に取り組んでいくという。
※本事例で出てくるinvoiceAgent関連製品名は導入当初の製品名になります。
現在はSVF ArchiverおよびSVF Transactに名称変更しています。





