
学生のアンケートを分析して、授業改善のPDCAを回す
1876年に済生学舎として創設されて以来、140年以上の伝統を誇る日本医科大学。「克己殉公(己に克ち、広く人々のために尽くす)」を学是、「済生救民(貧しくしてその上病気で苦しんでいる人々を救うのが、医師の最も大切な道である)」を建学の精神とし、「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」を教育理念として、1万人を超える臨床医、医学研究者、医政従事者を輩出している。
同大学では、学生証を兼ねたICカードを利用して、出欠データや授業評価データを「授業評価アンケートシステム」に蓄積し、必要なデータを抽出、集計、加工して、レポートを作成していた。この授業評価アンケートシステムは、システムの制約上、一部の担当者しかアクセスすることができず、医学教育センターや教務課の担当者がレポートを作成し、各教職員に配布していた。そのため、レポート作成に時間がかかるほか、レポートが活用されているかどうかさえ把握できなかった。
そこで、文部科学省の補助金を利用して新しいIR(機関研究:Institutional Research)システムを構築し、その一環として授業評価アンケートシステムもIRシステムに移管することを決定。授業評価アンケートシステムの集計・分析プラットフォームとして、いくつかのシステムを検討した結果、使いやすさと高いサポート力を評価して、Dr.Sumを採用することを決めた。
日本医科大学の大学院医学研究科小児・思春期医学分野大学院教授であり教務部長を務める伊藤 保彦氏は、「医学教育の世界は、いま大きな転換期を迎えています。この大きな変化にあわせて、常に教育カリキュラムをブラッシュアップしていかなければなりません。そのためには、授業の計画から評価までのPDCAをしっかりと回していくことが必要です。中でも“C(チェック)が重要で、学習評価データに基づいて課題を分析し、解決方法を探っていかなければなりません。そのためにも“C”を素早く行える仕組みが必要でした」と語る。
Dr.Sum採用の理由は、使いやすさとBIコンサルのサポート力
新しいIRシステムは、2017年4月の新学期の開始時に本格稼働させる必要があったことから、3ヶ月という非常に短期間で導入する必要があった。
ここで大きな力になったのが、ウイングアークのBIコンサルティングサービスだった。このサービスを利用することで、スケジュールどおりに本番稼働を実現できただけでなく、帳票作成のための計算式や分析内容、さらには色やデザインまでも医学教育センターの藤倉 輝道教授と打ち合わせを実施しながら構築していった。また、教職員向けの操作についても、研修の時間もあまりとれない状況だったため、利用手順書とともに動画マニュアルを作成。短期導入・定着を実現に貢献した。
新しいIRシステムでは、学生証を兼ねたICカードから出欠データや授業評価データが、新しい学事システムに取り込まれ、夜間作業でDr.Sumに蓄積されるようになっている。蓄積されたデータは、各教職員が自分自身のユーザーIDでアクセスし、担当する授業の評価データのみ参照することができる。科目責任者は責任科目の評価データを、教育系管理教員は全授業の評価データを参照することができるほか、医学教育センターの担当者は、分析に必要な全授業の明細データを参照することができる。こうした担当者に応じたアクセス権限に役立ったのが、Dr.Sumの権限設定機能だ。
伊藤大学院教授は、「すべての授業の評価データを見ることができるのは、教育系管理職と医学教育センターの担当者だけで、教職員は自分が担当する授業の評価データしか見ることができないようにしています。日本医科大学では、1つの科目が独立した組織のようなものなので、ある科目の教職員が他の科目の評価データを見ることができては問題があります。そこで、授業ごとにガバナンスを効かせる必要があったのです」と話す。
担当授業の評価が明確になり教職員に安心感が生まれる
Dr.Sumを導入する前は、教職員が自分の担当する授業がどのように評価されているのかを知らないことが根本的な問題となっていた。各教職員が、自分の授業の評価を把握するためには、評価データを一括管理して、科目ごと、授業ごとに集計する機能が必要だった。伊藤大学院教授は、「約500名の教職員が、担当した授業の評価データに自由にアクセスできるようになり、授業に対する評価を自ら確認できるようになりました。自分が担当する授業の評価を知ることで、教職員にも安心感が生まれています」と語る。
また、学生が授業評価アンケートに、なかなか答えてくれないという課題もあった。伊藤大学院教授は、「授業評価アンケートに答えてもらうために、授業の終了5分前にパトライトで知らせ教員がアンケートに答えるように促していましたが、授業優先になってしまいがちで、なかなかアンケートの母数が増えませんでした。アンケートに基づく評価データを教職員自身が確認できるようになったことで、学生にアンケート回答を促すモチベーションにもつながっています」と話す。
学生の「能動的学修」を可能にする学生情報を多角的に分析できる基盤
学生の状況を正しく把握するための取り組みは、日本医科大学が目指している「能動的学修」の推進にも必要不可欠だ。能動的学修を実現するためには、対面学習はもちろん、LMS(学習管理システム:Learning Management System)などを有効活用して、いつでも、どこからでも、学生自らが進んで学習できる仕組みとカリキュラムを構築する必要がある。伊藤大学院教授は、「授業を評価して、常に改善していくことが重要です。そのためには、学生による正確な評価を得ることが必要であり、評価データの分析がとても重要になります」と話す。
日本医科大学では、医学部における教育を評価する「国際基準に基づく医学教育分野別評価」に基づいて、学事システムのさらなる改善とIRシステムの強化を目指し、2016年に外部機関の評価を受審した。伊藤大学院教授は、「140年以上の伝統のもとで培った知識や経験、ノウハウが蓄積されていることが日本医科大学の強みです。過去からの蓄積と新しい方法論を組み合わせて、新たな価値を提供するために、学生の情報を多角的に分析し、PDCAサイクルをより高速化することで、継続的に授業を改善していく計画です」と話している。






