導入事例

ベイラインエクスプレス株式会社

ベイラインエクスプレス株式会社

高速バス運行会社が挑む、「安全」を証明するためのデータ活用

WILLERグループの一員として、高速路線バス事業を展開するベイラインエクスプレス 。デジタルタコグラフなどの機器から収集した、走行中の不安全データをわかりやすく表現し、運転士の教育や評価に活かす目的で、2019年10月にMotionBoard Cloud for Salesforce(以下、MotionBoard)を導入した。さらなる安全品質の向上に向けて、データ活用を促進していく予定だ。

導入背景

課題
  • 会社が求める“良い運転士”を定量的に示し、教育や評価に活かしたかった
  • どこで不安全運転が発生しているのか、ひと目でわかる手段がなかった
  • ITツールに不慣れな人たちにも使いやすくデータを可視化する必要があった
解決策導入ポイント
  • 自動でリアルタイムにデータの集計ができる
  • 不安全データの発生場所を地図で表現できる
  • Salesforceとの親和性の高さを保ちつつ様々な切り口でデータを見られる
効果
  • 適切な教育ができるようになり、安全品質が向上した
  • リアルな運行状況をもとに“良い運転士”を把握できるようになった
  • 初めてのITツールでも簡単に使いこなせ、データの集計が楽になった

“良い運転士”とは何か


 ベイラインエクスプレスは、中日臨海バスとWILLER EXPRESSの合弁会社として2012年に創業した、高速路線バス事業を展開する運輸事業者だ。現在は21車輌で毎日5路線26便を運行しており、社員44名のうち、運転士が32名を占める。


  高速路線バスの運転士は、孤独な職業だ。数百キロに及ぶ長旅を経て事務所に戻ると、バスに搭載していたアナログタコグラフ(運行記録用計器)から記録用紙を取り出し、運行管理者に手渡す。そこには速度・距離・時間が記録されているが、一見して運転の良し悪しを評価できるほど、わかりやすいものではなかった。急停止したような跡が見られれば、その理由を聞かれるが、特に目立った形跡がなければ、運行管理者から「お疲れさま」の言葉を受け取ると、その日の仕事はそこで終了だ。


 これでは運転士の正しい評価ができないし、運転技術の向上に向けた適切な教育をすることも難しい。運行管理者からリアルタイムで注意喚起ができないどころか、どこでどんなトラブルが起きているのか把握できない状態だった。


 「どのような運転士がベイラインの考える“良い運転士”なのか。会社として『こんな運転士を目指してほしい』と伝えるためには、定量的な指標を設けなければならないと、ずっと考えていました」と代表取締役の森川氏は語る。


代表取締役 森川 孝司 氏

安全品質の向上にむけた システム構築


 言うまでもなく、運輸事業者にとって、何よりも優先すべきものは「安全品質」である。この安全品質は、「運転士の品質」と「運行管理の品質」に分解できるが、両方の質を高めていくためには、それぞれの現状の良し悪しを客観的に評価すべくデータ化が不可欠だった。加えて、現場でデータを使ってもらうには、データの集計が自動的に行われ、一目でその意味を理解できるという要件も外せない。


 まず、運行管理の品質を高めるには、①電車や飛行機のようにリアルタイムで運行管理を実施できる状態にすること、②運転士一人ひとりの特性を知り、それに応じた教育をすること、③データを最大限に活用することの3つが必要だと感じた森川氏は、急旋回・急減速・速度超過・車線逸脱・眠気・バック動作などの“不安全データ”をリアルタイムで取得し、事務所にアラートを流す仕組みを構築した。アラートが鳴れば、運行管理者は即座に動画で状況確認を行うとともに、運転士に対して無線で注意喚起することで、安全品質を高められるというわけだ。


 しかし、ここで新たな問題が発生する。アラートの数が多すぎて、集計作業に膨大な時間と手間が取られるようになったのだ。当初、アラートの数は、400kmの運行で、その数100数十回以上。これを21車両分、csvでデータをダウンロードしてExcelで分析していたが、一目で見てわかりやすく可視化するのは困難を極めた。


 不安全データを自動で集計し、その発生地点を地図上で示せなければ、現場での活用が進まず、「データから運転士一人ひとりの特性を知り、それに応じた教育をする」という目的を果たせない。加えて、運転士同士がチーム内で声を掛け合い、不安全運転の削減に向けた意識を高めるために、チームごとで集計したデータを、すぐに見られる状態にする必要もあった。


MotionBoardの導入を決めた理由


 同社では、勤怠や事故データを管理するために、創業時からSalesforceを導入していた。そこに追加する形で、機器から取得した不安全データを集約したが、Salesforceでは地図を用いたデータの可視化ができなかったほか、チームごとに集計する機能も備わっておらず、何かいいものはないかと探しているうちに、MotionBoardに辿り着いた。


 MotionBoardについて調べていくと、まさに求めていたものであったことから、導入を即決した森川氏。「安全品質を高めるために欠かせないものだったので、MotionBoardの利用料金は、費用ではなく、むしろ投資として考えていました」。


