ヤンマーグルプの情報システム開発を担うヤンマー情報システムサービス 販売管理システム部 取締役部長兼製品システムグループ長 釡鳴 隆氏は、「グループ全体として、お客さまの手を止めることなく高品質のサービスを提供するために、『FACE TO FACEのカスタマーサービスの実行』を目指しています。アフターサービスの確立から、プレサービスへの拡大を目標に掲げ、そのための仕事・組織・システムの改革と、具体的な仕組み作りに取り組んでいます」と語る。
その仕組みは、ビジネス情報を集約してグループ内に提示する「ポータル」と、裏側で動く部品供給のための基幹系のシステム「RPMS(Regional Parts Management System)」と、管理系のシステム「GPMS(Global Parts Management System)」から構成される。このうち、各海外現地法人の情報を集約し、グローバルで補修部品の調達と供給を支えるシステム「RPMS」は、2007年7月より全面刷新プロジェクトがスタート。「RPMS」には、ウイングアークの帳票開発・運用製品であるSVF/RDEが利用されている。
Dr.Sum EAは「専用データマート不要で高速集計が可能」「ユーザー側で切り口を変えて自由にドリルダウンできる」「Dr.Sum EA Visualizerを使えば、ノンプログラミングでグラフを使ったWebのインターフェイス画面の開発が可能」といった点が評価された。「以前の分析ツールでは10画面必要だったものが、Dr.Sum EAでは、集計したい情報やグラフをWeb上で自由に設定できるので、1画面で対応することができ、開発工数は飛躍的に向上しました」(村田氏)という。
システムは、集計用のデータベースサーバーにDr.Sum EA本体を置き、アプリケーションサーバー側にDr.Sum EA Visualizerのほか、Dr.Sum EA Datalizer MotionChart、Dr.Sum EA Datalizer for Webを置いている。運用範囲は、北米、アジア、欧州の6ヶ国にまたがり、月100万件にのぼる在庫データが蓄積される。対象となる各部品の在庫データや受注データには、部品コード、取引先コード、地域コードなど約10種類の分析軸が付与され、通貨などの為替データに関しては、シンプルに通貨(ドル、円、ユーロ)ごとのテーブルを追加することで対処している。各海外現地法人のシステムや、国内の販売管理システムから、「見える化用」のサーバー(IBM System i)にすべてのデータを集約し、Dr.Sum EA側に渡す仕組みだ。
サービス状況を可視化するには、顧客へ部品が届くまでの間、常に最新の受注情報に更新する必要がある。過去からのすべてのデータをIBM System iからDr.Sum EAのテーブルへ入れ替える作業は単純ではあるが、転送に時間がかかるうえ、日々データが増えていくため、想定時間内に取込み処理が完了できない可能性があった。そこで、更新される可能性があるデータの差分だけを全件入れ替えを行う仕組みを取り入れた。これにより、各海外現地法人におけるデータの取込みは、15分程度で完了できている。 開発に際して留意したのは、グローバル対応だ。データの更新中は、保全のためにロックがかかるので、時差がある利用環境の中でデータ更新をかけるには、そのタイミングを見きわめる必要がある。すべての現地法人が勤務時間外もしくは休み時間に更新できるように、それぞれの地域ごとに更新時間を決め、グローバル対応を可能にした。
また、2011年のタイでの本格稼働にあわせ、Dr.Sum EA側はもちろんのこと、帳票出力のSVF/RDEの機能を強化、帳票をタイ語で印字するためにSVFをVer.9.0にバージョンアップした。 Dr.SumEAによるデータの「蓄積」と「分析」、この両方をグローバル視点で強化し、さらにきめ細かい「FACE TO FACEのカスタマーサービス」を確立する構えだ。