導入事例

秋田エプソン株式会社

秋田エプソン株式会社

在庫適正化テンプレートを活用し分析基盤を内製化
管理会計との両輪で、データを基にした事業利益の拡大を目指す

秋田エプソン株式会社
業種

製造

秋田エプソン株式会社(以下、秋田エプソン)は、ウイングアークの「在庫適正化テンプレート」を導入し、部品や仕掛品、製品などの在庫日数の適正化とキャッシュフローの改善に向けた取り組みを開始した。また、管理会計業務をMotionBoardで可視化し、データを基にした収益管理を実現するための仕組みも整えている。

導入背景

工場のスマート化、業務のDXを全社的に進める中、在庫管理という製造業が抱える恒常的な課題の解決に向け、現場においてデジタル技術を活用した改善を目指していた。一方、業務改善を推進する部門でも、現場のニーズに合致し納得して使ってもらえる仕組みとDXのシナリオを求めており、ウイングアーク製品がその条件に合致した。

課題
  • 在庫適正化に関する情報を毎月Excelでまとめており、その作業に1ヶ月ほどかかっていた
  • 日々発生する在庫データを分析や改善アクションに結び付けられていなかった
  • 従来からの仕事スタイルを踏襲する文化があった
解決策導入ポイント
  • 在庫適正化テンプレートを導入して分析用のダッシュボードを構築
  • テンプレートの利用により、最終的なゴールが明確な状態となり、スムーズにプロジェクトを推進
効果
  • 在庫分析環境の高度化により、データに基づく課題の特定と改善アクションの実施を実現
  • 従来の仕事のスタイルを改めて見直そうという意識が醸成され、企業文化の変革へ

管理会計の高度化を目的として独自のダッシュボード「A-Dash 管理会計」を構築


 秋田エプソンは、「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」とのスローガンのもと、セイコーエプソングループの東北地方における関係コア会社として、エプソン製プリンターのプリンターヘッドやウエアラブル機器、製品を作るための部品製造金型の製造などを行っている。


 同社では高品質・低コスト化を目的として合理化の追求に取り組む中で、2019年に効率化推進グループを発足し、DX推進体制を整備。工場のスマート化や間接業務の生産性の向上に向け、同グループが各部門に対してIT・デジタル活用の提案を行っている。その一環として取り組んだのが、社内で日々発生するデータ活用の高度化を目指し、ウイングアーク製品を活用した管理会計の見える化と在庫適正化だ。


 秋田エプソンでは2018年からウイングアークのBIダッシュボード MotionBoardを導入していたが、2021年に業務の高度化を目的として、データ分析基盤 Dr.Sumを導入。第一弾として、事業管理グループにおける収益管理業務を可視化するプロジェクトを開始し、「A-Dash 管理会計」と呼ばれるダッシュボードを構築した。これにより、月度が締まると自動でデータを取り込み、業績報告会で使用するレポートを自動作成する仕組みを構築し、会社の損益情報や先々に事業利益がどう推移していくかを把握していくための基盤を整備した。元々Excelを使い手作業で行っていたジョブを自動化し、「月次の損益情報の集計作業の自動化」「社内開示の早期化」「予実分析の深化で次のアクションを検討する時間の創出」などの成果を得ている。


A-Dash 管理会計

生産管理グループ内で在庫適正化プロジェクトを開始


 管理会計領域に続き同社では、在庫適正化を目的とした「A-Dash 在庫適正化」の構築に着手。その際に、Dr.SumとMotionBoardを使った製造業向けの業種特化型ソリューションである「在庫適正化テンプレート」を活用している。同プロジェクトを担当した生産管理グループ 係長の高橋 拓哉氏は、DXを推進する効率化推進グループから製品を提案された時の印象と、開始するまでの経緯を次のように振り返る。


生産管理グループ 係長 高橋 拓哉氏

 「効率化推進グループの担当者から、『管理会計領域のテンプレートを事業管理グループで導入し、事業利益への貢献という部分で実績が出た。在庫適正化にもよいテンプレートがあるので検討してみないか?』と勧められました。ただし、アプリを導入することが目的になってはならないため、製品の導入が会社に対してどのような業務改善効果を及ぼすのか、全体像を可視化してみました(下図)。その結果、在庫を適正化することで資産が圧縮されて営業キャッシュフローの良化にもつながり、財務三表も良化することが腹落ちできたので、生産管理グループでもヒト・モノ・カネに関するデータを可視化する在庫適正化プロジェクトに取り組むことにしました」


 


テンプレートを自社向けにカスタマイズしスムーズな構築を実現

 当然それまでも秋田エプソンでは、日々の在庫圧縮、流動化活動を実施していた。ただ分析を行うための下準備に、人手による作業を要していた。同社の管理項目には、在庫数、保存日数などの基本情報の他に、「DOS」(Days of Supply)と呼ばれる年度目標の重点管理指標があり、DOSの達成度合いを毎月Excelに落とし込んで予実管理をしていたが、そのまとめと入力、グラフ作成および上司に見せるレポート作成の作業を、特定の担当者が1ヶ月かけて作業していた。


 「人が頭を使う作業よりも機械的な作業に取られる時間が多く、業務プロセスが今の時代にフィットしていないと感じていました。そこで、最終的なゴールとしては分析環境を整備することで収益への貢献を目指す訳ですが、まずは目先の課題である手作業をなくすところから始めることにしました」


