自治体向け
ソリューション

自治体業務標準化を考える

  • ・大高利夫 氏(藤沢市 総務部 IT推進課情報政策担当 参与)による寄稿。
  • ・総務省「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化およびAI・ロボティクスの活用に関する研究会」から自治体業務標準化を紐解く。
  • ・ユースケースとして基幹系業務システムの標準化を取り上げる。
  • ・基幹系業務再構築はシステムの構築ではなく、オープン系パッケージを上手に活用し、新しい事務処理方法を構築すること。
  • ・標準化でまず考えるべきは、「目的とゴールを定める」「事例を取り込む」「新たなことを入れる」ことである。
  • ・業務、システム、データを組み合わせると標準化の効果が高まる。
  • ・標準化を進めるというより、自治体がパッケージの考え方を、柔軟に受け入れる姿勢が大切。

著者紹介

著者近影 藤沢市・湘南江の島にて

大高 利夫 氏
藤沢市 総務部 IT推進課情報政策担当 参与
1981 年から情報統計課(現IT推進課)で、住記、税、保健福祉総合 システム等の開発、電子申請・電子入札・地域イントラ・GIS等の 導入に従事し、2019 年から現職

最近の活動
・⾃治体データ庁内活⽤相談会(総務省)
・地方公共団体におけるAI活用に関する調査研究(総務省)
・自治体システムデータ連携標準検討委員会(総務省)

標準化について

いま、国において「標準化」というテーマで様々な取り組みが進められています。

標準化に関する取り組みは今までも色々となされています。APPLICによる地域情報プラットフォームやシステム更新時の中間標準レイアウトもそうですし、マイナンバー制度による情報連携のためのデータ標準レイアウトなどもそれにあたると思います。

そういった取り組みのなかで、自治体業務という見方をすると、業務システムに対するものは存在していますが、業務プロセスに対する標準化は、現時点ではまだないのかなと考えています。

標準化の切り口は業務プロセス、システム、データなどが考えられます。様々なアプローチがありますが、どれも必要なものであり正解だといえます。

一方、わざわざ標準化しなくても良いと考えられるものは、法定受託事務における事務処理要領に基づく事務です。この事務処理のためのシステムは、どのパッケージにおいても、既に標準化されているといえるのではないでしょうか。

逆に標準化しにくいものは、組織・体制に紐づく事務です。こちらは自治体の規模や、窓口サービスの取り組み方、処理件数による違いがあるので、一様に標準化するのは難しいものになります。

自治体業務標準化に関する分類
「J-LIS 地方自治情報化推進フェア2019」ウイングアーク1stブースでの説明資料より抜粋・加筆

なぜ標準化が必要なのか

では、標準化はなぜ必要なのでしょうか。
標準化の目的の一つが経費の削減です。
同じ制度の業務を自治体ごとにやり方が異なることから、その業務のシステムが自治体ごとにバラバラで、パッケージシステムを導入しても、カスタマイズが多くなり、経費が高くなってしまうことから、カスタマイズをせずにパッケージを導入する。自治体クラウドについても共同調達型からSaaS型のサービス利用へ移行しやすくなります。

二つ目がAI・RPAなどの先進技術の利活用です。
業務プロセスが標準化されることにより、先進事例の横展開による普及が期待できます。三つ目がデータの流通です。
デジタル社会に向け、スマートフォンなどから電子申請ができ、標準化されたデータが流通することで、ワンスオンリー、コネクテッドワンストップサービスの実現が可能となってきます。また、行政が保有するデータの利活用を進めるためには、電子データの標準化が必要になります。
各自治体で標準化を進めるには、どうしたら良いでしょうか。
自治体が独自に標準を作成することはできません。できることは、導入するパッケージを最大限尊重し、カスタマイズを抑制することではないでしょうか。

カスタマイズの抑制について

自治体基幹業務システムの標準化について、総務省の研究会(地方自治体における業務プロセス・システムの標準化およびAI・ロボティクスの活用に関する研究会)の資料に以下のようなことが書いてあります。

