導入事例

セイコーエプソン株式会社

セイコーエプソン株式会社

基幹システムの刷新に合わせ、クラウドの帳票システムである「SVF Cloud」を導入
安定稼働が業務革新を支援し、基幹システムのアドオン開発も3割の削減に成功

セイコーエプソン株式会社
製品
業種

機械・電気機器

長期ビジョン「Epson 25 Renewed」のもと、DXを推進するセイコーエプソン。ERPシステムをSAP S/4HANAへ移行し、「Fit to Standard」を掲げて個別最適化されたシステムの変革に取り組んでいる。その一環が帳票システムの切り替えだ。同社は帳票アドオンの削減とクラウド化を進め、帳票クラウドサービス「SVF Cloud」を導入。オンプレミス版のSVFと変わらない優れた安定性とパフォーマンスを実現している。帳票アドオンも約3割削減し、開発や運用工数も大きく改善した。

導入背景

課題
  • SAP ECC6.0のEOLに伴うSAP S/4HANAへの移行により、帳票アドオンの再構築が急務
  • 「Fit to Standard」のもと、システムに合わせた業務の標準化と帳票アドオン開発の削減を推進
  • インターネット経由での帳票作成やプリンターからの帳票の直接印刷が必要
解決策導入ポイント
  • 社内の帳票基盤として活用してきた帳票設計ツール「SVF」のクラウド版「SVF Cloud」の導入
  • SVF Cloudはコーディング知識が不要で、帳票の設計・開発にかかる負担と時間を抑制できる
  • エプソン製プリンターとの互換性により、SVF Cloudが生成した帳票をインターネット経由で直接印刷することが可能
効果
  • SVF Cloudの安定性と処理性能により、止まらない帳票システムを実現
  • SVF Cloudの柔軟な開発によって、約110の帳票アドオンを約70に削減
  • 請求書の発行と押印を電子化し、ペーパーレス化を加速

グループ全体の経営基盤を変革するため、SAP S/4HANAへの移行を推進


 長野県諏訪市に本社を構える電気機器メーカーのセイコーエプソン。1942年に時計の製造を手がける企業として創業した同社は、時代とともに事業領域を拡大し続けてきた。現在ではプリンターやプロジェクターをはじめ、使用済みの紙を新たな紙へと再生する「乾式オフィス製紙機」といったリサイクル機械、さらには産業用ロボット、各種センサー、ウエアラブルデバイスなど、多彩な製品群を開発・製造する企業へと成長を遂げている。


 そんななか、セイコーエプソンが2021年に策定した長期ビジョンが、「Epson 25 Renewed」だ。「『省・小・精の技術』とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する」ことを目指し、そのための重点施策として「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みを掲げている。


 環境は「『脱炭素』と『資源循環』に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供・環境技術の開発を推進する」こと、共創は「技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる」こと、そして、DXは「強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する」ことを定めている。


 このDX を推進するための具体的な施策として進められているのが、「グローバル経営基盤変革プロジェクト(GXプロジェクト)」だ。DX推進本 IT企画設計部 課長の樋口 裕之 氏は、GXプロジェクトは『経営意思決定支援の強化』、『ガバナンスの強化』、そして『低生産性・長労働時間からの解放』の3つの目標を掲げています」と話す 


DX推進本部 IT企画設計部 課長 樋口 裕之 ‎氏

 そのための主軸となる取り組みがセイコーエプソングループがグローバルで利用しているERPシステムのリプレースだ。長年にわたって活用を続けてきたSAP ECC6.0有償サポートを含めたとしても2030年までにEOLを迎えることまた、将来的な基幹系システムのクラウド化を見据え、SAP S/4HANAへの切り替えを決断段階的に移行を進めている 


「Fit to Standard」に基づきアドオンを集約、帳票ソリューションに「SVF Cloud」を選択


 SAP S/4HANAへの移行にあたって、セイコーエプソンが定めた方針は、「Fit to Standard」だ。「従来はシステムを自社開発したり、SAP ECC6.0のアドオンを用いたりすることで、個別最適化されたシステムを構築してきました。しかし、この対策では変化が激しい時代に、新たな技術をいち早く採り入れていくことが困難です。そこで、新基幹系システムでは、Fit to Standardの考え方のもと、標準化されたサービスやパッケージを組み合わせたシステムの構築によって業務変革を推進していく方針を定めました」と樋口氏は説明する。


 「これにより、1,200ほどあったアドオンを約620まで削減できました。今後も多様なクラウドサービスの活用も検討しており、さらなるアドオンの削減に取り組んでいく計画です」(樋口氏)


 SAP S/4HANAへの移行とアドオンの削減に加えて行われたのが、帳票作成・運用システムのクラウド化である。これまで同社では独自の帳票の作成・運用をしていたため、110種類ほどのアドオンを利用していたという。


 DX推進本部 IT企画設計部の鈴木 隼人 氏は「当初はSAPのBTP(Business Technology Platform)と連携した既存の帳票生成サービスを利用し、ユーザーはインターネット経由でアクセスし帳票を出力するという仕組みを検討していました。しかし、既存の帳票生成サービスだと、稼働サーバーのOSEOLを迎えることや、このサービスではインターネットを介した帳票作成ができないことなどから、帳票作成・運用システムのクラウド化を決断しました」と振り返る。 


