導入事例

清水建設株式会社

清水建設株式会社

現場ファーストなDXの土台となるダッシュボードを構築
建設DX・データドリブンな工程管理の足がかりに

清水建設株式会社
業種

建設

日本を代表するスーパーゼネコンとして建設業界をリードする清水建設株式会社(以下、清水建設)はものづくり(匠)の心を持ったデジタルゼネコンを目指し建設DXを推進している。その一環として現場のデジタル化に向けてBIダッシュボードMotionBoard、データ分析基盤Dr.Sumを導入し、現場ダッシュボードを構築。現場ファーストの観点から現場の負荷を増やさず、アジャイル開発により“気づき”が得やすい操作性・UI(ユーザーインターフェイス)の完成度を図る。今回のプロジェクトを通じて、確かな手応えとともに、データ活用ノウハウの組織的共有により全社DXに向けて大きな一歩を踏み出した。

導入背景

建設業では、人手不足やプロジェクトの超大型化に伴い工程管理も複雑高度化し、ヒトの経験とノウハウだけでは迅速な工程管理が困難になってきている。清水建設は、多角的に現場の状況を把握し問題の主因をつかむため、工程進捗に影響する現場データをリアルタイムに収集、可視化し、データに基づき迅速な組織的フォローを実施するべく現場ダッシュボードの構築に着手した。

課題
  • 工程管理業務では多くの現場からExcel管理表やCSVファイルを収集する必要があり、手間と時間がかかっていた
  • 現場ダッシュボード構築にあたり、現場の負担を増やさない仕組みづくりが必須であった
  • 支店各部署の役割に応じてリアルタイムに工程状況を把握し、迅速なフォローが求められていた
解決策導入ポイント
  • MotionBoard導入により工程進捗に関する様々なデータをクラウド上に集約
  • 既存システムやの自動連携、内勤部署との業務連携により、現場職員のデータ入力負荷を解消
  • 切り口や粒度の可変性が高く、新たな発見や洞察を得やすい操作性・UIをダッシュボードデザインに反映
効果
  • 工程遅延に影響するデータをリアルタイムに収集、可視化することで、迅速な組織的フォローが可能に
  • Dr.Sumによるデータの持ち方などデータ活用ノウハウを組織的に共有できたことで、全社DXに向けて大きく前進
  • アジャイル開発でPDCAサイクルをスピーディに回すことで、現場ダッシュボードの完成度を高め、使いやすさ、“気づき”の得やすさを向上

デジタルゼネコンを目指しDXを3階建構造で推進


 1804年創業の清水建設は、江戸から明治、大正、昭和、平成、令和にわたり日本の社会インフラを支えてきた。長い歴史の中で今も受け継がれているのが、「顧客第一」と「誠実なものづくり」への高い志をベースに、時代を先取りした「進取の精神」である。コーポレートメッセージ「子どもたちに誇れるしごとを。」のもと、同社は建設事業(建築、土木、海外建設)を柱に、不動産開発、エンジニアリングなど非建設事業を展開。建設事業の枠を超え、新たな価値を創造(スマートイノベーション)し、持続可能な未来社会の実現に貢献していく。


 建設業を取り巻く2つの重要課題について、清水建設 建築総本部 建築企画室 技術企画部 部長 昆野 浩之氏は話す。「1つ目は、ヒト不足・モノ不足です。2025年のワーストシナリオでは93万人の技能労働者不足が予想されています。また、国際情勢を背景としたモノの供給不足に加え、建設プロジェクトの超大型化に伴うピーク時施工量の高さが大きな課題です。2つ目は、価値変容・ルールチェンジです。生成AIをはじめとするデジタル技術革新によりデータドリブンな社会に向けて価値観は大きく変わりつつあります。さらに、2024年度には建設業界においても時間外労働の上限規制がスタートします」


清水建設 建築総本部 建築企画室 技術企画部 部長 昆野 浩之 氏

 建設業の根幹に関わる重要課題を解決するために、同社はデータドリブンな建設プロセスの実現に向けた取り組みを進めている。ビジョンとして掲げるのが、デジタルとリアルのベストミックスを追求する「デジタルゼネコン」だ。国内建設業界におけるDXを牽引する同社は、2021年から3年連続で経済産業省によるDX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄に選定された。


 デジタルゼネコンに向けた全社DX活動は3階建構造にあると昆野氏は話す。「1階はデジタイゼーション(アナログ・物理データのデジタル化)、2階がデジタライゼーション(組織的な業務プロセスのデジタル化)、3階がDX(ビジネスモデルの変革・価値創造)です。1階では、建設現場のデジタル化が重要なテーマとなります」


清水建設におけるDX活動の全体イメージ

 ものづくり(匠)の心を大切にするデジタルゼネコンにおいて、建設現場のデジタル化で同社が重視したのが「現場ファースト」だ。


現場ファーストの観点から3つのポイントを重視しMotionBoardを採用


 建設現場では人手不足とともに、工程管理の複雑高度化が新たな課題になっていると昆野氏は指摘する。「現場の工程遅延は、多くの要素が複雑に絡む結果として起こるため、工程管理では多角的に状況を把握し、その主因を掴むことが必要です。しかし昨今、プロジェクトの超大型化により工程管理が複雑高度化しており、ヒトの経験やノウハウに、デジタル(データ)の力をミックスさせることが重要課題となってきています。」