  • ・システム規模の踏襲、RFPの記載の粒度・強度が細かいことが要因。
  • ・業務プロセスについては、かなり細かな粒度で見なければほぼ差異はでない。
  • ・事務分掌の差異の統一は難しい。
  • ・様式・帳票の差異に起因するカスタマイズは多い。
  • ・自治体内部の情報のやり取り、自治体外部との情報のやり取りに起因するカスタマイズは多い。

カスタマイズが発生する要因として、仕様書に具体的な機能を記載しすぎたため、導入するパッケージと機能が合致しないことが挙げられます。業務プロセスについては、どのパッケージにおいても差はないので、よほど細かにみなければカスタマイズが必要とはならないと考えられます。

自治体ごとの組織の違いによる事務分掌の統一は難しいところです。また様式・帳票の違い、パッケージと他のシステムとのインターフェイスの違いは、どの自治体においても実感していることではないでしょうか。

これらは研究会での議論、自治体へのアンケート結果から導き出された見解ですので、多くの事実が含まれています。

それでは、この見解をふまえ、ユースケースとして「基幹業務システムの再構築」を行う場合に標準化で考えるべきことを整理してみます。

基幹業務システムの再構築

自治体における基幹業務システムの再構築は一大事業であり、多くの時間とコストをかけて行うものかと思います。

再構築事業を進めるためには、次の3点が必要ではないでしょうか。

・目的とゴールを定める
・事例を取り込む
・新しいことを実現する

これら3点について、お話をします。

目的とゴールを定める

1つめは「目的とゴールを定める」ことです。

自治体の目標は、基本的にコストの削減か住民サービスの向上です。
その目的を達成するためにどうするか検討します。
パッケージの考え方を最大限に活かし、カスタマイズを抑制することになります。
そのため、各業務の担当者には、「基幹系業務再構築はシステムの構築ではなくオープン系パッケージを上手に活用し、新しい事務処理方法を構築すること」であるというところをしっかりと伝える事だと思います。

やみくもに標準化しようと思っても何から手をつけたら良いか判らなくなってしまいますので、何のために行うのかをはっきりさせて、成功事例を取り込み、新たなことを取り入れて変化させていくという考え方です。

ここに2つの例をおいてみました。

目的とゴールの設定例
「J-LIS 地方自治情報化推進フェア2019」ウイングアーク1stブースでの説明資料より抜粋・加筆

(1)では、目的が「基幹業務システムのコストダウン」、ゴールは「低コストなシステムへの更新」として、手段は「カスタマイズの抑制」としています。

(2)では、目的が「住民サービスのスピードと正確性の向上」、ゴールは「誰もが容易に使えるシステムの導入」として、手段は「パッケージを活かした事務処理」としています。

目的とゴールが明確にし、そのための手段が、関係者にすり込まれていることが、事業を進める上で重要なポイントとなります。

事例を取り込む

2つめは「事例を取り込む」ことです。

事例は同規模で、近い時期に同じパッケージを導入した自治体からシステム導入に対するノウハウをもらうのが理想的です。規模は冒頭に述べた組織階層、処理件数による業務プロセスの違いが考えられるため、同じような規模での事例が参考になります。時期については、技術や規制環境の変化などがありますので、近い時期に行ったものが参考になるということです。

事例は公開されているものから探す、調達時期を調べて直接問い合わせるなどの方法が考えられます。いずれにしてもカスタマイズが必要になったこと、その理由などを聞いてみたいところです。また、後からこうすれば良かったなどの気づきを得ることも大切です。聞く相手によって、回答内容は異なってくると思います。特に再構築した後の実状は、現場に近いかたから良かったところ、うまくいかなかったところを運用開始して半年から1年程度経過ところで聞かれるのが良いかと思います。

また標準化という観点では、業務プロセスで標準化できているところ、いないところという聞き方をしてみてください。特殊な業務と思われていたところが、実はすでに標準化されているなどの気づきがあると思います。標準化にあたっては、導入ベンダが持っているノウハウのどのようなところを活用したか、導入製品の標準仕様に合わせて変更したところはどこか、なども事例を取り込む際のポイントとなります。

事例から確認すること・視点
「J-LIS 地方自治情報化推進フェア2019」ウイングアーク1stブースでの説明資料より抜粋・加筆

新しいことを実現する

3つめは「新しいことを実現する」ことです。

自治体の業務は変わらないから、既設システムを現在の技術を使って適切なコストで置き換えれば良い、という考え方があるかと思います。それも一理あります。しかしながら、せっかく入れ替えるのであれば、これまで改善したいと思っていたことを盛り込む、新たなことを入れるという意識でシステム更新に臨んではどうでしょうか。

