株式会社コスモネット
MotionBoardとDr.Sumで店舗業務アプリを内製化
店舗オペレーションのデジタル化によりDXを加速
- 業種
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情報・通信
モバイル端末販売などの店舗運営と法人向け事業を柱とするICTサービスプロバイダーの株式会社コスモネット(以下、コスモネット)では、データ活用基盤の構築とBIツールの導入によって、データを高度に分析するための礎を築いた。また、BIツールの多彩な機能を駆使し、店舗オペレーションの改善に役立つWebアプリを複数開発することで、店舗業務を劇的に効率化することに成功している。BIツール導入時の利用想定を大幅に超え、様々な用途でのDX内製化ツールとして活用を進めている。
導入背景
事業の成長に伴って売上や経費、顧客に関するデータ量が増加し、Excelでの運用・管理が難しくなっていた。また、各店舗からの実績データを収集するのに、Excelファイルの統合作業による負担が大きく、その軽減と鮮度の向上が求められていた。店舗業務でも紙からExcelへの転記が多いなどの問題が顕在化していた。
- 課題
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- データ量が膨大となり、Excelでは扱いきれなくなっていた
- 店舗からの実績データ収集に時間と手間を要するため、集計のサイクルを週次から短縮できなかった
- 店舗において紙ベースのアナログ業務が多く非効率だった
- 解決策導入ポイント
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- 新たにデータ活用基盤をDr.Sumで構築し、大量データを扱える環境を整備
- 可視化と分析を行うBIツールとしてMotionBoardを導入、本社と一部店舗において500名が利用
- MotionBoardの多彩な機能を用いて店舗業務のDXを実現するWebアプリを開発
- 効果
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- 各店舗の実績データはDr.Sumで一元化され、月に600時間かかっていた収集作業を削減
- 店舗の実績データを最新化するサイクルが週次から日次に短縮された
- 同規模の店舗同士の比較や、B/S(バランスシート)で利益の内訳を可視化するなど、データの活用が進んでいる
- Webアプリ導入によって店舗で扱う情報がデジタル化できたことで、書類をシステムに転記したり、データを集計したりする作業負担を大幅に軽減
事業成長に伴ってデータが肥大化し、データ活用基盤が必要に
コスモネットはモバイルなどのショップ運営と法人向け事業を二本柱とする、独立系のICTサービスプロバイダーだ。グループの歴史は1979年の有線音楽放送の開局から始まり、相次いで自由化された通信業界へ果敢に参入して業容を拡大し、業界をリードしてきた。
現在では全国に400を超える携帯電話ショップ・法人営業所を展開しており、直営店舗数で日本一を誇るなど、通信業界のリーディングカンパニーとなっている。また、国内では唯一の「Apple Premium Partner(アップル・プレミアム・パートナー)」 の認定を受けており、Apple製品を専門に取り扱う自社ブランド店舗「C smart」を展開する。
ただし、単なる規模の拡大を目指しているわけではない。製品やサービスの紹介にとどまらず、顧客と真摯に向き合いながら、通信事業の枠を超えた「通信のその先にあるサービス」に挑戦している。
顧客の生活に寄り添ったサービスをよりよいものにするためには、店舗運営や本社機能の業務について、さらなる効率化や、データ活用の高度化が欠かせない。そこで2020年、基幹システムのハードウェアが保守期限を迎えたのを機に、基幹システムのリプレースと併せて、データ活用基盤の構築とBIツール導入を目指すことにした。
当時のデータ活用に関する課題を、経営管理部 情報システムグループ 課⾧代理 加藤 泰彦氏は振り返る。
「当社ではシステムを各部門の主導で導入してきたためデータは散在しており、集計や分析のために統合するのに骨を折っていました。また、店舗網の増加や事業拡大などを背景に、2009年からの約10年間で売上高は3倍と、競争の激しい通信業界において飛躍的な成長を遂げることができましたが、それに伴ってデータ量も膨大になったため、Excelではファイルを開いたり、再計算が実行されたりするたびに待ち時間が発生していました。今後もExcelを中心に据えてデータを処理するのは現実的でなく、新たにデータ活用基盤を構築しようと考えたのです」
