自治体向け
ソリューション

コラムデジタル社会の実現

・吉本 明平 氏(一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC) 企画部担当部長、地域情報化アドバイザー)へのインタビュー記事。
・デジタル・ガバメント実行計画 で提唱されているデジタル社会の実現を紐解く。
・デジタル社会では Facebook、LINE、Yahoo! などのデジタルプラットフォーマーの存在感が高まる。
・住民の定義、行政の役割がデジタル化によって変わる。
・行政が民間をサポートするといった行政とデジタルプラットフォーマーの協調が進む。
・パブリッククラウドを行政が活用する本当の意味は、パブリッククラウドにある情報資産の活用。
・行政は、デジタルIDとしての住民、デジタルプラットフォーマーといった新しい存在を支えるインフラとしての役割を模索しなければならない。

 

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吉本 明平 氏
一般財団法人 全国地域情報化推進協会(APPLIC) 企画担当部長
2005年APPLICの前身、全国地域情報化推進協議会に参加、APPLICの立ち上げを行う。電子自治体やマイナンバーを始めとする電子行政のサービスの検討に参画。2014 年から現職。

最近の活動
・地方の官民データ活用推進計画に関する委員会委員(内閣官房)
・自治体システム等標準化検討会構成員(総務省)

「デジタル社会」という言葉をご存知でしょうか。「デジタル・ガバメント推進方針 (平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)」にある考え方です。そこではデジタル社会を「デジタル技術がビジネスモデルを根底から変える、新しい社会」と定義しています。

「デジタル社会」ではFacebookやLINE、AmazonのアカウントといったデジタルIDを使った生活が暮らしの中心となります。そんな社会ではデジタルIDの発行やデジタルID間のやり取りをつかさどる「デジタルプラットフォーマー」の存在が時に行政以上に重要となります。Society5.0とも称されるこの新しい社会への対応が、行政にとって喫緊の課題なのです。

では、「デジタル社会」で行政のありようはどう変わるのでしょうか。

「住民」の定義が変わる

「デジタル社会」の住民はデジタルIDです。「リアル社会」では一人一人の人間が住民でした。通常一人の人間は一つのID(Identity)を持っています。行政にとっては俗にいう実名(戸籍名)であらわされる個人です。しかし、デジタルIDは違います。一人が複数のデジタルIDを持ち、それを仕事用、趣味用、家庭用と使い分けるのが普通です。「住民」の母集団が根本から変わってきます。

さらに、デジタルIDを生み出し、管理しているのはデジタルプラットフォーマーです。リアルIDである実名は行政が担保してくれます。勝手に消えはしません。しかし、デジタルIDはどうでしょう。2019年6月、大阪府公式Facebookページの更新ができなくなったことをご存知の方もいらっしゃると思います。Facebook社が何らかの理由で同ページを更新停止状態としたため、大阪府はIDを何度も再登録せざるを得なくなりました。行政の権限すら及ばないデジタルIDが生活の基盤となる社会がすでに到来しています。

行政の「役割」が変わる

そんな「デジタル社会」における行政の役割とは何でしょうか。

Society4.0といわれた社会では電子申請に代表されるように、インターネットを活用してリアルIDに対するサービスをいかに効率化するかがテーマでした。先進的な自治体ではすでに実現していますし、ようやく一般の自治体にも浸透したところでしょうか。ところがこれからの「デジタル社会」Society5.0は、フィジカル(リアル)とサイバー(デジタル)が融合する時代といわれています。

どんなにデジタル化が進んでも住民、建物、道路など実際に存在するもの、すなわち「リアル」を扱う役割は依然として行政に委ねられるでしょう。一方で、これらの「リアル」はすべて、テキスト、画像、GIS、暗号資産などの「デジタルデータ」に変換され「デジタル」に取り込まれます。すなわちフィジカル(リアル)とサイバー(デジタル)の融合です。デジタルデータはデジタルIDに紐づけられ、デジタルプラットフォーマー領域のものとなります。

デジタルプラットフォーマーの領域は行政には不得意な分野です。そこで効率的に行政サービスを展開するには自前主義を捨て、デジタルプラットフォーマーと協調することが大切になります。すでに行政公式LINEアカウント、Yahoo!公金支払、キャッシュレス決済などが活用され始めています。従前の行政サービスの一部をデジタルプラットフォーマーが代行していると見ることもできます。つまり、行政の役割がおのずと変化していきます。

