導入事例

遠賀信用金庫

遠賀信用金庫

システム内製化とノーコード開発が決め手
金融機関で共有が進む、Excel運用のボード化によるペーパーレスの取り組み

遠賀信用金庫
業種

金融・保険

福岡県遠賀郡に本部を置く遠賀信用金庫は「スモール・イズ・ナイス」を標榜し、地域に密着した取り組みと小回りの利くサービス提供を行っている。同金庫では様々な業務効率化を目的としてMotionBoardを導入。ウイングアークのサポートを受け、様々な業務でダッシュボードを活用することで、業務の見える化と大幅な効率化を実現した。今後さらなるデータ活用とシステムの内製化に取り組んでいく。

導入背景

信用金庫内の様々な業務をツールで内製化することで全体の効率化を図ることが求められていた。具体例としてExcelで行っていた本支店間の送達物管理業務において、書類の授受や事務処理の進捗状況などをリアルタイムに確認できるダッシュボードの作成から進めた。

課題
  • 顧客から受け取った書類を支本支店間で送付する業務において、書類の授受や事務作業の進捗状況をリアルタイムに確認することが難しかった
  • 紙の送達状や各種管理簿のペーパーレス化を進めたかった
  • 専用システムを外部ベンダーとスクラッチで構築することも検討したが、高コストなうえ、きめ細かい開発やメンテナンスが困難だった
解決策導入ポイント
  • MotionBoard導入でExcelの管理表をボード化。送達物の状況を本支店間でリアルタイムに管理できる環境を実現
  • ノーコード開発とウイングアークの金融ソリューション専門チームのサポートにより内製化が可能に
効果
  • 書類の授受や事務作業の進捗状況は即座に確認・共有が可能に
  • 自動入力などの機能により入力作業の負担が軽減し、業務のスピードや正確さが向上
  • システム内製化や送付状の廃止によりコストを大幅に削減
  • いつ、どのような書類が、どれだけ送付されるか事前の把握で、業務の平準化、適切な人員配置に貢献
  • 多様なシステムのデータを可視化し、業務の見える化や効率化、経営への活用が可能に

本支店間の送達物管理が課題になっていた


 遠賀信用金庫は北九州市八幡西区から福岡市東区に至る地域に15の店舗を展開し「スモール・イズ・ナイス」を合言葉に小回りの利くサービスの提供と地域への貢献に力を入れている 


 同金庫の特徴である小口多数取引においてはスピーディで高品質なサービスの提供と顧客接点の強化が欠かせない。そのため業務の効率化とデジタル技術の活用に積極的に取り組み業務の見直しやペーパーレス化、CRMシステムや新しいグループウェア融資稟議システムの導入、インターネット支店の開店やSNSの活用などを推し進めてきた。 


 同金庫のDX推進プロジェクトの責任者をつとめる専務理事の吉村 勝氏はDXの基本方針はリアルとデジタルのハイブリッドです。非対面サービスも活用しお客様との接点強化をはかるとともに、市場やお客様ニーズの変化に対応した従来業務の改変を行っています。きちんと対面で営業ができる職員がデジタルを使いこなせば最強だと考えています」と話す。 


専務理事 融資部担当 DX推進担当 吉村 勝 氏

 遠賀信用金庫では支店本部間の送達物管理業務が課題となっていた。支店は顧客からキャッシュカードを作る際の本人確認書類や暗証番号さらにはインターネットバンキングなど各種サービスの申込書など40種類以上の書類を受け取るそうした書類は3枚綴りの送付状の23枚目とともに現金輸送車で本部へと送られる。本部が書類を受領すると送付状の3枚目が支店に返送され、そこでようやく受領を確認できる。すべて「紙」によるやりとりのため、進捗をリアルタイムで把握することができず、授受の証跡は紙を調べるしかなかった。また、本部側では届くまでどのような書類がどれだけの量送られてくるかがわからず書類の処理に必要な事務量の把握ができなかった 


