ユニオンツール株式会社
167社のサプライヤーと繋がる電子取引ネットワークを構築
月間1万7,000枚の印刷費と大幅な工数を削減、サプライヤーの電帳法対応にも貢献
- 業種
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製造
ユニオンツール株式会社(以下、ユニオンツール)では、Windows Serverのバージョンアップを機にサプライヤーとの受発注業務の仕組みを見直すことにした。製造業ならではの要件であるオンプレミス環境での構築を前提とし、基幹システムと連携した帳票配信・受信の仕組みを構築するため、ウイングアーク1st(以下、ウイングアーク)のinvoiceAgent 文書管理の第三者利用ライセンスを採用。環境を利用するサプライヤーの数に併せ柔軟に拡張できるライセンス形態と、多くの帳票を自動で振り分けることができる機能性を活かし、それまでのWeb EDIでは注文書だけにとどまっていた電子化の範囲が、見積書や納期回答までに広がった。
導入背景
- 課題
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- Web EDIの更新に伴いリプレースが必要になっていた
- サプライヤーとのコミュニケーションを効率化したかった
- 電子化対象の業務を拡大したいと考えていた
- 解決策導入ポイント
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- クラウドサービスを使わないでドキュメントを共有
- 電子帳票を使う業務を柔軟に拡張可能
- 基幹システムと連携した自動処理を実現
- 効果
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- 第三者利用ライセンスを活用し167社のサプライヤーと繋がる帳票配信・受信プラットフォームを構築
- 月間1万7,000枚以上の印刷コストが不要になりペーパーレス化を実現
- 図面の印刷が不要になり、40時間の作業時間を削減
- 帳票を電子でやり取りし保管する環境を提供することで、サプライヤーの電帳法対応も実現
サーバーのメンテナンスを機に受発注の仕組みを全面的に見直し
ユニオンツールは切削工具に強みを持つメーカーだ。1963年に日本で初めてPCBドリルの製造・販売を開始して以来、技術力の高さと品質の優位性により、リーディングカンパニーとしての実績を重ねてきた。とくにPCBドリル(電子回路基板用超硬ドリル)は世界トップシェアを誇っており、多種多様なドリル形状のラインアップをはじめ、最も細いものだと人間の髪の毛よりも細い0.05mmのPCBドリルなど、あらゆる産業や人々の生活に欠かせない電子回路の生産を支える製品を作り続けている。
この卓越したものづくりの源となっているのが、製造機械の内製化である。事業のコアに関わるものは自社で手がけるのが基本的な方針だ。その背景について、主要拠点である新潟県の長岡工場で長岡管理部 副部長を務める原田 浩樹氏は次のように説明する。
「内製化により、自分たちで得たノウハウを社内に蓄積するとともに、他社にはまねできないユニオンツールならではの強みを活かすことで、追従できない品質と速さを実現しています。内製化の方針は製造装置だけでなく業務システムでも同様で、スケジューラーやBIツールのような道具と見なせるものを除いてはシステム部で開発しています」(原田氏)
最近では、製造現場のDXにも取り組んでいる。機械のスケジュール、人のスケジュール、そして現場の機械やオペレーターから得られるライブ情報を合わせて集中管理することで、早期の異常検知と復旧処置につなげる仕組みを構築した。対処が必要な場面ではオペレーターにリストバンドの振動やスマートフォンで異常を通知し、素早く復旧作業にあたる。リアルタイムで検知するための細かなデータを抽出できるのも、設備が自社製だからこそ。管理監督者が使用するダッシュボード画面は、新たに内製したものだ。
このように設備の内製化にこだわって高品質の製品を世に送り出すユニオンツールだが、内製設備の生産においてはサプライヤーの支えがなければ成り立たない。従来までのサプライヤー各社との受発注業務は、商取引のやりとりをWeb画面で行えるWeb EDIを利用していた。Windows Serverのバージョンアップに伴い、それまで使用していたWeb EDIのソフトも更新が必要になったが、更新にかかるライセンス費が想定よりも高額になっていたという。
「ちょうどサプライヤーとのコミュニケーションの効率化を図ろうとするプロジェクトが動き出していたのですが、従来製品の活用では機能不足だと感じていたところです。同じ費用を支出するのであれば他の製品にも目を向けてみて、より優れた仕組みを導入したいと考えました」(原田氏)
製造業のニーズに対応したドキュメント共有の仕組みをinvoiceAgent 文書管理で構築
ユニオンツールが構想したのは、Windowsのフォルダのような構造でファイルを格納して共有できる仕組みだ。サプライヤーとやりとりできる取引帳票の種類を増やし、「注文書」「図面」「見積書」「納期回答」の4種類を対象とすることにした。基幹システムと連動し、作成されたPDFやExcelファイルが、invoiceAgent 文書管理のBridgeサービスにより自動でサプライヤー毎のフォルダに振り分けられる。サプライヤー側はinvoiceAgent 文書管理にログインすると自社向けに用意された環境にアクセスし、上記の帳票類の検索・閲覧・ダウンロード・アップロード・電子保管ができる。