行政とデジタルプラットフォーマーの協調

行政とデジタルプラットフォーマーの協調はイメージがしづらいかもしれません。協調について理解するため、上で述べた行政が自前主義をやめデジタルプラットフォーマーの力を活用する方法に加え、もう二つの考え方を見てみます。

一つ目の考え方は、上とは逆に、民間サービスのサポートを行政が行うというものです。

サポートとは、単に行政の仕事を増やすという意味ではありません。行政以外ができることを積極的に外に出し、民間の力を活用するためには、逆に行政にしかできないことに役割を絞ってサポートに注力する必要があるということです。

行政ならではの機能とは、例えば存在や信用を証明したり、保証を与えたりといったことでしょう。突き詰めると従来の規制官庁的な役割になってしまいます。デジタル社会の合理性を十分発揮させつつ、必要な信頼を行政が支えるための新しい仕組みが求められます。行政がデジタルプラットフォーマーに対して必要な規制をかけつつも適切なサポートを行うことで双方が強調し、真にデジタル社会を支えるインフラとなると思うのです。

仮想ケースとして、行政が交通過疎地域の課題を解決するため、住民の移動手段の担い手としてUberのような配車プラットフォーマー(いわゆるライドシェア)を活用する例を考えてみます。

ライドシェアを利用すると、好きなタイミングで従来のタクシー利用よりも低いコストで移動ができます。しかし運転手が一般人であることから、運転能力や事故歴など運転手の安全性に関わる情報が判然とせず、不安を感じることもあります。

一方で、タクシーを利用する場合、コストは上がりますが運転手に関する不安は低減されます。タクシー事業者やタクシードライバーには行政による認可があり、一定水準の安全性が保証されているからです。法的な規制のメリットです。

通常はライドシェア事業者が様々な形で信頼や保証の部分をカバーすることで低コストながらも一定の安心感でライドシェアを利用できるよう企業努力しています。しかし、行政が交通過疎地域の解決策としてライドシェアを活用する場合はどうでしょう。これらの担保をすべて民間に頼ることが合理的でしょうか。

例えば、配車プラットフォームはライドシェア事業者に委ねながらも、運転手の安全性の証明や事故発生時の補償部分を行政がある程度サポートするといったことも考えられるでしょう。これによって行政がデジタル分野での複雑なプラットフォームを持つことなく、交通過疎地域の住民に対してデジタルを活用したサービスを提供できます。単なるビジネスではなく、地域社会のセーフティーネットを担うといった場合には、このような行政とデジタルプラットフォーマーの協調が必要となるでしょう。

二つ目の考え方は、パブリッククラウドにある情報資産を行政が活用することです。

例えば新型コロナウイルスに関する情報サイトは非常に速いタイミングで立ち上がりました。感染状況などに関するオープンデータを民間が可視化し、さらに行政がそれを活用するという連携が行われたためです。ここで活用されたデータやサービスといったものが情報資産にあたります。

今や情報資産はパブリッククラウド上にあり、その多くは民間に帰属します。結果、その活用はおのずと行政とデジタルプラットフォーマーをはじめとする多くの民間との協調につながります。協調無くして情報資産の十分な活用はあり得ません。

2020年4月号_本文MBコロナダッシュボード_白_リサイズ後.jpg
MotionBoardで表現した新型コロナウイルス国内感染状況確認ボード(例)
https://www.motionboard.jp/demo/main?mbid=fidt45hnyd4tva6vjz7aaabmmz72u&id=demo&pw=demo&extid=mbsso

行政のパブリッククラウド活用というと庁内にある業務システムをクラウドへ移転させることと捉える人が多いようです。しかし、パブリッククラウド活用の真の意味とはこのような協調にあります。次にパブリッククラウド活用の意義について整理してみます。

パブリッククラウドを再整理

行政によるクラウド活用はこれまで様々な取り組みがされてきたので、時系列で再整理してみます。
2014年頃に自治体へのクラウド導入が共同利用の一環として進められました。いわゆる「自治体クラウド」です。当時の自治体クラウド導入市町村数は550団体で、1000団体に倍増すべく総務省からの財政措置も組まれていました。クラウド化に合わせて業務標準化、データ集約を進めることで官民協働によるサービス提供、地域活性化を目指していました。

