

株式会社商船三井
慣れ親しんだSharePointとinvoiceAgent 文書管理を連携
1万人規模の組織が生産性を維持したまま電帳法とSAPに対応

- 業種
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倉庫・物流
海運業を中心に社会インフラ事業を展開する株式会社商船三井(以下、商船三井)では、電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応を主目的としてウイングアークの電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent 文書管理」を導入した。グループの従業員約1万人が生産性を落とすことなく法令に則って証憑を保管できるように、すでに定着していたSharePointによる運用を変えることなく電帳法に対応した仕組みを整えた。
導入背景
取引関係書類を含むさまざまな文書をSharePoint上で保管していたが、スキャンした書類については電帳法が求める要件を満たしていなかった。従業員にできるだけ負担がかからない運用で要件を満たせる文書管理の仕組みを必要としていた。
- 課題
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- コンプライアンス徹底のために電帳法スキャナ保存の要件を満たす仕組みが必要
- 1万人規模の従業員に与える影響を最小限に抑えつつ、電帳法を遵守したい
- 解決策導入ポイント
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- invoiceAgent 文書管理を導入して電帳法に対応
- invoiceAgent Bridge ServiceでSharePointの書類を自動的にinvoiceAgent 文書管理へ保存
- 導入パートナーの協力を得て基幹システム SAP S/4HANA Cloud(以降、SAP S/4HANA)をカスタマイズ
- 効果
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- SharePointで文書を管理する現行の運用を継続して、電帳法に対応
- 保管ルールの統一によってSharePointでの検索性が向上し業務が効率化
- SAP S/4HANAの会計伝票とinvoiceAgent 文書管理上の証憑を紐付け、監査等で迅速な対応が可能に
コンプライアンスの徹底に取り組む世界最大級の総合海運企業
800隻を超える世界最大級の船隊を運航する総合海運企業グループである商船三井は、140年の歴史を通じて培った海運業を中心に、さまざまな社会インフラ事業を展開している。現在は2035年に向けたグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」のもと、海の貴さ・地球環境の貴さを大切にしながらグローバルな社会インフラ企業への飛躍にチャレンジしている。
商船三井 経理部 税理チーム コーディネーター 坂尾 弘貴氏は「クリーンエネルギーやICTを活用する先進技術の積極的な採用も進めており、それによるイノベーションが、安全輸送や社会インフラを通じた付加価値の提供、海洋や地球環境の保全につながり、さまざまな社会課題の解決に貢献できると考えています」と話す。
その中で重要な取り組みの一つがDXだ。同社は2023年3月に「商船三井グループDXビジョン」を掲げ、アクションプラン「DX Action 1.0」に沿ってDX推進役の育成や業務のデジタル化などに取り組んできた。進捗に伴って現在は「DX Action 1.1」にアップデートし、ビジネスとカルチャーの両面からなる変革をさらに推進中だ。
そんな同社にとって喫緊の課題だったのが電帳法への対応だ。経過措置期間が設けられているとはいえ、できる限り早期に対応してコンプライアンスを徹底したかったからだ。すでに書類のペーパーレス化が進み、紙書類についてもスキャナで取り込みSharePoint上に保管できる環境を整えていたが、電帳法の対象となる取引関係書類(領収書、請求書、見積書など)のスキャナ保存の要件は満たせていなかった。
「請求書等の書類はどのような部署でも取り扱うものであり、現行の運用を変更した場合の影響は、グループ約1万人の従業員に及ぶことになります。そうなると生産性が低下しますし、新たな運用の定着やそのためのサポートで別の課題が生まれるでしょう。そこで、なるべく現場に負荷をかけないように、それまでの業務を大きく変えることなく法令を遵守できる仕組みの構築を目指しました」(坂尾氏)