トライアルで直感的な操作性を体感してMotionBoardを採用
製品選定において、同社ではWindowsだけでなくMacも導入しているため、OSに依存せずWebブラウザーから利用できるクラウド型サービスであることを前提とした。
その上で、まずは海外ベンダーのBIプラットフォームが目に留り、トライアルを実施。しかし、直感的な操作ができず使い勝手の面で難があったと加藤氏は振り返る。その後、同時に導入を進めていた基幹システムのベンダーから提案されたのが、ウイングアークのDr.Sum Cloud(以下、Dr.Sum)とMotionBoard Cloud(以下、MotionBoard)だった。
「まず、日本語表示なのでとても分かりやすかったです。機能が豊富にもかかわらず、その引き換えに操作性が劣ることはなく、他社製品よりも直感的に使いやすいと思いました。全社展開を視野に入れており、トライアルを経て、これなら問題なさそうだと判断しました」(加藤氏)
最初は管理会計ダッシュボードの作成を目標に、導入作業がスタートした。ウイングアークではナレッジベースやオンラインマニュアルといった自己解決手段も提供しているが、念のために、専任のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)が伴走支援するオンボーディングプログラムを契約。データベースやBIツールの導入作業は未経験だった加藤氏が中心となり、派遣技術者との2名体制での内製化による構築であったが、伴奏支援を活用することで無事にリリースの日を迎えた。
加藤氏のウイングアーク製品に対する評価は高く、「立ち上がりの時期に業務多忙で人材がそろわなかったため1年ほどかってしまいましたが、最初の説明を受けただけで順調に構築や開発を進められました。大変だとは感じず、むしろ楽しかったですね。またDr.Sum、MotionBoardを組み合わせてできることの多彩さに驚いています。」と話している。
データ収集の効率化により鮮度が向上、一元化で比較も容易に
最初にリリースした全社の管理会計ダッシュボードは、それまでExcelで運用していたものをほぼそのままBIツールに移植しているのだが、あるグループで運用している実績進捗把握のダッシュボードは作成にかかる手間が大きく省力化されたことで600時間削減され、タイムリーにデータを把握できるように変わった。このことの価値について、経理部門での実務経験がある経営管理部 情報システムグループ 主任 木下 真梨子氏は次のように説明する。
「各店舗が実績を入力したExcelファイルを提出し、それを店舗グループごとに集計し、さらに上位の階層で集計するというような作業を行っていたため、それだけで手一杯なってしまい詳しく分析する余裕がありませんでした。また、集計作業を担うアシスタントの負担が大きいため、週次でしか最新化できなかったのです。現在ではデータをRPAで自動的にシステムから出力してDr.Sumにインポートし、加工・集約してMotionBoardで可視化できるため、そうした作業が不要となり、日次で容易に実績を把握できるようになりました」
また、以前は集計単位ごとにExcelファイルが分かれていため、すぐに比較できる対象が限られていた。
「ライバル店舗を意識して切磋琢磨したくても、よく似た規模や条件の店舗が同じグループ内になければ適切に比較できません。MotionBoardなら、他グループの店舗データでもすぐに取り出して、数字を使って比較できます」(木下氏)
BIツールの概念を越えたアイデアと使い方でデータ活用の幅を広げる
コスモネットの取り組みで特筆すべきは、MotionBoardの機能を駆使してBIツールの概念を超えた用途で利用している点だ。Apple製品の専門店舗「C smart」では中古端末の販売と買い取りを行っており、煩雑な業務を確実に実施しなければならない。そこで、MotionBoardでiPad用のWebアプリを開発し効率化を実現。アナログ業務がなくなり、店舗のオペレーションが劇的に良くなっているという。
「アプリを起動すると、まずパスコードの入力を求められます。個人情報を扱うため、スタッフの目が届かない場面では使用できないようにしているのです」と話すのは、経営管理部 情報システムグループ 海野 翔平氏だ。
ロックを解除するとメニューが表示される。ここで「買取受付」をタップすると、お客様情報を入力する画面に遷移する。古物営業法にのっとった古物台帳の整備で必要な情報だ。
