

東プレ株式会社
在庫適正化テンプレートの活用により
空調機器関連製品や部品の在庫金額を30%削減

- 製品
- 業種
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製造
東プレ株式会社(以下、東プレ)の空調機器部が手がける製品は材料・部品の点数が多く、その数は約3万品目に及ぶ。加えて、各製品の販売数量の変動が高い頻度で発生するため、材料・部品などの在庫を適切に保つのが難しかった。そこで在庫を低減させるべく、ウイングアークが提供するBIツール「MotionBoard」を使った在庫適正化テンプレートを導入し、在庫状況を可視化するダッシュボードを構築。これにより、活用から1年で在庫金額を30%削減することができた。
導入背景
東プレの空調機器関連製品の事業を担う空調機器部では、製品が多品種なうえに、製造に必要な材料・部品の品目数も膨大で、製品在庫や材料・部品在庫を適正化する難度が高かった。そのため、材料・部品が多目に確保される傾向があり、その傾向が新型コロナウイル感染症の流行によるモノの動きの停滞によってさらに強まった。結果として、過剰在庫の状態に陥り、在庫の削減、ないしは適正化が重要課題となった。
- 課題
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- 多品種の製品に多品目の材料、部品が使われるため、材料・部品の在庫を適正化する難度が高かった
- 在庫調整のための判断基準がなく、材料・部品の実績データを1つずつExcelで分析・可視化し、調整をかける必要があった
- 解決策導入ポイント
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- MotionBoardの在庫適正化テンプレートを導入して分析用のダッシュボードを構築
- テンプレートの活用により、各材料・部品の安全在庫の設定値を引き下げた
- 効果
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- 空調機器関連製品と、その材料・部品の在庫金額を30%削減
- 在庫適正化テンプレートとAIの連携により、在庫ショートのリスクの高い材料・部品を自動で抽出する仕組みを実現
- リスク調査のスピードが大幅にアップし、調査の人的業務負担もゼロベースに
コロナ禍により
膨らんだ在庫の適正化が生産管理の命題に
東プレは1935年の創業以来、コアテクノロジーである塑性(プレス)加工技術や金型設計技術を進化させながら、主力の「自動車関連製品」事業をはじめ、冷凍車両に向けた「定温物流関連製品」事業、静電容量無接点方式キーボードなどの「電子機器関連製品」事業、さらには「空調機器関連製品」事業を手がけ、堅調な成長を続けている。
このうち、岐阜事業所にある空調機器関連製品事業においては、高効率と低騒音を両立させた大小100種類以上のファン(送風機)や工場・ビル・住宅向けの換気システム、さらには空調システムの省エネルギー化を実現するデシカント外気処理機など、多彩な製品をラインアップしている。
その事業の強みについて、空調機器部岐阜工場 生産管理課 課長の林 友紀氏は「製品ラインナップの多彩さに加えて、これまで蓄積してきた送風技術や冷熱技術、換気技術を生かした付加価値の高い製品を提供している点が、ハウスメーカーなどのお客様企業から高く評価されています。また、お客様企業が求める製品を、お客様と一から作り上げていくケースが多い点も、当部門(空調機器部)の特長といえます」と説明する。