製品選定の過程について原田氏は「クラウドストレージであれば低コストでファイルをやりとりできるのですが、知財に関わる重要情報を扱うためセキュリティの観点でクラウドサービスを利用できませんでした。調達に特化したパッケージを利用する手もありましたが、目的以上の機能が含まれており、導入して既存の仕組みまで置き換えることは内製化のポリシーに反すため導入を断念しました」と振り返る。
そこで以前に紹介を受けていたウイングアークのinvoiceAgent 文書管理が第一選択肢になったという。同社 システム部 長岡システム開発課 主事 佐藤 健太氏は「従来は注文書が対象でしたが、見積書や納期回答などにも展開していくことを考えると、設計の自由度があるinvoiceAgent 文書管理が魅力的でした。求める要件を資料にまとめてウイングアークのプリセールスエンジニアに送り、対応状況について回答を依頼しました」と説明する。
要件はログインポリシー管理やフォルダの詳細な権限管理、送達確認、新規文書へのリンク付きメール配信、有効期限設定によるファイルの自動消去、印刷時の透かし設定などがあった。回答をもとにユニオンツールでは、サプライヤーとの新たなコミュニケーションの仕組みを構築するためのツールとして、invoiceAgent 文書管理の採用を決定した。
月間1万7,000枚以上の印刷が不要に
2020年9月に検討を開始し、2021年1月に第三者利用ライセンスを購入。ウイングアークの第三者利用ライセンスは、導入企業が第三者に対し該当ソフトウェアを対象にシステムにアクセス利用することを許諾するもので、柔軟なライセンス体系もこの採用の決め手となった。
2021年5月からはITツールの利用に慣れている14社をパイロットユーザーとして先行利用を開始し、その後は順調に対象を拡大していった。
2022年実績の利用状況は、ユニオンツールが作成した図面をもとに製作する製作品のサプライヤーで53社中49社、既存品を商材とする購入品のサプライヤーでは364社中118社となっている。注文書のやりとりは製作品で98%、購入品で86%がinvoiceAgent 文書管理を介して行われている。
アカウント管理や権限設定、サプライヤーとの調整などを担当する同社 長岡管理部 資材課 吉川 朝美氏は、新たな仕組みの導入効果について次のように説明する。
「サプライヤー各社に切り替えや新たな機能についてお伝えしたところ、ご理解いただきスムーズに利用を始めることができました。invoiceAgent 文書管理を導入しているサプライヤー様についてはペーパーレス化を実現し、注文書の郵送にかかる作業とコストを削減できました。当然リードタイムが短くなりましたし、履歴をinvoiceAgent文書管理上で確認できるため処理漏れにも気づいていただきやすくなりました」(吉川氏)
製作品の注文書は月間約5,400枚、購入品は約6,400枚、図面は5,400枚が印刷されなくなった。吉川氏はさらに続ける。
「以前のWeb EDIは購入品のみが対象だったのですが、新たに部品製作の為の図面データに対応したことで、さまざまな部門に効果が及んでいます。そのひとつが技術部門の印刷作業で、1ヶ月で2万円程度の印刷コストと40時間の作業時間が不要になりました。また、図面と注文書等の帳票類を突き合わせて確認する負荷が軽減し、月間24時間の工数が削減できています」(吉川氏)
納期回答のやりとりでは、サプライヤーが回答を入力したExcelファイルをinvoiceAgent 文書管理で回収し、マクロを実行することで基幹システムへ登録できるフローになった。このほかにも、繰り返し共有したい場合や、過去の注文実績を確認して再購入したい場合に、invoiceAgent 文書管理のリンク機能や優れた検索性が役立っているという。
サプライヤーからの評判も上々で、「取引帳票の種類でフォルダが分かれており、操作性も含めて以前より見やすくなった」という声が届いているそうだ。
また、電子帳簿保存法への配慮もされており、サプライヤーの中には自社で電子取引に対応するシステムを維持できない小規模の事業者もあるため、取引帳票類の保管場所としてinvoiceAgent 文書管理の利用を認めている。
顧客への情報提供や社内のナレッジ共有基盤としても活用
原田氏は導入プロジェクトを振り返り「問い合わせから担当してくださったウイングアーク1stのプリセールスエンジニアの方には、実現方法の提案も含めて長い期間にわたって手厚く支援していただき、そのおかげでこの仕組みを構築できました。サポート窓口への問い合わせでも、早く丁寧に、わかりやすく教えていただきました」と評価する。
今後については、第三者利用ライセンスによる拡張性を活かし、サプライヤーの増加のみならず多様なステークホルダーとのやりとりに展開することを検討している。
「基幹システムの出荷データをもとに、製品を買っていただいたお客様に対して検査成績書を配信するなど、いろいろな用途に使えそうです。また、検索機能が優れているので、改善提案書のドキュメントを置く場所としても活用したいと考えています」(原田氏)
このほか、海外子会社にも今回構築した情報共有の仕組みを展開する予定だ。今後もユニオンツールでは、新たなコミュニケーションの仕組みを起点とした取り組みを広げていくことだろう。
Company Profile
ユニオンツール株式会社
設立:昭和35年(創業昭和30年)
所在地:東京都品川区
事業内容:切削工具、直線運動軸受、エンドミル、測定機器、金属加工機械などの製造と販売を国内および海外で行っている
URL:https://www.uniontool.co.jp/
導入製品
invoiceAgent 文書管理
あらゆる帳票の仕分けから保管、検索、他システムとの連携も可能な文書管理ソリューションです。