 同社は、複雑高度化する工程管理の課題解決に向けて現場ダッシュボードの構築に着手。その理由について昆野氏は説明する。「従来、現場ごとに個別管理していた施工管理業務の進捗状況の中で、特に工程進捗に関わる現場データをリアルタイムに収集、可視化し、迅速な組織的フォローを実施。現場における工程遅延のリスクを解消し、現場の力を最大限に生かすことが狙いです」


 現場ファーストの観点から、現場ダッシュボードの構築に当たって3つのポイントを重視したという。


1.現場負担を増やさない
 既存情報の有効活用、内勤部署との業務連携により、現場側に極力データ入力させないことを最大限工夫する。


2.データ連携による効率化
 既存システムと自動連携することで、データ入力の重複をなくし効率化を実現する。


3.可視化のパーソナライズ
 支店各部署の役割に応じて見たい角度で分析できるように、切り口や粒度の可変性の高さ。
 また、新たな発見や洞察を得やすい操作性・UIをダッシュボードデザインに反映する。


 同社は、3つのポイントを満たす現場ダッシュボートとしてウイングアークのMotionBoardとDr.Sumを採用した。


データ入力用ダッシュボードでデータ収集を効率化


 同社は全社最大の現場数を有する東京支店において、MotionBoardによる現場ダッシュボード構築に向けてトライアルを開始。「初めての取り組みのため、“正解のない答え”に挑み、トライ&エラーを繰り返しています。当社の要望に対してウイングアークがアジャイル開発で形にし、それをチェックし操作してみて、次の改善に取り組むといったサイクルをスピーディに回し、使いやすさと品質を高めています」(昆野氏)


 同社は現在、図面工務、取極状況※、設備管理、配員状況の4種類のダッシュボードの開発・活用に取り組んでいる。一般的なBIと異なり、MotionBoardはデータ入力用のダッシュボードを構築できる点が特徴だ。工程管理を一元的に行うためには、多くの現場からExcel管理表やCSVファイルを収集する必要があるが、そこでMotionBoardは、クラウド上のデータ入力用ダッシュボードに現場データを直接入力するため、データ収集・加工の手間を解消。マスターデータの整備・蓄積などデータ活用基盤を構築するDr.Sumとの連携により、リアルタイムな分析や可視化を実現できるようになった。


 さらに、MotionBoardでは現場の画像やライブ映像なども1つの画面で統合して見ることができるなど、これまでのBIツールにはない、現場にとって実用的な機能だった。



※取極とは協力会社との契約および手配のことを指します。



MotionBoardはクラウド上のダッシュボードに直接データを入力することが可能

 例えば図面工務の場合、既存システムとデータ連携する現場一覧により入力現場を選択し、工程表を確認しながら施工図の作図予定と実績、設計者への施工回覧予定と実績などを登録。出力ボードでは、登録された全現場を横断して施工図の進捗や遅延状況を可視化する。さらにプロジェクトや図面種別などの切り口による管理状況の確認や、遅延アラートの多い現場を個別に絞り込むことも可能だ。


進捗状況を視覚的に把握、見たい切り口でドリルダウンが可能

部門横断でデータを活用するノウハウや知見を組織として共有


 「当社における現場ダッシュボードの取り組みは初期段階です。しかし、工程管理業務のデジタル化に手応えを感じており、これからもブラッシュアップしていきます。また、今回のプロジェクトを通じて全社DXを推進するうえで有益な収穫がありました」と昆野氏は話し、こう続ける。


 「今回、現場ダッシュボード構築プロジェクトを通じて『デジタルと三現主義(現場、現物、現実)の誤解』について“気づき”がありました。このままデジタルを進めていくと、いずれ現場や現物への感性が鈍ってしまうのではないかといった恐れを抱く現場担当者もいます。デジタルと三現主義の両者は正しい事実認識のために相互補完しあうもの。デジタルは『事実を見るもう一つの新たな目』であると改めて認識しました。また現場、現物への感性を磨いてこそ、多くのデータに隠れている意味を読み解き、新たな発見や洞察を導くことができます」


 データを様々な切り口で見るためには、データの持ち方も課題となる。「例えば工程情報では、マスター工程、月間、週間、日報など情報の粗さ、細かさ、時間スパンの長短など粒度に違いがあります。今回、粒度の差をつなぐための知見が得られました。これは現場ダッシュボードだけでなく、今後取り組む業務ダッシュボードでも共通課題となるものです。データドリブンな建設プロセス実現に向けて、部門横断でデータを活用する際の知見やノウハウを組織として共有できたことは大きな前進です」


 さらに、現場ダッシュボードなどを活用したスマートな働き方は、時間の有効活用を促進するとともに、今後の建設業を担う人財の流入確保に繋がる点も大きなメリットになると昆野氏は付け加えた。


 持続可能な社会の実現に向けて、進取の精神で変革・挑戦を続ける清水建設。ウイングアークは同社の建設現場DXを成功に導くべく、同社に寄り添い伴走型で支援していく。


Company Profile

清水建設株式会社

設立:1804年
所在地:東京都中央区
事業内容:建築・土木等建設工事の請負(総合建設業)
URL:https://www.shimz.co.jp/

(右)
清水建設株式会社
建築総本部 建築企画室
技術企画部
部長 昆野 浩之 氏

(左)
清水建設株式会社
東京支店 企画部
部長 小塚 豪 氏

導入製品

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