 2019年10月にMotionBoardを導入した後、ダッシュボードの構築は日比谷コンピュータシステム社が請け負った。実際のダッシュボードの要件定義は、森川氏の構想を受け、運輸部のマネージャーである宮澤氏と、運輸部教育課で元運転士の宮本氏が行った。「最初はざっくりとしたイメージを伝えて、日比谷コンピュータシステム社から提案頂いたレイアウトを見ながら、『ここはこう変えてほしい』と細かな要望を伝えていきました。エンジニアさんの対応スピードがとても速く、スムーズに進めることができて助かりました」と宮澤氏は振り返る。


データから運転士の癖や特性を見出し、それを次の運行に活かすためには、どんな見せ方をすべきなのか。実際に運転士とMotionBoardで運行記録データを見ながら 振り返りを行う宮本氏の意見も大いに取り入れた。運行から戻ってきた運転士と振り返りを行うのは、わずか5〜8分。その短い時間で必要な情報がすぐに見られるよう、操作感には徹底的にこだわった。


運輸部 マネージャー 宮澤 秀和 氏

 実際に利用しているダッシュボードの1つ目が「不安全データマップ」だ。これは運行ルートに沿って、地図上に不安全データをマッピングしたものである。乗務員ごと、運行日ごと、警告内容など、必要な項目でセグメントを切って表示できる。


 運行管理者は、この「不安全データマップ」を運転士とともに見ながら、次の運行に向けて改善すべき点を指導していく。経験や感覚をもとに指導するのではなく、ファクトをベースにして会話が進められるため、短い振り返りの時間を有効に活用することが可能だ。


ダッシュボード「不安全データマップ」 ※本画面ではサンプルデータを利用しています。

 


 


 ダッシュボード2つ目の「評価レポート」は、顧客からの「お褒めの言葉」や「無事故継続走行距離」を“プラス評価”、不安全データや事故などを“マイナス評価”として、独自の計算方式でポイント化したものを、個人別・チーム別に可視化したもの。


 「不安全データマップ」と同様に、運行後の振り返りにおいて運転士と確認することで、運転士の技術や安全意識の向上に役立てている。


ダッシュボード「評価レポート」※本画面ではサンプルデータを利用しています。

MotionBoardによって生まれた3つの変化


 MotionBoardを導入したことで、3つの効果が得られたという。まず何よりも、運行データを正確に把握できるようになったことで適切な教育が可能となり、安全品質が向上した。


 モービルアイの導入当初は、400kmの運行で100数十回鳴っていたアラートは、今では30回程度に収まるようになった。この数字は、安全品質の高まりを顕著に表している。その背景として、データに基づいた適切な教育ができるようになった点が挙げられる。「データがない頃は、自分の経験や感覚でしか伝えられない歯がゆさがありました。しかし、今ではデータという事実をもとに指導できるので、私も楽になりましたし、運転士の納得度も高まって、教育の質が大きく変わったと感じています」(宮本氏)


また、リアルな運行状況をもとに“良い運転士”を把握できるようになった。以前は、運転士がどんな運転をしているか知る由もなく運転士の評価も属人的なものとなっていたが、データをもとに“良い運転士”を正しく評価できるようになった。


そしてITツールに不慣れな社員でも簡単に使いこなせるツールのため、データの集計が楽になったのも大きな変化だ。導入当初、慣れないITツールを活用するのに戸惑いを覚えた宮本氏だが、実際に使ってみると「こんなに楽なものなのか!」と感動したという。「以前は一人ひとりのアラート回数の集計作業に、大変な時間がかかっていたので、MotionBoardのおかげで、今はとても楽をさせてもらっています」(宮本氏)


 他にも、データがなかった頃は、運行管理者と運転士の間で、言い分の不一致が生じていたが、MotionBoardで事実確認しながら会話ができるようになったことで次に向けた建設的なコミュニケーションが取れるようになったという。


運輸部 教育課 チーフ 宮本 敦郎 氏

データ活用の先に広がる世界


 今後ベイラインエクスプレスではこれまで蓄積したデータを活かし、そこから得た知見を次につなげていこうと考えている。加えて、健康診断や適性診断のデータなど、さらに別の要素を加えることで、新たな発見ができるのではないかと期待を寄せている。


 最後に、森川氏は「MotionBoardを用いたデータ活用は、高速路線バスだからできているわけではない。街中を運行する路線バスでも、『うちの運転士が運転すれば、うちの運行管理者が運行管理をすれば、必ず安全を表現できます』と胸を張れるところまでもっていきたい」と語った。


 


 


Company Profile

ベイラインエクスプレス株式会社

設立:2012年
所在地:神奈川県川崎市
事業内容:高速路線バス事業運営
URL:https://www.bayline.jp/

(写真右)
運輸部 教育課 チーフ 宮本 敦郎 氏
(写真中央)
代表取締役 森川 孝司 氏
(写真左)
運輸部 マネージャー 宮澤 秀和 氏

導入製品

Salesforceのデータを可視化するならMotionBoard

 
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