 こうした紙での運用に代わり2019年にExcelによる本支店間送達物管理表の運用が開始された。しかし書類の種類別支店別にそれぞれ1ファイルで運用されていたため、支店側は入力する際に、本部側は受領確認や事務処理の進捗状況を入力する際に大きな作業負担が生じていた。また、進捗状況の入力漏れやファイルが破損するなどの問題もあったこのような課題を解決し、業務スピードと正確性の向上、作業負担軽減を実現するためMotionBoardの活用が検討された。 


MotionBoard選定の決め手となったスペシャリストによる支援


 本支店間送達物管理システムについてはあるベンダーとスクラッチで開発することが検討されていた。 


 DX推進プロジェクトのリーダーで業務統括部 業務企画課長とシステム課長を兼務する山中 洋氏は次のように振り返る。 


 「FIT(金融国際情報技術展MotionBoardの存在を知り、ウイングアークの方とお話をする中でBIツールとして活用できるだけでなくノーコード開発によりシステムを内製化できることを知りました。内製化することで開発保守、更改の費用を抑えられるだけでなく、より実際の業務に沿った開発やきめ細かい対応が可能になります」 


業務統括部 業務企画課長 兼 システム課長 DX推進プロジェクトリーダー 山中 洋 氏

 内製化の大きな後押しとなったのは、ウイングアークの金融ソリューション専門チームの存在だった。社内に在籍する専門チームは金融業界出身者で構成され、金融機関の様々な業務課題に対して的確な提案を行い多数の導入実績を持っている。 


 「担当者の方にこのようなことを実現したいと相談すると、ではこうしましょうと、すぐに適切な回答が返ってきました」(山中氏)。 


 こうした手厚いサポート体制に加えて、既に金融機関での実績があり、他の金融機関とシステム、ダッシュボードの共有が可能である点、顧客データベースをはじめとする各種データベースとの連結が可能な点もMotionBoard選定の理由だった。 


年間約350時間の時間短縮など大幅な効率化が実現


 20241月より山中氏はウイングアークの金融ソリューション専門チームの担当者と協力しながら本支店間送達物管理ダッシュボード構築を行った。職員に従来使用していたExcelより便利に感じてもらうことが目標として掲げられた。 


 入力に関しては入力リストを活用することで入力ミスを防止し項目に合わせたリストを表示することで入力を容易にしたまた、入力者の権限などに合わせて入力できる項目を制限さらに入力者の名前が自動入力されるなど、入力作業の正確性とスピード、負担軽減を目指した。 


 見せ方にもこだわった。一つのデータベースから支店側から本部側へのダッシュボード、本部側から支店側へのダッシュボードを分けて構築することで、わかりやすさを追求一画面に支店全体の集計表と個人の集計表など複数のデータを表示できるようにした。 


 担当者によって求める情報が異なるため、検索条件も実務に合わせて設定。複数の部署に属する職員やグループ店舗を担当する支店長もいるため、所属部署の作成を工夫することで効率的な検索・表示を実現したさらに支店から本部のどの部署に書類を送ればいいのかがわかる一覧表もダッシュボード内に表示できるようにした。 


本支店間の送達物管理ダッシュボードにより、情報がリアルタイムに共有され、 書類の授受や事務処理作業の進捗状況も画面上で即座に確認できるようになった

 構築作業と各支店への説明を経て、20244月よりダッシュボードの運用が開始された。 


 最大の変化は本部、支店間で送達物に関する情報がリアルタイムに共有されるようになったことだ。書類の授受を画面上で確認できるため、紙の送付状も不要になった。支店から本部に書類現物が届くには1日かかるが、本部側は送付されたことを前日に把握できるためその処理に向けた準備など人的リソースの最適化が可能になった。カレンダー機能も実装しているため、例えば週明けに何件の書類が届くのかを前もって把握でき、効率的な準備を行うことができる。 


 支店側、本部側の入力作業もより正確迅速に負担なく行えるようになり、アラート機能がミス防止に貢献している。事務処理の進捗状況も把握でき処理者のログも自動記録されるため、誰がいつどのような処理を行ったかも即座に確認できるようになった。 


 2023年度、遠賀信用金庫では本支店間で63,179件の書類授受を行っていた。本支店間送達物管理ダッシュボードによって入力時間が1件当たり20秒削減されることから、年間約350時間の時間短縮が見込まれている。約1,200冊の送付状も不要になるため約290,000円のコスト削減が予想されている。また、送付状の保管が不要となったため、監査部門による後日チェックも簡素化された。 