「以前はお客様に氏名や生年月日などの情報を紙に書いていただき、それをスタッフがExcelに転記していました。現在はお客様がiPadに入力していただくだけで、Dr.Sumに登録ができています」(加藤氏)
続いてスタッフがチェックシートに沿って端末機器の異常を確認し査定を行うが、アプリでチェックを入れると査定ポイントを算出してランクを付け、異常の情報とともにDr.Sumに記録できる。以前はかなり手間のかかる業務だったため、現場からの強い要望で実現した機能だという。加藤氏が管理会計ダッシュボードのリリース時期に「C smart」側から活発な意見が出たことから、まずはこの事業でMotionBoardを積極活用すれば成果が出やすいのではないかと考えたそうだ。
「お客様の署名もiPadで完結します。データは画像のまま残すのではなく、Base64というテキスト形式に変換してDr.Sumに登録しています。また、お客様にお渡しする譲渡証明書も、MotionBoardのフリーレイアウトで作成した帳票を印刷しています。そこに記載する氏名、生年月日、年齢、職業といった顧客データや、買い取った商品のデータはDr.Sumから読み込んだものです」(海野氏)
このようにDr.Sumでデータベース化しておけば、取引内容の確認が必要になった場合にも素早く検索することが可能だ。
このほかにも「C smart」では、Appleとの間で情報のやり取りを行っているが、MotionBoardのAPIを利用することで、ほかのシステムを挟む必要がなくなり業務を簡素化できている。これにより、月に215時間が削減されたという 。
このように、想定していた以上のBIツールの使い方をしている現状には、加藤氏も驚いている。
「Dr.SumとMotionBoardの導入を計画したときにはデータ分析と可視化、高速な集計ぐらいができればいいと考えていたので、こんなに使い方が広がるとは思いませんでした。MotionBoardはノーコードアプリ開発ツールよりも使いやすいですし、相性がいいDr.Sumとセットなのでできることの幅が広く、逆にできないことを考えるのが難しいほどです。次はどんなふうに使おうかと、いろいろなアイデアが浮かんできます」
データ蓄積で高まる開発需要を見越して、
MotionBoardの実践的な研修を実施
このほかにもコスモネットではさまざまなダッシュボードを開発しており、ユーザー数は500人を数えるまでになった。
それでもコスモネットでのBI活用はまだ始まったばかりだ。同社は携帯通信キャリア三社とサブブランドの店舗を運営するが、Dr.SumとMotionBoardの活用は、一部キャリアとApple製品店舗「C smart」、一部の役職者にとどまっている。これからのユーザーおよび用途の拡大を目指し、BI活用文化の醸成と開発スキルの教育に尽力しているのは木下氏だ。
「今年度上期で社内のデータを全てDr.Sumでデータベース化する計画で、どのようなデータが存在しているのかを把握するため、各部署を回ってヒアリングを進めています。Dr.Sumにデータを集約した下期からは、MotionBoardでの開発がわれわれだけでは追いつかなくなると想定しているため、ユーザーの手で開発できるように研修も実施しています。今までのやり方を変えることに抵抗感を覚える人もいるでしょうから、ヒアリングではその部署の業務で何が大変なのかも聞き取って、現場に即した演習を用意した研修を実施し、『楽になるなら使いたい』『ダッシュボードの開発は楽しい』と思ってもらえるように心がけています」
今後の展開として、コスモネットではダッシュボードを全社に広げていき、将来的にはMotionBoardを活用した業務改善を披露し合う社内コンテストを開催することも検討しているという。データを起点にした、さまざまな「通信のその先にあるサービス」が生まれることが期待される。
Company Profile
株式会社コスモネット
設立:1991年(創業1979年)
所在地:京都府京都市(京都本社)、東京都港区 (東京本社)
事業内容:ICTサービスプロバイダー事業(携帯電話販売・サービス)および企業向けソリューション事業(情報通信システム事業)
URL:https://www.cosmonet.ne.jp/
導入製品
MotionBoard
BIツールを超えたダッシュボード「MotionBoard」。様々なデータをリアルタイムに可視化。クラウドサービスは月額30,000円から
Dr.Sum
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