 2022年の6月からウイングアークの担当者と連携し、構築に着手。高橋氏が作成した図などを元に、「会社の改善の進め方はこう、今どの立ち位置にして、どこに向かって行くのか」というストーリーを整理して、現場からの要求をウイングアークに投げかけつつ、在庫適正化テンプレートを秋田エプソン向けにカスタマイズしていった。その際のウイングアークの適切な対応が、構築をスムーズに進められた一因になったという。


 「在庫適正化テンプレートを紹介していただいた際に、具体的なダッシュボード画面を見せていただき、他社の例を教えていただいたので、構築する画面の最終的なゴールをイメージすることができました。世の中に出回っているユーザー事例の中でも、本当に求めた姿に進んでいるケースはどれくらいあるのだろうと疑問を持っていたのですが、完成系に近い形を見た時にはうまくいくと確信できました」


在庫状況の多角的な可視化・分析により得たデータドリブンな改善アクションと企業文化の変革へ


 「A-Dash 在庫適正化」では基幹システムにある在庫データを活用しやすい形に加工した状態で保持しており、在庫状況を多角的に可視化・分析できる。左上のグラフは各品目の金額ベースでの在庫だが、その内訳が滞留期間ごとに色分けされていることで、課題の特定がスムーズに行える。さらに利用者はそれを金額の高い品目順に並べたり、特定期間だけで検索指定したりという画面操作をボタンひとつで行えるようになっており、はじめて操作する人でもスムーズに分析を行えるほか、人による判断基準のバラつきをコントロールすることにもつながる。左下のグラフには入庫、出庫、在庫(PSI)が流動数曲線で表現されており、一目ですぐに気付きを得られやすくなっている。


A-Dash 在庫適正化
A-Dash 在庫適正化

 「A-Dash 在庫適正化」の導入により、データ集計作業工数を削減できたことはもちろん、データにもとづいた課題発見と改善に向けた具体的なアクションに結びついている。


 また、教えられてきた仕事の仕方を絶対的なものとして疑問視することなく続けるという企業文化を変革していくきっかけになったと高橋氏は明かす。


 「今回のプロジェクトで、当社では当たり前のようにやっていた入力・まとめ作業などは、人手でやらなくてもITにまかせればいいと気づきました。間接業務には昔からのやり方が往々にして残っているので、今後もいろいろとウイングアークに相談させていただきたいですね。そういった意味で業務改善の定量的な結果を得られただけでなく、知識の蓄えとしても今回の取り組みは意義がありました」


「A-Dash 在庫適正化」の導入により発見できた課題と、改善アクション案

今回の成功事例を東北発の在庫適正化ソリューションに


 在庫適正化テンプレートを活用して構築した「A-Dash 在庫適正化」は、下半期の10月から稼働を開始している。現在高橋氏がグループ内への展開のためにダッシュボード画面操作しながら活用方法を習得するとともに、さまざまな課題の発掘とそれらの原因、改善アクションに結び付けるなどの分析を進めている。


「今は、在庫適正化のための“手段”を手に入れた状態です。その手段を使い、画面を見て何をして、どのようなルーティーンを回して、どんなアクションをして、良くなった状態をさらにどう維持していくかというような運用面をしっかり確立していきたいです」と高橋氏は意欲をみせる。


 今回構築した「A-Dash 在庫適正化」は、あくまでバージョン1.0の段階であり、生産管理領域も含めてまだこの先に続きがあるとして、高橋氏は今後について次のように展望を話す。


 「極論すると、これまでの取り組みは、人手で時間さえかければ行えた部分を効率化しただけです。さらに言うと、現在行っている在庫の分析をして減らすという活動も、あくまでも処方箋に過ぎません。今後はAIとまではいかずとも、このシステム側からこの在庫がそろそろ危ないとか、リスクが出てきたというアラートが発報されるような未然防止ができる仕組みにまで進化させたいと考えています。また全社的な視点で見ても、管理会計の領域と在庫適正化の領域は、今回A-Dashで一元的なデータ管理ができるようになりましたが、それはまだ経営資源のほんの一部です。今後は他の領域にまで広げ、ヒト・モノ・カネのデータを一元化し、全ての経営情報をダッシュボードの中で管理できるようにしたいです」


 秋田エプソンでは今回の取り組みを、ウイングアークを通じて全国の製造業に広めてほしいと話す。その言葉の裏側には、セイコーエプソングループのみならず、閉塞感が漂う国内製造業の困りごとを解決したいという思いが込められている。


 「今回我々が取り組んだ在庫適正化は、単に1地域企業が抱える悩みではなく、全国の製造業にとって必須の問題です。ウイングアークには秋田エプソンの取り組みやテンプレートを東北発信のソリューションとして横展開していただき、国内製造業のDX推進に役立て欲しいと願っています」


Company Profile

秋田エプソン株式会社

設立:1986年6月
所在地:秋田県湯沢市
事業内容:プリンターヘッド部品の製造、ウエアラブル機器・部品の製造、超精密部品・金型具冶工具の製造加工
URL:https://corporate.epson/ja/about/network/domestic/akitaepson/

左から
生産技術部 効率化推進グループ 課長 田畑 穣氏
総務部 事業管理グループ 泉 史有子氏
PH製造部 PH生産管理グループ 係長 高橋 拓哉氏
総務部 事業管理グループ 藤原 寿貴氏

導入製品

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