例えば、職員の業務進捗を定量的に可視化することを新たに取り入れるのであれば、以下のような進め方が考えられます。

(1)職員の窓口業務をプロセスごとに分解
(2)プロセスごとの進捗を時間、件数などで測定
(3)業務進捗の変化を時間軸(短期、中期)でチャート化

簡単にできることではないですが、まずどこを見えるようにできるかから始めて、データ化できる範囲を拡げていく位で取り組み始めてはいかがでしょうか。業務の見える化、分析によって、量と質の両面から課題を把握できるようになります。そこにBIツールを活用すれば、スピードアップと誤りの減少が見込まれ、住民サービス向上に向かいます。

BIツールを活用した業務の見える化・分析

職員が今できていることを明らかにするだけでも、気持ちに余裕ができ、新たなことを産み出すプラスの意識への変化が期待できます。

業務プロセス・システムの標準化のための方策

現場ニーズに由来する標準化は、研究会で以下のように述べられています。

●カスタマイズのうちかなりの部分を占めるのは、法令・通知等で規定されていない便利機能・過誤防止等の現場ニーズに由来するものであり、この部分を標準化しなければ、標準化の効果はかなり限定的なものとなるのではないか。

●こうした現場ニーズに由来するものの標準化については、実務担当者が便利機能・過誤防止等の機能の効果・要否を最も良く判断できると考えられることから、実務を担っている自治体の役割が重要ではないか。その場合、I 標準設定型アプローチのうち、標準設定に自治体代表が関与する形か、II 共同化型アプローチが有効ではないか。

●ただし、II 共同化型アプローチについては、水平的調整では調整コストがかかり、難しいという考えもある。

●こうした便利機能・過誤防止等のカスタマイズを全てなくすというのが困難であり、また、逆に全てパッケージに盛り込むのが高額になり過ぎるのであれば、それぞれのカスタマイズについて、パッケージに盛り込むべきかどうかを判断しなければならないが、その費用対効果を判断するには、実際にプログラミングを行っているベンダの役割が重要なのではないか。

このように自治体、ベンダそれぞれが果たすべき役割が示されています。現場ニーズの代表的なものとして、便利機能・過誤防止があります。これらを標準化するには、標準を代表となる自治体が決めていくやり方、共同化を進めるやり方が考えられます。共同化では、意見を調整してくのが大変なのは皆さん周知の通りです。担当者同士で話し合っても決められないことでもあるので、トップダウンやリーダーシップが必要です。あわせて様々な自治体に業務システムを導入されているベンダの力も借りていくことで、前に進められます。

自治体業務標準化を進めるにあたって

自治体業務標準化について、お話をさせて頂きました。
自治体が単独で標準化ができるわけではありませんので、導入するパッケージを最大限活用し、カスタマイズを抑制するためにはどうしたら良いのかと考えることが必要です。

標準化には、業務、システム、データの観点があって、どれも手段のひとつです。それぞれの標準化を適切に組み合わせると効果は高まります。難しいところからのみではなく、影響範囲が大きくなるところに着目して、まずできるところから着手するとの柔軟な考え方をもち、以下のような姿勢で進めてみてください。

・自治体の職員が、業務の本質を理解する。
・通常の処理手順と、例外処理を同列で議論しない。
・帳票、データ項目、作業などの必要性を、もう一度考えてみる。
・現状、過去のやりかたに固執しない。 新たなやりかたを受け入れる。

標準化を進めるというより、自治体がパッケージの考え方を、柔軟に受け入れる姿勢が大切であると私は考えています。

自治体業務標準化の効果を最大化するためには
J-LIS 地方自治情報化推進フェア2019」ウイングアーク1stブースでの説明資料より抜粋・加筆

【参考資料】
地方自治体における業務プロセス・システムの標準化およびAI・ロボティクスの活用に関する研究会(第4回) H30.12 総務省自治行政局行政経営支援室
http://www.soumu.go.jp/main_content/000592072.pdf

2020.01.20

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