本支店間の送達物管理が課題になっていた
遠賀信用金庫は北九州市八幡西区から福岡市東区に至る地域に15の店舗を展開し「スモール・イズ・ナイス」を合言葉に、小回りの利くサービスの提供と地域への貢献に力を入れている。
同金庫の特徴である小口多数取引においては、スピーディで高品質なサービスの提供と顧客接点の強化が欠かせない。そのため業務の効率化とデジタル技術の活用に積極的に取り組み、業務の見直しやペーパーレス化、CRMシステムや新しいグループウェア、融資稟議システムの導入、インターネット支店の開店やSNSの活用などを推し進めてきた。
同金庫のDX推進プロジェクトの責任者をつとめる専務理事の吉村 勝氏は「DXの基本方針はリアルとデジタルのハイブリッドです。非対面サービスも活用しお客様との接点強化をはかるとともに、市場やお客様ニーズの変化に対応した従来業務の改変を行っています。きちんと対面で営業ができる職員が、デジタルを使いこなせば最強だと考えています」と話す。

遠賀信用金庫では支店、本部間の送達物管理業務が課題となっていた。支店は顧客からキャッシュカードを作る際の本人確認書類や暗証番号、さらにはインターネットバンキングなど各種サービスの申込書など40種類以上の書類を受け取る。そうした書類は3枚綴りの送付状の2、3枚目とともに現金輸送車で本部へと送られる。本部が書類を受領すると送付状の3枚目が支店に返送され、そこでようやく受領を確認できる。すべて「紙」によるやりとりのため、進捗をリアルタイムで把握することができず、授受の証跡は紙を調べるしかなかった。また、本部側では届くまでどのような書類がどれだけの量送られてくるかがわからず、書類の処理に必要な事務量の把握ができなかった。
こうした紙での運用に代わり、2019年にExcelによる本支店間送達物管理表の運用が開始された。しかし書類の種類別、支店別にそれぞれ1ファイルで運用されていたため、支店側は入力する際に、本部側は受領確認や事務処理の進捗状況を入力する際に大きな作業負担が生じていた。また、進捗状況の入力漏れやファイルが破損するなどの問題もあった。このような課題を解決し、業務スピードと正確性の向上、作業負担軽減を実現するため、MotionBoardの活用が検討された。
MotionBoard選定の決め手となったスペシャリストによる支援
本支店間送達物管理システムについては、あるベンダーとスクラッチで開発することが検討されていた。
DX推進プロジェクトのリーダーで、業務統括部 業務企画課長とシステム課長を兼務する山中 洋氏は次のように振り返る。
「FIT(金融国際情報技術展)でMotionBoardの存在を知り、ウイングアークの方とお話をする中で、BIツールとして活用できるだけでなく、ノーコード開発によりシステムを内製化できることを知りました。内製化することで開発、保守、更改の費用を抑えられるだけでなく、より実際の業務に沿った開発やきめ細かい対応が可能になります」。

内製化の大きな後押しとなったのは、ウイングアークの金融ソリューション専門チームの存在だった。社内に在籍する専門チームは金融業界出身者で構成され、金融機関の様々な業務課題に対して的確な提案を行い、多数の導入実績を持っている。
「担当者の方にこのようなことを実現したいと相談すると、ではこうしましょうと、すぐに適切な回答が返ってきました」(山中氏)。
こうした手厚いサポート体制に加えて、既に金融機関での実績があり、他の金融機関とシステム、ダッシュボードの共有が可能である点、顧客データベースをはじめとする各種データベースとの連結が可能な点もMotionBoard選定の理由だった。
年間約350時間の時間短縮など大幅な効率化が実現
2024年1月より山中氏はウイングアークの金融ソリューション専門チームの担当者と協力しながら、本支店間送達物管理ダッシュボード構築を行った。職員に従来使用していたExcelより便利に感じてもらうことが目標として掲げられた。
入力に関しては、入力リストを活用することで入力ミスを防止し、項目に合わせたリストを表示することで、入力を容易にした。また、入力者の権限などに合わせて入力できる項目を制限。さらに入力者の名前が自動入力されるなど、入力作業の正確性とスピード、負担軽減を目指した。
見せ方にもこだわった。一つのデータベースから支店側から本部側へのダッシュボード、本部側から支店側へのダッシュボードを分けて構築することで、わかりやすさを追求。一画面に支店全体の集計表と個人の集計表など、複数のデータを表示できるようにした。
担当者によって求める情報が異なるため、検索条件も実務に合わせて設定。複数の部署に属する職員や、グループ店舗を担当する支店長もいるため、所属部署の作成を工夫することで効率的な検索・表示を実現した。さらに支店から本部のどの部署に書類を送ればいいのかがわかる一覧表も、ダッシュボード内に表示できるようにした。