 情報をリアルタイムに把握できることで業務の見える化が実現し、スピードや正確性が向上。作業負担も大幅に軽減された。各支店、各部署の事務量の把握が可能となったため今後、人員配置の参考資料としても活用する予定である 


 山中氏は「現場の課題を明確に把握し、ウイングアークの金融ソリューション専門チームの力を借りながらMotionBoardの機能を活用した構築を行ったことが内製化と導入に成功した要因だと考えています」と話す。 


融資案件管理など、さらに広がる活用範囲


 本支店間送達物管理の構築と並行して、融資案件管理ダッシュボードの構築にも取り組んだ。融資案件の受付、融資の実行予定完済予定残高の見通し、否決・取り下げの情報などを確認できるダッシュボードでExcelによる融資案件管理業務を効率化することが目的だった。 


 「営業部門の職員1名を融資部へ短期間人事配置し、その職員が Youtubeなどを活用して独学でMotionBoardの操作を習得。融資部やシステム課と相談しながらほぼ一人でダッシュボードを構築しました。システムの専門知識がなくても、誰でも構築を行えることはMotionBoardの大きなメリットです」(吉村氏)。


 融資案件管理ダッシュボードは2024年より本部と支店で活用され業務効率向上に貢献している。 


 その他にもダッシュボード化することによって、Excelで運用していたエリア内企業信用情報を検索しやすくしたり、顧客登録などに必要な住所コードを簡単に検索したりグループウェアに掲載していた電話番号を容易に検索メンテナンスできるようにするなど、MotionBoardの活用範囲はさらに広がっている。 


 また、ウイングアークから他銀行が構築した中小企業支援の「伴走支援型特別保証制度」報告ダッシュボードの提供を受けたことも業務に役立っており、さらに他金融機関とダッシュボードや活用事例の共有が進むことが期待されている。 


さらなるデータ活用と内製化を推進していく


 遠賀信用金庫は今後多様なデータの活用とシステムの内製化を進めていく考えだ。 


 勘定系データやCRMのデータ、NECの信金業務補完システム信金SIGHTなどのデータをDr.Sumによる統合データベースに集約し、そのデータをMotionBoardで可視化することで、経営ダッシュボードを作成することに取り組むまた、信用リスクや有価証券の運用リスクなどを数字と文字だけではなく直感的に理解できるようビジュアル化することでより有効な統合的リスク管理の実現を目指している 


 さらに延滞管理システムや売買情報や不動産管理情報などのシステムを内製化、顧客データベースと連携した各種分析票の作成、CRMとの連携によるCRM活用状況の分析・把握などにも取り組んでいく。 


 吉村氏は「MotionBoardは専門知識がない人でもノーコードで開発できるため、外部ベンダーに開発や保守を依頼していたシステムの内製化が可能となります。低コストでより業務に即したシステムの開発ができるため、業務の見える化や効率化をいっそう推進できます。今後は開発環境を共有するなど金融機関同士の協力が進むことにも期待しています。私たちのような職員数約200名の地方の金融機関でも十分に活用できていますので、導入の検討をおすすめします」と語った。 


Company Profile

遠賀信用金庫

設立:1949年9月
所在地:福岡県遠賀郡
事業内容:信用金庫法に基づく金融業務(預金、融資、内国為替、各種代理業務ほか)
URL : https://www.shinkin.co.jp/onga/

(写真左より)
専務理事 融資部担当 DX推進担当
吉村 勝 氏

業務統括部 業務企画課長 兼 システム課長
DX推進プロジェクトリーダー
山中 洋 氏

導入製品

様々なデータを統合・可視化するBIダッシュボード。統合・可視化にとどまらず、データ入力や柔軟な画面設計で業務に必要なアプリケーションをノーコードで作成可能。

あらゆるデータをリアルタイムに収集・蓄積・分析する、データベースエンジンを軸としたデータ分析基盤。10億件のデータも1秒台で集計する超高速集計を実現。

 
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