DX推進本部 IT企画設計部 鈴木 隼人 氏

 同社は複数の帳票ソリューションを比較検討した結果、最終的に選択されたのがウイングアークの帳票クラウドサービス「SVF Cloud」だ。


 セイコーエプソンでは、以前より帳票システムにオンプレミス版の「SVF」を利用しており、開発・運用に関する十分なナレッジを蓄積していたこと、またSVF Cloudであれば、セイコーエプソンが求める要件に対応し、多くのメリットがあると判断したのが採用の理由だ。


 そのメリットの1つが、SVF Cloudがインターネット経由での利用が可能なことだ。ユーザーは場所を選ばずに帳票の作成・運用が行える。また、SVF Cloudがエプソン製のプリンターとの互換性が高く、生成された帳票を直接印刷できる。 



 さらに開発・運用面では、設計の容易性が高く評価された。DX推進本部 IT企画設計部の湯浅 怜 氏は、「SAPの標準機能であるSmart Forms や  Forms by Adobe と比べた場合、ABAP(Advanced Business Application Programming)などの高度なコーディング知識が不要であり、SVF Cloudは帳票の設計が容易に行える点や、外部の委託会社にも開発が依頼しやすい点を評価しました」と語る。


 ほかにも日本語や英語、中国語などの多言語対応により、将来的な海外拠点への展開を見据えた運用が可能であること、印刷状況のモニタリング機能により、帳票の印刷状況を可視化できるため、棚卸などの大量印刷時にも状況を把握しやすいことも採用のポイントとなった。 


DX推進本部 IT企画設計部 湯浅 怜 氏

「業務を停止させない、優れた安定性」が最大の評価ポイント


 2019年からSVF Cloudの導入プロジェクトが始まった。ウイングアークの細やかなサポートのもと、レイアウト変更やデータの入出力をはじめ、帳票デザインや管理ツールの機能検証を経て設計・開発が進められ、2025年5月からの本番稼働を迎えた。なお、110種類ほどあった帳票アドオンは、約70帳票まで削減されているという。


 現在、SVF Cloudは受注から発注、ロジスティクス、品質管理まで、多岐にわたる業務の帳票システムとして利用され、導入効果も現れて始めている。



  1. 注文書:海外向け・国内向けの注文書の作成・出力が行われており、SVF Cloudの稼働開始から2後には、累計5万件が発行されているという

  2. 請求書:従来は紙での印刷と押印作業が発生していたため、リードタイムに2〜3日ほどを要していたという。SVF Cloudの導入後は、押印の電子化も実施したことで、一連のフローがシステム上で完結できるようになり、現在では月の初めの1〜2日程度で行えるようになっている。

  3. 受注証跡:内部監査対応に価格等の変更履歴をPDF化して記録する用途でもSVF Cloudを活用。これまでは紙で出力・保管していたが、ERP上でデータに変更が生じた場合、SVF Cloudとの連携により帳票をPDF化し出力、データとして保管する仕組みにしたことで、ペーパーレス化についても成果が現れている。


 SVF Cloudの導入により、月間で大量の帳票が出力されているが、セイコーエプソンが高く評価しているのがSVF Cloudの安定性だ。導入後軽微なトラブルは発生したものの、サポートにより改善しており、大量の帳票出力を行ってもパフォーマンス劣化は生じていません」と湯浅氏は話す。 


 樋口氏は、「SVF Cloudが常に安定稼働を続けてくれているのが、大きな導入メリットです。基幹系システムに求められるのは安定性であり、帳票システムが止まると業務ができなくなります。だからこそ、SVF Cloudの優れた安定性を評価しています。実際、部門の利用者はオンプレミス版のSVF からSVF Cloudへと移行したことを意識することもなく、日常の業務に溶け込んでいます」と語る。 


SVF Cloudをグローバルに展開、各国のインボイス制度や言語に対応した帳票を推進


 セイコーエプソンは、今後もSVF Cloudの適用範囲を拡げていく予定だ。SAP S/4HANAインドネシア、フィリピン、中国などの海外拠点への展開計画されていることから、合わせてSVF Cloudも導入していく。「各国のインボイス制度や税制優遇などにも柔軟に対応可能な帳票作成基盤が実現できると期待しています」と樋口氏は語る。


 SVF Cloudの導入により、Fit to Standardを意識した帳票出力システムの構築を実現したセイコーエプソン。電子化によるペーパーレス化の推進をはじめ、各国の法制度に柔軟に対応した帳票作成の実現など、今後のさらなるSVF Cloudの活用に期待が集まる。


Company Profile

セイコーエプソン株式会社

設立:1942年5月18日
本社所在地:長野県諏訪市大和三丁目3番5号
主な事業内容:電気機器、精密機器、情報関連機器
URL:https://www.epson.jp/

(写真左より)
DX推進本部 IT企画設計部 鈴木 隼人 氏
DX推進本部 IT企画設計部 湯浅 怜 氏
DX推進本部 IT企画設計部 課長 樋口 裕之 ‎氏

導入製品

基幹・業務システムからの帳票出力を最適化するクラウド帳票サービス。柔軟な帳票レイアウトの設計や各社プリンター印刷、多様な出力形式での帳票運用を実現。

 
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