こうした強みがある一方で、空調機器部には解決すべき大きな課題があった。それは、在庫の適正化だ。空調機器部が手がける製品は多品種小ロットであるうえ、材料・部品の点数も多く、その数は約3万品目に及ぶ。加えて、各製品の販売数量の変動も高い頻度で発生するため、材料・部品などの在庫を適切に保つ難度が高く、「材料・部品の在庫を多目に確保し、欠品によって製品の製造が滞るのを避けようとする傾向がかねてからありました」と林氏は明かし、こう続ける。
「とりわけ、コロナ禍によってモノの動きが停滞したことで、材料・部品の在庫を多く確保しようとする意識が強まりました。結果として在庫が膨れ上がり、コロナ禍が終息したころから、在庫削減が大きな課題となっていました」
ちょうどそのころ、空調機器部における生産管理の現場でも、在庫適正化のための作業を効率化したいというニーズが膨らんでいた。こうしたニーズが一つとなり「ウイングアークの『MotionBoard』『在庫適正化テンプレート』の導入につながっていきました」と、林氏は振り返る。
在庫適正化テンプレートで在庫状況を可視化
空調機器部では2024年4月にMotionBoardを導入し、在庫適正化テンプレートを用いて製品・部品在庫の状況を分析・可視化するためのダッシュボードを6ヶ月間で構築。10月から運用をスタートさせている。
この導入を主導したのは、空調機器部 岐阜工場 生産管理課 主事の市原 将氏と、同課の古賀 雄一氏だ。両氏はともに2023年に空調機器部の他部署から生産管理課に移り、製品・部品在庫の調整に相当の苦労を強いられていた。当時の状況を、市原氏は次のように明かす。
「私は住宅用の換気システムの生産管理を、古賀はビル・工場の換気で使われる大型ファンの生産管理を担当していますが、二人が担当する製品はともに多品種小ロットで、かつ、製造に使用する材料・部品の品目が非常に多いという特性があります。そのため以前は、製品・部品の在庫を調整するのに相当の手間と時間を要していました。というのも、何を基準に在庫を調整すれば良いかの判断基準がなく、材料・部品について1つずつ入出庫の実績データを基幹システム(生産管理システム)から取り出し、Excelを使って分析・可視化して在庫の傾向をとらえ、調整をかける必要があったからです」

市原氏と古賀氏は、こうした在庫調整業務の負担を大きく低減できるソリューションを探し、その中でMotionBoardと在庫適正化テンプレートの存在を知り、採用へと動いた。その理由について、古賀氏は「MotionBoardと在庫適正化テンプレートの機能を使えば、我々がこれまでExcelで行ってきたこと、あるいは行いたかった製品・部品在庫の分析・可視化が容易になると判断できました」と述べる。

加えて市原氏は、在庫適正化テンプレートがMotionBoardというBIツールをベースにした仕組みであり、データの見せ方を柔軟にカスタマイズできる点や、MotionBoard自体の活用の幅の広さなどにも魅力を感じたという。
その点について同氏は「使用するデータや可視化の機能が固定化されている専用システムとは異なり、BIツールであるMotionBoardは、どんなデータをどのように分析し、どう可視化するかを柔軟に設定できるという利点があります。加えて、MotionBoardには、在庫の適正化のみならず、生産の歩留まりや効率性の分析などに応用し、生産プロセスの改善に幅広く役立てられるという期待もありました」との説明を加える。
「発注点」の設定により
材料・部品の安全在庫を確保
空調機器部が在庫適正化テンプレートを使って構築したダッシュボードの左上では、材料・部品などの在庫状況が、滞留期間ごとに色分けされてグラフィカルに表示される。その中から、特定の材料・部品を選ぶことで、その在庫の状況、動きが詳細に確認できるようにしている。