運用上の要件を満たす最適解としてinvoiceAgent 文書管理を採用
電帳法対応プロジェクトを主導する商船三井の経理部では、情報システム部門に相当するグループ会社の商船三井システムズとともに、7社のSIer等に実現方法の提案を求めた。
各社の提案内容はさまざまだったが、同社が重視した「現行の運用をなるべく変えない」という要望に唯一応える提案をしたコアコンセプト・テクノロジー社(以下、CCT)をパートナーに選定した。
CCTの提案は、SharePointでの文書管理の運用をほぼ維持したままで、invoiceAgent 文書管理に保管するというものだった。変更点は、請求書等の証憑とそれに対応する会計伝票がセットであることを明確にするために、会計伝票ごとにフォルダを作成してまとめるルールを適用するのみだ。PoC(概念実証)によって実現性を確認した上で、次のような仕組みを実装した。
- 投入・更新されたSharePointのファイルを、APIを通じて監視対象フォルダに格納
- invoiceAgent Bridge Serviceが監視対象フォルダを監視し、タイムスタンプの付与などルールに基づいてinvoiceAgent 文書管理にファイルを自動保管
- 保管したファイルの伝票番号をCCT独自開発のOCRで読み取り、SAP S/4HANA上の当該伝票データに、invoiceAgent 文書管理のプレビューURLを追加
これによりSAP S/4HANAの伝票をクリックするだけで証憑を参照できる。
こうすることで日常の業務は大きく変わることがない。監査や税務調査の場合にのみ、経理部担当者がinvoiceAgent 文書管理を利用する想定だ。

CCTの担当者は製品について、「当社は自社でシステムを開発する技術力もあり幅広い選択肢をご提供できますが、今回はinvoiceAgent 文書管理を採用するのが合理的だと考えてご提案しました。invoiceAgent 文書管理は利用できるAPIが豊富なため、さまざまな要件に対応できる点が魅力的です。技術仕様について問い合わせた際のサポートも期待通りでした」と評価している。
1万人規模が生産性を落とすことなく電帳法に則った運用を実現
電帳法対応プロジェクトは、2023年6月頃にCCTが実現方法を提案し、PoCを8月にかけて実施した上で、12月までに構築を終えた。
2024年1月から運用を開始し、決算があり、会計伝票が最も多くなる3月を経験しながら1年弱が経ったが、現時点でinvoiceAgent 文書管理は問題なく機能しているという。
これまでの導入効果について坂尾氏は、「1万人規模の利用者がおり、毎月2,000〜3,000ファイルが格納されているにもかかわらず、経理部への問い合わせは週に1、2件で目立った苦情もなく、3月も特に問題なく乗り越えています。invoiceAgent 文書管理の選定やこの運用が間違っていなかったと評価してよいでしょう」と話し、副次的な効果もあったとしてこう続ける。「以前はSharePoint上での保管に関するルールが全社で統一されておらず事業部によって異なっており、参照する際に手間取ることがありました。今回、ルールを見直して浸透させた結果、経理部だけでなく全社的に効率化が図られました」
組織力の向上にinvoiceAgent 文書管理を活用したい
今後の取り組みについて坂尾氏は、次のように語る。
「経理部では国際会計基準(IFRS)の導入に向けた取り組みを進めている最中で、大変な作業をミスなく終えなければなりません。また、経理部は人が入れ替わっても持続可能な組織でなければなりません。invoiceAgent 文書管理を、電帳法対応だけでなく、情報の共有やナレッジの蓄積などで活用することも検討していくつもりです」
また、invoiceAgent 文書管理を商船三井グループ各社に推奨し展開することも視野に入れているという。ウイングアークではCCTと連携して、商船三井グループの経営計画達成に向けたチャレンジに引き続き貢献していく。
Company Profile
株式会社商船三井
設立:1884年
所在地:東京都港区
事業内容:ドライバルク、エネルギー、製品輸送、ウェルビーイングライフなど
URL:https://www.mol.co.jp/

経理部 税理チーム コーディネーター 坂尾 弘貴氏
導入製品
invoiceAgent 文書管理
電子帳票の仕分けから保管、検索、他システムとの連携も可能な文書管理ソリューション。電子帳簿保存法に対応し、コスト削減、ガバナンス強化、ペーパーレス化を推進。