2016年頃からパブリッククラウドに関する議論が活発になりました。APPLICからはパブリッククラウド利用が始まった防災などのシステムと、庁内や自治体クラウドにある住民情報をあつかう基幹システムを連携させる「ハイブリッドクラウド」のコンセプトを提示しました。まずは基幹システム以外をパブリッククラウドに切り出すというものです。これは単にパブリッククラウドにあるサーバーを利用するという意味ではありません。パブリッククラウドにある情報資産、例えば地図サービスとかデータ公開サイトとか言った既存サービスを積極的に活用する発想、つまり自前主義の脱却、への転換が目的でした。

2018年にはクラウド・バイ・デフォルトの原則が政府から提唱されました。Society5.0の実現にはクラウド活用が前提になるというものです。例えばAIやIoTといった技術の活用はパブリッククラウド上の情報資産無くしては到底実現できません。自治体では基幹システムとパブリッククラウドを接続するゲートウェイ(中継)サービスが既に出始めています。

パブリッククラウド利用の最終的な目的は行政、民間の協調です。行政、民間双方が情報資産にアクセスし、一緒にサービスを構築できる場がパブリッククラウドです。たとえば自治体クラウドでは民間からのアクセスが制限されてしまいます。デジタル社会に対応した新しい行政サービスを行政と民間が協力して実現していくための場所はパブリッククラウドにしかないのです。

情報資産をどう使うか

デジタル社会に対応すべくパブリッククラウドの情報資産を活用すべきといわれても、行政は何をどう使えばよいのかとの疑問が発生するかと思います。いま、官民データ活用推進計画の策定が求められています。何故「官民データ活用推進」を計画的に行うことが法定の努力義務となっているのでしょうか。デジタル社会への対応が喫緊の課題であり、そのための情報資産活用(まさしく官民データ活用)について真剣に検討しなければならないからに他なりません。

官民データ活用推進計画の策定においては、そもそもなにを目的としているのか、テーマの設定が肝要になります。計画の位置づけや推進体制、具体的なスケジュールやKPIなども確かに大切です。(これについて記載すべき内容はAPPLICでチェックシートとして整理しています)しかし、作成の目的が地域のニーズに合っていなければ計画は有効なものとなりません。

"目的"を地域に合わせて検討し、その実現のためにどのような情報資産が活用できるのか、活用すべきなのかを検討する必要があります。そしてその実現のためのプロセスを計画として整理しなければなりません。ただ、目的設定の段階で課題解決に着目しすぎると、解決すべき"現状の問題点"に意識が集中し、いわゆるギャップアプローチに徹してしまいます。 より前向きなポジティブアプローチも強化すべきです。

ここでは全てを書ききれないので、続きは以下をご覧ください。

自治体課題設定手順 Lg task arrangement
https://www.slideshare.net/akihirayoshimoto/lg-task-arrangement-150124657

デジタル社会の実現に向けて

デジタル社会の住民はデジタルIDです。一人の人間は複数のデジタルIDとして生活しています。行政もそんな社会に対応しなければなりません。例えば行政からのお知らせを公式LINEアカウントから行うとき、お知らせ先の住民はリアルの人間でしょうか。いえ、デジタルIDです。必然的に行政はデジタル社会に取り込まれていきます。

デジタル社会を支えているのはデジタルプラットフォーマーです。行政はデジタルプラットフォーマーとの協調なしにデジタル社会に対応した豊かな行政サービスを提供することはできません。そこには新たな役割分担が生まれていきます。
デジタル社会において行政とデジタルプラットフォーマーなどの民間が協調、協働する場がパブリッククラウドであり、そのための道具がそこにある情報資産です。そして、デジタル社会に対応するための情報資産活用を計画的に行うためにあるのが官民データ活用推進計画です。

今こそ行政は、デジタルIDとしての住民、デジタルプラットフォーマーといった新しい存在を包含し、支えるインフラとしての役割を模索しなければなりません。

【参考資料】
デジタル・ガバメント推進方針 2017.5.30
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/suisinhosin.pdf

自治体システム標準化が目指すデジタル社会の実現 2020.1.22 APPLIC 吉本 明平
https://www.slideshare.net/akihirayoshimoto/ss-229508185

自治体課題設定手順 2019.6.17 APPLIC 吉本 明平
https://www.slideshare.net/akihirayoshimoto/lg-task-arrangement-150124657

クラウドプロジェクトチームコンセプト 2016.6.28  APPLIC 吉本 明平
https://www.slideshare.net/akihirayoshimoto/ss-64990885

2020.04.20

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