また、ダッシュボード左下のグラフは「在庫線&安全在庫」を表示しており、水色の線が「安全在庫の理論値」、濃い青線が「安全在庫の設定値」だ。このうち、「安全在庫の理論値」は「サイクル在庫(材料・部品のリードタイムの中で消費されていく在庫数量)+ 安全在庫理論値」の計算式で算定される値で、過去の実績データ(在庫データや入出庫データ)をもとに割り出されている。一方の「安全在庫の設定値」は、「安全在庫の理論値」を算出するためのデータ(材料・部品などの1日平均の出庫数やリードタイム)を参考に、市原氏・古賀氏が独自に設定した値(保持すべき在庫の最小数)だ。これは、空調機器部の生産管理システムに登録された値でもあり、同システムではこの値をもとに入庫数を算出している。
ここでいう「安全在庫の理論値」は、一般に「発注点」とされているポイントであり、実際の在庫数がこの値を下回ったときに適量の発注をかけ、在庫数が「安全在庫の設定値」を下回らないようコントロールすることが重要となる。言い換えれば、在庫数の推移を示すグレーの線が「安全在庫の理論値」(水色の線)とクロスしながら、「安全在庫の設定値」(濃い青線)を下回らないようにすることが、理想的な在庫の持ち方となる。
市原氏は「在庫適正化テンプレートのデフォルトの仕様では、発注点を割り出す計算式がありませんでした。ただ、我々としては発注点を正しく把握し、かつ、安全在庫の設定値を適切に算定したいと考え、その要請をウイングアークに出したところ、その要請に対し適切な提案とスピーディな実装で対応してくれました。システム的には、在庫数量が発注点に達した際に、サブライヤーに自動的に発注をかける機能もあるため、安全在庫を維持するプロセスを自動化することも可能です」と述べる。
加えて、空調機器部では、在庫の状況や動きを可視化するグラフについても、ウイングアークによる支援のもと、さまざまに追加やカスタマイズを行っている。
市原氏は「このように、データを自分たちが見たいかたちで柔軟にカスタマイズできるのは、BIツールで作成された在庫適正化テンプレートならではの良さといえます」と評価する。
在庫金額の30%削減を実現し
AIの併用で業務負担も劇的に低減
在庫適正化テンプレートの活用は、さまざまな効果を空調機器部にもたらしている。中でも大きな効果の1つは、活用から1年で在庫金額の30%削減を実現できたことだ。市原氏は、この成果について「在庫適正化テンプレートを使うことで『安全在庫の設定値』の適正化が容易になり、それを適切に引き下げられるようになりました。結果として、製品・部品在庫はかなり減り、在庫金額を大幅に削減できました」と説明を加える。
また、市原氏と古賀氏は、在庫適正化テンプレートとAIを連携させ、AIによるパターンマッチングを通じて在庫切れのリスクの高い材料・部品を洗い出す取り組みも始動させた。これにより、両氏の業務負担が、それぞれ月当たり約20時間削減される見込みだ。
このAI活用について市原氏は、「材料・部品の中には、何らかの理由によって消費量が跳ね上がり、在庫ショートを引き起こすリスクが高いものがあります。これまで、そうした材料・部品を見つけ出すために、私も古賀も毎日1時間程度(月換算で約20時間)費やしていました。そこで、欠品リスクの高いものの在庫の動きをサンプルとしてAIに学習させ、似たパータンを示す材料・部品を抽出させる仕組みをウイングアークに開発してもらいました。これにより、私と古賀の調査の手間がゼロベースになると見ています」
加えて、市原氏は、生産計画や販売計画のデータをMotionBoardに取り込み、在庫適正化テンプレートを使って在庫の推移をシミュレーションすることも計画している。
以上のような成果や計画を踏まえつつ、林氏は在庫適正化テンプレートの活用の今後を次のように展望する。
「在庫金額をさらに10%削減するという目標を立てています。それと併せて、在庫適正化テンプレートとAIの活用を通じて、欠品リスクを早期に見いだし、適切なアクションにつなげる仕組みとプロセスを確立させたいです。そうしたリスク管理のプロセスも含めて、在庫調整のワークフローとノウハウを標準化し、生産管理課全体でそれが行えるようにしたいのです」
さらに同氏は、MotionBoardの適用範囲を在庫適正化以外の領域へと押し広げ、工場での生産効率の改善や業務改善などにつなげていくことも構想している。
「工場では生産効率や業務改善に向けて、データ分析・活用を行っていますが、そのプロセスは人手に頼るケースが多くあります。MotionBoardには、そうしたプロセスを合理化できる可能性があります。今後は生産管理課にとどまらず、岐阜工場のさまざまな部署でMotionBoardの有効活用を図りたいと考えています」
Company Profile
東プレ株式会社
設立:1935年4月
所在地(本社):東京都中央区 (岐阜事業所):岐阜県加茂郡
事業内容:プレス関連製品(自動車関連製品)、定温物流関連製品、空調機器関連製品、電子機器関連製品の製造・販売
URL:https://www.topre.co.jp/

(写真右から)
空調機器部岐阜工場生産管理課課長 林 友紀氏
空調機器部岐阜工場生産管理課主事 市原 将 氏
空調機器部岐阜工場生産管理課 古賀 雄一氏
導入製品
MotionBoard
様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。