構築作業と各支店への説明を経て、2024年4月よりダッシュボードの運用が開始された。
最大の変化は本部、支店間で送達物に関する情報がリアルタイムに共有されるようになったことだ。書類の授受を画面上で確認できるため、紙の送付状も不要になった。支店から本部に書類現物が届くには1日かかるが、本部側は送付されたことを前日に把握できるため、その処理に向けた準備など人的リソースの最適化が可能になった。カレンダー機能も実装しているため、例えば週明けに何件の書類が届くのかを前もって把握でき、効率的な準備を行うことができる。
支店側、本部側の入力作業もより正確・迅速に負担なく行えるようになり、アラート機能がミス防止に貢献している。事務処理の進捗状況も把握でき、処理者のログも自動記録されるため、誰が、いつ、どのような処理を行ったかも即座に確認できるようになった。
2023年度、遠賀信用金庫では本支店間で63,179件の書類授受を行っていた。本支店間送達物管理ダッシュボードによって、入力時間が1件当たり20秒削減されることから、年間約350時間の時間短縮が見込まれている。約1,200冊の送付状も不要になるため約290,000円のコスト削減が予想されている。また、送付状の保管が不要となったため、監査部門による後日チェックも簡素化された。
情報をリアルタイムに把握できることで業務の見える化が実現し、スピードや正確性が向上。作業負担も大幅に軽減された。各支店、各部署の事務量の把握が可能となったため、今後、人員配置の参考資料としても活用する予定である。
山中氏は「現場の課題を明確に把握し、ウイングアークの金融ソリューション専門チームの力を借りながら、MotionBoardの機能を活用した構築を行ったことが、内製化と導入に成功した要因だと考えています」と話す。
融資案件管理など、さらに広がる活用範囲
本支店間送達物管理の構築と並行して、「融資案件管理ダッシュボード」の構築にも取り組んだ。融資案件の受付、融資の実行予定、完済予定、残高の見通し、否決・取り下げの情報などを確認できるダッシュボードで、Excelによる融資案件管理業務を効率化することが目的だった。
「営業部門の職員1名を融資部へ短期間人事配置し、その職員が Youtubeなどを活用して独学でMotionBoardの操作を習得。融資部やシステム課と相談しながら、ほぼ一人でダッシュボードを構築しました。システムの専門知識がなくても、誰でも構築を行えることはMotionBoardの大きなメリットです」(吉村氏)。
融資案件管理ダッシュボードは、2024年より本部と支店で活用され、業務効率向上に貢献している。
その他にもダッシュボード化することによって、Excelで運用していたエリア内企業信用情報を検索しやすくしたり、顧客登録などに必要な住所コードを簡単に検索したり、グループウェアに掲載していた電話番号を容易に検索・メンテナンスできるようにするなど、MotionBoardの活用範囲はさらに広がっている。
また、ウイングアークから他銀行が構築した中小企業支援の「伴走支援型特別保証制度」報告ダッシュボードの提供を受けたことも業務に役立っており、さらに他金融機関とダッシュボードや活用事例の共有が進むことが期待されている。
さらなるデータ活用と内製化を推進していく
遠賀信用金庫は今後、多様なデータの活用とシステムの内製化を進めていく考えだ。
勘定系データやCRMのデータ、NECの信金業務補完システム信金SIGHTなどのデータをDr.Sumによる統合データベースに集約し、そのデータをMotionBoardで可視化することで、経営ダッシュボードを作成することに取り組む。また、信用リスクや有価証券の運用リスクなどを数字と文字だけではなく、直感的に理解できるようビジュアル化することで、より有効な統合的リスク管理の実現を目指している。
さらに延滞管理システムや売買情報や不動産管理情報などのシステムを内製化、顧客データベースと連携した各種分析票の作成、CRMとの連携によるCRM活用状況の分析・把握などにも取り組んでいく。
吉村氏は「MotionBoardは専門知識がない人でもノーコードで開発できるため、外部ベンダーに開発や保守を依頼していたシステムの内製化が可能となります。低コストでより業務に即したシステムの開発ができるため、業務の見える化や効率化をいっそう推進できます。今後は開発環境を共有するなど金融機関同士の協力が進むことにも期待しています。私たちのような職員数約200名の地方の金融機関でも十分に活用できていますので、導入の検討をおすすめします」と語った。






